M&A詐欺トラブルに巻き込まれた場合!
近時、M&Aがブームになっており、売主と買主の裾野が広がっているところですが、それに伴って、M&Aの経験の浅い素人の業者がにわかにM&A仲介業務を始め、知識も経験もないのに、M&A仲介を行うことで、売主及び買主に対して十分なアドバイスを行うこともせず、M&A詐欺を許してしまい、また間隙を縫って、M&A詐欺師が勃興してしまい、M&A詐欺により、M&Aの売主や買主が巨額の損失を負う、という傾向が強まっています。
また、この背景には、M&Aが手軽になり、多数のM&A仲介サイトが立ち上がり、売り手と買い手のマッチングを行うサービスが提供されているところ、M&A仲介サイトによるM&Aであるため、売主と買主とM&A仲介業者の人間関係が希薄になり、また、M&A仲介業者が素人化しているため、M&A詐欺師を見分けることができず、また、M&A詐欺師に容易に利益を持ち去られてしまう、M&A詐欺師の詐欺行為を未然に防ぐことができなくなっている、という背景があるように思われます。
すなわち、M&Aのプロセスに、専門性の高いM&Aアドバイザー(例えば、弁護士、公認会計士、税理士など)が介在しないことをいいことに、専門家がいなくなったM&Aマーケット、素人ばかりになったM&AマーケットにおいてM&A詐欺が横行しているという事実があるのです。
ではどんなM&A詐欺が実在するのでしょうか。
次の項目からは実際に起こっている事例をご紹介していきます。
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【検証】M&A詐欺が横行している?!
弁護士法人M&A総合法律事務所では多数のM&Aトラブルに対応しており、M&A詐欺の報告も多く受けます。
M&A詐欺に遭遇してしまうと、多大な損害を被ることになります。M&Aの代金相当額がそのまま損失になってしまうこともあるのです。
M&A詐欺にあった場合でも損害額が戻ってくればいいのですが、全額が戻ってくるということはほとんどないでしょう。
この項目では、なぜ、そのようなM&A詐欺が横行するのか、そしてどのようなM&A詐欺が横行しているのか、ということについて事例を挙げてご紹介していき、M&A詐欺に対する対策についても徹底検証していきます。
M&A詐欺被害は売り手企業にも買い手企業にも起こりうる
買い手側と売り手側にわけてM&A詐欺被害を具体的にご説明します。
買い手にはどんなM&A詐欺被害があるのか
M&Aの買主が遭遇するM&A詐欺の類型としては、以下の4つのM&A詐欺被害類型をあげることができます。
①売主が買主に対して、対象会社に関する情報を十分提供を受けられない、情報を出し惜しみされる結局、多大な損害を被る。
②買主が十分な情報開示を受けないままM&Aを実行してしまい、結局、多大な損害を被る。
③M&Aのリスクを回避すべきM&Aストラクチャーや取引形態や取引契約が使用されない結局、多大な損害を被る。
④売主が意図的に買主に損害が生ずるような取引形態を選択し、買主を追い込み、損害を被らせる。
この①②③④の結果、買主は多大な損害を被り、多大な資金を持ち出すこととなり、その資金負担に耐え切れず、対象会社を手放すこととなる。
この4つは、弁護士法人M&A総合法律事務所に相談が盛り込まれる代表的なM&A詐欺の類型です。
いずれも、専門性の高いM&Aアドバイザー(例えば、弁護士、公認会計士、税理士など)が関与しさえすれば、容易に未然に防ぐことができたものです。
買い手のM&A詐欺被害の典型例1
もっと詳しくご説明しますと、買い手側も、間違ったM&Aの知識とM&A仲介業者に振り回されてしまっている状態であることが指摘できます。
また、買主としては、売主から、対象会社の情報を十分に得て、納得してから、M&A買収しなければいけないのに、ある程度分かったところで、詳細よくわからない状態であっても、売主やM&A仲介会社にせかされて、勢いで、M&A買収をしてしまうのです。
ですので、買主は、対象会社のリスクを十分知らされることなく、対象会社の問題点について十分な情報を収集できないまま、見切りでM&A買収を実行してしまうのです。
買主としては、そうしないと、他の会社に、対象会社を買収されてしまう、取られてしまうという焦りから、見切りでM&A買収を実行してしまうのです。
M&A買主としては、清水の舞台から飛び降りて、多大な資金を投入し、M&A買収したところ、M&A買収した対象会社が、想定通りに業績を上げないとなると、大変困ってしまいます。
M&A買主としては、M&Aで対象会社を買収してしまったので、すでに、M&A価格とM&A仲介手数料を払ってしまっています。
ですので、M&A買主としては、もうこれ以上の出費は極力控えたいと考えています。
特に、近時においては、M&A買収をしたい会社が急増し、M&Aマーケットが急拡大していますが、それはM&A買主にとって競争率が激しくなったということ、それだか高い値段を出さないとM&Aで会社を買収することができなくなったことを意味します。
ですので、M&A買主としては、さらに、もうこれ以上の出費は極力控えたいと考えています。
また、M&A買主としては、身の丈を超えた資金をM&Aに投入してしまったという事例も多くあります。その結果、M&A買主の運転資金もカツカツになってしまったという事例もよくあります。資金力に余裕をもってM&Aができていないのです。
M&A買収した対象会社が、想定通りに業績を上げない結果、さらにおおくの運転資金が必要となり、買主が個人的に対象会社に対して運転資金を投入する必要が発生するという事態になることもあります。
その場合、M&A買主としては、想定外の資金の拠出が求められ、自分の資金繰りにも影響してきてしまいます。
M&A買主としては、対象会社は、M&A前も、M&A後も、自己資金で回って、継続的にゴーイングコンサーンで経営され、これまで通り又はそれとは大きく変わらない程度の利益を出し続けてゆくことを想定しています。
これまで対象会社が赤字ではなかったのであれば、これからも当面の間は黒字のままであることが当然の前提・想定です。
会社を買収する価格というのは、とても高額です。買主は、金融機関から融資を受けて、M&A資金を調達していることも多いでしょう。M&A買収した対象会社は赤字になり、かつ、買主本体は高額の借金まで背負い込むという最悪の事態にもなりかねません。
買い手のM&A詐欺被害の典型例2
また、M&A買収後、買主としては、当面の間、売主の社長などの経営者に対象会社に社長や顧問などの形で残ってもらい、対象会社の経営を引き続き行ってもらう場合があります。
そのために、M&A完了後は、売主が対象会社と業務委託契約を締結し、売主が当面業務委託を受けることは珍しいことではありません。
しかし、売主としては、すでに、対象会社は自分の会社でなくなっているということで、真剣に経営を行わず、いい加減に業務を遂行してしまい、その影響で対象会社の売り上げが伸びない又は急減するという状態が続き、取引先が離反し、対象会社の業績はどんどん悪化し、巨額の損害を発生させてしまうことになってしまうのです。
また、売主は、すでに、対象会社は自分の会社でなくなっているということで、対象会社の経営が面倒くさくなっていますし、役員報酬も、従前にオーナー社長・ワンマン社長であった時ほど高くはないため、経営に対するモチベーションは著しく低下し、業務委託料についても、少額だと何もしない、M&A前に言っていた業務委託料よりかなり高額な業務委託料でないと業務委託を受けない!などと言いだしたりします。
また、業務委託を受けた売主としては、対象会社の業績が悪化してきたら、買主に対して、「このままでは、事業資金がショートしてしまう!」などと危機感をあおり、買主としても、資金ショートしてしまうようであれば何とかしなければいけませんので、売主の業務受託者の要望を聞き入れ、次々と運転資金を拠出します。
は、業務委託を受けた売主としては、業務委託を受けているにもかかわらず、全く対象会社の経営状態を改善する努力はしないので、永久に対象会社の経営は改善しません。
また、そういう業務委託契約に限って、売主との業務委託契約を解除しようとしても、高額な解約違約金を設定してあったり、そもそも、M&A契約書において業務委託先は売主以外は選定できないこととされていたり、容易には、売主との業務委託契約を解約することができないのです。
また、何とか売主との業務委託契約を解約できたとしても、同じ業務を委託できる相手が、売主以外に存在しない、そんな会社、売主以外に経営できる人は存在しない、ということも頻繁に起きます。経営陣罪というのはそもそも少ないですし、対象会社のようなオーナー会社を経営できるのはその会社を構築したオーナー社長にいないというのが本当のところなのです。
また、近時は、M&A買主も十分な経営能力を持っていないため、売主であるオーナー社長がいなくなってしまうと対象会社の経営自体がままならない、その結果、巨額の損失が生ずる可能性が高い、そうであれば、そのような売主であるオーナー社長でもやむを得ないので、損失が発生したとしても、当面、対象会社の経営を業務委託するしかないということとなってしまうのです。
そうなると、買主としては、売主であるオーナー社長のいうことと聞くしか方法はなくなってしまいます。その売主であるオーナー社長がへそを曲げたら、買主に巨額の損失が発生してしまうのです。
そうであるからこそ、売主であるオーナー社長や業務委託を受けた売主又はその関係者による、対象会社の乱脈経営や巨額の損失の発生や運転資金の使い込み、M&A後に急に業績が悪化する事態が頻発しています。
M&Aに伴い元の経営者に対象会社の業務の引き継ぎをしてもらうのはとても大切なことですし、しばらくの間、売主であるオーナー社長に対象会社の業務を任せることができたなら、新しい経営者には大きなメリットとなりますが、本来メリットとなることがリスクへとつながってしまっているのです。
買い手のM&A詐欺被害の典型例3
また、専門性の高いM&Aアドバイザー(例えば、弁護士、公認会計士、税理士など)が介在しないことをいいことに、M&Aに伴い本来対応しておくべき措置が全く講じられていないことも多くなっています。
すなわち、M&Aにおいて必要な契約は、M&Aの株式譲渡契約書だけではありません。
株主が複数になる場合は株主間契約や合弁契約も必要ですし、売主であるオーナー社長から不動産か借りる場合は新規に不動産賃貸借契約書が必要です、売主であるオーナー社長のところに出店するのであれば出店契約書、商標を借りるのであれば商標ライセンス契約書、本来商標などは譲渡を受けるべきであるので商標譲渡契約書も必要ですし、しっかり業務委託をするのであれば業務委託契約書もしっかりしたものを締結しないといけません。
これまでは、売主であるオーナー社長だけが会社を経営していたわけですので、オーナー社長が存在していさえすればよかったのですが、M&Aでオーナーチェンジしてしまった以上、その穴を何らかの形で埋めなければいけません。M&Aで株式を譲渡するだけではなく、各取引内容を明確にし、取引契約をしっかり締結しないと、M&Aの後、対象会社は従前のとおり経営を継続することができず、巨額の損失が発生してしまうのです。
特に、売主であるオーナー社長やその関係者が、取引価格の値上げを要求してくることが必至です。
買主としては、M&A実行後、売主であるオーナー社長に業務委託しさえすれば、売主が引き続き対象会社を経営するのですから、従前どおり、業績が上がるであろう、従前どおりの業績が生ずることが当然であると考えてしまいます。当然のことです。
売主であるオーナー社長についても、まさかその人がM&A詐欺師だとは思っていませんので、従前どおり対象会社を経営してくれるだろうと想定して、引き続き同水準の業績が上がるという前提で買収します。
しかし、M&A詐欺師である売主であるオーナー社長は、そのような期待を敢然と破り、まともに対象会社を経営しませんので、対象会社の業績は急激に悪化します。
M&A買主としては、このM&Aに身の丈を超えた資金を投入してしまい、M&A買主の運転資金もカツカツになってしまい、資金力に余裕がなくなってしまいます。
M&A買収した対象会社が、想定通りに業績を上げない結果、買主としては、さらに多くの運転資金が必要となり、買主が個人的に対象会社に対して運転資金を投入する必要が発生するという事態になることもあります。
その場合、M&A買主としては、想定外の資金の拠出が求められ、自分の資金繰りにも影響してきてしまいます。
そして、買主がとうとうお手上げ状態になるのです。
対象会社の経営もよくわからない、対象会社をうまく経営できない、かつ想定外の資金の拠出が求められ、自分の資金繰りにも影響が生じてしまい、お手上げ状態になってしまいます。
M&A詐欺師は、買主がそうなるのを待っているのです。
買主が「もうだめだ!」と音を上げるのを虎視眈々と待っているということです。
買主としては、やむをえず、売主であるオーナー社長に対して、詐欺だ!などと主張し、M&A契約の解除を申し入れます。
売主であるオーナー社長は、M&A契約の解除を快諾しますが、対象会社の買戻価格は「ゼロ円」を主張します。対象会社が赤字なのだから企業価値はゼロであり「ゼロ円」であるのが当然とのことです。
対象会社は、M&A詐欺師が業務委託を受けているわけですから、取引先に対しても M&Aが行われたということは公表せずに。あたかもM&Aなどなかった、もともと売主であるオーナー社長であるM&A詐欺師が会社を経営していた、ということとしてしまい、買主の存在は葬り去られることとなります。
買主としては、対象会社を、高額のM&A代金を支払って買収したはずが、体よく、対象会社は乗っ取られてしまい、M&A代金は取られてしまうという結果になるわけです。
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売り手側にはどんなM&A詐欺被害があるのか
売り手のM&A詐欺被害の典型例1
会社売却について相談に行ったときに、M&A完了まで対応すると返答したにも関わらず、相談に行った以降全く連絡が途絶えている」という相談が当事務所へ来られる売り手側の方々より多数寄せられています。
M&A仲介会社のホームページなどを見て、売り手市場だから「今が売り時だ」といわれて相談に行ったけど、一向に買い手候補を探してくれない、経営状態に不安があるので、早く売却して資金力がある買い手に経営を続けてもらいたいのに、このままでは廃業しか選択肢がなくなってしまうという相談もあります。
ビジネスというのは、スピード感をもって続けていく必要があります。
売り手側というのは、後継者が不在、または経営者自身が高齢となってきて、時代が進むスピードについていけなくなる前に、会社の将来を考えたいと思ってM&Aを検討される方が多いのです。
今、人気があって、流行の先端といっても、1か月後には誰も見向きもしなくなることはよくあることです。ブームというのは長続きするものではありませんよね。
相談したときから、3,4か月たってしまえば、世情もすっかり変わってしまい、もっと早く売却すれば相当の高額で売却できたものが、二束三文になってしまうことなんてよく聞く話です。
悪質なM&A仲介会社というのは、その会社自体の値段が下がることを待っているといってもいいでしょう。安い価格で引き取り、高額で売却することで利益を上げていくのです。
大切な自社の事業を買いたたかれない方法としては、とにかくスピード感を持って、M&Aに対する交渉と調査をサポートしてくれるアドバイザーを見つけることです。
このようなスピーディーな判断と行動をとるためには、専門知識が不可欠なのです。
売い手のM&A詐欺被害の典型例2
また、買主の中には、もともと、M&A代金の全額を支払う意思がないような買主も多く存在します。
やはりここでも、特に、近時においては、M&A買収をしたい会社が急増し、M&Aマーケットが急拡大していますが、それはM&A買主にとって競争率が激しくなったということ、それだか高い値段を出さないとM&Aで会社を買収することができなくなったこと、M&A買主としては、もうこれ以上の出費は極力控えたいと考えていることが、遠因となっています。
対象会社を高い価格で買収するということは、対象会社が引き続き高い業績を維持することが前提です。
買主は、対象会社が引き続き高い業績を維持することが困難そうだと思っていても、M&A買収をしたい会社が急増し、競争率が激しいので、M&A価格が高くても買収してしまうのです。これは人間の性です。
しかし、そういう買主は、M&A価格を分割で支払えば、後日、対象会社の業績が悪化した場合、第二回払い以降については、ゴネること、クレームを入れること、により、支払いを免れることができることを知っているのです。
すなわち、M&Aの売主は、買主に比べて財政規模が小さいですので、買主に対して、訴訟を提起したりしたくないと思っています。そこに、買主が一方的に、ゴネたり、クレームを入れたりすれば、紛争になることを恐れて何も言わないだろうと思っているのです。現に、売主は、財政規模も小さく、紛争になることを恐れて何もしません。
ですので、買主は、M&A代金の分割払いの第二回払い以降を踏み倒すことができるのです。
退職慰労金や不動産の賃料、商標ライセンス料や、顧問料なども、買主は簡単に踏み倒すことができるのです。
買主としては、表明保証条項違反だった、説明が虚偽だった、そのようなことは聞いていなかった、重要な事実を隠していた、契約違反だ、だからその損害賠償請求権とM&A代金の分割払いの第二回払い以降とを相殺する!などなど、M&A代金の分割払いの第二回払い以降を踏み倒したいのであれば、何とでも理由が付くのです。
近時のM&A詐欺師は、もし対象会社の業績が悪化したら、そのようなことを言って、M&A代金の分割払いの第二回払い以降の支払いを踏み倒せばよいとあらかじめ考えているのです。
とんでもない話です。
実際の事例を紹介!
ネイルサロンを購入した経営者の場合(買い手が被害者)
今度は、実際にあった買い手側の被害について、事例をご紹介します。
【買い取ったネイルサロンが赤字経営だった】
M&A仲介会社経由で、ネイルサロンを買収したけれど、開業当時から一度も黒字になっていないネイルサロンだったのです。
経営年数も3年ほどの比較的若いサロンなので、売りに出ている事が訳ありだということは察しられました。しかし、その分売却金額も同じ規模のネイルサロンにしては安価だったので、買い手側の経営者が既に経営している美容室とも相性が良いと思い、買収を決断しました。いざ経営してみると、月額制をとっていて会員が存在している、今は赤字だけれども会員からの紹介もあるので新規顧客が増加して、将来的には黒字に転向するという説明でしたが、買収してみるとほとんど会員は退会していて残っていない状態だったのです。M&A仲介会社が介入してデューデリジェンスも行ってはいたのですが、それは上辺だけのものでデューデリジェンスとは言えない代物でした。開業時より金融機関から多額の借入金が発生していて、計画通り返済できていないのです。財務データ自体が虚偽の内容だったということです。
結局のところ、訴訟にまで発展はしたのですが、判決は売主に瑕疵は認められない、買い手側の確認不足という判断になりました。
介護サービス業売却を検討している経営者(売り手が被害者)
今度は売り手側が被害者の事例なのですが、現在のM&A市場では、介護サービス業などのように、利用者が一定数存在して、毎月利用料が収入となる「ストック型ビジネス」は人気なのです。
ですから、介護サービス業を売却するとなるとすぐに買い手は現れる可能性は高い、にもかかわらず相談に行ってからまたされた挙句に、音沙汰がなくなったのです。
売り手側の経営者は、デイサービスを行っている業者だったのですが、人材の確保が難しく、大手企業への買収を希望していました。
利用者に対して、対応できるスタッフが不足しているのですから、経営を続けていくには利用者を減らす必要ができてきます。
要するには毎月の売り上げが減っていくわけです。相談してから1年近くたったころに、M&A仲介会社から連絡があり、今なら買い手希望がいますといわれたのです。
そのころには、売却を検討した当時の売り上げから3分の1以上ダウンしている状態でしたし、スタッフの数も減少しています。
提示された売却金は、当初希望していた価格よりも大幅にダウンした金額でした。
事例からわかること
買い手側、売り手側の両サイドにおいてのM&A詐欺被害について事例をご紹介しました。
この事例の特徴として、被害に遭っている売り手、買い手ともにM&A詐欺に遭ったという自覚がなかったということです。
自分たちの確認の仕方が悪かった、経営している会社の価値が思ったより低かったというように思っているのです。
どうしてこのような状況に陥ったのか?
買い手、売り手の落度を挙げるとするならば、相談に行ったM&A仲介会社が悪質であったということ、そしてそれに気づかなかったことと、その悪質M&A仲介会社に大切なM&Aについて丸投げしてしまったというところです。
まず、M&A専業のアドバイザーの存在は、M&Aを成功させるには不可欠です。
どのようなアドバイザーを選定すればいいのか?いかにそのポイントをご紹介します。
- M&Aの知識と実績を備えている専門家(弁護士、公認会計士、税理士)が在籍しているか
- 専門家が直接、M&Aに関しての調査と交渉に対応してくれるか
(知識、資格がない営業スタッフが対応していないかどうか) - 相談に行った後、その後のレスポンスはスピーディーに行っているか
相談に出向いて、会社の内情について報告しているにもかかわらず、何か月もそのまま放置しているような仲介会社は言語道断です。
そのような仲介会社とは、かかわること自体を避けたほうがよいでしょう。
また、上辺だけでメールの返信、電話などがあったとしても、その内容が具体的に買い手を紹介するという内容でなく、ただ引き留めて、時間ばかりをかけるような内容だとしたら、その仲介会社も避けるべきです。とにかく相談に行って、その企業のある程度の内容がわかれば、すぐにM&A可能かどうかの返事をする必要があります。
このような基本的な対応ができない仲介会社とは付き合わないことをお勧めします。
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被害に遭わないための対応策とは?
M&A詐欺被害に遭わないために、弁護士としてお話させていただきたいことがあります。
昨今のM&Aブームについてです。
最近のM&Aは、中小企業経営者の間でブームになっているといっても過言ではありません。
なので、M&A仲介会社には、多くの買い手側企業が集中しているのです。
ですから、会社自体の売却金額が高止まりの状態です。
高騰している状態ですから、ギリギリの高値での買収となります。
買主としては対象会社が 想定外にその業績が上がらなかった場合 、多額な損失発生してしまうということになります。この状況はぜひとも避けたいですよね。
会社の事業価値というものを的確に、相応の金額に算出できる能力は、専門家である弁護士や公認会計士にしか備わっていません。
知識だけでなく、経験も必要となってきます。
買収したあとに、損害をだすようなM&Aでは成功したとは言えませんし、既存の事業にも悪影響を与えてしまいます。
買収後のシナジー効果を得るためにも、M&Aを検討した当初から、M&A実務の専門家である弁護士にご相談いただきたいと思います。
私たち弁護士法人M&A総合法律事務所には、弁護士、公認会計士、税理士といったM&Aの専門家がそろっています。
まず、一度、ご相談ください。