M&A仲介会社に支払った着手金と中間金は返金されるのか
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着手金及び中間金の返金に関するメインのページです。本ページは、M&Aトラブルのうち仲介契約が終了した場面で、両者の性質の違いと役務の提供の有無をご説明します。解約の判断と条項の読み方は別のページをご参照ください。
M&A仲介契約を途中で終わらせる場合の手順はM&A仲介契約の解約の判断と契約条項の読み方を、破談となった案件について成功報酬を請求された場合は破談となった案件について成功報酬を請求された場合の検討を、それぞれ御覧ください。
M&A仲介会社との契約を結んで着手金を振り込み、話が進んだところで中間金も支払ったにもかかわらず、譲渡先候補との交渉が止まってしまった、あるいは基本合意書の締結後に条件が折り合わず成約に至らなかった、という場面があります。手元に残ったのは領収書と、数百万円が出ていった通帳の記録だけという状態になり、支払った金銭がどうなるのかが気にかかってまいります。
この場面で最も多く寄せられるお尋ねは「あれは返ってくるのですか」という一言に尽きます。この問いに対する答えは、残念ながら「はい」でも「いいえ」でもありません。返還を求め得るかどうかは、その報酬が何の対価として定められていたか、契約書に返金に関する定めがあるか、そして約束された作業が現に行われたかという三つの点によって左右されます。
本稿では、中小企業の経営者の方を念頭に、支払済みの着手金及び中間金について何をどの順序で確認するかを述べます。あらかじめ申し上げておきたいのは、着手金や中間金には、それを受け取ることに相応の理由がある場合が多いという点です。M&A仲介会社は成約前の段階でも人手と時間を投じており、その費用を成功報酬だけで賄うことは容易ではありません。返還を求め得るのは、対価と実際の役務との間に見過ごせない開きがある場合に絞られます。
着手金と中間金は性質が異なる
返金の可否を考える出発点は、支払った金銭がどの段階の何に対する対価であったのかを切り分けることです。着手金と中間金は、いずれも成功報酬とは別に支払う金銭という点では共通しますが、対応する作業の中身も、支払時点で相手方が既に負担している費用の大きさも異なります。この区別をしないまま「途中で終わったのだから全部返してほしい」と申し入れても、話が噛み合いません。
着手金は初期の作業に対する対価とされることが多いです
着手金は、M&A仲介契約の締結時に支払う初期の費用です。対応する作業として想定されているのは、譲渡対象会社の概要をまとめた資料の作成、社名を伏せた打診資料の作成、決算書に基づく企業価値の試算、譲渡先候補となり得る会社の抽出と絞込みです。金額は100万円から300万円程度とする例が多く見られますが、譲渡代金の規模や対象会社の業種によって幅があります。この段階でM&A仲介会社の側にも、担当者の人件費や候補先の情報を得るための費用が現に生じています。
中間金は中間段階までの成果に対する対価とされることが多いです
中間金は、基本合意書の締結時など、交渉が一定の段階に達した時点で支払う金銭です。成功報酬の総額の10%から20%程度を中間金として先に支払う定めとする例が多く見られます。ここまでに行われる作業は、譲渡先候補への打診、秘密保持契約の締結、面談の設定と同席、条件の調整、基本合意書の案文の作成といった、着手金の段階よりも踏み込んだものになります。中間金には、そこまで投じた労力を回収するという意味合いもあります。
預り金ではないため当然には戻りません
ここで押さえておく必要があるのは、着手金も中間金も、成功報酬の前払いとして預けた金銭ではないのが通常だという点です。契約書上、これらは既に提供された、あるいはこれから提供される役務の対価として定められていることがほとんどです。したがって「成約しなかったのだから預けた金銭を返してもらう」という組立ては、多くの場合そのままでは通りません。返還を求めるのであれば、対価として定められた作業が行われていないと述べていく必要があります。まずは御自身の契約書で、着手金及び中間金がどのような言葉で説明されているかを確かめてください。
契約に返金に関する定めがあるか
次に確認するのは契約書です。返金を求め得るかどうかは、契約書の文言から出発して判断されます。手元に契約書が見当たらない場合は、M&A仲介会社に写しの交付を求めてください。契約当事者として写しを求めることは当然であり、遠慮する必要はありません。あわせて、報酬に関する別紙、業務の範囲を定めた覚書、電子的に締結した場合は締結時の記録も集めます。
まず読むべきは報酬条項と解約条項です
契約書のうち最初に読むべき箇所は決まっています。第一に、報酬の種類と金額を定めた条項です。着手金、中間金、成功報酬のそれぞれについて、いつ発生し、いくらで、何の対価であると書かれているかを確認します。第二に、契約の有効期間と更新に関する条項です。第三に、契約の解除又は中途解約に関する条項であり、どちらから解約できるか、その場合に既払いの金銭をどう扱うかが書かれています。第四に、業務の範囲を定めた条項であり、ここに書かれた作業が対価との対応関係を判断する手がかりになります。
返還しない旨の条項があっても直ちに終わりではありません
多くの契約書には「既に支払われた着手金は理由のいかんを問わず返還しない」といった趣旨の条項が置かれています。この条項がある以上は何も言えないと諦めてしまう方がいらっしゃいますが、そう決めてかかる必要はありません。この種の条項は、対価として予定された作業が現に行われたことを前提としており、作業がほとんど行われていない状況では、文言だけで結論が定まるとは限りません。また、契約の内容が一方に著しく不利で相当性を欠く場合には、その定めの効力が制限される余地もあります。もっとも、これは例外的な議論であり、条項があること自体が不利な事情であることに変わりはありません。
専任に関する条項と成約後の報酬に関する条項も併せて読みます
返金そのものとは別に確認しておくべき条項があります。一つは、他のM&A仲介会社に依頼することを禁ずる専任に関する条項であり、契約の終了後もどこまで拘束が残るのかを見ます。もう一つは、契約終了後の一定期間内に、そのM&A仲介会社が紹介した相手と成約した場合に報酬の支払義務が残るという趣旨の条項であり、1年から2年程度とされる例が多く見られます。返還の交渉の際には、これらの条項の扱いも併せて整理しておくと、後日の紛争の種を減らせます。
役務が現に提供されたかを確認する
契約書の確認と並行して行うべきなのが、約束された作業が実際にどこまで行われたかの検証です。着手金や中間金の返還を求め得る場面として最も分かりやすいのは、対価に見合う作業が行われていない場合です。逆に申し上げれば、相応の作業が行われていた場合には、成約に至らなかったという結果だけを理由に返還を求めることは難しくなります。資料に基づいて確かめる部分です。
提供の有無を示す資料を具体的に挙げます
確認すべき資料は具体的に決まっています。譲渡対象会社の概要をまとめた資料及び社名を伏せた打診資料の現物、企業価値の試算に関する報告書、譲渡先候補を列挙した一覧表、打診した先の名称と日付が分かる進捗の報告書、面談の日程表と議事録、秘密保持契約の締結状況、基本合意書の案文とその修正の履歴です。あわせて担当者との電子メールを時系列に並べ、契約から終了までにいつ何が行われたのかを一覧にすると、作業量の見当がつきます。
提供が乏しい場合に述べ得ること
並べてみた結果、たとえば契約から半年が経過しているにもかかわらず打診先が数社にとどまり、進捗の報告も定期的にはされず、概要資料も決算書の数値を転記した程度であった、という状況が見えてくることがあります。この場合には、対価として定められた作業が行われていないとして、着手金の全部又は一部の返還を求める余地があります。中間金についても同様であり、基本合意書の締結後にほとんど動きがないまま交渉が立ち消えになったのであれば、その段階以降に予定されていた作業に対応する部分の返還を求め得ます。もっとも、打診先が少ないことには、業種の特殊性や譲渡側の希望条件が厳しいことなど、M&A仲介会社の側の事情ではない理由がある場合もあります。一方的に責める前に、なぜそうなったのかの説明を求めるほうが、話は前に進みます。
報告を求める書面の出し方
資料が手元にそろわない場合には、M&A仲介会社に業務の履行状況の報告を求めます。委任又はこれに準ずる契約では、受任者は委任者の請求があるときは業務の処理の状況を報告する義務を負うとされており、これは民法第645条に定められています。求める際は、期間を区切り、打診した先の件数と時期、面談を実施した件数、作成した資料の一覧といった項目を挙げ、書面での回答を求めます。この回答自体が、後の協議における重要な資料になります。
契約が解除された場合の扱い
次に、契約がどのように終わったのかを整理します。期間の満了により終了したのか、譲渡側から解約を申し入れたのか、M&A仲介会社の側から打ち切られたのか、双方が何も言わないまま自然消滅の状態になっているのかによって、述べ得る内容が変わります。解約の意思表示がいつ、どのような形でされたのかを確認してください。
委任又は準委任としての性質から出発します
M&A仲介契約は、一般に、法律行為でない事務の処理を委託する契約、すなわち準委任契約としての性質を持つと理解されています。準委任には委任に関する規定が準用され、この点は民法第656条に定められています。委任の当事者はいつでも契約を解除することができるとされており、これは民法第651条第1項に定められています。したがって、譲渡側の判断で契約を終了させること自体は原則として可能です。もっとも、相手方に不利な時期に解除した場合には、やむを得ない事由があるときを除き、生じた損害を賠償する必要が生じ得ます。
途中で終了した場合の報酬の考え方
委任が履行の中途で終了した場合、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされており、これは民法第648条第3項に定められています。この考え方は着手金や中間金の扱いを考えるうえでも参考になります。すなわち、支払済みの金銭のうち、現に行われた作業に対応する部分は相手方に留保され、それを超える部分は返還の対象となり得るという整理です。ただし、契約書に別段の定めがある場合には、その定めが優先されるのが原則です。
解除の理由により結論は変わり得ます
解除の理由も結論に影響します。後継者が見つかった、家族の反対があった、業績が回復したといった譲渡側の都合で契約を終わらせた場合、既払いの金銭の返還を求めることは一般に難しくなります。他方、M&A仲介会社の側に義務違反があり、それを理由に契約を終わらせた場合には、返還を求める根拠が立ちやすくなります。義務違反の例としては、秘密保持の約束に反して譲渡の検討を第三者に漏らした、譲渡側の承諾なく候補先に情報を開示した、長期間にわたり業務を放置したといった事情があります。債務不履行による損害賠償については民法第415条第1項に定めがあり、支払済みの金銭に相当する額を損害として主張する組立ても考えられます。
説明を受けた内容と実際とが食い違う場合
契約を結ぶ前に受けた説明と、その後の実際とが食い違っているという御相談も多くあります。「すぐに複数の候補先を紹介できる」「この業種は引く手あまたである」といった説明を受けて契約したものの、実際には打診先が現れなかった、という類型です。この場合、説明の内容と、それが契約の判断にどう影響したかを整理することが出発点になります。
説明義務及び情報提供義務の考え方
M&A仲介会社は、専門的な知見をもって業務を行う立場にあり、契約の締結に際して、譲渡側の判断に重要な影響を及ぼす事項について正確な説明をする義務を負うと考えられています。報酬の体系、返還の可否、専任の範囲、契約終了後の報酬の扱いは、いずれも判断に直結します。これらについて誤った説明がされ、それを信じて契約した事情があれば、損害賠償の可否などを検討する余地が生まれます。ただし、成約の見込みに関する見通しの部分は、確定的な約束とは評価されにくい点にも御留意ください。
消費者契約法は原則として使えません
ここで注意を要するのは、消費者契約法は事業者と消費者との間の契約に適用される法律であり、会社の経営者が事業として締結したM&A仲介契約には原則として適用されないという点です。不実の告知を理由に契約を取り消すといった消費者契約法特有の手段は、この場面では使えないのが通常です。したがって、錯誤や詐欺による意思表示の効力、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償といった民法の枠組みで検討していくことになります。この違いは主張の組立てに直結しますので、早い段階で意識しておくべき点です。
証拠を先に確保します
説明の食い違いを述べるには、説明の内容を示す資料が要ります。契約前に交付された提案書やパンフレット、電子メールでのやり取り、面談の際に受け取った資料、担当者から送られてきた案内文などを、削除される前に保存してください。電子メールは印刷するか、ファイルとして書き出して保管します。この種の資料は時間が経つほど散逸しますので、返還を求めるかどうかを決める前に、まず手元に集めておくことをお勧めします。
協議による解決
ここまでの確認を経て、返還を求める根拠が一定程度整ったのであれば、次はM&A仲介会社との協議です。訴訟を最初から想定する必要はありません。実務上、この種の事案の相当数は、当事者間の話合いによって、一部の返還や成功報酬の減額といった形で決着しています。
求める内容を金額と根拠で示します
協議の場では、いくらの返還を、どのような理由で求めるのかを数値で示します。たとえば、着手金200万円のうち、企業概要資料の作成と企業価値の試算は行われているためその部分は争わず、譲渡先候補への打診が3社にとどまり報告も4か月間なかったことから、半額に相当する100万円の返還を求める、といった形です。全額の返還を求めることが常に有利とは限りません。相手方が実際に行った作業を認めたうえで、行われていない部分に絞って求めるほうが、応じてもらいやすい場合があります。
書面の体裁と送り方
申入れは書面で行います。記載するのは、契約の締結日と契約書の名称、支払った金額と支払日、履行されたと考える作業と履行されていないと考える作業、その根拠となる資料、求める金額、回答の期限です。期限は2週間から3週間程度が目安です。送付は通常の郵便でも構いませんが、後日の証拠として残すのであれば、内容証明郵便に配達証明を付ける方法があります。ただし、いきなり内容証明郵便を送ることで相手方が身構え、かえって話が進まなくなる場合もありますので、まずは担当者や管理職に書面で説明を求め、回答を見てから次の段階に移るという順序も考えられます。
協議が調わない場合の進め方
協議で折り合いがつかない場合の選択肢としては、弁護士を通じた交渉、民事調停、訴訟があります。金額との兼ね合いを考える必要があり、返還を求める額が数十万円にとどまる場合には、訴訟の費用と手間が見合わないこともあります。他方、中間金を含めて1000万円を超える金額が問題となっている場合には、法的手続を進める実益があります。また、M&A支援に関する公的な登録制度に登録している事業者については、その制度の窓口に情報を伝えるという方法も考えられます。いずれの方法を採るかは、金額、資料の充実の度合い、費やせる時間によって変わります。
よくあるご質問
以下では、着手金及び中間金の返還について多く寄せられるお尋ねを取り上げます。いずれも事案によって結論が変わり得る事柄ですので、一般的な考え方としてお読みいただき、御自身の契約書と照らし合わせて御検討ください。
着手金は必ず返ってこないのでしょうか
そのようなことはありませんが、返還を求め得る場面は限られます。契約書に返還しない旨の定めがあり、対価として予定された初期の作業が現に行われている場合には、成約に至らなかったことだけを理由に返還を求めるのは困難です。他方、契約後にほとんど作業が行われていない、報告の求めにも応じないといった事情があれば、全部又は一部の返還を求める余地があります。
成約しなかったのだから中間金は当然に返るのではないでしょうか
中間金は、多くの契約において、基本合意書の締結までの段階で提供された役務の対価として定められており、成功報酬の前払いとは位置付けられていません。そのため、成約しなかったという一事をもって当然に返還されるとは限らないのが実情です。ただし、中間金を受領した後の作業が実質的に行われていない場合や、契約書に精算に関する定めが置かれている場合には、返還を求め得ます。
契約書にいかなる場合も返還しないと書かれています。それでも求め得ますか
その条項があること自体は不利な事情ですが、検討の余地がなくなるわけではありません。この種の条項は、対価に対応する作業が行われたことを前提としていると解する余地があり、作業がほとんど行われていない場合には、文言だけで結論が定まるとは限りません。もっとも、これは例外的な場面の議論ですので、条項があるからこそ、作業の履行状況に関する資料を丁寧に集める必要があります。
こちらの都合で交渉を取りやめた場合はどうなりますか
後継者が見つかった、家族の反対があった、業績が回復したといった譲渡側の事情で契約を終わらせた場合、既払いの着手金や中間金の返還を求めることは一般に難しくなります。M&A仲介会社の側に落ち度がないためです。さらに、契約書に中途解約の場合の違約金や実費の精算に関する定めがあれば、追加の支払を求められることもあります。取りやめを決めた段階で、契約書の解約に関する条項を確認し、どのような形で終了させるかを検討することをお勧めします。
契約書が見当たらず領収書しかありません。それでも求め得ますか
まずはM&A仲介会社に契約書の写しの交付を求めてください。契約当事者として当然に求め得るものです。電子的に契約した場合は、締結時に送られた通知の電子メールから取得できることもあります。それでも入手できない場合には、領収書、振込みの記録、担当者との電子メール、提案書などから、契約の内容と支払の事実を組み立てることになります。資料が少ないほど裏づけは弱くなりますので、手元にあるものを漏れなく集めることが肝要です。
返還を求めると、その後の譲渡の話に差し支えますか
同じM&A仲介会社と再び取引をすることは事実上難しくなる場合がありますが、他の会社への依頼が妨げられるわけではありません。ただし、専任に関する条項や契約終了後の報酬に関する条項が残っている場合には、その範囲を確認する必要があります。特に、そのM&A仲介会社が紹介した相手と後日成約した場合に報酬の支払義務が生じる旨の定めは、契約終了後も一定期間残るのが通常です。返還の協議の際に、これらの条項の取扱いも併せて書面で確認しておくと、後の紛争を避けられます。
返還を求める前に弁護士に相談すべきでしょうか
資料を集める段階から御相談いただくと、確認すべき点を絞りやすくなります。契約書の条項の読み方、行われた作業をどう評価するか、いくらの返還を求めるのが妥当かといった判断には、同種の事案の蓄積が役立ちます。弁護士名の書面で申し入れるかどうかは、相手方との関係や求める金額を見て決めるべき事柄であり、必ずしも最初から前面に出す必要はありません。まずは契約書、領収書、担当者とのやり取りをおまとめのうえ、御相談ください。
具体的な御相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。

