M&A仲介の罠!事業承継直後の倒産や相次ぐトラブルの実態 

中小企業のM&A仲介は、国が積極的に推進しています。多くの仲介業者が業績を伸ばしている一方で、目的とかけ離れた事態が起きていることも事実です。 

そこで、今回はM&A仲介で起こっている問題やトラブルの実態について事例をもとに解説します。 

今回は、朝日新聞の内容から引用して解説するので、最後までご覧ください。 

M&A仲介の罠

中小企業のM&A仲介は、国も積極的に推進しており、多くの仲介業者が業績を伸ばしています。 

しかし、その一方で目的とはかけ離れた事態が起きていることも事実です。事業承継後に倒産したり、トラブルが起きたりして問題も多くあります。 

ここからは、M&A仲介のトラブル事例を基に解説していきます。 

老舗洋菓子店が8ヶ月で閉店に追い込まれた

実際に、M&A仲介業者に紹介されて事業承継を考えた老舗洋菓子店は8ヶ月で閉店に追い込まれていました 

老舗洋菓子店はコロナ禍の影響で借金が膨らみ、客足の回復も見込めずに引き継ぎを考えました。そして、M&A仲介業者からA社を紹介されました。 

A社は設立1年余りで買収を重ねて売上高が年100億円を超え、傘下に年商60億円超の中古車販売会社があります。 

洋菓子店経営者もA社の実績に安心して面談を迎えました。A社の代表60代のXに少し頼りなさを感じながらも、「早く店を手放したい」気持ちから株式譲渡の契約を4月17日に結びました。 

そして、男性経営者は事業引き継ぎのため、2ヶ月間は顧問として残りました。しかし、2ヶ月が過ぎても融資の個人保証が外れず身を引くことができずにいました。 

催促して手続きを進めさせようとしたが、信金側から「保証人の変更に必要な親会社の決算書を出してくれない」と言われ、洋菓子店経営者はこのままだと債務を背負うかもしれないと思い、洋菓子店幹部に連絡しました。すると会社の内情は深刻な事態に陥っていました。  

急速に悪化する資金繰り

元々赤字の会社で預金も減るばかりで、資金繰りは悪化します。また、6月にケーキ工房の職人も相次いで退職し、人手不足となり自社でケーキを作れなくなりました。そのため、売り上げも落ち、さらに資金繰りが悪化します。 

このような状況に陥っても、A社は「何とかする」と言うだけでした。倒産を避けるために洋菓子店幹部は会社に1千万を会社に貸し付けたり、自身の貯金でしのいだりしていました。しかし、8月分までの支払いをしのいだところで、貯金も底をつきました。 

11月下旬には従業員の給与も払えず、従業員は労働基準監督署に給与の未払いを申告して退職の方針を決めました。そして、12月28日には営業を終了しています。 

事業承継直後から資金流出が1億円を超え1年で倒産

20243月15日、創業53年の設計会社が営業最終日を迎えました。 

機器を設計して試作品も作る仕事を大手電機メーカーなどから請け負っていましたが、新型コロナで大口の仕事が減り、営業赤字に陥りました。2億数千万円の売上に対して、借り入れは3億円超となり、負債が膨らんでいました。 

そのような状況からM&A仲介会社に勧められた事業承継の契約を行いますが、1年もかからずに倒産しています。 

M&A仲介業者のうたい文句は「従業員」を守る

人材募集で取引があった人材情報サービス会社のM&A仲介子会社の担当者から営業電話がかかってきて「うちは従業員を守るのが1番」と売り込まれ、決めることにしました。 

買い手として紹介されたA社グループは、グループの年間売上高が100億円超です。 

4月6日に株式譲渡契約を結び、金融機関などの債務や個人保証・自宅の担保を外し、譲渡後5年間は雇用を維持する内容でした。契約当日に株式譲渡学の1500万円を受け取り、仲介会社に手数料を支払いました。 

結果的には、契約書に記した内容の多くが果たされませんでした。 

知らない間に定期預金を解約される

設計会社で経理をしていた創業者の長女は、契約時にA社の共同代表Yに「現預金は本部で預かるので、まずはA社に写してもらう。お金が必要になったら、その都度入金する」と言われていました。 

そして、入出金の予定をまとめた資金繰り表を作り、表をもとに送金を指示されました。契約から4日後に1400万余り、6日後には400万余りを送金し、その後も数百万から1千万円台の送金指示が続きました。 

それからも、法人契約の保険も解約して解約金も送金させられたり、知らない間に定期預金も解約されたりして外部送金されることもありました。8月にはA社側に1億2千万円ほど送金しており、返金分を差し引いても9千万円ほどマイナスがありました。 

契約時に記した内容の約束は果たされないまま時間がすぎ、代表は12月26日に会社に顔を出し、翌日に2千万円を振り込むとサインしました。しかし、それも振り込まず連絡も取れなくなりました。 

創業者は、弁護士に依頼して株式譲渡契約を無効にする手続きを進め社長に復帰しました。従業員の退職金の支払い、債務超過となった会社の解散を決議し、今後は特別生産を申し立てる方針です。 

創業者は、営業停止の直前に人材情報サービス会社のM&A仲介子会社に仲介業者に責任はないのか疑問をぶつけていました。 

M&A仲介業者は、リスクがあると警告したにもかかわらず、契約したのは顧客の方だと主張しました。創業者は「M&A仲介業者を信用したのが間違いだった」と憤りを感じています。  

M&Aで「お金を引っこ抜く」トラブル多発の会社共同代表の告白

A社は2年余りのうちにM&A仲介業者を通じて多くの中小企業を買収し、給与の遅延などのトラブルを多発させていました。 

A社の共同代表のY(30)は、朝日新聞の取材に対してずさんな経営実態を打ち明けました。 

Y氏はもともと飲食店の店長を任されていましたが、コロナの影響で収入が激減して別の仕事を探していたところ、2021年6月ごろに確定申告を頼んでいた税理士にA社を紹介されました。 

A社の代表は、月額報酬100万円の条件でY氏を共同代表にしました。ただし、買収先の債務の個人保証を引き継ぐことが条件でした。 

数回のM&A案件を繰り返して契約を終えると「現預金を引っこ抜く作業」を行い、億単位の現預金を寄せ集め、Y氏は最終的に3億円規模の保証債務を背負わされました。 

M&Aで事業再生のはずが「潰れる会社を増やした」

Y氏の携帯には1日数百件の着信がありました。相手は、M&A仲介を通じて買収した中小企業の従業員やその取引先・不動産賃貸の管理会社・金融機関などさまざまでした。どの相手も何らかの支払いと事情の説明を求めていました。 

買収先から抜いたお金で運営していた

A社の運営資金は、買収先から抜き出した億単位の現預金でした。Y氏によるとA社の代表を中心とするグループは、2023年秋までには20社以上と契約を結んでいました。 

新しく買収した会社では「お金は本部で預かる」などと説明し、現預金をA社に移して行きました。しかし、買収から時間が経過した会社では資金繰りが厳しくなり、入金や返金を求める連絡が寄せられていました。 

資金が振り込まれたり、他の会社から融通したりすることもありましたが、資金が補給されずに買収先の社員が資産の切り売りをしてしのぐケースもありました。 

2022年の半ばには、給与のトラブルが起き始めており、トラブル解決のためにもお金が必要でした。A社の実態は、資金が足りない状態をなんとかするために、お金を持っている会社を買収していたようなものです。途中からは自転車操業のようなものでした。 

「苦しい会社からもっと苦しい会社にお金を流し、さらに苦しい会社は見捨てる。お金を抜かれて潰れるしかない会社が増えるだけで誰も救われない」とY氏は疑問を抱いていました。 

会社の数が増えるほどトラブルも激増し、倒産する会社も出始めましたが、M&A仲介業者から紹介される会社の買収は2023年の秋まで続きました。 

2023年11月ごろには完全に行き詰まった状態となり、Y氏はA社の代表に「自己破産をしてくれ」と頼まれます。年間に数百万円の報酬を支払うと約束しましたが、約束の日を何度か先延ばしにされたのちに、A社の代表からの連絡は途絶えました。  

まとめ

今回は、M&A仲介で起こっている問題やトラブルの実態について事例をもとに解説しました。 

中小企業のM&A仲介は国も積極的に推進していますが、現場では理想とかけ離れた事態が起きています。会社を守るためにM&Aを行ったにもかかわらず、倒産に追い込まれるケースもあります。 

M&A仲介業者は取引を成立させることを優先するため、その後のことには責任を持たないこともあります。M&Aを行う際は、売り手側は、M&A仲介業者に依存せず十分な知識と準備をしたうえで備えて取引に臨めるようにしましょう。