M&Aで瑕疵担保責任は請求可能か?
M&Aにおいて瑕疵担保責任を請求することは可能か?!
まず、M&Aにおいては、不動産と異なり、民法に規定されている「瑕疵担保責任」というものは適用されません。
ですので、買収後に、「あるはずのものが無いじゃないか」「○○が壊れているじゃないか」「○○との契約が解除されているじゃないか」「従業員がいないじゃないか」などなど、対象会社に問題があったとしても損害賠償請求することができません。現状有姿での引渡しかできないのです。すなわち、株式譲渡契約書であれば、譲渡対象物は「株式」であり「会社」ではありませんので、株式自体はしっかり引き渡されており名義も変更されているので瑕疵はないのです(株券をイメージすればわかると思いますが、あくまで譲渡の対象は株券なのであり、株券が破れていたら瑕疵になるのですが、会社の中身に問題があってもそれは瑕疵ではないのです)。
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ですのでM&Aにおいてはデューデリジェンス(DD)が重要
では、どうすればよいのでしょうか。そのようなM&Aのリスクの回避ために、買主候補企業は、しっかりデューデリジェンス(DD)をする必要があるのです。
M&Aで瑕疵担保責任に代わるものとして表明保証が存在する
しかし、デューデリジェンス(DD)をしても発見できないような「隠れた瑕疵」についても売主と買主の間の利害調整がされる必要があります。
そのようなM&Aの利害調整のために、買主候補企業はしっかり最終契約書に①表明保証条項、②遵守条項、③前提条件、④補償条項を入れる必要があるのです。
表明保証条項は、単に事実の表明であり、売主の義務を定めたものではありません。ですので、表明保証条項を規定しただけでは、単に事実を表明したにとどまり、それが虚偽であっても何ら責任は発生しません。ですので、④の補償条項が必要になるのです。
特に①の表明保証条項については、実体が①表明保証内容と異なっていた場合に、買主が売主に対して④補償請求をすることができるということで、瑕疵担保責任に代わる役割を担っています。
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表明保証を記載する場合の留意点について
また、表明保証については、買主候補企業が想定している対象会社の状況についてすべて記載する必要があります。
M&Aしてみたら想定と異なっていたとしても、瑕疵担保責任の追及はできないのですから、買主候補企業が想定している対象会社の状況についてすべて記載する必要があるのです。
そして、買主候補企業が想定している対象会社の状況についてすべて記載しておけば、M&Aをして想定と異なっていた場合、①の表明保証条項違反として、④の補償条項に基づき損害賠償請求することができるのです。
ここまでしないと何かあっても一切文句を言うことができないというのは、M&Aの特殊性かと思われますし、M&Aで買主になるためには相当なM&A経験値が必要となりますので、やはり専門家の関与は必須ということかと思われます。
すなわち、基本合意書・最終契約書・関連契約書などのM&A契約書の検討・助言・交渉・作成について、これらの諸般の事情を考慮して、検討することが重要です。