M&A仲介契約の問題点!

M&A仲介契約書について

M&A仲介契約書と、M&A仲介を行う場合に、顧客である売主又は買主候補会社と、M&A仲介を行おうとする者との間で締結されるM&A仲介業務を受託する業務委託契約書であり、M&A仲介を行うにあたっての条件が合意されるものである。

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M&A仲介手数料について

M&A仲介契約書において、M&A仲介者にとり最も重要な規定は、M&A仲介手数料である。

本書におけるM&A仲介契約書のフォーマットでは、このM&A仲介手数料は、完全成功報酬制を採用しつつ、成功報酬体系については、いわゆるリーマン基準(下記表)を採用し、最低成功報酬を500万円とする、近時においては、一般的なM&A仲介手数料体系のものを提示している。

取引総額 料  率
取引総額の5億円以下の部分 5.0%
取引総額の5億円超10億円以下の部分 4.0%
取引総額の10億円超50億円以下の部分 3.0%
取引総額の50億円超100億円以下の部分 2.0%
取引総額の100億円超の部分 1.0%

このリーマン基準というものは、もともと、あのリーマン・ブラザーズが採用していたM&A仲介手数料体系であり、それが、今日においても、その名称を踏まえリーマン基準と呼ばれているものである。

事業承継M&Aにおいては、対象会社が、中小企業・零細企業になることが多く、ほとんどのケースで、リーマン基準を使用すると、M&A仲介手数料は「5.0%」となることから、事業承継M&AのM&A仲介手数料は「5.0%」であると言われることが多く、実際に、M&A仲介手数料は「5.0%」が一般的になっている。

ただ、このM&A仲介手数料は「5.0%」というものは、M&A仲介者がM&Aの相手方を探索した場合にあてはまるものであり、当事者が自らM&Aの相手方を探索し、M&A仲介者に対して、M&Aのアレンジや手続のみを依頼する場合については、必ずしもあてはまるものではない。

なお、このリーマン基準であるが、母数の「取引総額」として、何を持ってくるかというのは、M&A仲介者やM&A案件において異なるところであり、株式譲渡方式の事案においては、①対象株式の株式譲渡価格とするか、②対象会社の総資産額とするか、まちまちである(半面、事業譲渡方式の場合は、事業譲渡価格とすることが一般的である)。

なお、②の対象会社の総資産額については、株式譲渡価格と負債総額の合計額と表現されることが多い。この点、②において、株式譲渡価格と負債総額の合計額と表現されるのは、これが、実質的な対象会社の総資産額であるからである。

この点、株式譲渡方式の場合、「取引総額」として、①対象株式の株式譲渡価格を採用する場合、対象会社によっては、特に経営再建中の会社などは、巨大な会社であったとしても、負債が非常に大きいような場合、株式譲渡価格としては、非常に少額になる場合があり、そのような場合、M&A仲介者としては、案件規模や必要な労力に比して、M&A仲介料が非常に少額になってしまうとのこと。

また、M&A仲介者の手数としては、やはり、対象会社の総資産額規模が大きければ、それに応じて、M&A仲介業務における手数も大きくなり、案件自体も大きくなり、買主候補会社の探索も難易度が高くなることから、基本的には、株式譲渡方式の場合、「取引総額」としては、②対象会社の総資産額を採用することが有り難いとのこと。

すなわち、このリーマン基準であるが、母数の「取引総額」として、対象会社の総資産額とされている場合、それは、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。

M&A仲介手数料の支払日について

また、M&A仲介手数料の支払日については、多くのケースでは、M&Aの実行日とすることが多い。すなわち、売主からは、M&Aの実行を行い、相手方から株式譲渡代金を受領したその日に、M&A仲介手数料を支払ってもらうのであり、買主からは、M&Aの実行が行われ、相手方に対して、株式譲渡代金を支払うと同時に、M&A仲介手数料を支払ってもらうのである。

すなわち、事業承継M&Aにおいては、M&Aトラブルが非常に多く、また、事業承継M&Aの対象会社も中小企業・零細企業であり、オーナー経営者としては、多少のトラブルや、多少のレピュテーションなど気にしない者も多く、他方、M&A仲介手数料は、それなりの高額な金額になることも多いことから、必ずしも、スムーズに払ってもらえないことも多い。

したがって、M&A仲介者としては、M&Aの実行完了当日の、当事者の満足度が最も高いタイミングで、速やかに、M&A仲介手数料を支払ってもらうことが好ましいという。M&Aの当事者が、このM&Aに問題があったことについて気が付かないうちに、M&A仲介手数料を支払ってもらってしまおうという、不当な理由である。

すなわち、このM&A仲介手数料の支払日についても、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。M&A仲介会社は実力で顧客を惹きつけるべきであって、問題の発覚する前に食い逃げしてはいけない。

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テール期間について

M&A仲介契約書においては、M&A仲介契約の有効期間終了後といえども、2年間は、M&Aが成立した場合、M&A仲介手数料を支払う義務が規定(テール期間)されることが一般的である。

これは、M&A仲介の依頼者である、売主又は買主においては、M&A仲介者のM&A仲介手数料の支払いを免れようとの意図の下、M&仲介者には、M&Aは取り止めになったと称して、M&A仲介者とのM&A仲介契約を解除しつつ(又は、M&A仲介契約の有効期間の終了を待って)、M&A仲介者に隠れて、売主と買主候補会社との間で交渉を続け又は再開して、M&Aを成立させることが多くあるところ、そのようなことでM&A仲介手数料の支払いを免れることができるのでは、M&A仲介というビジネスは成り立たないため、M&A仲介契約の有効期間が経過した後やM&A仲介契約がそのほかの理由で終了した後も2年間は、M&Aが成立した場合は、M&A仲介手数料の支払い義務があるとする(テール期間)のである。

この点、そのM&A仲介契約の有効期間が経過した後の2年間(テール期間)に成立したM&Aが、そのM&A仲介者のM&A仲介業務と相当因果関係がないというような事情がある場合は、テール期間の規定が存在したとしても、M&A仲介者が、M&A仲介手数料を請求することは、経済的に合理的ではなく、また困難であるものと思われる。

他方、売主と買主が、M&A仲介業者に隠れてM&Aを実行した場合については、多くのケースでは、2年間あれば、何らかの原因で、M&A仲介者がM&Aの存在を知ることとなり、それが、そのM&A仲介者のM&A仲介行為と相当因果関係があるような場合、M&A仲介者としては、このテール期間の規定に基づき、売主又は買主に対して、M&A仲介手数料を請求することができる。

すなわち、このテール期間の規定についても、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。M&A仲介会社は実力で顧客を惹きつけるべきであって、実力とは関係のないところまで、爪を伸ばしてはいけない。

M&A仲介契約の当事者について

また、M&A仲介契約の当事者について、買主側のM&A仲介契約であれば、買主候補会社が契約の当事者になることが明らかであるものの、売主側は一考を要する。

例えば、株式譲渡方式であれば、株主である売主がM&A仲介契約の当事者となるべきであるが、事業譲渡方式であれば、株主ではなく、会社が、M&A仲介契約の当事者となるべきなのである。しかし、M&Aプロセスの初期の段階では、M&Aのスキームが決定していないことがあり、株式譲渡方式を採用するのか、事業譲渡方式を採用するのかは、明確には決まっていない。

株式譲渡方式を採用する前提で、オーナーである株主とM&A仲介契約を締結したとしても、その後、事業譲渡方式を採用することになった場合、事業譲渡代金を受領するのは会社であり、オーナーである株主ではないため、それを口実に、M&A仲介手数料の支払いを拒否される可能性がある。

半面、事業用と方式を採用する前提で、会社とM&A仲介契約を締結したとしても、その後、株式譲渡方式を採用することとなった場合、株式譲渡代金を受領するのはオーナーである株主であり、会社ではないことから、それを口実に、M&A仲介手数料の支払いを拒否される可能性がある。

したがって、株式譲渡方式でも事業譲渡方式でもいずれの方式を採用したとしても、オーナーである株主又は会社のいずれかからM&A仲介手数料を支払ってもらえるように、M&A仲介者としては、オーナーである株主と会社の双方を当事者とし、その二者が連帯してM&A仲介手数料を支払うものとして、M&A仲介契約を締結することが好ましいとのこと。

すなわち、このM&A仲介契約の当事者についても、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。

対象業務の限定について

また、M&A仲介契約書で重要なのは、M&A仲介者の受任する対象業務を限定することである。

M&A仲介者の業務は、M&Aを仲介することであり、M&Aにおいて、デューデリジェンスを提供したり、法務・会計・税務・財務などに関する専門的見解を提供することではない。M&A仲介者は、あくまで売主と買主候補会社を引き合わせ仲介することが業務なのであり、スペシャリストではなく、コミュニケーション能力で業務を行うゼネラリストなのであるとのこと。

そうであるから、本書のM&A仲介契約書のフォーマットでは、①本件取引に必要な情報の収集・調査、②本件取引の候補先の探索及び候補先に対する情報提供、③本件取引に関する実務手続上の助言及びスケジュールの調整、④本件取引に必要な買収監査(デューデリジェンス)の調整、⑤本件取引に必要な契約書原案等の作成、⑥本件取引の交渉の立会い、及び⑦その他前各号記載の業務に、対象業務を、明確に限定しているのみならず、専門的業務が対象外であることを明示し、そのような専門的業務は、別途、専門家に依頼すべきこと、及び、そのような専門家の報酬については、M&A仲介手数料とは別個に、依頼者である売主又は買主候補会社が負担する旨を明示している。

すなわち、この対象業務の限定についても、M&A仲介会社の無責任かつ身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。M&A仲介会社は実力で顧客を惹きつけるべきであって、あからさまに無責任な行動をとってはいけない。

専任条項について

M&A仲介者としては、売主からM&A仲介業務の委託を受けたとしても、売主が、他のM&A仲介者にも、併せて、M&A仲介業務の委託をした場合、せっかく買主候補会社を探索しても、その他のM&A仲介者がその売主の会社のM&Aを実現させてしまった場合は、M&A仲介業務を別途行っていたとしても、結局、M&A仲介手数料を取り逃してしまう。

もちろん、M&A仲介契約に、専任条項が入っていたとしても、M&A仲介者のM&A仲介業務において、十分な稼働がなされないような場合や、適切なM&Aの相手方を探索することができていないような場合、又は、能力が適切ではなく、期待できそうな結果がなかなか期待できないような場合は、M&A仲介者の債務不履行と評価できるような場合もあると思われ、必ずしも、この専任条項が絶対ものとは言えない場合もあると思われる。

しかし、M&A仲介者としても、買主候補会社を探索して、買主候補会社との間でM&Aの話を進めている過程で、いきなり、他のM&A仲介者が、その売主の会社のM&Aを実現させてしまった場合は、その買主候補会社からの信用を失ってしまうであろうし、M&A仲介者としては、依頼者が他のM&A仲介者にもM&A仲介を依頼している場合は、その案件に労力を投入したとしても、M&A仲介手数料を得ることができるか否か分からない状態であることから、M&A仲介業務に十分身が入らないものと思われるとのこと。

したがって、M&A仲介契約には、専任条項を入れることが一般的になっている。

すなわち、この対象業務の限定についても、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。M&A仲介会社は実力で顧客を惹きつけるべきであって、このような規定により手軽に顧客を囲い込むべきものではない。

直接交渉禁止条項について

また、売主と買主候補会社が、M&A仲介者を無視して、直接交渉を行った場合、その結果、売主と買主候補会社がM&A仲介手数料の支払いを逃れようと謀議しやすくなり、M&A仲介業務を行ったのに、M&A仲介手数料を受領できない事態になる可能性もあり、また、売主と買主候補会社が直接交渉をする場合は、特に複数の買主候補会社を競わせるような場合、情報の一元管理ができなくなり、適切な買主の選定ができなくなる可能性もある。

もちろん、M&A仲介契約に、直接交渉禁止条項が入っていたとしても、M&A仲介者のM&A仲介業務において、十分な稼働がなされないような場合や、M&A仲介者の能力が適切ではなく、期待できそうな結果がなかなか期待できないような場合、又はM&A仲介者が相手方と十分なコミュニケーションが取れないような場合は、M&A仲介者の債務不履行と評価できるような場合もあると思われ、必ずしも、この直接交渉禁止条項が絶対ものとは言えない場合もあると思われる。

しかし、M&A仲介者としては、M&Aの素人である売主と買主が直接交渉を行って、M&Aの実現可能性を低下させるような事態を放置することはできないという直接交渉禁止条項の趣旨も一理あるとのこと。

したがって、M&A仲介契約には、直接交渉禁止条項を入れることが一般的になっている。

すなわち、この対象業務の限定についても、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。M&A仲介会社は実力で顧客を惹きつけるべきであって、このような規定により手軽に顧客を囲い込むべきものではない。

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双方契約承認条項について

M&A仲介者は、今日では、売主と買主候補会社のいずれか一方からM&A仲介を受任するのではなく、売主及び買主候補会社の双方から受任するM&A仲介形態(双方形態)を採用することが一般的になっている。

勿論、売主や買主候補会社の依頼者から、双方契約に同意してもらえないのであれば、やむをえず、売主や買主候補会社のいずれか一方とのみ契約することとなるのであるが、そのようなM&Aの当事者も、今日では、減少してきており、M&A仲介形態(双方形態)は、かなり一般的な形態となってきている。

民法108条上、双方代理は当事者の承諾ない限りは禁止されており、また、そうでなくても、当事者に無断で、相手方からもM&A仲介業務の委託を受任することは、無用なトラブルの原因となることから、M&A仲介者が双方契約を締結する場合は、予め、当事者の承諾を得ておくことが好ましい。

この点、M&A仲介者が、双方契約承認条項に基づいて、双方契約の承認を得たとしても、M&A仲介者が、M&Aの売主と買主の双方に対して、善管注意義務を負っていることは明らかであり、これに違反し、故意又は過失で、適切なアドバイスを行わなかったり、不当な取引条件を契約させたりすれば、善管注意義務違反の責任を負うこととなるものと思われる。

ただ、やはり、M&A仲介者としては、M&Aの当事者の双方と契約をして、双方からM&A仲介手数料を受領することにより利益の最大化を行うインセンティブがあり、今日的には、M&A仲介形態(双方形態)が一般的になっている。

また、事業承継M&Aにおいては、M&Aの当事者に別々のM&A仲介者が代理人としてついて、喧々諤々交渉することによってM&Aの条件を妥結するよりは、M&A仲介者が間を取り持って、双方当事者が双方とも納得できる中間地点を探りつつM&Aの条件をすり合わせてゆく方が、適しているという側面が存在することもまた真実であると思われるとのこと。

したがって、M&A仲介契約には、双方契約承認条項を入れることが一般的になっている。

すなわち、この双方契約承認条項についても、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。M&A仲介会社は実力で顧客を惹きつけるべきであって、利益相反や善管注意義務違反をものともしない態度には問題がある。

免責条項について

M&A仲介契約において、特に重要なのが、免責条項である。

売主又は買主候補会社の依頼者としては、M&A仲介者とM&A仲介契約を締結しさえすれば、M&Aが自然と完了するであろうと思う依頼者も少なからず存在し、また、事業承継ニーズなどの高まりにより、事業承継ニーズに迫られたオーナー経営者としては、なかなかM&Aが成立しないことに不満を募らせ、M&A仲介者に対して、クレームを行ったり、責任を追及したりすることも少なくない。

しかし、買主候補会社のM&Aニーズもかなり細分化しており、売却対象会社が存在したとしても、容易に、買主候補会社が探索できるわけではなく、ましてや、オーナー経営者の希望する金額での購入を希望する買主候補会社の探索は、さらに容易ではない。

また、M&Aは、取引金額も大きく、取引条件も複雑である。また、M&Aのほとんどは失敗するといわれているとおり、買主においても、買収後に、想定外の損失が発生したり、想定どおりに対象会社の経営を順調に行うことができない場合などは、そのM&Aに不満を募らせ、売主と買主との間でM&Aトラブルに発展する場合も多い。

そのような場合、そのような売主又は買主をM&A仲介したM&A仲介者に対して、矛先が向くことも多く、M&A仲介者はとかくM&Aトラブルに巻き込まれがちである。

そもそもM&A自体、最終的には、売主及び買主において、自己責任で意思決定して実施すべきものであるし、自らの問題であることから、自らの責任で、調査・検討を行うべきものであることから、M&A仲介者としては、責任は負いかねるものである。

また、M&A仲介者としては、売主及び買主の双方と契約を行って、売主と買主の間を取り持っていることから、売主から買主に対して提供された対象会社の情報や資料の信憑性について、問題があった場合、M&A仲介者に対して、クレームや責任追及の矛先が向くこともあり、また、株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などに記載された表明保証についても、その契約書の調整をしたのがM&A仲介者であるような場合、M&A仲介者としては、当然、その正確性については検証済みであり責任を持つべきであるとして、クレームや責任追及の矛先が無ことも多い。

したがって、M&A仲介契約には、M&A仲介者の完全な免責条項を入れることが好ましいとのこと。

すなわち、この免責条項はまさに、M&A仲介会社の身勝手な理由からきているものであり、このようなことは許されてよいはずはない。M&A仲介会社は実力で顧客を惹きつけるべきであって、利益相反や善管注意義務違反をものともしない態度には問題がある。

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