M&A売却を中止したいオーナー様へ

M&A売却を中止したいオーナー様へ

近時、①M&A会社売却手続きを進めているが取り止めたい、②M&A契約書を締結してしまったが中止したい、③M&A仲介会社が話を進めているが取り止めたい、というご相談をよく受けます。

売主の会社オーナー様のM&Aに関するご不満はいろいろあるかと思います。

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最も多いのが譲渡価格のご不満です。

買主候補企業が交渉上手だったのでしょう、売主の希望はほとんど受け入れてもらえなかった、売主の考えている金額とは全く異なり安い金額に決まってしまったという理由が最も多いです。

事前に公認会計士・税理士に企業価値評価をしてもらっていたとしてもM&AアドバイザーやM&A仲介会社の「交渉能力」の問題などで想定通りの譲渡価格に落ち着かないこともままあります。また、買主候補企業ばかりがM&Aのプロフェッショナルを揃えて交渉に臨んできたため言い返す間もなく決まってしまったということもあります。

次に多いのがデューデリジェンス(DD)でいろいろ詮索されるのに辟易したとの不満です。

デューデリジェンス(DD)は経営者様にとっては経営者人生で1度きりまたはあってもそれほど多くあるものではありません。また、デューデリジェンス(DD)の過程で聞かれる内容は会社の問題点ばかりであり、それまで会社を経営してこられたオーナー経営者の問題点を責めるものばかりです。またそこで発見された問題点があるから譲渡価格を減額するということとなり、正直に説明してバカを見たという感覚に陥ることも確かです。

また多勢に無勢で不利な条件になっていることに対する不満もあります。

売主の会社オーナー様はM&Aの専門家を指名せずに自分自身で協議交渉しているのに、買主候補企業はM&Aの専門家を何名も連れて来て、いろいろ調べたり、いろいろ要求してきたりしており、売主のオーナー経営者様としては、いろいろな条件について考える暇もないということとなります。したがって、交渉も十分できませんし、いろいろ問題点の指摘をされるものの、それが本当かどうかも分からない、それを原因にM&Aの条件が悪くなっているが、本当にそれが原因で悪くなることが合理的なのか分からない。

最初に言ったことと違うとか最初そんなこと言ってなかったという不満も多いです。

また、M&Aの手続きを進めてゆく過程で、買主候補企業からいろいろ注文が出て来るものと思います。M&A手続きの過程で合理的な注文であればやむを得ないのですが、ややイレギュラーな注文だったりした場合、売主のオーナー経営者様としては、最初そんなこと言っていなかったとか、最初に言っていたことと違うとか、そんなことをするくらいなら売らないとか、いろいろな不満が出てきます。

M&A会社売却の中止方法

では、一旦契約を締結してしまったM&Aを中止することはできるのでしょうか。

これに対する回答としては、契約書に基づき中止することができると規定されていない場合は、中止することはできませんというのが正解です。やはり契約書ですから、署名押印する際にはそれなりに慎重に対応して頂く必要があります。慎重に対応した契約書であるからこそ、その契約書に違反してまで、M&Aを中止することはできません。もし、M&Aを中止した場合は、債務不履行として損が賠償請求がなされることとなります。

ただ、その損害賠償請求される額ですが、契約書で得意規定されていない限り、通常、逸失利益まで認められることは無く、M&A手続きにかかった費用と考えられますので、それほど大きな金額になるとは考えにくいかと思います。

そうですので、正直なところ、それくらいの金額さえ覚悟すれば、いつでもM&A会社売却を中止することはできるのです。

また損害賠償請求くらいであれば、弁護士の交渉力により、制止することは必ずしも難しくはありません。

買主候補企業から見ると、このように損害賠償請求することができる金額は多額になりませんので、近時では、契約書の中に、具体的な損害賠償額を規定することがありますので、留意が必要です。

まだ契約していないなら自由にM&Aを取り止めることはできるのでしょうか。

反対に、まだM&Aの契約を締結していないのなら、自由にM&Aを取り止めることはでるのが原則です。それはM&Aの契約を締結する前日でも可能ですし、M&Aの契約をする当日でも可能です。そこまで買主候補企業やM&Aアドバイザーが頑張ってくれたのだからと言ってM&Aを実行する必要はありません。

M&Aは人生で最大の取引ですので、釈然としないまま取引を実行するべきではありません。納得できない条件については、納得できるまで交渉し、納得のいかない相手方の態度には毅然とした態度で接して下さい。

M&A会社売却を中途半端なところで中止しないために

しかし、M&A会社売却の中止には非常にエネルギーがかかります。弁護士法人M&A総合法律事務所でも、M&A取引の中止の依頼を受け相手方と折衝することも少なくはありません。

M&A会社売却を中止することにならないのが最も良いのです。この点、M&A会社売却を中止する理由というのは上記のような理由が多いことからも分かりますが、やはり、相手方と納得のいく交渉をしっかり行うことが最も重要かと思われます。相手方とのコミュニケーションです。

また、対象会社の状況をあらかじめよく理解してから、M&A手続きに臨まないと、相手方がデューデリジェンス(DD)によって対象会社の問題点をいろいろ発見してきて、M&A価格のディスカウントや不利な契約条件を盛り込むことを要求してきても、それが問題なのか問題ではないのか、どの程度問題なのか、そこまで取り立てて言うほどの問題なのかもわかりません。

また、相手方が、M&A価格のディスカウントを要求してきたとしても、それが合理的なディスカウントなのか、過剰なディスカウントなのか、単に買い叩かれているだけなのかすらも分かりません。

すなわち、予め対象会社の企業価値評価を行っておく必要があるというのと、M&Aや法律の専門家をアドバイザーに付けて随時合理的な要求なのか不合理な要求なのか判断できる状態にしておく必要があるのです。

小括

弁護士法人M&A総合法律事務所では、企業価値評価やM&Aアドバイザリー業務以外にも、法律の専門家の観点から、M&A会社売却をどのように進めればよいのか、どのくらいのタイミングで行うべきか、M&A会社売却の中止の交渉などについても、ご相談に応じております。

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