M&A仲介会社との専任契約(FA契約)は無効になることがある?弁護士が解説

M&A仲介会社との専任契約(FA契約)とは
専任契約の基本的な意味
M&Aにおける専任契約(FA契約)とは、依頼者が一定期間、特定のM&A仲介会社またはフィナンシャル・アドバイザー(FA)にのみ業務を委託し、他の仲介会社等に同様の業務を依頼しないことを約束する契約形態をいいます。
通常、M&A仲介会社が売主または買主からの依頼を受け、相手方を探索し、条件交渉を支援するという形で業務が行われますが、専任契約を締結することにより、依頼者は他の業者に並行して依頼することができなくなります。
専任契約は、仲介会社側にとっては営業努力に対する保護手段であり、依頼者側にとっては一定の期間、他の選択肢を封じられる拘束的性質を持ちます。そのため、契約書の文言や専任期間、解除条件、違約金条項の内容によっては、実質的に不利益を被るケースも少なくありません。
専任契約と一般契約の違い
M&A仲介契約には、大きく分けて「専任契約」と「一般契約(非専任契約)」の2種類があります。
| 区分 | 内容 | 依頼者の自由度 | 仲介会社のインセンティブ |
| 専任契約 | 特定の仲介会社にのみ依頼できる | 低い(他社依頼不可) | 高い(業務継続が保証される) |
| 一般契約 | 複数の仲介会社に並行依頼できる | 高い | 低い(競争が発生) |
一般契約では、複数の業者に同時依頼ができるため、依頼者は情報・条件を比較しやすい一方、仲介会社は他社に成約を奪われる可能性があります。
一方、専任契約では、仲介会社が独占的に交渉を進められるため、営業努力を継続しやすい反面、依頼者は不満があっても期間中は他社に切り替えられません。
実務上は、専任契約にする代わりに手数料率を下げるなど、契約条件で調整される場合もあります。
M&A仲介契約における専任条項の典型的な内容
専任契約条項には、次のような規定が含まれることが一般的です。
- 依頼者は、契約期間中、他の仲介会社またはFAに同様の業務を依頼してはならない。
- 依頼者が他社を通じて取引を成立させた場合も、当該仲介会社に成功報酬を支払う。
- 契約期間は通常3か月〜6か月、長い場合は12か月程度。
- 解除には、事前通知(例:30日前)を要する。
また、多くの契約には「テール条項」と呼ばれる規定があり、専任期間終了後でも、一定期間(例:6か月以内)に成約した場合には手数料が発生します。
これにより、実質的には専任契約期間以上の拘束が続くこともあり、依頼者にとっては注意が必要です。
どのような場合専任契約(FA契約)が無効となる可能性がある?
民法上の公序良俗違反・信義則違反の場合
専任契約であっても、民法第90条(公序良俗違反)や第1条第2項(信義則)に反するような条項がある場合には、無効または制限される可能性があります。
具体的には、以下のようなケースが典型です。
| 判断基準 | 内容 | 無効と判断される可能性 |
| 公序良俗違反 | 社会通念上著しく不当な拘束を課す | 高い |
| 信義則違反 | 一方的に仲介会社に有利な運用を強制 | 中程度 |
| 契約自由の限界 | 契約内容が合理性を欠く | 状況によりあり |
たとえば、仲介会社が実質的に何の活動も行っていないにもかかわらず、専任期間中に第三者と成約しただけで成功報酬全額を請求するような条項は、信義則違反として無効と判断される余地があります。
違約金・中途解約金が過大な場合
違約金や中途解約金が、仲介会社の実際の損害を著しく超える場合には、民法第420条第1項(損害賠償の予定)に基づき、減額や無効が認められる可能性があります。
以下は典型的な判断要素です。
- 仲介会社の実際の活動量:紹介・交渉・契約書作成等の実務がどの程度進んでいたか。
- 依頼者側の解除時期:初期段階での解約か、最終交渉段階か。
- 違約金の割合:成功報酬の50%以上を中途解約金として請求する条項は過大とみなされる傾向。
過去の裁判でも、違約金が過大であるとして一部無効とされた例があり、契約条項におけるバランスが重視されています。
実質的に「囲い込み」と評価される場合
専任契約が、実質的に依頼者の自由な選択を奪い、他のM&A仲介会社へのアクセスを完全に遮断するような場合には、「囲い込み」として違法・無効と評価される可能性があります。
特に問題となるのは次のような場合です。
- 他社との交渉を一切禁止し、違反した場合に高額な違約金を定めている。
- 専任期間が過度に長く(1年以上など)、契約解除の自由が実質的にない。
- 契約終了後のテール条項が長期間(1年以上)に及び、事実上の独占状態が続く。
こうした条項は、依頼者の経営判断の自由を過度に制約するものであり、公序良俗に反するものとして無効と判断される余地があります。
消費者契約法・独占禁止法の観点からの検討
専任契約(FA契約)が無効となる可能性は、民法上の一般原則だけでなく、消費者契約法および独占禁止法の観点からも検討されます。
いずれも「事業者と依頼者の交渉力の不均衡」や「不当な拘束」を是正する趣旨をもつ法律であり、専任契約における過度な拘束や不公平な条項が問題となる場合に適用されることがあります。
① 消費者契約法に基づく無効の可能性
経営者個人が売主としてM&A仲介会社と専任契約を締結する場合には、法人でなく自然人として「消費者」に該当する可能性があります。
この場合、消費者契約法第10条に基づき、次のような条項は無効と判断される余地があります。
| 条項の類型 | 無効となる可能性の根拠 | 具体例 |
| 過大な違約金条項 | 消費者の利益を一方的に害する | 成約に至らなくても成功報酬全額を支払う義務を定める条項 |
| 一方的な免責条項 | 仲介会社の責任を全面的に免除 | 仲介会社が誤った情報提供をしても免責される規定 |
| 契約解除の制限 | 消費者の解約自由を奪う | 解除に長期の専任期間を課し、実質的に解約を妨げる規定 |
このような条項は、実質的に契約自由の原則を逸脱し、依頼者に不当な負担を強いるものと評価されます。
特に「解約しても違約金として成功報酬全額を支払う」とするような規定は、同法第10条に反し、一部または全部が無効となる可能性があります。
② 独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当する場合
M&A仲介会社が中小企業経営者に対し、実質的に他社との契約締結を妨げたり、過度に長い専任期間を設定したりする場合、
それが**独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)**に該当することがあります。
以下は、公正取引委員会の考え方を踏まえた判断要素の整理です。
| 判断要素 | 内容 | 専任契約で問題となる具体例 |
| 契約交渉上の力関係 | 仲介会社がM&A情報・買手網を独占している | 経営者が他社と比較検討できない状態で専任を迫られた場合 |
| 不当な拘束 | 契約期間や解除条件が過度に厳しい | 1年以上の専任期間、途中解除に高額な違約金を課す条項 |
| 不当な取引条件 | 相手方の自由を奪う行為 | 他の仲介会社やFAに相談すること自体を禁止する条項 |
このような行為は、独占禁止法上「取引の公正を害する行為」として問題視される可能性があります。
特に、M&A仲介会社が依頼者の知識不足につけ込み、「当社以外に依頼すると違約金が発生する」として実質的に他社との交渉を封じるような場合、
優越的地位の濫用として行政指導・勧告の対象となることもあり得ます。
③ まとめ:法的拘束の強さが過度な場合は無効の可能性が高まる
以上のとおり、専任契約が無効と判断されるのは、
- 契約内容が社会通念上不当であり(公序良俗違反)、
- 一方当事者に著しい不利益を与え(信義則違反)、
- 消費者契約法または独占禁止法の趣旨に反して依頼者の自由を奪う場合
です。
つまり、専任契約の拘束力が過度であるほど、法的に無効と評価されやすくなるということです。
契約の目的・内容・期間・交渉過程などを総合的にみて、合理的な範囲を超える場合は、
契約の一部または全部が無効となる可能性があるといえます。
専任契約が問題となる背景
仲介会社が「両手取引」であることの構造的リスク
日本の中小企業M&A市場では、多くの仲介会社が「両手取引」を行っています。
両手取引とは、同一の仲介会社が売主・買主の双方からM&A仲介手数料を受け取る取引形態を指します。
この構造では、仲介会社は両者の利益を同時に調整しなければならず、利益相反のリスクが生じます。
専任契約が締結されている場合、売主は他の仲介会社に相談できず、仲介会社の提示条件を受け入れるしかない状況に陥ることもあります。
結果として、取引スピードや手数料率、M&A価格の妥当性に関する客観的比較が困難となり、依頼者が一方的に不利になる事例が少なくありません。
中小企業M&Aにおける情報格差と契約の不均衡
中小企業の経営者にとって、M&A契約書の法的内容や交渉の慣行は馴染みが薄く、仲介会社の説明をそのまま受け入れて契約してしまうケースが多く見られます。
一方で、仲介会社はM&A契約を多数取り扱っており、契約書の作成・交渉に精通しています。
このような情報格差がある状況下では、専任契約の内容が実質的に不公平であっても、依頼者が気付かないまま署名してしまうことがあります。
特に、「中途解約時でも成功報酬が発生する」「他社経由での成約でも手数料がかかる」といった条項が含まれている場合、依頼者にとって過度の拘束となり得ます。
専任契約が問題化する背景には、こうした情報格差と契約交渉力の不均衡が存在しています。
専任契約をめぐる裁判の特徴
専任契約が有効とされた裁判例の特徴
裁判において専任契約が有効と判断される場合、契約内容や交渉経緯に一定の合理性が認められる傾向があります。
具体的には、以下のような特徴が挙げられます。
- 契約期間が適切(3〜6か月程度)で、解除の自由が一定程度保障されている。
- 仲介会社が実際に買手候補者の探索や交渉支援など、実質的な活動を行っていた。
- 専任契約締結前に依頼者へ契約内容の説明があり、自由意思に基づいて署名したと認められる。
- 成約に至らなくても、仲介会社の努力が依頼者に一定の利益をもたらしたと評価される。
裁判所は、契約書の形式だけでなく、当事者の意思や実際の取引過程を重視する傾向にあります。
そのため、専任契約自体が直ちに問題となるのではなく、契約内容と運用実態の合理性が有効性判断の中心となります。
専任契約が無効・一部無効とされた裁判例の特徴
一方、専任契約が無効または一部無効と判断された事案では、仲介会社の行為が依頼者に一方的な不利益を与えていたことが共通しています。
典型的な傾向として、以下のような特徴が認められます。
| 無効・制限が認められる要因 | 具体的事例・状況 |
| 専任期間が過度に長い | 1年以上の拘束や解除不能の規定 |
| 仲介会社の実働がほとんどない | 買手紹介や交渉支援が全く行われていない |
| 違約金・解約金が過大 | 成約前でも成功報酬全額を請求する条項 |
| 説明義務違反 | 契約内容や専任義務の影響を十分に説明していない |
| 優越的地位の濫用 | 仲介会社が他社との契約を妨げる条件を強制した |
特に、中途解約時の違約金が仲介会社の実際の損害を大きく上回る場合、裁判所は「社会通念上相当性を欠く」として減額または無効と判断することが多いです。
また、依頼者が契約内容を十分理解していなかった場合、消費者契約法第10条に基づく一部無効の判断がなされることもあります。
違約金・専任期間・他社紹介禁止条項の判断傾向
裁判所は、専任契約の有効性を判断するにあたり、違約金・専任期間・他社紹介禁止条項を総合的に検討します。
以下に主要な判断要素を整理します。
| 検討項目 | 判断傾向 | 実務上のポイント |
| 違約金条項 | 実損を超える部分は減額または無効 | 実際の活動内容・費用との対応関係を明確にする必要 |
| 専任期間 | 3〜6か月を超えると厳格に審査される傾向 | 長期契約の場合は中途解約自由を明記することが望ましい |
| 他社紹介禁止条項 | 「囲い込み」とみなされると無効の可能性 | 禁止範囲を合理的な期間・相手方に限定することが重要 |
裁判所は、これらの条項を個別にではなく、契約全体のバランスとして評価します。
そのため、専任契約において一部の条項が無効と判断されても、契約全体が無効になるわけではなく、合理的な範囲で修正・削除されることもあります。
専任契約を締結・運用する際の実務上の留意点
契約締結前に複数の仲介会社を比較検討する
M&A仲介会社の手数料体系・専任条項の拘束力・サポート範囲は各社で大きく異なります。
契約締結前の段階で複数の仲介会社を比較し、以下の要素を表形式で整理することが有効です。
| 比較項目 | 具体的内容 |
| 手数料体系 | 純資産方式・総資産方式・リーマン方式の別 |
| 専任期間 | 3〜6か月が標準。長期の場合は解除条項が必要 |
| テール条項 | 専任終了後に報酬発生する期間(6か月以内が目安) |
| 担当者体制 | 買手探索・交渉・契約支援の分業状況 |
| 報酬支払時期 | 成約時一括か、クロージング後支払いか |
この段階での比較検討は、後の契約トラブルを予防するうえで最も効果的です。
契約期間・中途解除条件を明確に設定する
契約期間は3〜6か月が一般的ですが、過度に長期であったり自動更新となっている場合、依頼者の自由を実質的に奪う結果となります。
契約書には、以下の3点を明記することが望ましいです。
- 契約期間の上限と終了日を特定する。
- 中途解除の自由を認め、通知期間(例:30日)を定める。
- 契約終了後の更新条件を別途書面で合意する。
これにより、専任契約が合理的範囲に収まり、後日の無効主張を防ぐことができます。
違約金・成功報酬の算定方法を具体的に確認する
契約書中の「違約金」「成功報酬」の定義は、実務上の紛争原因の中心です。
次の観点で具体的に確認します。
- 成功報酬の算定基準(株式価額か、負債込みの取引価格か)
- 解約時の費用負担(実費精算か定額金か)
- 成約時点の定義(契約締結時かクロージング完了時か)
これらを事前に明確化しておくことにより、解除時や報酬支払時の紛争を予防できます。
他社への相談やFA契約締結の可否を確認する
専任条項の範囲が不明確なまま契約を締結すると、「他社に相談しただけで違約」とされる場合があります。
契約書上で以下の点を明確にすることが重要です。
- 「他社との契約締結」と「単なる相談・情報収集」を区別する。
- FA契約(フィナンシャル・アドバイザー契約)の併用可否を確認する。
- M&Aプラットフォーム・金融機関を「他社」として含むかどうかを明示する。
専任契約の対象範囲(買手候補者・案件範囲)を把握する
対象範囲を曖昧に定めると、後日「別案件でも報酬発生」と主張される可能性があります。
契約書では、以下を具体的に記載する必要があります。
| 項目 | 内容例 |
| 対象会社 | 売却対象がグループ全体か特定子会社か |
| 買手候補者 | 契約時に提示された候補リストに限定する |
| 成約対象 | 直接・間接取引のいずれを含むかを明確化 |
専任契約終了後のテール条項(後発案件報酬)を確認する
テール条項とは、専任期間終了後でも一定期間に成約した場合に報酬が発生する規定です。
合理的な範囲(6か月程度)にとどめることが望ましく、以下の点を必ず確認します。
- テール期間の長さ
- 対象となる「買手候補者」の範囲
- 成約の定義(株式譲渡契約かクロージングか)
期間や範囲が過度に広い場合、公序良俗違反・信義則違反として無効主張されるおそれがあります。
専任条項以外の不利な契約条項も確認する
専任条項だけでなく、免責条項や包括的成功報酬条項など、依頼者に一方的負担を課す条項にも注意が必要です。
| 条項の種類 | リスク内容 |
| 仲介会社の免責条項 | 誤った助言でも責任を負わない旨の規定 |
| 成約定義の曖昧な条項 | 実際のクロージング前に報酬発生を主張される |
| 包括的報酬条項 | 将来の関連取引まで報酬請求を受ける可能性 |
契約書全体の整合性を確認し、疑問がある場合は修正を求めるべきです。
契約書を専門家に確認してから締結する
契約文言の意味やリスクを正確に理解するためには、M&Aに精通した弁護士等の専門家に確認してもらうことが最も確実です。
特に以下のような場合は、締結前に専門家の助言を受けるべきです。
- 条文の意味が抽象的または不明確な場合
- 契約期間や違約金が平均的水準を超えている場合
- 仲介会社からの説明が十分でない場合
一度締結してしまうと解除や修正が難しいため、事前確認がトラブル防止の最重要段階といえます。
専任契約を解除したい場合の実務対応
解除理由と契約条項の関係を整理する
専任契約を解除する場合、まず最初に確認すべきは「契約書に定められた解除条項」です。
解除の可否や違約金の有無は、契約書面に明記された文言によって大きく異なります。
実務上は、以下の3点を整理します。
- 解除事由の有無:契約書上に「正当な理由」「相当な事由」が求められていないか。
- 通知期間:解除の意思表示に際して、事前通知(例:30日前)が必要か。
- 費用負担:途中解除に伴い発生する「実費精算」や「違約金」が明記されているか。
仲介会社が契約上の義務(買手探索や交渉支援など)を怠っている場合には、依頼者側から「債務不履行」を理由に解除することも可能です。
一方、単に方針変更や不満といった理由では、違約金支払いを求められる場合もあるため、契約条項に基づく整理が不可欠です。
仲介会社への交渉・通知書送付を行う
任意交渉で合意を試みる
解除を検討する際には、まず仲介会社と協議し、円満な合意による解除を目指します。
仲介会社も、実務的には「関係悪化による業務継続の困難」を理解する場合が多く、一定の条件(たとえば実費の支払い)で合意解除できることがあります。
交渉の際は、
- 解約希望日と理由を明確に伝える。
- 契約条項のどの部分に基づく申し出であるかを整理する。
- 電話・面談内容をメモやメールで残す。
といった基本対応を徹底します。
解除通知書を作成して送付する
口頭での合意が難しい場合には、正式な書面による解除通知を送付します。
通知書には、次の内容を明記します。
- 契約書の名称・締結日
- 解除の意思表示とその理由
- 契約条項の根拠(解除条項や債務不履行条項など)
- 効力発生日(例:通知日から30日後)
- 連絡・精算方法に関する提案
通知書は、後日紛争となった際の証拠として重要です。内容証明郵便を利用して送付すると、到達日と内容を客観的に証明できます。
交渉経過や書面を記録として残す
専任契約の解除をめぐっては、「言った・言わない」が問題化することが少なくありません。
交渉過程を記録に残すことで、後の違約金請求などへの防御資料になります。
実務では、
- メール・LINEなどの送受信履歴を保存する。
- 面談・電話交渉の要点を日付付きメモにまとめる。
- 通知書・返信書面をすべてファイリングしておく。
これらの記録は、将来的に裁判や調停で事実経過を証明する際に極めて有効です。
違約金請求を受けた場合に対応する
違約金請求の根拠条項を確認する
仲介会社から違約金請求を受けた場合、まずは契約書に記載された根拠条項を特定します。
「第○条○項に基づき違約金として成功報酬の○%を請求する」といった条文が、どの範囲を想定しているのかを分析する必要があります。
根拠条項を確認したうえで、請求が契約条項上の要件を満たしているかを判断します。
たとえば、解除が「仲介会社の債務不履行」に起因する場合は、依頼者に違約金義務は生じません。
仲介会社の実際の活動内容を検証する
仲介会社が実質的にどの程度業務を遂行したかを確認することは、違約金の妥当性を判断するうえで重要です。
チェックすべき資料の例は以下のとおりです。
- 買手候補者リストの提出状況
- 案件概要書(ノンネームシート・IM)の作成有無
- 交渉・打診の実施履歴
- メールや報告書による活動記録
実務上、仲介会社の実働が限定的であれば、違約金請求の一部または全部が過大であると主張する根拠となります。
請求額の妥当性を検討し減額交渉を行う
仲介会社が実際に被った損害額を上回る請求である場合には、民法第420条第1項に基づき、減額交渉を行うことが可能です。
減額交渉では、以下のような主張が有効です。
- 仲介会社の業務が初期段階であり、成果に結びついていない。
- 契約解除の理由が合理的であり、依頼者の一方的な都合によるものではない。
- 契約条項が一方的で、社会通念上相当性を欠いている。
交渉の結果、一定額を支払って和解するケースも多く、文書による合意書を作成しておくことで後日の再請求を防止できます。
裁判・調停による解決を検討する
仲裁・調停条項の有無を確認する
契約書の中には、「本契約に関する紛争は○○地方裁判所を専属管轄とする」「商事仲裁により解決する」などの条項が含まれている場合があります。
まずは、紛争解決条項を確認し、どの機関に申し立てることが可能かを把握します。
訴訟提起または調停申立てを準備する
仲介会社との交渉が決裂した場合、訴訟または調停による法的解決を検討します。
調停は、裁判よりも柔軟な和解解決を図る手続であり、仲介会社との関係維持を考慮する場合に有効です。
申立てに際しては、
- 契約書・通知書・交渉記録などの証拠を整理する。
- 解除理由と請求の根拠を明確にする。
- 裁判所提出用に事実経過を時系列でまとめる。
これらの準備が整えば、弁護士を通じて正式に提訴または申立てを行うことができます。
紛争解決までの期間と費用を見積もる
裁判や調停を選択する場合、費用対効果を慎重に検討することが必要です。
一般的な目安として、
- 調停:期間3〜6か月、費用は比較的軽微(印紙・日当など)
- 訴訟:期間6か月〜1年、弁護士費用や証拠収集費が発生
金額の大きい紛争であれば訴訟による判断を得る意義がありますが、費用が請求額を上回る場合には、任意和解による早期解決を検討すべきです。
まとめ:専任契約は慎重に内容確認を
契約の拘束力と無効判断の境界を理解する
専任契約は、仲介会社の努力を保護する合理的な仕組みである一方、条項の内容によっては依頼者の自由を不当に制約するものとなる場合があります。
有効と無効の境界は、契約期間の長さ、違約金の額、契約締結時の説明状況などを総合的に考慮して判断されます。
契約書の文言だけでなく、交渉過程や実際の業務遂行状況も重要な判断材料となるため、形式的に署名押印するのではなく、理解のうえで締結する姿勢が求められます。
トラブルを防ぐための予防的対応を心がける
トラブル防止の基本は、契約締結前の段階での慎重な比較と確認です。
契約後に解除や違約金問題が発生すると、解決までに多くの時間と費用を要します。
- 契約書は署名前に第三者専門家に確認してもらう。
- 不明点や不安な条項は交渉段階で修正を求める。
- 契約期間終了後のテール条項や報酬発生条件を把握しておく。
これらを徹底することで、M&A仲介会社との関係を適正に保ちつつ、取引を円滑に進めることができます。


