M&A仲介契約の解約の判断と契約条項の読み方

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M&A仲介契約の解約の判断に関するメインのページです。本ページは、M&Aトラブルのうち契約を続けるかを見極める場面で、中途の解約の条項の読み方をご説明します。着手金及び中間金の返金は別のページをご参照ください。

解約した後に生じる負担、既に支払った着手金及び中間金の返還の可否、並びに契約の終了後の一定の期間内に成約した場合の報酬に関する定めへの対抗は、M&A仲介契約の解約後に生じる負担と報酬の定めへの対抗に整理しています。本記事は、その前段として、解約すべきかどうかの見極めと、契約条項の読み方を扱います。

M&A仲介会社と契約を結び、数か月が経ったものの、話の進み方に納得できないまま時間だけが過ぎている、という御相談を受けることがあります。提案される候補先が想定と噛み合わない、担当者からの連絡が滞りがちである、譲渡の条件について自社の考えが十分に伝わっていない、といったように、事情はさまざまです。

こうした場面で経営者の方が最初に思い浮かべるのは、この契約をやめたい、という素朴な気持ちです。もっとも、M&A仲介契約は、多くの場合、他社への依頼を制限する約束や段階ごとの報酬の取決めを含む有償の契約であり、感情のままに「もうやめます」と伝えるだけでは、後から報酬の請求を受けたり、進行中の交渉が宙に浮いて候補先との関係まで壊れたりする事態を招きかねません。

本稿では、契約の終了を検討する際に確認すべき条項と、実務上の進め方を整理します。M&A仲介会社が果たしている役割を否定する趣旨ではありません。譲渡を希望する会社と譲受けを希望する会社とを引き合わせる働きには相応の価値があり、その対価として報酬が定められています。だからこそ、契約の内容を正確に把握したうえで、双方が納得できる形で関係を終えることが、売主にとっても相手方にとっても、結果として最も損失の少ない道であると考えます。

Contents
  1. 解約すべきかどうかを見極めるための視点
    1.  不満の中身を事実に分けて書き出す
    2.  解約以外の選択肢と比べる
    3.  解約に踏み切るべき場面
  2. まずM&A仲介契約書を読み直す
    1. 契約書と附属の書面を一式そろえる
    2. 契約の類型と期間を確かめる
    3. 報酬に関する条項を抜き出して一覧にする
  3. 中途で解約できる旨の条項
    1. 解約に関する条項の典型的な形
    2. 予告の期間と通知の方法
    3. 解約に関する条項がない場合の考え方
  4. 解約に関する条項の類型と読み方
    1.  いつでも解約できる型
    2.  事由を限定する型
    3.  解約に関する条項が置かれていない型
    4.  条項どうしの関係を確かめる
  5. 専任の条項の読み方
    1.  専任の条項が意味すること
    2.  専任の範囲がどこまで及ぶか
    3.  話合いにより調整し得る点
  6. 解約の申入れの時期と方法
    1. 面談の前に論点を整理する
    2. 合意書に記載すべき事項
    3. 進行中の交渉がある場合の順序
  7. 申入れと合意の内容を書面に残す方法
    1.  通知書に記載する事項
    2.  送り方と控えの残し方
    3.  合意書にまとめる
    4.  記録を保管する期間
  8. よくあるご質問
    1. 契約書に中途で解約できる旨の定めがない場合でも、解約できますか。
    2. 解約を申し入れたところ違約金を請求されました。支払う必要がありますか。
    3. 解約の通知は電子メールでもよいですか。
    4. 担当者との関係を悪くせずに終わらせたいのですが、どう伝えればよいですか。

解約すべきかどうかを見極めるための視点

解約を申し入れる前に、まず立ち止まって、その判断が本当に必要であるかを確かめていただきたく思います。ここでは、判断の材料をどのように整理するか、解約以外にどのような手段が残されているか、そして、どのような場面で解約に踏み切るべきかを、順に整理いたします。

 不満の中身を事実に分けて書き出す

M&A仲介契約を続けるべきかどうかを考えるにあたり、最初に行っていただきたいのは、現に抱いている不満を、感情の部分と事実の部分とに切り分けて書き出す作業です。連絡が遅い、提案が的外れである、といった印象は、それ自体では判断の材料になりにくいものです。これに対し、直近の3か月間に提示された候補先が何社であったか、そのうち面談に至ったのは何社か、譲渡の価格帯や従業員の雇用の維持といった条件が候補先にどのように伝えられていたか、といった事実は、契約を続けることの意味を測る手掛かりとなります。

書き出す際には、日付と、やり取りの相手方と、その内容の3点をそろえてください。この作業は、後に解約を申し入れる場面でも、また万一の紛争の場面でも、そのまま使える資料となります。

 解約以外の選択肢と比べる

不満の中身が明らかになりましたら、次に、解約以外の手段によってその不満が解消し得るかを検討します。担当者の変更を求めること、提案を受ける候補先の条件を書面により改めて確認すること、報告の頻度をあらかじめ定めること、専任の範囲を限定する形に契約を変更することは、いずれも契約を維持したまま採ることができる手段です。M&A仲介会社の側も、契約を失うよりは条件を調整する方を選ぶことが少なくありません。

解約は、既に支払った金銭が戻らない可能性、これまでに費やした時間が無になる可能性、及び新たな相手方を探し直す手間を伴います。したがいまして、解約は目的ではなく、より良い進め方を得るための手段の一つとして位置付けることが適切です。

 解約に踏み切るべき場面

もっとも、次のような場面におきましては、契約を維持することの利益が乏しく、解約を検討すべきであると考えられます。第1に、こちらの承諾を得ないまま社名や事業の内容が外部に伝わっていた場合です。第2に、譲渡の価格や条件について、こちらの意向と異なる内容が候補先に伝えられていた場合です。第3に、こちらが求めた資料や報告が繰り返し提供されない場合です。第4に、担当者の交代が重なり、これまでの経緯を把握している者が相手方にいなくなった場合です。

これらの場面では、信頼の関係を前提とする委任の関係が既に損なわれていると評価し得ますので、条件の調整によって関係を立て直すことは容易ではありません。判断を先延ばしにするほど、契約の期間が経過し、選択の幅が狭まる点にも御留意ください。

まずM&A仲介契約書を読み直す

解約の可否を判断する材料は、法律の一般論ではなく、御自身が署名押印した契約書の中にあります。締結の際には担当者の説明を聞きながら目を通しただけで、その後は書棚にしまったままという方が少なくありません。まずは、感情を挟まずに、条項を一つずつ読み直す作業から始めます。

契約書と附属の書面を一式そろえる

手元にそろえるべき書面は、M&A仲介契約書の本体だけではありません。報酬の料率を記載した別紙、秘密保持に関する契約書、提案を受けた際に交わした確認書、候補先への打診の可否について同意した書面、担当者との間で取り交わした電子メールのうち条件に触れているものまでを集めます。中小企業のM&Aでは、本体の契約書が数枚にとどまり、実質的な取決めが別紙や電子メールの側に置かれていることが珍しくありません。押印した日付、契約の期間の始まりの日、自動的に更新される定めの有無を、書面の上で確認します。

契約の類型と期間を確かめる

M&A仲介契約には、譲渡側と譲受側の双方から依頼を受けて両者の間に立つ形のものと、一方の当事者のみの助言者として行動する形のものがあります。前者では、M&A仲介会社は双方から報酬を受けることが前提となっており、契約書にもその旨が記載されているのが通常です。どちらの形かによって、期待できる関わり方も、不満の生じ方も異なります。あわせて、契約の期間が何か月とされているか、期間の満了の前に一定の日数までに申出をしなければ自動的に更新される定めが置かれていないかを確認します。自動的に更新される定めがある場合には、その申出の期限が、最も摩擦の少ない終了の機会となります。

報酬に関する条項を抜き出して一覧にする

報酬に関する条項は、契約書の複数の箇所に分かれて置かれていることが多く、通読するだけでは全体像がつかめません。着手金、月額の報酬、基本合意の時点で支払う中間の報酬、成約の時点で支払う報酬、実費の負担、最低額の定めといった項目ごとに、金額又は算定の方法、支払の時期、既に支払った額、返還に関する定めの有無を、表の形で書き出します。譲渡代金の額に応じて料率が段階的に変わる算定方法が用いられている場合には、算定の基礎となる金額が譲渡代金なのか、負債を含んだ企業の価値なのかによって、金額が大きく変わります。この一覧が、以後の話合いの土台となります。

中途で解約できる旨の条項

次に確認するのは、期間の途中で契約を終わらせることができるかどうかを定めた条項です。この条項の有無と書きぶりによって、取り得る手段が変わります。多くのM&A仲介契約には、何らかの形で解約に関する定めが置かれていますが、その要件は契約ごとに幅があります。

解約に関する条項の典型的な形

実務でよく見られるのは、当事者の一方が相手方に対して書面により通知することにより、通知から1か月又は2か月の経過をもって契約が終了する、という形の定めです。予告の期間を置く趣旨は、進行中の交渉を整理し、候補先への説明を済ませる時間を確保することにあります。これとは別に、相手方が契約に定めた義務に違反し、催告をしても是正されない場合に直ちに解除できる、という定めが置かれていることもあります。前者は理由を問わない終了、後者は相手方の落ち度を理由とする終了であり、性質が異なります。まずは、御自身の契約書にどちらが置かれているかを見極めます。

予告の期間と通知の方法

解約の条項がある場合には、その要件に従うことが最も確実です。書面によることが求められているにもかかわらず電子メールや口頭で伝えた場合、後になって通知の有無や時期が争われる余地を残します。書面による通知が求められているときは、内容と日付が記録に残る方法で送付し、控えを保管します。予告の期間がある場合、その期間中も契約は存続しますので、進行中の交渉について、M&A仲介会社に対してどこまで対応を求めるのか、あるいは新たな打診を止めてもらうのかを、通知の文面の中で明確にしておくと、後の行き違いを防げます。

解約に関する条項がない場合の考え方

契約書に中途での終了に関する定めが見当たらない場合であっても、契約を終わらせる道が閉ざされているわけではありません。M&A仲介契約は、他人に事務の処理を委ねる性質を持つ契約と理解されることが多く、民法第651条第1項は、委任について各当事者がいつでも解除をすることができると定めています。もっとも、同条第2項は、相手方に不利な時期に解除をした場合等に、やむを得ない事由があるときを除き、損害を賠償しなければならない旨を定めています。したがって、条項がないから何の負担も生じないと考えるのは早計であり、どの時点で、どのような理由で終了させるのかが、なお意味を持ちます。契約の性質をどう理解するかは事案により異なり得ますので、書面の内容を踏まえた個別の検討が必要です。

解約に関する条項の類型と読み方

M&A仲介契約の解約に関する条項は、契約書ごとに書きぶりが異なりますが、その内容は幾つかの型に整理することができます。自社の契約書がどの型に当たるかを見定めますと、採るべき手順がおのずから定まります。ここでは、3つの型と、条項どうしの関係の確かめ方を整理いたします。

 いつでも解約できる型

M&A仲介契約における解約に関する条項は、大きく3つの型に分けて理解することができます。第1の型は、いずれの当事者も、一定の予告の期間を置けばいつでも契約を終了させることができる、という定め方です。予告の期間は、30日とするものが多く、14日とするもの、60日とするものも見受けられます。この型では、解約それ自体について相手方の同意を要しませんので、予告の期間を守って通知を行えば、契約は当然に終了いたします。

注意を要しますのは、予告の期間の起算点です。通知を発した日から数えるのか、相手方に到達した日から数えるのかによって、終了の日が異なります。到達を基準とする定めでありましたら、配達の記録が残る方法により通知を行う必要があります。

 事由を限定する型

第2の型は、相手方に契約上の義務の違反があった場合、当事者について破産手続開始の申立てがあった場合など、一定の事由が生じたときに限って解約を認める定め方です。この型では、解約を求める側が、その事由の存在を示す必要があります。義務の違反を理由とする場合には、あらかじめ相当の期間を定めて是正を求め、それでもなお是正されないときに解約し得る、という手順が定められていることもあります。

この型の契約におきまして、定められた事由に当たらない理由で終了させたいときは、合意による終了を目指すことになります。相手方も、争いを抱えたまま関係を続けることを望まないのが通常ですので、話合いの余地は残されています。

 解約に関する条項が置かれていない型

第3の型は、契約書に解約に関する条項が置かれていないものです。この場合には、契約の性質に立ち返って考えます。M&A仲介契約は、相手方の探索及び交渉の補助を委ねるものですので、民法上の委任又はこれに準ずる契約として理解されることが一般的です。委任の関係は当事者の信頼を基礎といたしますので、各当事者はいつでもこれを解除することができるとされています。

ただし、相手方にとって不利な時期に解除した場合には、やむを得ない事由があるときを除き、その損害を賠償する必要があるとされています。したがいまして、条項が置かれていないからといって何らの負担も生じないとは限りません。時期の選び方が重要となります。

 条項どうしの関係を確かめる

解約に関する条項を読む際には、その条項のみを見るのではなく、契約期間の条項、自動更新の条項、報酬の条項、及び秘密保持の条項との関係を併せて確かめてください。たとえば、期間の満了の1か月前までに申し出なければ同一の条件で更新される、という定めがある場合には、あえて中途の解約によらず、更新を行わない旨の通知によって終了させる方が、負担が小さいことがあります。

専任の条項の読み方

専任の条項は、解約を考える場面において最も大きな意味を持つ条項の一つです。ここでは、その条項が置かれる理由、範囲の見定め方、及び話合いによって調整し得る点を整理いたします。

 専任の条項が意味すること

専任の条項は、契約の期間中、他のM&A仲介会社に同じ譲渡の依頼をしてはならないこと、及び自ら見つけた相手方と直接に交渉してはならないことを定めるものです。M&A仲介会社の側から見ますと、相手方の探索には相応の費用と時間を要しますので、その労力が報われる仕組みとして専任の定めが置かれます。

したがいまして、専任の条項それ自体が不当なものであるとは申せません。問題となりますのは、その範囲が過度に広い場合、及び期間が長期にわたる場合です。

 専任の範囲がどこまで及ぶか

専任の範囲を読む際には、3つの点を確かめてください。第1に、対象となる取引の範囲です。株式の譲渡のみを対象とするのか、事業の譲渡、会社の分割、合併その他の組織の再編を含むのかによって、制約の広さが大きく異なります。第2に、対象となる相手方の範囲です。M&A仲介会社が紹介した候補先に限るのか、こちらが独自に見つけた相手方も含むのかという点です。第3に、対象となる行為の範囲です。契約の締結を禁じるにとどまるのか、交渉や情報の提供までを禁じるのかという点です。

これらのうち、こちらが独自に見つけた相手方との取引までを対象とする定めは、売主にとって負担が大きいものですので、締結の前でありましたら除外を求めることが考えられます。既に締結した後でありましても、実際に紹介を受けていない相手方についてまで制約が及ぶ理由は乏しいと申し上げることができます。

 話合いにより調整し得る点

既に締結した契約につきましても、専任の範囲を後から限定する合意を結ぶことは可能です。実務上、調整が図られやすいのは、期間の短縮、対象となる候補先を書面により列挙した者に限る旨の確認、及び特定の相手方を専任の対象から除外する旨の合意です。いずれも、こちらから具体的な案を示す方が話が進みやすくなります。

なお、契約の終了後の一定の期間内に成約した場合の報酬に関する定めの適用範囲、及びこれに対する対抗の手掛かりは、解約の後に生じる負担の問題ですので、前掲の別稿に整理しています。

解約の申入れの時期と方法

ここまでの確認を終えたら、実際の話合いに入ります。この局面で目指すべきは、どちらが正しいかを決着させることではなく、将来の請求の可能性を確定させたうえで関係を終えることです。相手方を非難する構成をとると、交渉は長期化し、条件の調整の余地も狭まります。

面談の前に論点を整理する

話合いの席に着く前に、こちらの求める事項を、優先順位を付けて書き出します。典型的には、契約の終了の時期、既に支払った金銭の取扱い、契約終了後の報酬に関する条項の対象と期間、候補先の名簿の確定、進行中の交渉の引継ぎ、という五つの項目です。このうち、どうしても譲れない事項と、譲歩の余地がある事項とを、あらかじめ自分の中で分けておきます。すべてを勝ち取ろうとすると合意に至らず、結局は不確定な状態が続きますので、優先順位を明確にすることが、早期の解決につながります。

合意書に記載すべき事項

口頭での了解にとどめず、終了に関する合意を書面にします。記載すべき事項は、契約が終了する日、既に支払われた金銭の精算の内容、今後の支払義務の有無、契約終了後の報酬に関する条項の適用の範囲と期間、対象となる候補先の名簿、秘密保持に関する義務の存続、そして双方に他に何らの債権債務も存在しないことを確認する条項です。最後の確認の条項は、後から追加の請求を受けることを防ぐ意味を持ちますので、その効果と例外の範囲を理解したうえで文言を定めます。作成した書面は、双方が記名押印し、各自が原本を保管します。

進行中の交渉がある場合の順序

特定の候補先との交渉が具体的に進んでいる最中に契約を終わらせようとする場合は、順序に注意します。交渉が最終の段階に入っている局面での解約は、相手方から不利な時期の解除であるとの主張を招きやすく、また候補先の信用も損ないます。取引そのものを中止したいのか、進め方を変えたいのかを整理し、後者であれば、担当者の交代や進行の方法の見直しを求めることが、先に検討すべき選択肢です。それでも改善が見込めない場合に、時期を選んで終了に踏み切ることになります。

申入れと合意の内容を書面に残す方法

解約に関するやり取りは、後になってその内容が争われることが少なくありません。申入れの段階から合意の成立に至るまで、何を、どのような形で残しておくべきかを整理いたします。

 通知書に記載する事項

解約の申入れは、口頭ではなく書面によって行うことをお勧めいたします。書面には、契約を特定するために必要な事項として契約の名称と締結の日を記載し、次に、いずれの条項に基づく申入れであるかを記載します。予告の期間の定めがある場合には、終了の日を明示してください。事由を要する型の契約でありましたら、その事由に当たる具体的な事実を、日付とともに簡潔に記載します。

併せて、既に支払った金銭の取扱い、紹介を受けた候補先の一覧の確定、及び提供した資料の返還又は廃棄について協議を求める旨を記載しておきますと、その後の話合いが進みやすくなります。この段階では、責任を追及する表現を避け、事実と求める事項のみを記載する方が、円滑な解決につながります。

 送り方と控えの残し方

送付の方法は、内容と到達の双方が記録に残るものを選びます。書留郵便のうち内容証明の取扱いによるものが最も確実ですが、取引の実情に照らして重いと思われる場合には、電子メールにより送付したうえで、同じ内容の書面を特定記録郵便により送付する、という併用も考えられます。いずれの場合も、送付した書面の写しと、発送及び到達を示す記録とを、一つの綴りにまとめて保管してください。

電子メールによる場合には、担当者個人の宛先のみではなく、会社の代表となる宛先を併せて宛先に加えておきますと、社内で共有されなかったという反論を受けにくくなります。送信の日時が記録に残る形で保存し、印刷した控えを併せて残してください。

 合意書にまとめる

話合いが調いましたら、その内容を合意書の形にまとめます。記載すべき事項は、契約が終了する日、既に支払った金銭のうち返還される額と支払の期日、契約の終了後の報酬に関する定めを適用する候補先の範囲、秘密保持の義務の内容と存続の期間、提供した資料の返還又は廃棄の方法と期限、並びに当事者の間に他に債権及び債務が存在しない旨の確認です。

最後の確認に関する条項は、後日の蒸し返しを防ぐうえで重要な意味を持ちます。もっとも、返還されるべき金銭の額について争いが残っている段階でこの条項を置きますと、その主張を失う結果となりかねません。合意の範囲を限定する必要がある場合には、その旨を明記してください。

 記録を保管する期間

解約に関する書面及び記録は、契約の終了後の報酬に関する定めの適用が問題となり得る期間を通じて保管してください。この期間は2年とするものが多く見受けられますが、3年とするものもあります。保管の対象には、通知書のほか、候補先の一覧、面談の記録、及び担当者との電子メールを含めます。

よくあるご質問

以下では、M&A仲介契約の終了に関して多く寄せられる御質問について、一般的な考え方を述べます。個別の結論は契約書の文言とこれまでの経緯により異なり得ますので、判断にあたっては書面を御確認ください。

契約書に中途で解約できる旨の定めがない場合でも、解約できますか。

定めがないことをもって、直ちに解約が不可能となるわけではありません。M&A仲介契約は他人に事務の処理を委ねる性質を持つと理解されることが多く、民法第651条第1項は、委任について各当事者がいつでも解除をすることができると定めています。ただし、同条第2項により、相手方に不利な時期の解除等については損害の賠償を要する場合があります。契約の性質の理解は事案により異なり得ますので、まずは契約書全体を確認することをお勧めします。

解約を申し入れたところ違約金を請求されました。支払う必要がありますか。

まず、その請求が契約書のどの条項に基づくものかを確認します。違約金の定めが置かれている場合、その定め自体は直ちに無効とはなりません。もっとも、金額が業務の対価や生じ得る損害の範囲を大きく超え、実質的に解約を封じる働きをしていると評価される場合には、争う余地が生じ得ます。金額の根拠、これまでに実際に行われた業務の内容と量を確認したうえで、減額を含めた話合いを行うことが実際的です。

解約の通知は電子メールでもよいですか。

契約書が書面による通知を求めている場合には、その方法に従うことが確実です。電子メールで送ったのみでは、後に到達の時期や内容が争われる余地を残します。内容と日付が記録に残る方法で送付し、控えを保管してください。あわせて、予告の期間が定められているときは、その期間の起算の時点を明確にするため、通知の中に契約の終了する日を明記しておくことが望まれます。

担当者との関係を悪くせずに終わらせたいのですが、どう伝えればよいですか。

相手方の対応を非難する形ではなく、自社の事情として説明することが有効です。例えば、社内の体制が整わない、本業の状況が変わった、検討の時期を改めたい、といった伝え方です。そのうえで、これまでの対応に対する謝意を述べ、精算と今後の取扱いについて書面で確認したい旨を申し出ます。関係を保ったまま終えることができれば、将来、時期を改めて譲渡を検討する際にも、選択肢を狭めずに済みます。

具体的な御相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。