M&A詐欺の手口とは?弁護士が見極め方・防止策・被害時対応を解説

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M&Aは、後継者問題の解決や事業成長の手段として有効です。一方で、取引の相手方や支援者の選び方、支払条件の設計、クロージング後の運用を誤ると、成立後に深刻なトラブルへ発展することがあります。

特に注意したいのは、次のような場面です。譲渡対価の大部分が後払いになっている、経営者保証の解除を「できる」と言われているが具体的な段取りが見えない、クロージング後の資金管理や権限移転が曖昧なまま進む。こうした状態は、悪意ある相手に狙われやすいだけでなく、悪意がなくても揉めやすい典型です。

本記事では、売り手(譲渡側)・買い手(譲受側)の双方に向けて、M&A詐欺(詐欺的なM&Aトラブル)で多い手口、取引前にできる見極め方・防止策、そして「怪しい」と感じたときの初動対応を、できるだけ分かりやすく整理します。なお、個別案件の見立ては事情により変わるため、具体的な判断は弁護士へご相談ください。

※本記事は一般的な情報提供を目的とするもので、個別案件の判断は事情により異なります。

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Contents
  1. M&A詐欺は相手・契約・資金を固めて被害を避けやすくする
    1. M&A詐欺で多い取り返しがつかない3つの失敗
    2. 売り手も買い手も狙われる理由
  2. M&A詐欺とは?詐欺と契約トラブルの違い
    1. M&Aで起きがちな紛争タイプ3分類
  3. 売り手が狙われるM&A詐欺の主な手口
    1. 譲渡対価の後払い・未払いが起きるパターン
    2. 経営者保証の解除が実行されないリスク
    3. 買収後の資金流用・内部留保の吸い上げ
    4. 急かす・情報を出さない・説明が変わるなど行動面の危険サイン
  4. 買い手が狙われるM&A詐欺・悪質案件の典型
    1. 粉飾決算・架空売上・在庫水増しの兆候
    2. 債務・訴訟・未払残業・許認可など見えにくい地雷
  5. 詐欺会社と疑われる相手を見抜くチェック方法
    1. 相手企業の実在性と資金力を確認する
    2. 仲介会社・FAの説明姿勢と透明性を見極める
    3. 契約・支払条件で必ず確認したいポイント
  6. M&A詐欺が疑われる場合の対応方法
    1. まず取引を止める|追加送金・追加開示は慎重に
    2. 証拠保全|あとから集められないものから確保する
    3. 資金の散逸を止める手続|仮差押え・仮処分を検討する
    4. 連絡・交渉の注意点|不用意な発言が不利になることもある
    5. M&A詐欺トラブルに強い弁護士の選び方
  7. 当事務所が対応できるM&A詐欺・トラブルと解決事例
    1. 売り手(譲渡側)のご相談例
    2. 買い手(譲受側)のご相談例
    3. 仲介会社・FAが絡むトラブル(支援者との紛争)
  8. よくある質問
    1. M&A詐欺はなぜ増えているのでしょうか?
    2. M&Aにおける悪質な買い手とは?
    3. 契約書があれば詐欺にはならないのですか?
    4. 返金や損害回復はできますか?
  9. M&A詐欺トラブルにお困りならご相談ください

M&A詐欺は相手・契約・資金を固めて被害を避けやすくする

M&Aで「詐欺かもしれない」と感じる場面の多くは、次の3つの弱点を突かれて起きます。

  1. 相手の確認が甘い(実在性・資金力・実態)
  2. 契約が曖昧(重要条件が口約束のまま)
  3. 資金と権限の管理が弱い(クロージング後の統制)

逆にいえば、手順が複雑に見えても、この3点を先に固めるだけでリスクは大きく下げられます。焦って前へ進むほど、確認と合意形成が後回しになりやすいので、順番を意識することが重要です。

M&A詐欺で多い取り返しがつかない3つの失敗

相手の実在性と資金力を確認しないまま進める

「会社は実在している」「資金はある」「支払いは問題ない」と説明されても、裏取りができていないままクロージングに進むと、後から回収不能や長期の紛争になりやすくなります。

最低限、次のような点は事前に確認しておきたいところです。

  • 登記事項証明書(商業登記)や法人番号、所在の確認ができるか(住所が実在するか、連絡先が固定か等)
  • 交渉担当者の権限が裏付けられるか(代表者・取締役の関与、決裁者の同席、委任状等)
  • 買収資金の裏付けがあるか(残高証明、融資内諾の有無、資金の出所と支払スケジュール)
  • 反社会的勢力に該当しないことを確認できるか(反社会的勢力排除条項〔反社でないことの表明等〕、外部調査の活用)
  • 重要情報の開示姿勢に不自然さがないか(出せない理由が曖昧、話が二転三転する等)

売り手・買い手のどちらの立場でも、「確認できるものが確認できない」状態が続くなら、一度立ち止まる判断が必要です。

後払い・保証解除など重要条件を口約束で済ませる

深刻化しやすいのは、重要条件が「合意したつもり」で止まっているケースです。たとえば、譲渡対価の後払い(分割払い)、経営者保証の解除・移行、クロージング後の運営条件(役員の残任、顧問契約、雇用維持など)。これらは、後から争点になりやすい代表例です。

ポイントは、条件を文章に落とすだけでは足りないという点です。いつまでに、誰が、何を、どの手続で行い、できなかった場合にどうするのか。実行確保まで含めて設計して初めて「約束」になります。

クロージング後の資金と権限移転を甘く見る

M&Aは、クロージングがゴールではありません。むしろ危ないのはその後です。クロージング後は、資金の動きや権限が一気に変わります。ここが曖昧なままだと、資金流用や不透明な資金移動、合意条件の不履行、統制不全による損失拡大などにつながりやすくなります。

「契約は結んだのに、現場が動かない」「相手の対応が急に雑になった」「話が変わり始めた」といった違和感が出た段階で、損害が広がる前に手当てすることが重要です。

売り手も買い手も狙われる理由

売り手は焦りが突かれやすい

売り手側は、後継者問題や資金繰り、業績悪化などで「早く決めたい」心理になりがちです。そこに、好条件の提示や「すぐ決めないと機会を逃す」といった圧力が重なると、相手確認や契約の詰めが後回しになり、リスクが跳ね上がります。

買い手は情報の非対称性が起きやすい

買い手側は、構造的に「見えない情報」が残りやすい立場です。数字や契約関係、労務、許認可、取引先の実態など、後から問題が出やすい領域ほど、短期間の検討では見落としが起きます。時間がないほど調査や契約の詰めが甘くなりやすい点も注意が必要です。

少しでも違和感がある場合は、取引を拙速に進めず、まず状況を整理することが大切です。連絡記録や資料、契約書類など手元にある情報をまとめたうえで、弁護士へ相談することで、損害の拡大を防げる可能性があります。当事務所へのご相談は、お電話またはお問い合わせフォームから受け付けています。

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M&A詐欺とは?詐欺と契約トラブルの違い

「M&A詐欺」という言葉は法律用語ではなく、「だまされた」「約束が守られない」「話が違う」といった状態をまとめて指す言い方として使われることがあります。

ただ、法的に取り得る手段は、刑事事件として詐欺罪(刑法246条)が問題となり得るのか、民事上の債務不履行(民法415条)や不法行為(民法709条)として整理するのか、仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー(FA)との間の説明義務違反等が中心なのかで大きく変わります。

  • 刑事事件として詐欺罪(刑法246条)の成否を検討すべきか
  • 債務不履行(民法415条)や不法行為(民法709条)として民事上の請求を組み立てるべきか
  • M&A仲介会社(仲介者)やファイナンシャル・アドバイザー(FA)との間の説明義務違反、利益相反などが中心なのか

ここを早い段階で整理できると、「何から手を付けるべきか」「どの証拠が重要か」「どの手段が現実的か」が見えやすくなります。

M&Aで起きがちな紛争タイプ3分類

刑事事件として詐欺罪(刑法246条)が問題になるケース

詐欺罪は、相手がうそをつくなどしてこちらを誤信させ、その誤信にもとづいて財産を交付させる行為が問題となります。

M&Aでは、買い手の実在性や資金力を偽る、最初から譲渡対価を支払う意思がないのに「支払う」と説明して契約締結や株式の引渡しをさせる、重要な債務や紛争を隠して譲受側に買収対価の支払いをさせるといった場面が典型です。

ただし、実際の案件では「不誠実な取引だった」というだけでは足りず、刑事事件として成立するかは、やり取りの内容や証拠、相手の言動の経緯などの総合評価になります。

そのため、「詐欺だ」と決め打ちするよりも、まずは事実関係と証拠を整理して、どの枠組みで動くのが適切かを見極めることが重要です。

民事上の取消し・解除・損害賠償として争うケース

M&Aで多いのは、刑事事件としての詐欺罪の立証よりも、契約関係を前提に民事上の請求を組み立てる場面です。

相手の説明が虚偽で、それが契約締結の判断を左右した場合には、詐欺による意思表示の取消し(民法96条)や錯誤による取消し(民法95条)が問題になることがあります。契約締結後に約束が守られない場合は、債務不履行(民法415条)にもとづく解除や損害賠償が中心になります。

  • 譲渡対価(株式譲渡代金等)が支払われない(後払いが滞る、支払条件が変更される)
  • 経営者保証の解除・保証人変更など、重要条件が履行されない
  • 開示内容と実態が違うとして、表明保証違反や補償(損失補填)の請求が問題になる
  • 役員退職慰労金、顧問料、引継ぎ協力など付随条件が履行されず、対価の実質が崩れる

これらは悪意がある場合もありますが、民事では「契約上の義務が履行されていない」「説明と実態の食い違いで損害が生じた」と整理して進むことが多いです。

取消しや解除を主張する場合でも、根拠となる説明内容、契約書の文言、交渉過程の記録が争点になります。金銭の返還を求める局面では、不当利得返還請求(民法703条・704条)が問題になることもあります。

M&A仲介会社(仲介者)・ファイナンシャル・アドバイザー(FA)とのトラブルが中心のケース

当事者間だけでなく、M&A仲介会社(売り手と買い手の間に入り、双方から手数料を受け取る形もある事業者)やファイナンシャル・アドバイザー(片方当事者の代理人として助言する立場)との間で紛争になることもあります。

手数料の算定根拠や解約時の精算、調査の範囲、重要事項の説明、利益相反(売り手と買い手の利害が対立すること)への対応などが争点になりやすいです。

このタイプは、相手方当事者との交渉と並行して、支援者との関係整理も必要になりやすいのが特徴です。やり取りの経緯、契約書、提案内容、説明資料など、時系列で整理できると見通しが立ちやすくなります。

このように、「詐欺かどうか」を決めること自体も大切ですが、同じくらい大切なのは「どの枠組みで、何を守るべきか」を早期に整理することです。違和感がある段階で、契約書・交渉記録・支払条件・相手の説明資料などを一度まとめ、弁護士に相談して見立てを立てると、損害の拡大を防げる可能性があります。

売り手が狙われるM&A詐欺の主な手口

売り手(譲渡側)が巻き込まれやすいのは、「譲渡対価を確実に回収できるか」「経営者保証が本当に外れるか」「譲渡後に会社のお金がどう扱われるか」という、生活と信用に直結するポイントです。ここが曖昧なまま進むと、取引が成立したように見えても、後から立場が一気に弱くなることがあります。

譲渡対価の後払い・未払いが起きるパターン

売り手の被害で多いのが、譲渡対価の一部または大部分が後払い(分割払い)になり、途中から支払いが止まる、条件を変えられる、回収が難航する、といった展開です。後払い自体が直ちに違法というわけではありませんが、設計と確認が甘いとトラブルになりやすい点に注意が必要です。

支払期日・担保・解除条件が曖昧なまま進む危険

後払いが入る場合は、「いつ」「いくら」「どうやって支払うか」が明確であることに加えて、「支払われない場合にどうするか」まで決めておくことが重要です。特に揉めやすいのは、次のような曖昧さが残っているケースです。

  • 支払いの期限や分割スケジュールが、日付まで落ちていない
  • 支払いが遅れたときの取り扱いが決まっていない(遅延、解除、違約金など)
  • 担保や回収の見通しについて、説明はあるが裏付けが弱い

「払うと言っているから大丈夫」という状態は、後から一番苦しくなりやすいポイントです。

後払いを採るなら、回収の仕組みまでセットで決める

後払い(分割払い)を受け入れる場合は、「未払いになったらどう回収するか」を契約と同じ重さで決めておく必要があります。

代表的な手当てとして、留保金(買収対価の一部を一定期間保留する扱い)、エスクロー(第三者口座への預託)、買い手や関係会社の連帯保証、担保設定(株式・不動産等)、期限の利益喪失条項(一定の遅滞で残額一括請求できる条項)などが挙げられます。

金銭支払義務について強制執行を見据えるなら、強制執行認諾文言付公正証書の作成を検討することもあります。

最初は払うが途中で止まる兆候

途中から支払いが止まるケースでは、事前の段階で小さな違和感が出ていることも少なくありません。たとえば次のようなものです。

支払いの話になると説明が抽象的になる、必要資料の提出や合意文書の作成を先延ばしにする、こちらの不安を解消するより「早く進めよう」を繰り返す。こうした兆候が重なるなら、条件が固まる前にクロージングへ進むのは避けたほうが安全です。

経営者保証の解除が実行されないリスク

売り手にとって切実なのが、経営者保証の扱いです。経営者保証とは、会社の借入について社長個人が保証人になっている状態を指し、譲渡後も残ると「会社を譲ったのに個人の責任だけ残る」状況になり得ます。

M&Aの場面では「保証は外します」と言われることがありますが、ここは口約束のまま進めると危険です。

金融機関の判断が絡み、買い手だけで完結しない理由

経営者保証の解除や保証人変更は、債権者である金融機関の同意が前提です。経営者保証に関するガイドラインや、事業承継時の特則に沿って、財務内容や管理体制、担保の状況などを踏まえて判断されるため、買い手が「外します」と言うだけでは進みません。保証を外す代わりに新しい保証人や担保が求められたり、借入条件の変更手続が必要になったりすることもあります。

そのため、「買い手が外すと言った」だけで安心せず、金融機関との調整の進め方まで含めて、見通しを立てておく必要があります。

条件化と期限設定の考え方

保証解除を重要条件とするなら、「いつまでに」「どの手続で」「できなかった場合どうするか」を曖昧にしない設計が必要です。たとえば、保証解除をクロージング条件(前提条件)として位置付け、解除が完了するまで株式の引渡しや対価の支払いをしない、または解除できない場合の代替条件(追加担保、対価調整、解除権など)をあらかじめ決める方法が考えられます。

ここは案件ごとの差が大きいので、早い段階で弁護士に相談し、現実的に実行できる形に落とし込むことが重要です。

買収後の資金流用・内部留保の吸い上げ

譲渡後に起きる深刻なトラブルとして、「会社のお金の動きが不透明になった」「資金が外部へ流れた」「結果として資金繰りが悪化した」といった問題があります。クロージング後は経営権が移るため、売り手がコントロールしにくくなるのが難しい点です。

通帳・印鑑・ネットバンク権限の移転と管理

資金流用の芽が出やすいのは、資金に触れる仕組みが整理されないまま、権限だけが移ってしまうときです。通帳・印鑑・ネットバンクのIDや承認権限、経理の支払フローなどは、譲渡の前後で「誰が何をできるか」を明確にしておく必要があります。

役員・経理体制が弱い会社ほど危ない理由

小規模な会社ほど、経理が属人化していたり、ダブルチェックが機能しにくかったりします。その状態で権限移転が起きると、「何が起きているのか分からない」「気づいたときには手遅れ」という展開になりやすいのが実情です。

急かす・情報を出さない・説明が変わるなど行動面の危険サイン

契約書の条文以前に、「相手の行動」そのものが危険サインになることがあります。売り手側は、後継者問題や資金繰りの焦りがあるほど、相手のペースに乗せられやすいので注意が必要です。

不自然なスピード感と不合理な条件提示

やたらと決断を急がせる、確認や検討の時間を与えない、重大条件が不自然に甘い(高額評価、後払い多め、保証解除を簡単に約束する)といったときは、一度立ち止まるべき場面です。急ぐ理由が合理的に説明できない取引は、後から問題が出やすくなります。

説明の一貫性欠如と連絡の雑さ

質問への回答が毎回変わる、担当者が頻繁に変わる、重要な話が口頭だけで進む、資料の提示を渋る。こうした状況が続くなら、条件を固める前に進めるほどリスクが高まります。

違和感がある場合は、取引を拙速に進めず、まずは契約書案、支払条件、相手からの説明資料、やり取りの記録を整理し、見立てを立てることが重要です。弁護士に相談することで、止めるべきポイントや、交渉で修正すべき条件が明確になることがあります。

買い手が狙われるM&A詐欺・悪質案件の典型

買い手(譲受側)が巻き込まれやすいのは、「買ってから分かる」タイプのトラブルです。

売り手側が意図的に隠している場合もあれば、売り手自身が問題を軽く考えていて結果的に重大な食い違いになる場合もあります。いずれにせよ、買い手側は情報の入口を握りにくい分、調査と契約で守りを固める必要があります。

粉飾決算・架空売上・在庫水増しの兆候

数字のトラブルは、買収後に資金繰りへ直撃しやすい代表例です。特に注意したいのは、売上や利益が「帳簿の上だけ」になっているケースや、在庫・売掛金などが実態より大きく見えるケースです。

見抜くうえで大切なのは、「利益が出ているか」より「現金が残っているか」「売上が実在しているか」を丁寧に確認することです。たとえば、決算書の説明がきれいでも、入出金の流れや請求・回収の実態が噛み合わないときは注意が必要です。

調査では、次のような資料同士を突き合わせて整合を確認します。ここは短時間でもやる価値が高い部分です。

  • 試算表・総勘定元帳と、銀行口座の入出金
  • 売上の根拠となる請求書・契約書と、入金の実績
  • 売掛金の年齢表や回収状況と、実際の入金ペース
  • 在庫の数量・評価方法と、棚卸の実施状況

また、売上が特定の取引先に偏っている場合は、その取引が継続する蓋然性も含めて確認が必要です。買収後に主要取引先が離れれば、数字は一気に崩れます。

債務・訴訟・未払残業・許認可など見えにくい地雷

買い手側が痛手を負いやすいのは、簿外債務や将来の支払い義務など、「決算書に見えにくい負債」です。たとえば、次のようなものが典型です。

  • 取引先との紛争や、将来の損害賠償リスク
  • 退職金・残業代など労務面の未払リスク
  • 税務上の否認リスクや、過去処理の不備
  • 許認可が実は要件を満たしていない、更新が危うい
  • リース・保証・解約違約金など、契約上の潜在コスト

こうしたリスクは、売り手が「問題ないと思っている」こともあります。だからこそ、売り手の説明をそのまま受け取るのではなく、契約書や客観資料で確認し、契約上の手当てまで含めて設計することが重要です。

契約面では、表明保証や補償条項でリスクをカバーする設計がよく取られます。ただし、条項があるだけで安心はできません。

どの範囲まで、いつまで、どんな手続で請求できるのか。実際に回収可能な形になっているかがポイントです。特に、買収対価の支払い方法や支払いタイミング(例えば一部留保など)は、トラブル時の実効性に直結します。

買い手側のトラブルは、買収後に発覚してからでは手遅れになりがちです。だからこそ、調査で兆候を拾い、契約と支払い設計で守りを固め、クロージング後の運用まで見据えて進めることが大切です。違和感がある場合は、契約書案・開示資料・やり取りの記録を整理したうえで、早めに弁護士へ相談すると見通しが立ちやすくなります。

詐欺会社と疑われる相手を見抜くチェック方法

相手に違和感があるときほど、「印象」だけで判断すると危険です。M&Aで大切なのは、相手の言葉を信じるかどうかではなく、確認できる事実と、契約で守れる仕組みが揃っているかです。

ここでは、売り手・買い手のどちらにも共通する確認ポイントを、相手・仲介・契約の3つに分けて整理します。全部を完璧にやる必要はありませんが、「確認できない状態のまま進めない」ことが最重要です。

相手企業の実在性と資金力を確認する

まず最優先は、相手が実在し、支払い能力(または履行能力)があるかです。M&Aでは、ここが甘いと後から取り返しがつかなくなりやすいです。

確認の基本は、次の3点です。

  1. 実在性:本当にその会社が活動しているか
  2. 体制:交渉担当と意思決定者が一致しているか
  3. 資金力:支払える根拠があるか(言い分ではなく裏付け)

例えば、次のような点が「不自然さ」を見つける手掛かりになります。

  • 会社情報は語れるのに、事業の実態や取引の中身が薄い
  • 担当者は強気だが、決裁者が出てこない、話が前に進まない
  • 資金の説明が抽象的で、質問すると論点をずらされる
  • 「支払いは問題ない」の一点張りで、根拠資料の提示を嫌がる

売り手の場合は「この買い手から確実に回収できるか」。買い手の場合は「この売り手が重要情報を隠していないか」。見る方向は違っても、結論は同じで、裏取りできない状態が続くなら一度止める判断が必要です。

仲介会社・FAの説明姿勢と透明性を見極める

仲介会社やFAが入ると、当事者だけでは進めづらい交渉が前に進む一方で、説明不足や利害のズレがトラブルの原因になることもあります。

見極めのポイントは、能力の高さよりも「説明の仕方が誠実かどうか」です。特に次のような点は、早めに確認したいところです。

  • 手数料や支援範囲が明確で、質問に真正面から答えるか
  • リスクやデメリットも含めて説明してくれるか
  • 重要な条件が、口頭ではなく文書に落ちているか
  • 急かす理由が相手都合ではなく、合理的に説明されているか

中小企業のM&Aでは、中小企業庁が公表する中小M&Aガイドラインで、仲介者とFAの違いや、説明の在り方、利益相反への対応などが整理されています。

また、M&A支援機関登録制度に登録されているかどうかは、支援者選びの一つの目安になります(登録は免許ではありませんが、注意喚起や登録取消しが公表されることもあります)。

加えて、一般社団法人M&A仲介協会には、会員間で不適切な買い手に関する情報を共有する仕組み(特定事業者リスト等)があるため、支援者に確認できる場合は確認しておくと安心です。

違和感があるときに、「大丈夫です」「よくあります」で押し切る支援者は要注意です。むしろ、立ち止まるべきポイントを一緒に整理してくれるかどうかが、信頼性の判断材料になります。

契約・支払条件で必ず確認したいポイント

相手や支援者の印象が良くても、最後に自分を守るのは契約です。特にトラブルになりやすいのは、後払い、保証解除、クロージング後の運用条件など、「あとで揉める論点」が曖昧なまま進むケースです。

確認のコツはシンプルで、各条件について次の3点が揃っているかです。

  1. 条件の中身が具体的か
  2. 期限と手続が決まっているか
  3. 守られない場合の扱いが決まっているか

たとえば、後払いがあるなら「払う」の合意だけでは足りません。いつまでに、いくらを、どう管理し、止まったらどうするのかまでがセットです。保証解除も同様で、「外す予定」ではなく、どの手続で、いつまでに、できないときの代替策は何か、が重要になります。

条文の見た目が整っていても、実行できない内容になっていれば意味がありません。ここは早い段階で弁護士に確認し、現実に動く形に整えるのが安全です。

M&A詐欺が疑われる場合の対応方法

「何かおかしい」と感じたとき、いちばん避けたいのは、状況が整理できていないまま相手のペースで動いてしまうことです。初動でやるべきことはシンプルで、取引を止める、証拠を守る、発言と連絡を管理する。この順番を崩さないだけで、被害の拡大や回収可能性が大きく変わることがあります。

まず取引を止める|追加送金・追加開示は慎重に

疑いがある段階では、次のような行為を急いで進めないことが重要です。

  • 追加の送金や立替、保証、名義の変更
  • 追加資料の提出や、権限(ID・口座・承認権限など)の引き渡し
  • 重要条件の変更や、合意書の差し替えを軽い気持ちで受けること

相手から「今だけ」「早くしないと破談」「手続上必要」と言われると動きたくなりますが、ここで動くほど、後から止めづらくなります。まずは一旦止めて、何が起きているかを整理することが先です。

証拠保全|あとから集められないものから確保する

次に重要なのは証拠です。揉めたときは、「何が合意だったか」「相手が何を言っていたか」「いつ崩れたか」が争点になります。証拠は後から集められるものもありますが、消えるものも多いので、先に確保しておくことが大切です。

まず確保したいのは、取引の骨格と、お金の動きと、説明の記録です。

例:契約書一式・メール・チャット・送金記録・面談メモ

細かい体裁は後で整えられます。先に「消える前に保存する」「散らばっているものを集める」を優先してください。

資金の散逸を止める手続|仮差押え・仮処分を検討する

未払いが見えている、会社口座から不自然な送金が続く、資産が移転されそうだという状況では、資金の散逸を止める手続を早めに検討します。

代表例が仮差押え(預金口座、不動産、売掛金等)や仮処分(株式の処分禁止、帳簿閲覧の確保等)です。いずれも、請求の根拠資料と、保全の必要性(このままだと回収が難しくなる事情)を示すことが求められ、担保金の供託が必要になることもあります。

状況によって適否が分かれるため、資料を揃えたうえで弁護士に早めに相談することが重要です。

連絡・交渉の注意点|不用意な発言が不利になることもある

違和感があるときほど、相手に問い詰めたくなりますが、連絡の取り方次第で状況が悪化することがあります。例えば、こちらの手の内(証拠の有無、資金状況、譲れない条件)を不用意に出してしまったり、感情的なメッセージを送ってしまったりすると、相手に時間稼ぎや証拠隠しの余地を与えることもあります。

この段階では、言い分の勝負よりも、事実関係と証拠の整理が優先です。

連絡前に整理すべきポイント

  1. いま起きている問題は何か(未払い、保証解除未了、資金移動の不審、説明不一致など)
  2. いつから、どの説明が崩れたのか(時系列)
  3. こちらが求める落としどころは何か(停止、資料提出、条件修正、支払履行など)

この整理ができたうえで、連絡内容を短く、記録に残る形で行うほうが安全です。必要に応じて、弁護士を窓口にすることも選択肢になります。

M&A詐欺トラブルに強い弁護士の選び方

「弁護士なら誰でも同じ」というわけではなく、M&Aのトラブルは契約と手続の論点が多いため、経験領域の相性が重要です。相談先を選ぶときは、肩書よりも、初動の速さと、論点整理の力を見たほうが失敗しにくくなります。

M&A契約と紛争の経験

M&Aは、一般的な契約トラブルよりも、条項の設計・交渉経緯・クロージング後の運用が絡みます。M&Aの契約や紛争対応に触れているかどうかで、見立ての精度とスピードが変わりやすい分野です。

売り手・買い手・仲介トラブルまで対応できるか

売り手だけ、買い手だけの視点だと、相手が出してくる反論や次の一手を読み違えることがあります。また、仲介会社・FAが関与する案件では、当事者間の問題と支援者との問題が同時に起こることもあるため、対応範囲を確認しておくと安心です。

初動の速さと連絡体制

トラブルは時間が経つほど証拠が散り、資金が移り、相手の所在も追いにくくなります。だからこそ、初動の速さは重要です。相談時には、いつまでに何を揃えるべきか、どの順番で動くべきかを具体的に示してくれるかどうかが判断材料になります。

違和感がある段階でも、早めに整理して動ければ、止められる可能性は高まります。

\M&Aの詐欺やトラブルでお困りの方へ/

M&Aトラブルは、早期での専門的アドバイスが解決の近道となります。
M&Aトラブルに強い弁護士法人M&A総合法律事務所では、ご相談に対して迅速にサポートいたします。

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当事務所が対応できるM&A詐欺・トラブルと解決事例

M&Aのトラブルは、問題の性質が「お金」「契約」「保証」「資金管理」「情報開示」「人・取引先」など多岐にわたります。さらに、売り手・買い手のどちらの立場かによって、守るべきものと優先順位が変わります。

当事務所では、M&Aの局面で起きやすい紛争について、事実関係の整理から交渉、必要に応じた法的手続まで、状況に合わせた対応を検討します。以下はご相談が多い典型例です。

売り手(譲渡側)のご相談例

売り手側で多いのは、「譲渡したのに安心できない」状態が残るケースです。代表的には、譲渡対価の未払い・後払いの不履行、経営者保証の解除が進まない問題、クロージング後の資金移動が不透明になった問題などが挙げられます。

売り手側のトラブルは、時間が経つほど主導権を取り戻しにくくなる傾向があります。だからこそ、未払いが起きた時点、説明が変わった時点、資金の動きに違和感が出た時点で、早めに状況を整理して次の一手を決めることが重要です。

買い手(譲受側)のご相談例

買い手側で多いのは、「買ってから分かる」タイプの問題です。粉飾や重要リスクの未開示が疑われる、表明保証違反や補償請求の要否が争点になる、キーマン離脱や顧客離反で前提が崩れる、許認可・労務・契約関係の地雷が発覚する、といった場面があります。

買い手側では、感情的に相手を追及するよりも、まずは契約と証拠に基づいて、どこまで主張できるか、どこを落としどころにするかを固めることが結果につながりやすいです。

仲介会社・FAが絡むトラブル(支援者との紛争)

当事者間の問題に加えて、仲介会社・FAの関与がある案件では、支援者側の説明や調査、利害関係の整理が争点になることがあります。たとえば、手数料や契約終了後の扱い、説明の十分性、重要情報の共有のあり方などです。

このタイプは、相手方当事者との交渉だけでなく、支援者との関係整理も同時並行になりやすいため、時系列と資料を整理したうえで、現実的な解決方法を選ぶことが重要です。

よくある質問

M&A詐欺はなぜ増えているのでしょうか?

「増えている」と感じられる背景には、いくつかの要因が重なっています。まず、事業承継ニーズの高まりでM&Aが広く行われるようになり、経験が少ない当事者が増えています。次に、スピード重視で進める案件が増え、相手確認や条件の詰めが薄くなる場面が生まれやすい点もあります。さらに、トラブルが可視化されやすくなり、過去なら表に出にくかった問題も広く知られるようになった面もあります。

大切なのは、増えているかどうかの議論よりも、事故が起きる構造が同じである点です。相手確認、重要条件の文書化、資金と権限の管理。この3点を先に固めるだけで、巻き込まれる可能性は下げられます。

M&Aにおける悪質な買い手とは?

悪質な買い手は、会社名や肩書よりも、提案内容と行動に特徴が出ます。典型は次のようなタイプです。

1つ目は、支払や資金の説明が抽象的なまま、意思決定だけを急がせるタイプです。後払いを強く推すのに安全策の説明が弱い、根拠資料を出さない、質問を嫌がる、といった動きが重なる場合は注意が必要です。2つ目は、経営者保証の解除など、当事者だけでは完結しにくい論点を「簡単にできる」と言い切るタイプです。手続や期限、できない場合の代替策が見えないなら危険度が上がります。3つ目は、クロージング後の資金管理を名目に、口座や承認権限に早い段階で触れようとするタイプです。権限移転は一度進むと戻しにくいので、特に慎重に扱う必要があります。

契約書があれば詐欺にはならないのですか?

契約書があること自体で、詐欺の可能性が消えるわけではありません。契約は、合意した内容を形にしたものですが、契約の前提となる説明が虚偽だった、重要事項が意図的に隠されていた、最初から履行する意思がなかった、といった事情があれば、問題の枠組みは変わり得ます。

一方で、多くの場合は「詐欺だ」と主張するかどうかより、何を根拠にどの手段で回収・是正を目指すかが重要になります。契約書の条項、交渉経緯、支払や資金移動の記録などを整理すると、現実的に取り得る選択肢が見えやすくなります。

返金や損害回復はできますか?

可能性はありますが、結論は案件の状況と証拠によって変わります。重要なのは、何を取り戻したいのか(未払いの回収、資金の返還、契約の解消、損害賠償など)と、どの時点まで進んでいるのか(基本合意の段階か、最終契約後か、クロージング後か)を分けて整理することです。

回収の見通しに影響しやすいのは、次のような事情です。相手の資力があるか、資金移動の経路が追えるか、合意内容が文書で固まっているか、交渉経緯の記録が残っているか。違和感がある段階で取引を止め、証拠を確保できているほど、選択肢が残りやすくなります。

M&A詐欺トラブルにお困りならご相談ください

M&Aの「詐欺的なトラブル」は、相手が巧妙かどうか以前に、確認と合意形成の抜けが重なったときに起きやすくなります。

特に、相手の実在性・資金力の確認が不十分なまま進む、後払い・保証解除など重要条件が曖昧なまま進む、クロージング後の資金や権限の管理が弱い。こうした状態は、売り手・買い手どちらの立場でも大きな損害につながり得ます。

売り手側は、後払いの未払い化、経営者保証が外れないまま責任だけ残ること、譲渡後の資金移動が不透明になることが典型的な危険ポイントです。買い手側は、粉飾や重要リスクの未開示、簿外債務や労務・許認可の地雷、キーマン離脱や顧客離反など「買ってから崩れる」リスクへの備えが重要になります。

「何かおかしい」と感じた段階で止まれるかどうかが、その後の選択肢を大きく左右します。感情的に詰めるよりも、取引を止めて、事実と証拠を整理し、現実的に取れる手段を見立てることが先です。

少しでも不安がある場合は、進行してからではなく、違和感のある段階でのご相談が有効です。ご相談は、お電話またはお問い合わせフォームから受け付けています。

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