M&A失敗を防ぐ注意点20選|買い手・売り手別の対策をわかりやすく解説

「M&Aを成功に導くためには、買い手・売り手双方が陥りやすい失敗パターンを事前に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。
本記事では、M&A実務において頻出する失敗例を分析し、それらを回避するための具体的な20の注意点を「買い手」と「売り手」に分けて解説します。M&Aの現場で起こりがちな失敗例も併せて紹介しますので、貴社のM&Aリスクを最小化するために活用してください。
- M&Aにおける買い手側の成功とは
- M&Aにおける売り手側の成功とは
- M&Aにおける買い手側の注意点11選
- 【注意点1】デューデリジェンス(DD)を徹底し、隠れたリスクを見抜く
- 【注意点2】客観的な企業価値評価(バリュエーション)に基づき交渉する
- 【注意点3】M&Aの目的を明確にし、経営戦略の中に位置づける
- 【注意点4】M&Aのスキーム(手法)を慎重に検討する
- 【注意点5】安易に専門分野外のM&Aに手を出さない
- 【注意点6】従業員の離職リスクを防ぐための対策を講じる
- 【注意点7】PMI(買収後の統合プロセス)を計画的に進める
- 【注意点8】基本合意書(LOI)の役割と法的拘束力を理解する
- 【注意点9】契約書の内容を隅々まで確認し、表明保証を最大限活用する
- 【注意点10】信頼できるM&Aアドバイザーを選ぶだけでなく、主体的な判断を常に意識する
- 【注意点11】M&Aに関する情報を徹底的に管理する
- M&Aにおける売り手側の注意点9選
- M&Aで買い手側によくある失敗例6選
- M&Aで売り手側によくある失敗例5選
- まとめ
M&Aにおける買い手側の成功とは
M&Aの買い手にとって、企業を買収するだけでは成功とはいえません。投下した資金(買収価格)を上回るシナジー(相乗効果)を生み出し、結果として企業グループ全体の価値が向上した場合に、はじめて成功と呼べるのです。
したがって、期待したシナジーが得られたかどうかの評価は、短期的な視点では難しく、中長期的な観点から判断します。
M&Aにおける売り手側の成功とは
売り手にとってのM&Aは、自社の経営理念や文化を尊重してくれる理想の相手に、希望する価格や条件で会社を売却できたときに成功となります。希望より著しく安い価格での売却は、金銭的な目的が達成されないため失敗と評価されます。
ただ、創業者や経営者にとって会社は我が子同然であり、価格だけでなく、従業員の雇用維持や事業の継続といった非金銭的な条件も成功の重要な要素です。
M&Aにおける買い手側の注意点11選
買い手にとってM&Aは大きな投資であり、成功すれば多大な成果につながる反面、安易な判断は多額の損失に繋がりかねません。
そこでここからは、買い手側が陥りがちな失敗を回避するための11の注意点を解説します。
【注意点1】デューデリジェンス(DD)を徹底し、隠れたリスクを見抜く
デューデリジェンス(DD)とは、買収対象企業に対して行う詳細な事前調査のことです。財務・法務・税務・事業など多角的な観点から、開示された情報に嘘や間違いがないか、どのようなリスクが潜んでいるかを徹底的に洗い出します。
DDには高額な費用がかかるため、「できることなら最小限に抑えたい」という誘惑に駆られることもありますが、それは危険な考え方です。DDが不十分だと、簿外債務や訴訟リスクといった重大な問題を見落とし、結果的に買収価格をはるかに上回る損失を被る恐れがあるからです。
DDでリスクを事前に発見できれば、価格交渉を有利に進められます。最悪の場合は取引を中止する判断も可能でしょう。費用を惜しまず、徹底したDDを行うことがM&Aを成功させる条件です。
【注意点2】客観的な企業価値評価(バリュエーション)に基づき交渉する
「他の買い手に取られてしまうかもしれない」という焦りから、調査や評価を疎かにして高値で契約してしまうケースは後を絶ちません。これを防ぐには、DDの結果をふまえ、客観的な企業価値評価(バリュエーション)を行うことが不可欠です。
主な評価手法には、将来のキャッシュフローを基にする「DCF法」、類似上場企業の株価を参考にする「類似会社比較法」、会社の純資産を基にする「純資産法」などがあります。
これらの手法を用いて冷静に価値を算出し、自社が支払える上限額を定めた上で、焦らず交渉に臨むべきです。
【注意点3】M&Aの目的を明確にし、経営戦略の中に位置づける
なぜM&Aを行うのか、それによって何を達成したいのかという目的を、交渉開始前に徹底して明確にしておきましょう。
目的が具体的であれば、交渉の過程で判断に迷った際の指針となり、目先の利益に惑わされずに済みます。
M&A後の事業計画や運営方法まで具体的に策定し、成功のゴールを設定した上で臨むことが重要です。
【注意点4】M&Aのスキーム(手法)を慎重に検討する
M&Aの目的を達成するためには、どのスキーム(手法)を用いるかが非常に重要です。代表的な手法には「株式譲渡」や「事業譲渡」がありますが、それぞれメリット・デメリットが異なることに注意しましょう。
例えば、会社全体を包括的に承継する「株式譲渡」は手続きが比較的簡便ですが、簿外債務などの潜在的リスクも引き継ぐ可能性があります。
一方、「事業譲渡」は必要な資産・事業だけを選んで買収できますが、許認可の再取得や従業員の再契約など、手続きが煩雑になる側面があります。
自社の目的やDDで判明したリスクを踏まえ、弁護士や会計士などの専門家と相談しながら最適なスキームを選択しましょう。
【注意点5】安易に専門分野外のM&Aに手を出さない
全くノウハウのない事業を運営するのは極めて困難です。「新規事業への進出」という聞こえの良い目的だけで安易に異業種のM&Aに踏み切ると、経営が立ち行かなくなるリスクが非常に高くなります。
やむをえず専門分野外のM&Aを行う場合は、「明確なシナジー効果が見込めるか」「買収後も旧経営陣に協力を仰げるか」など、成功への道筋を具体的に描ける場合に限定すべきです。
【注意点6】従業員の離職リスクを防ぐための対策を講じる
従業員の不安を払拭するため、交渉段階から売り手と協力し、M&A後の従業員の処遇(給与、役職、労働条件など)を丁寧に協議し、決定しておくことが重要です。
キーパーソンについては、一定期間の役務提供を契約に盛り込む「キーマン条項」などの対策も有効でしょう。
買収は「事業」だけでなく、そこで働く「人」も引き継ぐという意識を持つことが不可欠です。
【注意点7】PMI(買収後の統合プロセス)を計画的に進める
PMI(Post Merger Integration)は、M&Aの成否を分ける最も重要なプロセスです。経営理念、人事制度、ITシステム、業務フロー、そして企業文化といった、異なる2つの組織を1つに融合させていく作業を指します。
PMIを軽視し、無理やり統合しようとすると、従業員の混乱や反発を招き、大量離職や業務トラブルの原因になりかねません。
買収交渉と並行してPMIの計画(ランディング・プラン)を策定し、買収後は従業員と丁寧にコミュニケーションを取りながら、理解と協力を得て進める必要があります。
【注意点8】基本合意書(LOI)の役割と法的拘束力を理解する
本格的なDDに入る前に、買い手と売り手との間で「基本合意書(LOI/MOU)」を締結するのが一般的です。基本合意書には、現時点での買収価格の目安、M&Aのスケジュール、独占交渉権の有無などを記載します。
多くの場合、基本合意書の条項には法的拘束力を持たせませんが、「独占交渉権」や「秘密保持義務」など一部の条項には法的拘束力を持たせることがあります。どの条項に法的拘束力があり、違反した場合にどのようなペナルティがあるのかを正確に理解し、安易に署名しないよう注意が必要です。
【注意点9】契約書の内容を隅々まで確認し、表明保証を最大限活用する
M&Aでは、最終契約書に書かれていることが全てです。弁護士などの専門家を交え、自社に不利益な条項や曖昧な表現がないか、隅々まで確認しましょう。
特に重要なのが「表明保証(レプワラ)」条項です。これは、売り手が「開示した財務情報や契約内容は真実かつ正確です」と表明し、保証するものです。万が一、表明保証された内容に虚偽があり損害が発生した場合、買い手はこの条項を根拠に損害賠償を請求できます。
自社を守るために、どのような事項を表明保証してもらうかを慎重に検討し、契約書に盛り込むことが極めて重要です。
【注意点10】信頼できるM&Aアドバイザーを選ぶだけでなく、主体的な判断を常に意識する
アドバイザーを選ぶ際は、実績や専門性、レスポンスの速さ、リスクについても包み隠さず話してくれる誠実さなどを慎重に見極める必要があります。
リスク面で特に注意すべきは「利益相反」の問題です。売り手と買い手の双方に同じアドバイザーがつく場合、構造的に買い手側が優先されやすいと言われています。
最終的な経営判断を下すのはあくまで自社であるという意識も重要です。アドバイザーの意見は参考にしつつも、主体的に取引を進めましょう。
【注意点11】M&Aに関する情報を徹底的に管理する
M&Aを成立させるためには、M&Aの検討を漏洩しないようにすることが重要です。
仮にM&Aを検討していることが漏れてしまうと、買収を検討している企業の従業員が「業績が悪化しているのではないか」などのネガティブイメージを持ってしまい、離職してしまう可能性があるからです。
従業員が離職してしまうと、M&Aが成立したあとの経営に支障をきたし、対象会社の企業価値が毀損してしまい、M&Aが失敗してしまうリスクがあります。
情報漏洩のリスクを最小限にするためには、M&Aの検討に関わるメンバーは必要最小限に絞り、関係者全員と秘密保持契約(NDA)を締結することが不可欠です。
社内外での会話にも細心の注意を払い、M&Aが正式に決定・公表されるまで、情報を厳重に管理しましょう。
M&Aにおける売り手側の注意点9選
M&Aに成功するためには、売り手側も多くの注意点を理解しておく必要があります。
会社の売却は、経営者にとって人生の大きな決断です。安易な交渉は「安く買い叩かれた」「こんなはずではなかった」という後悔に繋がります。
ここでは、売り手側がM&Aに成功するための9つの注意点について解説するので、内容をよく理解しましょう。
【注意点1】最適なタイミングを見極めて売却準備を進める
M&Aによる売却を成功させるには、市場の動向や自社の経営状況を分析し、タイミングを的確に見極めることが重要です。
例えば、自社の業績が好調で業界全体が成長している時期は、買い手からの評価が高まり、高値での売却が期待できるでしょう。
経営者の高齢化を理由に売却を検討するようなケースでは、業績が悪化してからでは買い手が見つかりにくくなるため、早めに準備を始めることが肝心です。
市場の動向や自社の状況を客観的に把握し、企業価値を最大化できるタイミングを逃さないようにしましょう。
【注意点2】複数の買い手候補を比較し、競争環境を作る
M&Aの成功確率を高めるには、必ず複数の買い手候補を比較検討すべきです。1社としか交渉しない「相対方式」では、交渉の主導権を買い手に握られ、足元を見られがちだからです。
複数の候補を競わせる「入札方式」に持ち込むことで、価格競争が働き、より高い売却価格と良い条件(従業員の雇用維持など)を引き出せる可能性が格段に高まります。
複数の買い手候補と交渉する過程は、どうしても手間と時間がかかりますが、自社の価値を最大化するために不可欠なプロセスだと考えてください。
【注意点3】独占交渉権の付与は慎重に判断する
交渉がある程度進むと、買い手候補から「独占交渉権」を求められることが一般的です。これを付与すると、売り手は一定期間、他の候補と交渉できなくなります。
買い手にとっては、多額の費用をかけるDDを安心して進められるメリットがありますが、売り手にとっては、より良い条件を提示する可能性のあった他の候補との交渉機会を失うリスクがあります。
独占交渉権を付与する際は、期間を必要最小限に設定したり、価格交渉の目線が大きくずれた場合には解消できる条項を盛り込んだりするなど、自社が不利にならないよう慎重に交渉しましょう。
【注意点4】売却価格の妥当性を客観的かつ論理的に説明する
買い手からの値下げ要求に対し、ただ感情的に反発するだけでは交渉になりません。
自社の強み(技術力、顧客基盤、ブランド価値など)を客観的なデータで示し、「なぜこの価格が妥当なのか」を論理的に説明できるように準備しておくことが重要です。
まず、専門家が用いる企業価値評価(バリュエーション)の手法と結果を理解しておきましょう。その上で、自社の持つ無形の強みが将来どのようにキャッシュフローに貢献するのかを具体的なシナリオとして提示する必要があります。
自社の無形の強みとは、例えば「独自の技術力」「安定した顧客基盤」「ブランド価値」「優秀な人材」といった要素です。
「この特許技術があるから、今後5年間で市場シェアをX%拡大できる」「この顧客リストは解約率が低く、クロスセルの機会がY億円見込める」といったように、定性的な強みを定量的な価値に結びつけて説明することで、買い手の納得感は大きく高まります。
【注意点5】自社の利益の最大化に貢献する専門家でチームを組む
売り手は、自社の利益を最大化するために交渉してくれるFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を雇うことを強く推奨します。仲介業者とは異なり、FAは完全に売り手の代理人として動いてくれるからです。
また、顧問税理士や弁護士、M&A経験のある経営者など、利害関係のない第三者に相談できる体制を整えておくことも極めて重要です。実績が豊富で信頼できる、自社のための専門家チームを構築しましょう。
【注意点6】セラーズデューデリジェンスで交渉を有利に進める
買い手から要求されるDDに対応するだけでなく、売り手自らが専門家に依頼して事前に自社の調査を行う「セラーズデューデリジェンス」も有効な手段です。
事前に問題点を洗い出し、可能な範囲で解決しておくことで、買い手からの指摘による大幅な価格引き下げを防ぐことができます。
また、整理された情報を提示することで買い手の信頼を得られ、交渉をスムーズに進める効果も期待できるでしょう。
【注意点7】ネガティブな情報も含め、正確かつ誠実に情報開示を行う
買い手が最も恐れるのは、リスクそのものよりも「隠されたリスク」です。したがってM&Aを成功に導くためには、売り手による誠実な情報開示が欠かせません。
たとえ不利な情報であっても正直に開示した上で交渉するほうが、結果的にトラブルを回避でき、買い手との信頼関係を築くことができます。
【注意点8】M&Aに向けた事前準備(株主整理など)を怠らない
M&Aを検討し始めたら、速やかに事前準備に着手すべきです。
具体的には、株主名簿を整理して事前に株主の同意を得ておくこと、M&Aの目的を社内で固めておくこと、余裕を持ったスケジュールを立てることなどが挙げられます。
【注意点9】契約書を隅々まで確認し、自衛策を盛り込む
契約書にサインする前に、代金の支払期日や、支払いが遅延・不履行になった場合のペナルティ(遅延損害金、契約解除条項など)が明確に記載されているかを必ず確認しましょう。
買い手が提示する契約書案は、買い手に有利な内容になっているのが通常です。必ず自社の弁護士にレビューを依頼し、不利な条件がないか徹底的にチェックしましょう。
もし自社に不利な条件があった場合は、どのような自衛策が考えられるか、専門家の助言をもらいながら慎重に検討してください。
M&Aで買い手側によくある失敗例6選
注意点以外にも、M&Aの失敗例を把握することで成功の可能性を高くすることが重要になります。失敗例を把握しておけば事前に対策を立てられるからです。
ここでは買い手側によくある失敗例を6つ紹介しますのでチェックしましょう。
【失敗例1】割高な買収で投資回収できず…「高値掴み」の罠
M&Aで最も多い失敗の一つが、対象会社の企業価値を正しく見抜けず、不当に高い価格で買収してしまう「高値掴み」です。
高値掴みの罠にはまると、買収後に想定していたシナジーが生まれにくくなります。投下資本を回収できないばかりか、買収企業の企業価値全体を毀損してしまう事態に陥るのです。
【失敗例2】M&Aが目的化し、シナジーが生まれず本業に悪影響
M&Aは経営戦略を達成するための「手段」です。M&Aの成立自体が「目的」になってしまうと、その後のビジョンが描けず、期待したシナジー効果を得られません。
結果として、過大な買収金の支払いだけが残り、グループ全体の価値を損なうことになります。
【失敗例3】買収後に中核人材が流出し、事業が機能不全に
M&Aの成立後、従業員が大量に離職してしまい、事業運営が困難になる失敗例も少なくありません。
特に中小企業では、事業が特定のエース人材に依存しているケースが多く、その人物が退職すると、想定していたシナジーが全く発揮できなくなってしまいます。
【失敗例4】契約書に不備があり、想定外のトラブルに発展
「口頭で合意したはずだ」「そんな話は聞いていない」といった契約後のトラブルは、契約書の確認不足が原因です。
例えば、譲渡対象の資産範囲が曖昧だったために不動産の所有権で揉めたり、期待していた表明保証(後述)が記載されておらず、問題が発覚しても損害賠償請求できなかったりするケースがあります。
【失敗例5】アドバイザーの言いなりで不利な条件を受け入れてしまった
M&Aには専門知識が不可欠なため、多くの場合M&Aアドバイザーに依頼します。
しかし、アドバイザーの言うことを鵜呑みにするのは危険です。アドバイザーの中には、自社の利益(手数料)を優先し、買い手にリスクのある取引を推し進める悪質な業者も稀に存在するからです。
【失敗例6】情報漏洩で買収対象の価値が下がり、交渉が破談に
M&Aを検討しているという機密情報が外部に漏れると、買収対象企業の従業員や取引先に「経営が悪化しているのでは」といった動揺が広がります。
優秀な人材が離職したり、重要な取引が停止したりすれば、企業価値そのものが毀損され、M&Aの前提が崩れてしまいますので注意しましょう。
M&Aで売り手側によくある失敗例5選
売り手側もM&Aでよくある失敗を理解しておくことで、対策を講じることができ、失敗するリスクを軽減できます。
ここでは、売り手側のよくある失敗例を5つ紹介していくので、M&Aを行う際の参考にしてみてください。
【失敗例1】言い値で安く売却してしまい後悔した
「早く会社を手放したい」「交渉が面倒」といった理由から、買い手の要求を安易に受け入れ、不当に安い価格で会社を売却してしまうケースです。
創業から育ててきた会社の価値を正当に評価されず、後から大きな後悔が残ります。
【失敗例2】アドバイザーに任せきりにした結果、不利な条件で契約してしまった
M&Aの知識がないからと、アドバイザーに全てを任せてしまう事例は、買い手側と同様に売り手側にも少なくありません。
しかし前述の通り、アドバイザー、特に売り手と買い手の双方代理を務める仲介業者は、たとえ「中立」を謳っていても、買い手側に有利な交渉を進める「利益相反」のリスクを構造的に抱えています。
【失敗例3】契約後に表明保証違反を問われ、損害賠償請求されてしまった
買い手によく見せたい一心で、自社に不都合な情報(潜在的な負債や訴訟リスクなど)を意図的に隠したり曖昧にしたりすることは「表明保証違反」になるので絶対に避けてください。
もし契約後に表明保証違反を問われると、買い手から高額な損害賠償を請求される可能性があります。
【失敗例4】いざという時に準備不足で、絶好の買い手を逃してしまった
絶好の買い手候補が現れても、売り手側の準備が整っていなければ、M&Aの好機を逃してしまいます。
例えば、株主が親族などに分散しており、株式譲渡に必要な同意取り付けに時間がかかって破談になるケースや、株主がM&Aを拒否していて50%以上の株を用意できていないケースは典型例です。
【失敗例5】契約内容の確認を怠った結果、代金が支払われなかった
信じがたいことですが、最終契約書を交わしたにもかかわらず、買い手の資金調達失敗などを理由に代金が支払われないというトラブルも存在します。
契約書の確認不足のせいでこのような事態への対抗策が盛り込まれていない場合、泣き寝入りになりかねません。
まとめ
本記事で解説したM&Aの失敗例は、どのような当事者にも起こりうる現実的なリスクです。しかし、これらの失敗は、正しい知識と周到な準備、そして信頼できる専門家のサポートによって、その多くを防ぐことができます。
M&Aは、単なるディール(取引)ではなく、企業の未来を創るための重要な経営戦略です。戦略策定に迷ったときは、M&Aに通じた弁護士等の専門家からアドバイスをもらうようおすすめします。