株式の譲渡が可能であることの表明保証違反に陥ったことが従業員の懲戒事由となるのか?東京地方裁判所令和3年(ワ)第24832号退職金請求事件令和4年12月27日

株式の譲渡が可能であることの表明保証条項違反に陥ったことが従業員の懲戒事由となるのでしょうか。

東京地方裁判所 令和3年(ワ)第24832号 退職金請求事件 令和4年12月27日です。

  1. M&Aの経緯: 原告はある企業(B社)と共同で、他の企業(A社)に対して株式譲渡の承認を請求しました。しかし、A社はこの譲渡を承認しない意向を示しました。このため、原告が所有する本件株式を譲渡する計画は実行できない可能性が生じ、これが被告(原告の雇用主)とB社との間での民事上の紛争の発端となりました。
  2. 問題点: (a) 被告は、原告が本件株式譲渡を承認しないA社を支持したために、被告とB社との間に紛争が生じ、被告に損害が発生したと主張しました。これを懲戒解雇相当事由①としました。 (b) 原告が被告を退職した後の行為を懲戒解雇相当事由②として指摘しました。
  3. 論点裁判所は以下の2つの主要な論点を考察しました。 (a) 原告が本件株式の譲渡を承認しなかった行為は、被告との労働契約に基づく義務違反に当たるか? (b) 原告が退職後の行為について、被告の懲戒権が及ぶか?
  4. 判決裁判所は、原告の株式譲渡に関する行動は自己の財産に関するものであり、被告との労働契約に基づく義務違反には当たらないとしました。また、原告の退職後の行為については、既に退職しているため被告の懲戒権は及ばないと判断しました。その結果、被告が主張する懲戒解雇相当事由①及び②は、どちらも懲戒権行使の対象とはならないと裁定しました。

以上より、原告に対する退職金の不支給は認められず、被告は原告に対して退職金を支払う義務があると判断しました。