M&Aに失敗しないための注意点18選!買い手と売り手の視点でわかりやすく解説
この記事では、M&Aの注意点を買い手側と売り手側それぞれの視点から解説していきます。
M&Aの成功と失敗とは
M&Aによる企業の買収や売却は、買い手側と売り手側で、成功または失敗と言えるケースが異なるため、それぞれの成功と失敗について解説します。
買い手側の成功と失敗
M&Aにおける買い手側の成功とは、買収した企業が経営戦略において想定した効果がえられた場合を指します。
具体的には、M&Aにより企業グループ全体の企業価値が向上できていることです。
仮に企業価値が向上する分よりもM&A買収価格が低い場合は、M&Aに成功したと言えます。
一方で、専門外のM&Aを行うと、買収した会社でシナジーを生み出すことができない場合は、M&Aの代金という形で企業価値が流出し、その企業価値のほうが、買収した企業の企業価値よりも大きくなってしまうと、企業全体の企業価値が減少してしまうため、失敗です。
ちなみに、短期では、企業価値が向上したのかがわからないケースもあるため、M&Aが成功かどうかは長期的な目線で考えていくことが必要です。
売り手側の成功と失敗
売り手側の「成功」とは、経営理念などが合致する理想の相手に、希望するM&A価格で会社が売れることです。
例えば、希望するM&A価格よりも安いM&A価格で売却してしまうと、売り手側はM&Aに失敗と言えます。
これは、売り手側がM&Aを受ける重要な目的のひとつが金銭であるためです。
そのため、当初の想定よりもM&A価格が安くなると、目的が達成したとは言えなくなってしまいます。
M&Aにおける買い手側の10個の注意点
M&Aにおいて買い手側が成功するためには、さまざまな注意点があります。
例えば、M&Aの目的を明確にするなどです。
これらの注意点を理解しておかないと、M&Aに失敗してしまう可能性が高くなってしまいます。
買い手側がM&Aを成功するために注意点を10個解説するので、内容をよく理解するようにしましょう。
専門分野のM&Aを行う
専門分野以外の事業や会社のM&Aは、可能な限り行わないことをおすすめします。
専門分野以外の企業や事業を運営するのは、難しいためです。
ノウハウ不足により、何が正しいのかを判断出来ず、失敗に至る可能性が高くなります。
また、シナジー効果が見込めないと、M&A代金よりも企業価値が低い会社を買収することになり、買主企業全体の価値が毀損してしまい、失敗になる可能性が高いです。
基本的には、専門分野以外の事業や会社をM&Aをすることは避けるほうが賢明です。
ただし、専門分野以外の企業や事業でも、「M&Aによるシナジー効果が見込める」など、経営戦略的にM&A行うケースは、専門分野以外のM&Aでも問題ありません。
とはいえ、専門分野以外のM&Aが難しいことに変わりはないため、買収後の経営方針や運営方法、事業計画などを具体的にしたうえで慎重に買収するかどうかを検討するようにしましょう。
M&Aの目的を明確にする
M&Aは経営戦略の一部であり、M&A自体は目的ではなく手段です。
そのため、M&Aが成立したあとの目的を明確にしておくことが必要不可欠になります。
M&Aの成立それ自体を目的としてしまうと、ビジョンがあやふやなままM&Aを行なってしまい、M&A後の経営が上手くいかなかったり、M&Aが期待する成果が得られず、過大なM&A買収金の支払いによって、買主企業全体の企業価値を毀損してしまう事態になりかねません。
このような事態を防ぐためにも、経営戦略上の目的を明確にして、「M&Aの成功」というゴールを設定しておくようにしましょう。
アドバイザーの言いなりにならない
M&Aに成功するためには、M&Aアドバイザーへの相談が必要ですが、アドバイザーの言葉をすべて盲信することは避ける必要があります。
必ずしもアドバイザーが優良で信頼出来るとは限らないためです。
M&Aアドバイザーにはさまざまな会社があり、安易に選んでしまうと、M&A成功後に問題が発覚して、統合が上手くいかない可能性があります。
しかも、利害の対立する当事者双方に対して同じサービスを提供し、その対価として報酬を受け取り、片方を優先する「利益相反のリスク」があるため、売り手側と買い手側が同じM&Aアドバイザーに依頼する際は、注意が必要です。
また、会社によってM&Aアドバイザーに依頼した際の費用にバラつきがあるため、費用対効果を見極めなければなりません。
なお、信頼出来るM&Aアドバイザーを見極める際は、以下のポイントを確認しておく必要があります。
- 実績が豊富であるかをホームページ等で確認する
- 質問に対するレスポンスが迅速である
- リスクについても話してくれる
- 細かいことを聞いても丁寧に回答してくれる
上記のポイントを押さえたうえで、M&Aアドバイザーを選ぶようにしましょう。
徹底的にデューデリジェンス(DD)を行う
デューデリジェンス(DD)とは、譲渡企業に対して行う事前調査のことです。
M&Aを行って企業価値の向上が見込めるのか、どういったリスクがあるのかを調べます。
例えば、デューデリジェンス(DD)を通して売手企業のあらゆる情報を詳細に調査することで、売手側が提供する情報に嘘の記載や間違いがないかを確認することが可能です。
買い手側は高額な金額を支払って、企業を買収するため、事前に価値やリスクを把握しておかなくてはなりません。
仮にデューデリジェンス(DD)が不十分なままM&Aを実行したら、本来の企業価値よりも高いM&A価格でM&Aを行い、買主企業全体の企業価値が毀損してしまうなど、M&Aが失敗する原因になりかねません。
こうような理由から、デューデリジェンス(DD)は徹底的に行うことが、M&Aの成功において非常に重要になります。
適正なM&A価格で買収する
買い手側がM&Aで成功するためには、適正なM&A価格で譲渡企業を買収する必要があります。
シナジーが見込めない企業を高いM&A価格で買収してしまうと、想定以下のシナジー効果しか発揮出来ず、投資に見合った結果が出なかったり、買収企業の企業価値が毀損したりして、M&Aの効果がえられません。
そういった事態を防ぐためにも、上記でも解説した調査を行い価値評価することが重要です。
「他の買収者に取られてしまうかも」と思うのは分かりますが、焦って調査や価値評価をないがしろにしないようにしましょう。
ちなみに、表明保証(レプワラ)違反が発覚した場合、対象会社がM&A価格に見合った企業価値を有していないことを意味しますので、損害が発生していることとなり、買収企業の企業価値に毀損が生じたということとなりますので、そのまま放置せずに表明保証違反に基づく損害賠償請求を行うことを忘れないようにしてください。
従業員の離職を防ぐ
買手側にとって、譲渡企業の従業員がM&A成立後に離職してしまうのは、避けたい事態と言えます。
仮にM&A成立後に多くの従業員が退職してしまうと、買収後の統合や経営が上手くいかない可能性があるためです。
特に、中小企業の場合、中核を担っていた優秀な人材が退職してしまって、想定よりもシナジーが発揮出来なかったという事例もあるため、注意が必要になります。
買収後の従業員の退職を防ぐためには、売り手側と話し合いを行い、M&A成約後の従業員の処遇について適切に取り決めたうえで、従業員側に周知してもらうことが重要です。
統合を計画的に行う
M&A成立後の統合は、M&A成立前から売り手側と協力して計画的に行うことが必要です。
具体的には、どの程度のスピードで統合を進めていくのかなどの基本方針を策定し、それに沿ってクロージング後数ヶ月以内に行うべき統合計画である「ランディング・プランを策定」し、管理面と事業面の見直しを行います。
上記のような計画を立てずに無理やり2社を統合しようとすると、買収先従業員を混乱させてしまい、従業員の離職や、システムやオペレーションの不具合が起こる可能性があるためです。
そういった事態を防ぐためにも、売り手側の協力もえたうえで、経営理念や今後の展望などを従業員に説明して理解してもらう必要があります。
M&Aアドバイザーに依頼する
M&Aアドバイザーとは、M&Aのサポートやコンサルティングをしてくれる方のことです。
契約などのM&Aの知識はもちろんのこと、最適な相手先を紹介するなどの仲介もしてくれます。
このため、M&Aを行う際は、M&Aアドバイザーに依頼するケースが多いです。
M&Aの知識が乏しい方は、専門家であるM&Aアドバイザーに依頼することをおすすめします。
ただし、前述したように、何でもかんでもM&Aアドバイザーの言いなりになることは避けた方が賢明です。
また、M&Aアドバイザーは、買い手側と売り手側に同じM&Aアドバイザーがつく場合、片方を優先する利益相反問題が発生する可能性があります。
とはいえ、M&Aアドバイザーは、買主側の味方であるケースが多いので、買主側は売主側ほど気にする必要はありません。
契約書に問題がないか確認する
契約書に問題がないかを確認することも、M&Aで失敗しないために重要です。
M&Aでは最終契約書に書かれていることが契約内容のすべてであるため、不条理な契約が記載されていないかを確認する必要があります。
例えば、話し合い段階では聞いていなかった条件が追加されていないか、想定した表明保証(レプワラ)が記載されているかなどです。
仮に想定した通りに表明保証(レプワラ)がついていなければ、表明保証(レプワラ)違反があった場合に損害賠償請求できませんので、買収企業の企業価値が毀損されてしまうこととなります。
このように、話し合いと最終契約書の内容が違うということもあるため、必ず最終契約書の内容は、すべて確認しましょう。
なお、そういった不誠実な対応をされた場合は、信頼出来る相手ではなく、開示していない情報がある可能性も高いので、契約するかどうかを含めて、もう一度慎重に見直すことが必要です。
情報漏れが起きないようにする
M&Aを成立させるためには、M&Aを検討している情報を漏洩しないようにすることが重要です。
仮にM&Aを検討していることが漏れてしまうと、買収を検討している企業の従業員が「業績が悪化しているのではないか」などのネガティブイメージを持ってしまい、離職してしまう可能性があります。
従業員が離職してしまうと、M&Aが成立したあとの経営に支障をきたし、対象会社の企業価値が毀損してしまい、M&Aが失敗してしまうリスクがあります。
このようなリスクがあるため、情報漏れには十分に注意しましょう。
M&Aにおける売り手側の8個の注意点
M&Aに成功するためには、売り手側も多くの注意点を理解しておく必要があります。
売り手側も注意点を正確に理解しておかないと、M&Aで失敗するリスクが高まるためです。
ここでは、売り手側がM&Aに成功するための注意点について解説するので、内容をよく理解しましょう。
M&Aアドバイザーを慎重に選ぶ
M&Aに成功するためには、M&Aについてのアドバイスや買い手側の会社を紹介してくれるM&Aアドバイザーに依頼する必要があります。
しかし、M&Aアドバイザーの中には、素人同然のM&Aアドバイザーもいるため、注意が必要です。
仮にそのようなM&Aアドバイザーに依頼してしまうと、M&Aに成功する可能性は低くなってしまいます。
素人同然のM&Aアドバイザーに依頼しないためにも、実績が豊富にあるM&Aアドバイザーに依頼するようにしましょう。
ちなみに、基本的にM&Aアドバイザーは買い主の味方です。
買主にも売主にも同じアドバイザーが付く場合は、買主を優先しますので、売主はしっかり買主と違うアドバイザーを選定するよう注意しましょう
上記のように買主にも売主にも同じアドバイザーが付く場合、利益相反問題が発生します。
利益相反問題とは、利害が対立する当事者双方に対して同じサービスを提供し、その対価として報酬を受け取り、片方を優先することです。
実際、経産省から公表された中小M&Aガイドラインでは、アドバイザーを利用する場合、利益相反リスクがあるとしています。
このように、アドバイザーに依頼する際は、利益相反のリスクがあることを理解したうえで慎重に選ぶようにしましょう。
M&Aについて相談出来る相手を作る
M&Aについて相談出来る相手を作ることも注意するべきポイントです。
M&Aの仲介業者はあくまで「中立の立場」であるため、ご自身の味方にはなりえません。
相談相手としては適しておらず、あなたの立場に立ってアドバイスをしてくれる可能性は低いです。
したがって、税理士や弁護士、M&Aの経験がある先輩経営者など、味方として相談出来るM&Aに詳しい相談相手を作ることが重要になります。
そういった相談相手を作ることで、M&Aに成功する可能性が高くなるうえに、不安が取り除かれてストレスの軽減にもつながるため、初めてM&Aを検討する際は、味方として相談出来る相手を見つけるようにしましょう。
複数の買い手候補を比較する
複数の買い手候補を比較することも、M&Aにおいて希望のM&A価格で売却するために注意するべきポイントです。
複数の買い手を比較する効果は、以下の3つがあります。
- より高く自社を買収してくれる相手が見つかる可能性が高くなる
- 経営理念が似ているなど自分の後継者にふさわしい買い手が見つかる可能性が高くなる
- 購買意欲が強い複数の買い手を競わせることで、M&A価格やM&A後の事業運営について交渉しやすい
上記の効果がえられるため、売り手側がM&Aをする際は、1社だけでなく複数の会社にM&Aを打診するようにしましょう。
複数の会社と交渉を行う必要があるため手間と時間はかかりますが、M&Aに成功する可能性は高くなります。
希望するM&A価格で売却出来るようにする
売り手側にとって、希望するM&A価格で売却出来ないことはM&Aの失敗といえます。
そのため、希望するM&A価格で売却出来るように、以下の工夫をすることが重要です。
- 自社を高く評価してくれている相手に売り込む
- 買い手が魅力を感じてもらえるように情報を適切に開示する
- 入札形式で売却する
上記の工夫をすることで、買い手側と価格交渉を行う際に、希望するM&A価格で同意出来る可能性が高くなります。
ただし、希望のM&A価格が明らかに適正なM&A価格よりも高い場合には、M&Aが成立する可能性は低くなるため、M&Aアドバイザーなどの意見を参考にして、希望するM&A価格が適正なM&A価格なのかを判断してください。
なお、M&Aアドバイザーは、何度も説明しているように、買主にも売主にも同じアドバイザーが付く場合は、買主を優先する利益相反のリスクがあるため、意見を聞く際は信頼性の高いM&Aアドバイザーから意見を聞くようにしましょう。
情報を適切に開示する
情報を適切に買い手側に開示することも、M&Aの成功のために押さえておく必要がある注意点になります。
情報を意図的に隠ぺいしたり、虚偽の報告をしたりすると、後日表明保証(レプワラ)違反などで損害賠償請求される可能性があるので注意が必要です。
また、言った言わないの論争になってしまう可能性もあります。
そういった事態に陥らないためにも、メールやLINEでコミュニケーションを行い、電話が必要な場合には録音しておきましょう。
M&Aを成立するための準備をする
売り手側の準備出来ていないことで、M&Aが成立せず失敗した事例があります。
そういった事態に陥らないためにも、以下の4つの項目をM&Aを検討する段階で行いましょう。
- 一定数以上の株主の同意をえておく
- M&Aの目的を固める
- M&Aの知識をえておく
- 余裕のあるスケジュールを立てる
上記の準備をしておくことで、M&Aが成立しなかったという事態を防げるうえに、M&Aに成功する可能性が高くなります。
M&Aの情報を外部に漏らさない
売り手側もM&Aの情報が外部に知られないことが重要です。
M&Aの噂が広まってしまうと、業界や顧客、従業員の中で「業績が低下しているのではないか」など、根拠がないネガティブなイメージが拡散する可能性があるためです。
仮にそういったネガティブなイメージが拡散してしまうと、取引先から取引を切られてしまう事態になったり、従業員が離職してしまったりと、企業の価値が下がる可能性があります。
最悪のケースでは、M&Aが破綻する事態にもなりかねません。
このような事態を防ぐためにも、M&Aの情報が広がらないように徹底しましょう。
契約書に問題がないか確認する
売り手側も契約書に不備や不当な内容がないかをよく確認するのが重要です。
仮に最終契約書の内容を確認せずに、不利な条件で契約を結んでしまうと、あとから気づいても修正出来ません。
最悪の場合、M&A代金の全部または一部を支払い拒絶されるといった事態も考えられます。
このような事態を防ぐためにも、契約書を結ぶ際は、しっかりと条件を詰めて不利な条件で合意しないように、隅々までチェックしましょう。
M&Aで買い手側によくある失敗例6選
注意点以外にも、M&Aの失敗例を把握することで成功の可能性を高くすることが重要になります。
失敗例を把握しておくことで、事前に対策を立てることが出来るためです。
ここでは買い手側によくある失敗例を6つ紹介していきますので、チェックしましょう。
企業価値の低い会社を高く買わされた
企業価値の低い会社を高く買ってしまったというM&Aの失敗が多くなっています。
多額のM&A代金を支払って買収したにもかかわらず、対象会社の企業価値が毀損していたり、想定通りのシナジーが発生しないのでは、M&A価格を支払った買収企業の企業価値が大きく毀損してしまいます。
このような事態を防ぐためにも、以下の対策を講じることが重要です。
- デューデリジェンス(DD)しっかりと価値評価(Valuation)すること
- 他の買収者に取られてしまうかもしれないと焦ったりしないこと
- 会社の情報開示・情報提供などが不足し、表明事項(レプワラ)違反によって結果損害が発生したら損害賠償請求すること
上記のポイントを押さえておくことで、実際の評価額よりも高く買ってしまうという事態を防ぐことが出来ます。
M&A自体を目標にしてしまう
M&Aを目標にして失敗した事例も多いです。
あくまでもM&Aは目標ではなく経営戦略上の手段であるため、M&Aが成立したからといって成功とは言えません。
M&Aの成功のためには、M&A代金以上に対象会社の企業価値の毀損を防ぎつつ想定以上のシナジーを発揮し、買収企業の企業価値を向上させることが重要です。
そのため、M&Aを行う際は、M&Aが成立したあとにえたい効果や目的を明確にしておくようにしましょう。
企業選定が間違っている
企業選定を間違えてしまったという失敗事例も多いです。
上記の失敗は、当初の目的を忘れて、目先の利益に目がくらむときによく起きます。
前述したように、M&Aの成功は経営戦略上で想定した効果をえることです。
仮に継続的な利益の向上を目的としてM&Aを行った場合、一時的に利益が上がったとしても、それを継続し企業価値が向上しなければ成功したとは言えません。
また、買収した企業がシナジーを生み出すことができず、買収金の流出によって企業やグループの価値が損なわれてしまうケースもあります。
このような失敗をしないためにも、目的にあった企業選定を綿密に行い、慎重に買収先の企業を選ぶようにしましょう。
正当な理由がなく専門分野ではないM&Aを行う
正当な理由がなく専門分野ではないM&Aを行ってしまい、経営が上手くいかずに失敗し、企業価値が向上しなかったという事例も珍しくありません。
全くノウハウのない事業を運営するのは難しいということを理解しておく必要があります。
新規事業を拡大するためだけに、M&Aを実行してしまうと、経営が上手くいかずに失敗してしまう可能性があるため、注意が必要です。
このような失敗を防ぐためにも、専門分野以外のM&Aを行う際は、M&Aが成立したあとの経営の問題点を洗い出して、適正な対策を講じるなど慎重にM&Aを行うかどうかを判断するようしてください。
デューデリジェンス(DD)が不十分だった
デューデリジェンス(DD)が不十分だったために、リスクを見逃してしまい、企業価値が向上しなかったためにM&Aに失敗したという事例もよくあります。
高額な費用がかかるデューデリジェンス(DD)は、経費を抑えたいという気持ちから最小限に抑えてしまうケースが多いためです。
しかし、デューデリジェンス(DD)を最小限に抑えてしまうと、絶対に把握するべきリスクや問題を見落とし、企業価値が向上につながらない可能性があります。
仮にリスクや問題を見落とてしまうと、多額の費用を支払って買収したのに、期待した効果がえられずに費用対効果に見合っていないM&Aになってしまったという事態になりかねません。
また、デューデリジェンス(DD)を行なってリスクがあるとわかった場合、M&A価格を下げて企業価値の毀損を防ぐこともできます。
このような失敗しないためにも、費用はかかりますが、徹底したデューデリジェンス(DD)を行うことが重要です。
契約書に協議してきた内容との相違があった
M&Aは契約書の内容が非常に重要になります。
契約書に協議してきた内容との相違があったり、曖昧な点がある状態では、M&Aが成立したあとのトラブルになりかねません。
例えば、買収先の企業が所有している不動産の取り扱いについて明確な記載がなかったために、「不動産は譲渡対象だ」「譲渡対象ではない」などとトラブルに発展した事例もあります。
また、話し合いで決めた表明保証(レプワラ)条項が最終契約書に記載されていなかったというケースもあるため、注意が必要です。
仮に表明保証(レプワラ)条項に漏れがあると、表明保証違反による損害賠償請求ができずに損害を回復できず、買収企業の企業価値が毀損してしまいます。
最悪のケースでは、契約書に問題があったために、M&Aが成立しなかったケースもあるため、必ず契約書の内容は隅々までチェックして作成するようにしましょう。
なお、問題がある場合は、売り手側と話し合って内容を詰めていくようにしてください。
M&Aで売り手側によくある失敗例6選
売り手側もM&Aでよくある失敗を理解しておくことで、対策を講じることが出来、失敗するリスクを軽減出来ます。
ここでは、売り手側のよくある失敗例を6つ紹介していくので、M&Aを行う際の参考にしてみてください。
M&Aが外部に漏れた
M&Aの検討中に、そのことが外部に漏れて失敗に終わった事例もたまに見ます。
外部に情報が漏れたことで、自社の経営が悪化しているのではないかなどのネガティブなイメージがついてしまい、買い手側の当初想定していた価値よりも下がってしまったケースです。
当然、書いて側からすると、当初想定していた価値よりも下がってしまっているため、M&Aが破談になってしまう可能性も十分にあります。
せっかく手間と時間をかけて理想の相手を見つけたとしても、外部に情報が漏れたことで、労力が無駄になってしまいかねません。
このように、M&Aの情報が漏れてしまうことはデメリットしかないため、情報は漏れないように徹底することが重要です。
M&A代金の全部または一部を支払い拒絶された
M&A代金の支払いを拒絶された失敗事例も稀にあります。
例えば、買い手側が資金調達に失敗して、期日に支払い出来ないケースなどです。
このような事態を防ぐためにも、最終契約書の内容をしっかり詰めて期日までに支払いがさない場合の対応にも言及しておく必要があります。
なお、最終契約書を交わした後に、M&A代金の支払いを拒絶された場合は、譲渡代金を請求や、表明保証(レプワラ)条項による契約の解除に基づく代金の返還請求という法的対応を行うのが一般的です。
後日表明保証(レプワラ)違反などで損害賠償請求された
買い手側が買収対象会社の情報について聞かされていた内容と異なるとして、後日表明保証(レプワラ)違反などで損害賠償請求をした事例になります。
仮に表明保証(レプワラ)に違反したつもりがなくても、表明保証(レプワラ)違反が証明されてしまうと、損害賠償を支払う事態になりかねません。
このような事態を防ぐために、売り手側は以下の対策を講じることが重要です。
- 会社の情報開示・情報提供をしっかりと行う
- メールやLINEなどM&Aに関わる連絡すべて証拠を作っておくこと
- 電話は録音しておくこと
上記のように、説明していないということが証明されないようにM&Aに関わるやり取りは、すべて証拠として残しておくようにしましょう。
情報開示が不十分で希望するM&A価格にならなかった
情報開示が不十分だったために、買い手側が魅力を感じずに、M&Aが成立しなかったパターンもあります。
M&Aが成立しないだけならまだしも、情報を適切に開示しないことは、損害賠償請求されるリスクにもつながるため、必ずネガティブな情報であっても開示するようにしましょう。
損害賠償請求される理由は、最終契約書に記載されている表明保証(レプワラ)に違反している可能性があるためです。
表明保証(レプワラ)とは、契約の一方の当事者が相手方に対して、一定の事項が真実であり、正確であることを表明し保証する条項のことで、売り手側が違反し損害が発生した場合は、損害賠償請求ができます。
このような事態にならないために、情報をすべて開示したうえで、適正なM&A価格で買収してくれる会社を見つけたほうが、売り手側にとってもメリットが多いです。
正当な理由がなく条件を変える
正当な理由がなく相手に要求をのんでしまうと、M&A価格が安くなり失敗することがあります。
M&Aはお互いに話し合いをして、交渉しながら合意出来るラインを探していくものです。
そのため、買い手側の言い分をすべて受け入れていると、売却は出来るかもしれませんが、不当な評価で会社を売却することになりかねません。
そういった事態を防ぐためにも、交渉をする際は強気で交渉することが重要です。
準備が不十分であるために失敗
売り手側の準備が出来ていないことによってM&Aが失敗する事例もあります。
例えば、株式譲渡するための株主の整備が出来ていないケースや、株主がM&Aを拒否していて50%以上の株を用意出来ていないケースなどです。
上記のような準備不足で、M&Aが成立しないという事態を防ぐためにも、事前に株主の同意をえておくなどの準備を進めるようにしましょう。
まとめ
M&Aで成功するためには、買い手側と売り手側の双方とも多数の注意点があります。
それぞれがM&Aに成功するために、注意するべきポイントは以下の表の内容です。
買い手側の注意点 | 売り手側の注意点 |
専門分野のM&Aを行う | M&Aアドバイザーを慎重に選ぶ |
M&Aの目的を明確にする | M&Aについて相談出来る相手を作る |
アドバイザーの言いなりにならない | 複数の買い手候補を比較する |
徹底的にデューデリジェンス(DD)を行う | 希望するM&A価格で売却出来るようにする |
適正なM&A価格で買収する | 情報を適切に開示する |
従業員の離職を防ぐ | M&Aが成立するための準備をする |
統合を計画的に行う | M&Aの情報を外部に漏らさない |
M&Aアドバイザーに依頼する | 契約書に問題がないか確認する |
契約書に問題がないか確認する | ― |
情報漏れが起きないようにする | ― |
この記事では、上記の注意点について詳しく解説しているので、内容をよく把握してM&Aを行う際の参考にしてみてください。