M&Aにおける悪質な買い手とは?代表的な手口や事例、相手の見極め方も解説

M&A市場は年々活発化しており、買い手の選択肢も多様化しています。しかし、中には買収後に約束を守らず、従業員や取引先、ブランド価値を損なう行為を行う悪質な買い手も存在します。こうした相手とM&A契約を締結してしまうと、売り手側は事業価値の毀損、雇用の不安定化、法的トラブルなど深刻な問題に直面します。

本記事では、M&Aにおける悪質な買い手とはどういった存在なのか、代表的な手口や事例、相手の見極め方と併せて解説します。

M&Aにおける悪質な買い手とは

M&Aにおける悪質な買い手とは、表面的には友好的・誠実な姿勢を見せながらも、買収後に売り手やそのステークホルダーへ損害を与える行為を行う相手のことです。彼らは短期的な利益獲得や資産の不正利用を目的とし、契約前後で言動や行動が大きく変わる傾向があります。

M&Aでは買い手と売り手の利害が一致することが理想ですが、悪質な買い手はこの信頼関係を悪用します。資金力や経営能力が不十分なまま高額提示を行い、買収後に資産を切り売りしたり、従業員を大量解雇したりするケースもあります。最悪の場合、契約違反や支払い未履行といった法的トラブルにも発展します。

M&Aにおける悪質な買い手が増えている背景

近年、M&Aの件数が増える一方で、悪質な買い手によるトラブルも後を絶ちません。例えば、契約成立後も売り手経営者の個人保証が外れず、最終的に自己破産に追い込まれる事例や、譲渡対価や退職慰労金の後払いを条件に契約したにもかかわらず、支払いが実行されないケースが報告されています。これらは、多くの場合、売り手側が事前に買い手の信用度や契約条件を十分に精査しなかったことが原因です。

また、後継者不足に悩む中小企業がM&Aを事業承継の手段として選ぶ傾向が強まる中、その状況を逆手に取り、財務面の弱点や知識不足を利用する悪質な買い手も増加しています。加えて、急増するM&A仲介会社の中には、適切な審査を行わずに取引を進めるケースや、成功報酬を優先し、買い手の信頼性を十分に確認しないまま契約を成立させる事例も問題視されています。

M&Aにおける悪質な買い手に対する国の注意喚起

M&A市場の拡大に伴い悪質な買い手によるトラブルが増加していることを受け、国も経営者やM&A仲介会社に対して注意喚起を行っています。特に中小企業の事業承継に関しては、買い手の信頼性確認や契約内容の精査を怠らないよう強く促しています。

例えば、中小企業庁は、M&Aにおける悪質な買い手による事例を公表し、以下のようなリスクを経営者に周知しています。

  • 個人保証の未解除:譲渡後も前経営者が借入金返済義務を負い続け、最終的に破産
  • 代金未払い:契約で定めた譲渡対価や退職慰労金が支払われない

国は上記のリスクを回避するため、弁護士や各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターへの相談を推奨しています。

M&Aにおける悪質な買い手の代表的な手口

M&Aにおける悪質な買い手は、表向きは魅力的な条件を提示しながら、実際には売り手や経営者、従業員に損害を与える行為を行います。こうした手口を事前に知っておくことで、M&A交渉時にリスクを見抜きやすくなります。

本章では、中小企業庁やM&A実務で報告されている代表的な手口を6つ紹介します。

複数社の買収実績を誇り、信頼ある買い手に見せかける

経営者にとって、買収実績の多さは安心材料になりやすい要素です。とくに初めてM&Aを経験する売り手は、「実績がある=安全」と誤解しやすく、十分な調査を行わないまま契約を進めてしまうことがあります。悪質な買い手はこの心理を巧みに利用し、表面的な信頼感で判断を誤らせます。

例えば、ある買い手は「過去数年間で数十社のM&A実績」を掲げて交渉に臨みました。しかし実態は買収後に利益の出る資産だけを売却し、残った事業を清算する手法を繰り返していた事例があります。外部からは一見「積極的な事業拡大」と見えますが、売り手やその従業員にとっては雇用喪失や債務負担という大きな損害をもたらしました。

クロージング後も個人保証が解除されない

中小企業の経営者は、事業資金の借入に際して個人保証をしていることが多く、M&Aで事業を譲渡する際には個人保証を解除することが重要な条件になります。しかし、悪質な買い手は「すぐに解除手続きを進める」と約束して契約を結びながら、実際には金融機関との交渉を行わない、または解除を先延ばしにして責任を押し付けるケースが典型的です。

例えば、ある経営者は事業承継型M&Aで会社を譲渡しましたが、契約書に「クロージング後、速やかに個人保証を解除する」との文言があったにもかかわらず、買い手は解除手続きを行いませんでした。その後、譲渡先企業が経営悪化し、金融機関から保証債務の履行を求められ、経営者は私財を処分せざるを得なくなりました。

株式譲渡契約で譲渡代金の分割払いや退職慰労金の後払いを約束しながら不履行

M&Aでは、譲渡代金の一括払いではなく、複数回に分けて支払う分割払い方式や、経営者への退職慰労金を後日に支払う条件が設定されることがあります。こうしたケースは資金繰りに配慮した契約形態として一般的ですが、悪質な買い手はこの仕組みを悪用し、契約後に支払いを拒否または先延ばしにして責任を回避します。売り手がすでに経営権を手放しているため、回収が困難になるのが実情です。

「資金の一元管理」を名目に対象会社の資金を流用

M&Aによる買収後、買い手は子会社(旧売り手)の資金状況を管理する役割を担います。具体的には、日々の運転資金や資金繰りの状況を把握し、資金が不足しそうな場合には子会社への貸付などで補填するのが一般的です。

しかし、ある事例では、M&Aにおける買い手が売り手の資金繰りを顧みずに資金を吸い上げた結果、資金不足が深刻化しました。その影響で、従業員への給与未払い、税金や社会保険料の滞納、取引先への支払い遅延といった事態が発生しました。本来の経営目的から大きく逸脱した典型的な事例といえます。

買収後の新経営陣による不正行為や経営破綻

M&A詐欺の中には、買収後に新たに就任した経営者が会社を私物化し、不正を繰り返して組織を崩壊へ導く悪質な手口があります。

実際のケースでは、経営者が会社の資産を勝手に売却したり、自分に過剰な役員報酬を支払わせたりする事例が確認されています。さらに、親会社への「コンサルティング費用」や「管理費」といった名目で資金を流出させる方法も見られます。

これらは表面上は合法に見えても、実態は明らかな資金流用です。その結果、企業の財務状況は急速に悪化し、取引先への支払いが滞るようになります。最終的には倒産や破産に至り、従業員や取引先にも深刻な被害を及ぼします。

損害賠償請求をしても買い手に支払い能力がなく、仲介会社への不満が集中

あるM&A仲介会社は、売り手から「買い手の調査や確認が不十分だった」として損害賠償を求める訴訟を起こされました。M&A仲介会社はこれに対抗し、今度は買い手を相手取って損害賠償を請求しましたが、買い手には支払い能力がほとんどありませんでした。結果として、M&A仲介会社は損失を回収できないだけでなく、自社の信用や評判まで大きく傷つける事態となりました。

M&Aにおける悪質な買い手の代表的な事例

本章では、実際にあったM&Aにおける悪質な買い手の代表的な事例を紹介します。

ルシアン事件

まずは、ダイヤモンド・オンラインの報道をもとに、ルシアン事件の概要を紹介します。

株式会社ルシアンホールディングス(以下、ルシアン)は、設立間もない2021年11月に東京・丸の内を拠点として発足し、「異業種一体型企業で年商100億円」を掲げて、全国で結婚式場、車両部品販売、砕石、土木、農業法人など30社近い中小企業を短期間で買収しました。ルシアンによる買収の背景には、後継者不在に悩む中小企業が多く、国が事業承継税制や補助金でM&Aを後押しし、仲介会社が成功報酬型で積極的に案件を成立させる環境が整っていたことがあります。M&A仲介会社のネットワークにより、設立から間もないルシアンでも一気に買収を進められたとみられます。

しかし、多くの傘下企業で深刻なトラブルが発生しました。第一の問題は「現金の抜き取り」です。買収後、ルシアンは傘下企業に対し、資金を複数回に分けて本社口座に送金させ、「必要時に戻す」と説明していましたが、実際には送金が遅れるあるいは戻されないケースが発生し、結果として給与未払い、債務不履行、取引先との信用失墜など、経営を直撃する事態に陥りました。

第二の問題は「経営者保証の未解除」です。本来、会社売却時には金融機関を通じて元社長の個人保証を解除する手続きを行うのが通常ですが、ルシアンはこれを履行しませんでした。そのため、傘下企業が経営悪化で返済不能になると、既に経営から退いた元社長に金融機関から返済請求が行われ、多くが予期せぬ負債を背負わされる結果となりました。

2024年1月以降、ルシアン代表は連絡を絶ち所在不明になっています。M&A仲介会社には「ルシアンと連絡が取れない」「保証が外れず破産に追い込まれる」といった元経営者からのSOSが相次ぎました。M&A仲介会社は原則としてM&A成立後の経営には関与しないため、事態を把握したのはこうした連絡が入ってからで、事後対応は困難を極めています。

トウキョウファーム事件

続いて、朝日新聞の報道をもとに、トウキョウファーム事件の概要を紹介します。

秋田県の老舗寝具店は創業から100年以上の歴史を持つものの、量販店の台頭などで業績が低迷していました。社長は事業整理か業態転換を模索していましたが、M&Aセミナーで「中小企業でも可能」と知り、M&A仲介業者を通じて東京のトウキョウファーム株式会社(以下、トウキョウファーム)と接触しました。2023年4月、個人保証解除と従業員の雇用継続を条件に株式譲渡契約を結んだものの、M&A契約後に買い手は資金を吸い上げる一方で負債や保証解除には対応せず、返済も滞り、最終的に契約白紙撤回と会社の再取得に至りましたが、預け金500万円以上が未返還のままとなりました。

新潟県の機械部品メーカーも、後継者不在からトウキョウファームと2023年2月に契約しています。1億円規模の負債を含めて譲渡価格はわずか430円、保証解除は「最大限努力」とされたが実現せず、買収直後に資金を親会社口座に送金させられ資金難に陥りました。給与や仕入れ資金が確保できず、わずか半年で事業は破綻しています。前社長は退職金不払いと保証解除不履行を理由に約1億800万円の損害賠償を求めトウキョウファームを提訴しました。東京地裁は2024年1月、同社と代表に連帯して支払いを命じたが、履行はされていない。

トウキョウファーム代表の鷹野氏は「資金はアフリカにあり、国内に移せば返済可能」と主張し、秋田の寝具店への返金も含め債権者十数社に年内一括返済すると説明しています。ただ過去にも支払い延期を繰り返し、売り手側との認識齟齬や契約文言の不備が複数案件でトラブルを招いたことは認めました。保証解除を約束したことはないとしつつも、「説明不足や契約内容の不一致は自分の落ち度」と述べ、契約書作成は仲介業者任せだったと振り返っています。

トウキョウファームは2016年設立で約30件の事業を買収してきたが、デューデリジェンスは行わず赤字企業も取得していました。黒字化後の収益モデルを描いていましたが、現実はトラブルが先行しています。鷹野氏は「仕組み自体は正しい」とし、問題解決後は2025年からM&Aを再開し、将来は傘下企業を統合して上場を目指す考えを示しています。

その他の事例

ルシアンやトウキョウファームのほかにも、中小企業のM&Aにおいて売り手企業とトラブルを起こす買い手企業として大きな話題になっている会社は存在します。

例えば、愛知県の運送会社であるジョイワーク株式会社は、県内外の製麺会社や梱包会社などを短期間でM&Aにより買収し、そのほとんどのケースで経営者保証変更の不履行といったトラブルを引き起こしました。

また、日本の技術やサービスを海外発信する目的で2017年に設立され、M&Aで急速に事業拡大したANew Holdingsは、2022年には月1社、2023年は10日に1社のペースでM&Aにより企業を買収し、20社超を傘下に収めました。しかし多くの企業では代表交代後も元社長が経営を継続し、連帯保証の変更や経営指導は行われませんでした。さらに、資金不足の子会社に対し経営指導料や借入名目で1000万円超の資金移動を行わせた結果、グループ全体の資金繰りが悪化し、2024年2月に破産しています。傘下企業も連鎖倒産の危機に直面しましたが、元社長が事業継続を望む企業は株式譲渡で存続しています。一方、債務超過や支払い不能の企業は約半数が破産に至りました。

さらに、N社は2017年設立後、中小製造業の再編を掲げてM&Aを加速し、2023年時点で傘下は32社に拡大しました。N社の代表は資金難の中、買収企業の資金を吸い上げてM&A仲介手数料や次の買収資金に充当するM&Aを繰り返し、一部子会社では給与や仕入れ、社会保険料の支払いが滞る事態も発生しました。M&Aによる買収企業の経営指導はほぼ行わず、高級車やタワーマンション購入にも資金を流用したとの疑惑が持たれています。

M&Aにおける悪質な買い手を見極める方法

M&Aにおいて悪質な買い手と契約してしまうと、経営者や従業員、取引先に深刻な被害が及びます。そのため、交渉前から相手の信頼性を多角的に検証することが不可欠です。以下の7つの方法を押さえておくことで、リスクを大幅に低減できます。

M&Aに関する基本知識とリスク管理を体系的に習得する

M&Aは法務・財務・税務・労務など多くの専門分野が絡む高度な取引です。知識が不足していると、悪質な買い手が提示する条件の危険性や、契約条項に潜むリスクに気づけないまま話が進んでしまいます。一方、基本的なM&Aの流れや契約の要点を理解していれば、相手の説明が不自然な場合や、条件が不利に傾いている場面で適切に対応できます。

体系的に知識を習得する方法には、次のような選択肢があります。

  • 公的機関のセミナー:中小企業庁や商工会議所が開催するM&A・事業承継講座
  • 専門書・業界誌:M&Aの基本から事例まで網羅した書籍や専門誌      自分のペースで体系的に学習可能
  • オンライン講座:M&A仲介会社や金融機関の配信講座           隙間時間を活用し、最新の事例を学べる

複数の方法を組み合わせれば、M&Aの全体像と悪質な買い手の典型的なパターンを理解しやすくなります。

契約条項や支払いスケジュールを細部まで確認する

M&Aにおける悪質な買い手を避けるには、契約条項や支払いスケジュールを細部まで確認し、あいまいな条件を残さないことが不可欠です。支払い方法や期日、違約時の対応が明確になっていない契約は、買い手にとって都合よく解釈され、不履行の温床となります。

契約書の確認では、主に以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 支払い期日:日付を明記し、休日の場合の取り扱いも規定
  • 支払い方法:現金・振込・分割などの方法を明確化(分割の場合は各回の金額と期日を明記)
  • 遅延時の対応:遅延利率や強制執行条項を設定
  • 保証・担保:保証金や銀行保証を契約条件に含める
  • 条項の削除・変更:口約束や後日協議条項はリスク大

弁護士による契約書レビューを行い、期日・金額・方法・違約対応を細部まで詰めておくことで、不履行リスクを大幅に減らせます。

過剰な広告や誘導型の営業手法を用いていないかを調査する

悪質な買い手の中には、過剰な広告や強引な営業トークを使って、自社の信頼性や実績を誇張し、売り手を油断させるケースがあります。例えば、「過去○件以上の成功事例」「大手企業からの信頼多数」などのキャッチコピーを掲げても、実際には契約不履行や事業清算が多い場合があります。

また、面談や電話で契約を急がせる「今すぐ決断しないと損をする」といった圧力型の営業は、冷静な判断を妨げる典型的な手口です。

相手の宣伝や営業手法を事前に調査することで、こうしたM&Aにおける悪質な買い手を見抜ける可能性が高まります。

取引を急がせる姿勢や不自然な条件提示に警戒する

M&A交渉で、買い手が異常なスピードで契約成立を迫ったり、相場から大きく外れた条件を提示してきた場合は要注意です。こうした行動は、冷静な検討を妨げ、不利な契約や将来のトラブルに誘導する悪質な買い手の典型的なサインです。

悪質な買い手は、売り手に十分な調査や比較検討をさせず、短期間で契約をまとめることで、自らに有利な条件を押し通そうとします。また、極端に高額な譲渡対価や、支払い時期・方法が不自然な条件を提示し、売り手を引き込んだ後に条件を変更したり不履行にするケースも少なくありません。冷静な判断時間を奪われれば、こうしたリスクを見抜くのは困難になります。

逆デューデリジェンスを行い、詐欺の兆候を早期に把握する

悪質な買い手を避けるためには、売り手側が主体的に買い手を調査する「逆デューデリジェンス」が不可欠です。逆デューデリジェンスにより、相手の財務状況や経営姿勢、過去の取引履歴から、詐欺や不履行の兆候を早期に察知できます。

表面的な条件だけで判断せず、逆デューデリジェンスを通じて財務・評判・経歴などを多方面から検証し、少しでも不自然な点があれば契約条件の見直しや取引中止を検討すべきです。売り手が主体的に情報を集める姿勢こそ、安全なM&Aの前提条件です。

M&A仲介会社やアドバイザーの信頼性と実績を徹底的に確認する

M&Aにおける悪質な買い手を避ける近道は、まず味方となるM&A仲介会社やアドバイザーの質を見極めることです。M&Aの担当者と組織の信頼性・実績・利益相反管理を事前に精査すれば、不利な相手や危険な条件へ誘導されるリスクを大きく下げられます。

M&Aは情報の非対称性が大きく、売り手はM&A仲介会社やアドバイザーの判断や設計に依存しがちです。ところが、手数料体系や両手取引の運用次第では、M&Aにおける売り手の最善利益とアドバイザーの利益がズレる場面が生じます。信頼できるM&A仲介会社やアドバイザーを選び、契約の段階で役割と報酬の整合性を整えることが、悪質な買い手のフィルタリングにつながります。

実績の数ではなく質と、利益相反管理・資金裏付け確認・情報管理の運用実態を資料と契約条項で具体的に押さえてください。ここを徹底すれば、M&Aにおける悪質な買い手を初期段階で振るい落とし、安心できる条件での成約に近づけます。

経験豊富な専門家から適切な助言を受ける

悪質な買い手を回避するには、M&Aの実務経験が豊富な弁護士から助言を受けることが極めて有効です。特に契約条件や法的リスクの見極めは専門知識が不可欠であり、弁護士の関与によって潜在的な危険を早期に発見できます。

M&A契約は高額かつ複雑で、法務・財務・税務など幅広い知識が必要です。悪質な買い手は、契約書の曖昧な条項や法的な抜け穴を利用して不履行や条件変更を行うことがあります。M&A経験が豊富な弁護士であれば、契約交渉やデューデリジェンスの段階でこれらのリスクを特定し、売り手が不利益を被らないよう条項を整備します。また、相手が提示する条件の妥当性や実現可能性を第三者視点で検証できます。

M&A経験豊富な弁護士をパートナーとして迎え、契約内容の精査や相手の信頼性確認を行うことで、安全で納得感のある取引が可能になります。

まとめ

M&Aにおける悪質な買い手は、事前の調査や契約条件の精査によって未然に防ぐことが可能です。重要なのは、買い手の表面的な条件や実績だけで判断せず、信頼性を多角的に検証する姿勢です。

時間と手間を惜しまず、複数の候補比較や専門家の助言を受けながら進めることで、安心して事業を託せるM&A相手と巡り合う確率を高められます。M&Aは企業の未来を左右する重大な決断であり、安全性を確保することが経営者の最も重要な責務です。

参照文献:ダイヤモンド・オンライン「M&A仲介市場の信用を地に落とした「ルシアン事件」ざっくり解説!現金吸い上げ、経営者保証未解除…」2025年7月7日

朝日新聞「第1回M&A仲介で事業承継、老舗の寝具店は4カ月半で資金が尽きた」2024年7月9日

朝日新聞「第2回国委託のM&A仲介「金融機関には内緒」5カ月で倒産した部品工場」2024年7月10日

朝日新聞「第3回M&A後に倒産、「借金1億円」背負った創業家の逆襲 訴訟の行方は」2024年7月11日

朝日新聞「第4回M&Aトラブル続出、「悪党に見えると思うので」語り始めた会社代表」2024年7月12日

東洋経済オンライン「社長が激白、M&A総研はいかに生まれ変われるか」2024年10月2日

朝日新聞「M&A仲介で事業承継、老舗の映像制作会社が8カ月で迎えた倒産危機」2024年9月30日

朝日新聞「「カネ目当てのM&A」批判でトップ解任 緊迫の取締役会動画を入手」2024年10月7日