企業の不祥事でよくあるパターンとは?事例をもとに発生する原因や対処法を解説

企業が起こす不祥事にはいろいろあります。テレビで経営陣が謝罪する様子を見て、どうして企業は不祥事を起こすのだろう、と思う人もいるかもしれません。 

本記事では、企業の不祥事について解説します。最近日本国内で起こった不祥事の事例や発生するパターン、事前に防止する方法や不祥事が発生した後の対処法について紹介します。 

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企業の不祥事の事例 

企業の不祥事の事例

企業の不祥事は後を絶ちません。ここでは、近年有名な日本企業が起こした不祥事を5例紹介します。 

  • 日野自動車のエンジン認証に関する不正行為 
  • 東芝の不適切会計問題 
  • PayPay株式会社における情報漏洩 
  • マツダ株式会社の下請法違反 
  • 三菱電機株式会社のパワーハラスメント 

日野自動車のエンジン認証に関する不正行為

日野自動車の不正行為とは、日本市場向け車両用エンジンの排出ガスおよび燃費に関する認証申請に行っていた不正行為で、2022年3月に発覚しました。 

原因として、現場における数値目標達成やスケジュール厳守へのプレッシャー等が問題の背景にあると考えられます。 

再発防止策として、コンプライアンス最優先の姿勢を明確にするとしています。 

また、組織変更や業務プロセスの見直しといったガバナンスの改善に加え、従業員一人ひとりの意識改革への取組みを進めていくとのことです。 

 東芝の不適切会計問題

東芝の不適切会計問題とは、2015年5月に不適切な会計が発覚した問題です。 

2008年度から2014年度にかけて、インフラ工事等幅広い分野で利益のかさ上げが行われ、総額は7年間で2200億円余りにのぼり、社長および取締役のうち半数が引責辞任しました。 

第三者委員会の報告書では、歴代の社長たちによる売上や利益の目標の必達指示があったとあります。部下たちが強いプレッシャーに耐えきれず、不正な会計処理に追い込まれていたことが不適切会計の原因とされています。 

PayPay株式会社における情報漏洩

PayPay株式会社(以下、PayPay)における情報漏洩とは、2020年12月1日に外部からの連絡により発覚した、管理サーバへ不正アクセスがあった出来事です。 

11月28日にブラジルよりアクセス履歴があり、最大2,000万件を超える加盟店情報等がアクセスされた可能性があるとされています。 

PayPayは、12月3日に遮断措置を実施し、これらの情報が利用された事実はないと報告。 

原因は、当該情報へのアクセス権限の設定不備によるもので、不備のあった期間が2020年10月18日~12月3日と報告しています。 

 マツダ株式会社の下請法違反

マツダ株式会社(以下、マツダ)の下請法違反とは、マツダは下請事業者3社より、手数料として5,100万円あまり徴収したとして、2021年3月19日、公正取引委員会が再発防止を勧告した出来事です。 

マツダは、下請事業者に対し、提供させる金銭の算出根拠および使途について明確にせずに、「手数料」という名目で金銭を徴収。 

2018年11月から2019年10月までの間,金銭を提供させたものの、手数料に対応する何らかの給付または役務を提供することがなく、自社の事業に係る各種取引の支払等に充てていたものです。 

なお、マツダは2021年3月2日に、手数料を下請事業者3社に対し全額支払っています。 

 三菱電機株式会社のパワーハラスメント

三菱電機株式会社(以下、三菱電機)のパワーハラスメントとは、2019年に発生した新入男子社員への上司によるパワーハラスメントにより自殺した出来事です。 

新入男子社員の自殺は労災認定と認められ、三菱電機も新入男子社員の自殺の原因がパワーハラスメントであったことを認めました。 

社長は遺族に直接謝罪し、和解。和解の合意書に、少なくとも年に1度、全社員にハラスメント研修を受けさせるなど、今後の再発防止に力をいれる旨のことが盛り込まれたとされています。 

企業の不祥事の発生パターン

企業が不祥事を起こすパターンとして、主に次の5つのパターンがあります。 

  • 顧客・取引先の情報漏えい 
  • 粉飾決算・有価証券報告書の虚偽記載などの不正会計 
  • 下請法違反・独占禁止法違反 
  • ハラスメント行為 
  • モラルハザード 

 それぞれについて解説します。 

顧客・取引先の情報漏えい

企業が保有する情報が外部に漏れてしまうことで不祥事が発生する場合があります。 

主な情報漏えいとして以下の2点があります。 

  • 顧客の個人情報(住所・氏名・生年月日・クレジットカード情報等) 
  • 企業の機密情報(自社の技術データや機密資料、経営情報等) 

情報漏えいが起こる原因として、社員の無断持ち出しや電子メールによる誤送信、外部からのハッキング等が考えられます。 

粉飾決算・有価証券報告書の虚偽記載などの不正会計

企業の決算を粉飾したり、上場会社の場合、有価証券報告書に虚偽の記載をしたりして発生する会計上の不祥事です。 

不正会計の種類として、売上の水増しや経費の先送り、子会社への不正な取引、いわゆる循環取引があります。 

不正会計の原因として、長年慣行として行われているといった倫理観の欠如や、過度のプレッシャー、経理担当者が1人しかおらず、チェック機能の不透明性などが考えられます。 

下請法違反・独占禁止法違反

下請法違反・独占禁止法違反も企業の不祥事の発生パターンとしてあげられます。 

下請法違反とは親事業者が下請事業者に行ってはいけない行為を定めた法律で、11項目の禁止行為があります。 

独占禁止法とは、公正かつ自由な競争を促進し,事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにする法律です。 

発生する原因として、親事業者の強い立場を利用して、下請事業者に金銭的・時間的に大きな不利益となる事柄を強要することがあげられます。

ハラスメント行為

ハラスメントとは、相手のいやがることをすることで、相手を不快な気持ちにさせることをいいます。セクシャルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)は代表例です。 

ハラスメント行為が発生する原因として、個人における意識差と無意識の偏見、職場におけるコミュニケーション不足、さらにマネジメント不足が考えられます。 

また、個人の意識以外にも、企業風土や職場環境等がハラスメントを引き起こす要因が存在するとも考えられます。 

企業の目標が高すぎたり、過度に権限を与えられたりすることで、過度のストレスを生み、ハラスメントを引き起こしやすくなってしまう傾向にあるようです。 

モラルハザード

モラルハザードとは倫理観の欠如をいいます。モラルハザードは社内、社外関係なく発生することが特徴です。 

具体例として、業務上横領や飲酒運転、盗撮といったものがあります。 

また近年では、X(旧Twitter)やYouTubeをはじめとするSNSで、企業の内部情報等を公開したり、従業員が悪ふざけでSNSに投稿したりするなど、モラルの低下が指摘されています。 

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企業の不祥事を事前に防止する方法

企業の不祥事を事前に防止する方法

企業の不祥事が発生する前に、企業はどのような防止策を講じる必要があるでしょうか。 

企業の不祥事を防止する方法として、以下の4点があります  

  • 複数にわたるチェック機能の構築 
  • 社内全体でコンプライアンス意識の向上 
  • 内部通報制度の導入 
  • 内部監査および外部監査の実施 

それぞれについて解説します。 

複数にわたるチェック機能の構築

企業の不祥事を事前に防ぐために、社内でのチェック機能を強化することが重要です。特に属人化しやすい場合は不正の温床となるリスクが高いので注意しましょう。 

チェックに関しては、1回で終わらせず、複数にわたってチェックするのが効果的です。それぞれの業務の流れを俯瞰して、たとえば営業社員と契約を交わす社員を別にするなどして不正の発生を未然に防ぐ必要があるでしょう。 

社内全体でコンプライアンス意識の向上

企業不祥事が発生する企業は、コンプライアンスに関する認識が低いといわれています。 

不祥事を未然に防止するために、社内全体でコンプライアンス意識の向上を図ることが重要です。 

コンプライアンスに関する意識が向上することで、社内に危機意識が芽生えます。社内ルールや社内規範に違反していないか、法令を遵守しているかといったことが無意識に考えるようになり、ひいては不祥事の防止につながります。 

内部通報制度の導入

内部通報制度とは、社内で社員が不祥事を起こしていることを発見した報告に関して、通常とは異なった別の報告ルートで報告できる制度です。 

通常、不正を発見した場合、上司に報告し、さらに上位の者に伝えられます。しかし、不正を行っているのが上司である場合、一般的な報告ルートでは上位者に伝わらない恐れがあります。 

そのため、一般的な報告ルートとは別の、上位者に報告の必要がない仕組みを導入することで、企業が自社で不正の発見が可能です。 

事前に対処することができるので、コンプライアンスに則った経営が実現できるでしょう。 

内部監査および外部監査の実施

内部監査および外部監査を実施することで、企業は不祥事を未然に防止できるでしょう。 

内部監査および外部監査は、通常、上場企業に義務付けられています。コンプライアンスの遵守の観点から、上場企業以外でも内部監査や外部監査を実施することはとても重要です。内部監査に携わる部署は、企業内で独立したポジションに位置づけられているのが一般的です。また、外部監査は監査法人等が行うのが一般的とされています。 

企業の不祥事が発生した後の対処法

企業の不祥事が発生した後の対処法

万が一、企業の不祥事が発生した場合、企業はどのように対処すればいいのでしょうか。 

主な対処法として以下の4点があるので、それぞれについて解説します 

  • 事実関係の確認・報告 
  • 弁護士に相談 
  • 責任の所在の明確化 
  • 再発防止策の策定および公表 

事実関係の確認・報告 

企業が行うことは、不祥事があったという事実を確認しなければなりません。加えて、ステークホルダー等に不祥事があった事実を報告する必要があります。 

企業はどのようにして不祥事が発生したのかを関係部署等に聞き取りを行ったり、資料をチェックしたりして、迅速かつ正確に不祥事の全容の把握に努めなければなりません。 

事実と異なる報告を行ったり、芋ずる式に不祥事が発覚したりすれば、企業の信用失墜になりかねないためです。 

護士に相談 

不祥事の内容によっては、弁護士に相談することも有効な対処法といえるでしょう。 

企業自らが不祥事の処理を行った場合、初期対応を誤ると、不祥事が取引企業等に飛び火する等、傷口を広げてしまうことになりかねません。 

顧問弁護士がいる企業は、早急に弁護士に相談し、対応を協議することが重要です。 

また、顧問弁護士のいない企業の場合、企業の独断で不祥事の対応が厳しいケースがあるかもしれません。不祥事対応に慣れている弁護士を選び、相談するのがいいでしょう。 

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責任の所在の明確化 

不祥事が発覚しても、企業は責任の所在を明らかにしないまま、幕引きを行ってしまうケースが最近見かけます。 

企業経営者は、内外問わず、不祥事の責任の所在を明確にすることが、企業の信用失墜を最小限に食い止める手段であるといえるでしょう。特に社会的責任を問われる不祥事であればなおさらです。 

株主や取引先等ステークホルダーにとっても、不祥事は痛手になることを自覚して、企業は取り組むべきともいえるでしょう。 

再発防止策の策定および公表 

不祥事が発生した場合、今後二度と同じことが起こらないように企業は再発防止策を策定し公表する必要があります。 

不祥事が発生した原因を、調査した時にわかった問題点を今後に生かすことは、再発防止の観点からとても重要です。同じことを繰り返していては信用を失うだけでなく、企業そのものの存在も危ぶまれます。 

企業が社会的責任を果たすためにも、再発防止策を策定し、公表することが必要であるといえるでしょう。 

まとめ 

まとめ

企業は不祥事を起こすことにより、今まで築きあげてきた信用が一瞬で崩壊します。そして、失われた信用を回復するのには一朝一夕にはいきません。 

企業の信用は経営者1人で築き、保つことは難しいです。社員一人ひとりが自覚を持ち、不祥事を起こさないように努めなければなりません。日ごろからどのような点に注意すべきか、また万が一、不祥事が発生した場合、いかに最小限に食い止めるかについて十分考えておく必要があるでしょう。