M&A仲介業者は利益相反!手数料を取り戻す!
M&A仲介業者から手数料を取り戻す方法
近年、中小企業の経営者が高齢化していますが、後継者を持たない企業が数多くあります。
そのため、後継者の持たない中小企業は、会社存続のためにM&Aなどで第三者に会社を売却するケースも増えてきています。
このような中小企業のM&Aに対して、売り手企業と買い手企業を仲介する会社をM&A仲介業者といいます。
しかし、このM&A仲介業者が、利益相反ではないかと問題になっているのです。
今回は、M&A仲介業者が利益相反ではないかという問題について詳しく解説していきます。
M&A仲介業者とは?
M&Aが円滑に行われるために企業に対して助言やサポートをする専門家として、M&A仲介業者とファイナンシャルアドバイザー(FA)があります。
M&A仲介業者とは、売り手側企業と買い手側企業の双方に対してM&Aの助言やサポートを行い、双方の交渉を調整する役目があります。
一方、ファイナンシャルアドバイザー(FA)とは、売り手企業または買い手企業のどちらかにだけM&Aの助言やサポートを行います。
契約をした売り手企業または買い手企業の利益が最大化になるように、助言やサポートや交渉を行うのです。
M&A仲介業者の目的は、M&Aを成功させて売り手側と買い手側の双方から報酬を得ることです。
売り手側と買い手側の双方に請求する報酬として、主にリテイナーフィーと成功報酬の2つがあります。
リテイナーフィーとは、月額顧問料のことで基本的にM&Aが終了するまで毎月得ることができる報酬です。
成功報酬とは、M&Aが成立した時に売り手側と買い手側の双方から受け取る報酬です。
成功報酬はM&Aが成立しなければ受け取ることができませんので、M&A仲介業者は何としてもM&Aを成立させるようにします。
M&A仲介で問題となる利益相反取引とは何か?
利益相反取引とは、片方にとって利益になることであっても、もう片方にとっては不利益になる取引のことをいいます。
これをM&Aに当てはめると、できるだけ高い価格で売りたい売り手側と、できるだけ安い価格で買いたい買い手側を仲介することがそもそも利益相反取引にあたるのでないかということです。
買い手側の利益になるような助言は売り手側の不利益になりますし、売り手側の利益になるような助言は買い手側の不利益になるからです。
M&A仲介業者の利益相反問題を河野大臣が指摘、中小企業庁に対して指示、M&A仲介業者の株価暴落
河野太郎行政改革担当大臣は、 2020年12月18日の自身のブログにて以下の点について指摘をしています。
中小企業のM&Aを仲介する専門業者の中には、売り手と買い手の双方から手数料を取っている業者が存在しています。
M&Aの売り手側は、会社を売却すれば基本的にはそれ以上に売却するものはありません。つまり、M&A仲介業者と売り手側とは、一回限りの取引ということになります。
一方、M&Aの買い手側はその後も企業を買い取る可能性があるため、M&A仲介業者にとって何回も取引ができる可能性があります。
その結果、M&A仲介業者にとっては、M&Aの売り手側よりも買い手側に寄り添う方が得になるのです。
また、売り手側と買い手側の双方から手数料をとるM&Aの仲介は、利益相反になる可能性があることを中小企業庁が指摘していることも記載されています。
さらに、河野太郎行政改革担当大臣は、 2020年12月18日の同ブログにて以下の点について中小企業庁に指示をしていることも記載しています。
- 「中小M&Aガイドライン」を策定し、売り手と買い手双方の一者による仲介は利益相反となり得る旨を明記すること。
- 両者から手数料をとっているなどの不利益情報の開示を徹底するなどリスクを最小化する措置を講じること。
- 他のM&A支援業者などにセカンドオピニオンを求めることを許容する契約とすること。
そして、この指示を受けた中小企業庁は、2021年3月までに上記の指示を徹底する措置を確定して来年夏までに仕組みが動き出すように動いていることも記載されています。
河野太郎行政改革担当大臣はこのブログへの利益相反の記載に加えて、2021年1月6日のみずほ証券のセミナーでもこの問題に触れて中小企業庁に働きかけることを話しています。
これらが取り上げられることにより、年初よりM&A仲介業者の株価が各社とも10%前後下落しています。
日経平均株価がどの企業も高値を付ける中で、M&A仲介業者には逆風が吹いているのです。
M&Aの仲介業務が利益相反と考えられる理由
M&Aの仲介業務が利益相反と考えられる理由として、以下の理由が考えられます。
- M&A仲介業者の取引は両手取引になるため
M&A仲介業者が利益相反と考えられるのは、両手取引になっているからです。
M&Aにおける両手取引とは、売り手側と買い手側の双方の条件を調整して取引を行い請求をすることで双方から利益を得ることす。
一方、片手取引は、買い手か売り手どちらか一方と取引を行うことで片方からしか利益を得ませんので利益相反にはなりません。
売り手側と買い手側の利益が正反対のため
そもそも売り手側はできるだけ高く売りたいと思っていて、買い手側はできるだけ安く買いたいと思っています。
そのため、売り手側の意向通りに高く売れても、買い手側の意向通りに安く買えてもどちらかが利益を得ればどちらかが不利益になるのです。
売り手側が不利になりやすいため
M&A仲介業者は売り手側と買い手側の双方と契約をしますが、一般的には一度だけの契約である売り手側よりもリピートが期待できる買い手側の方が有利になるように物事を運びます。
このように、売り手側が不利になることは、利益相反行為の可能性が高いです。
M&Aにおける片手取引のデメリット
M&Aにおける片手取引とは、売り手側または買い手側の片方と契約して利益最大化を職務とすることです。
M&Aにおける片手取引を行うのは、ファイナンシャルアドバイザー(FA)になります。
片手取引は一方の利益最大化を目的としているため、利益相反行為にはなりません。
しかし、ファイナンシャルアドバイザー(FA)同士が片方の利益を一方的に主張するため、交渉雅纏まりにくいというデメリットがあるのです。
場合よっては、相手側に過度な要求を行うことにより、交渉が決裂してしまう可能性もあります。
M&A仲介の利益相反取引のデメリットは売却価格の低下
M&Aを行うのに仲介業者は、一方からしか報酬が入ってこない片手取引よりも報酬が2倍になる両手取引の方を望みます。
そのため、買い手側は他のファイナンシャルアドバイザー(FA)が付いている企業ではなく、自分の取引先の馴染みの顧客の中から買い手を探すことになります。
さもないと、片手取引となってしまい2倍の報酬が入ってこないからです。
M&A仲介業務の主な役割として買い手側と売り手側のお互いの交渉条件を分析し調整していくことですが、お互いの利益を考えていたら取引が失敗して双方からの報酬が入ってこない可能性もあるのです。
このようなことを避けるために、M&A仲介業者は買い手側の有利になるように売却価格を下げて売り手側を納得させるようにするのです。
その結果M&Aの仲介は、どうしても売却価格の低下につながっていくのです。
また、M&A仲介業者は、M&Aを成立させるために本来は買い手側に伝わってはいけない売り手側の交渉戦術を筒抜けにしてしまうことも可能になります。
例えば、売り手側が妥協できる最低価格を設定していたとしても、本来は買い手側にはその情報は伝わりません。
しかし、M&A仲介業者が仲介することにより、妥協できる最低価格を買い手側に伝えることも可能になります。
そのため、M&A仲介業者が仲介することで、売却価格がどうしても下がってしまうのです。
売り手側が不利になりやすい?
売り手側にとってできるだけ高い価格で売ることができれば、最大の利益になります。
一方、買い手側にとってはできるだけ安い価格で売ることができれば、最大の利益になります。
しかし、M&Aは双方が最大の利益を得ることは不可能で、必ずどちらか一方が不利になってしまうのです。
この場合、ほどんど売り手側が不利になると言われています。
なぜなら、買い手側が有利になるような交渉を進めると、リピートしてもらえる可能性があるからです。
買い手側は、将来M&Aにより他の企業も買収しようと考えていることが多く、引き続きの仲介の依頼があるかもしれません。
そのため、どうしてもM&A仲介業者は買い手側を有利に交渉を進める傾向があり、売り手側は不利になりやすいのです。
金融機関は仲介業務をしない傾向にある
メガバンクをはじめ地方銀行や信用金庫などの金融機関も、近年は積極的にM&Aの助言やサポートを行っています。
しかし、金融機関のM&Aへの関わり方は、仲介業務ではなく片手取引であるのファイナンシャルアドバイザー(FA)業務を行う傾向が強いです、
なぜならば、金融機関は、M&A仲介業務が利益相反取引になることを意識しているからです。
売り手側または買い手側の一方のファイナンシャルアドバイザー(FA)業務を行う場合には、他方は他のファイナンシャルアドバイザー(FA)に依頼をすることも数多くあります。
M&A仲介が利益相反になる理由は「売り手」と「買い手」の目的が違うから
売り手側がM&Aを行う目的は、後継者問題解決や資金調達などいろいろな理由があります。
しかし、どのような理由であったとしても、少しでも売却価格をアップさせることが大切になります。
一方、買い手側がM&Aを行う目的は、事業規模の拡大やコストの削減や人材確保などいろいろです。
どのような目的であったとしても、低価格でM&Aが行われれば買い手側にとってとても魅力的です。
このように、売り手側と買い手側の目的が根本的に異なるため、M&A仲介はどうしても利益相反取引になってしまうのです。
M&A以外では利益相反取引をどう扱うのか?
M&A以外の分野での利益相反取引の扱いは、以下になります。
会社法における利益相反取引
取締役が地位を利用して自己や第三者の利益を図ろうとすることを防ぐために、利益取引を行うには事前に取締役会や株主総会の承認を得なければいけないという規定が会社法にはあります。
民法における利益相反取引
民法には直接的な利益相反取引の規定はありませんが、代理人が双方代理を行うことの禁止の規定が利益相反取引を禁止する規定となっています。
この規定により、代理人が同一の法律行為における当事者双方の代理人になることは禁止されているのです。
なぜなら、双方代理を禁止にしなけれはを、どちらかを有利にしてもう一方を不利にするような取引条件で契約が締結できてしまうからです。
弁護士法における利益相反取引
弁護士法でも、利益相反を伴う事柄について受託することは禁止されています。
そのため、相続の遺産分割での係争などで、双方の代理人になることは利益相反を伴いますので禁止されているのです。
宅地建物取引業法における利益相反取引
宅地建物取引業法では、片手取引だけでなく両手取引である仲介も認められています。
即ち、不動産業界では、既得権益として宅建業者が両手取引による仲介を行うことが一般的なのです。
M&A仲介の問題点(利益相反だけでない!)
M&A仲介業者だけでなくファイナンシャルアドバイザー(FA)にも言えることですが、成功報酬が最優先になってしまうという問題点があります。
M&A仲介業者の営業担当者は、ほとんどが会社員です。
そのため、M&Aが成立する件数によって個人の成績が決まり、成績によって会社からの給与や賞与の金額が決まります。
当然、給与や賞与を沢山もらった方が良いため、売り手側や買い手側のことよりもM&Aを成立させることを優先するのです。
また、無理なM&Aを実行することや、取引先に不適切な助言をすることによりM&Aが失敗し破綻したとしても、会社員のため自ら責任をとる必要はありません。
このように、M&A仲介業者の営業担当者は、売り手側や買い手側の利益よりも強引にM&Aを成立させることを優先させる傾向が強いこともM&A仲介の問題点なのです。
M&A仲介業者から手数料を取り戻すことができるか?
このように、M&Aの仲介は利益相反取引になることが多く、売り手側や買い手側の双方が利益を得ることは難しくなります。
この場合、不利になった売り手側若しくは買い手側は、M&A仲介会社から手数料を取り戻したいと考るでしょう。
M&A仲介会社に対する損害賠償請求ができるかどうかは、利益相反の状況や程度によって決まります。