M&A仲介会社に依頼している場合でも弁護士の確認を併せた方がよい場面

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M&A仲介会社に手続を委ねている場合であっても、契約書の内容の当否や法的な効果の判断は、M&A仲介会社の職務の範囲外に置かれることが少なくありません。本記事では、売主の立場から、弁護士による確認を併せた方がよい場面を具体的に整理いたします。

M&A仲介会社の説明と契約書の内容が食い違うと感じた場合の確認手順については別の記事で扱っています。あわせて御覧ください。

M&A仲介会社の担当者から、株式譲渡契約書の案が電子メールで届きました。添付されたファイルを開くと、30ページを超える条文が並んでいます。表明保証、補償、前提条件といった見慣れない言葉が続き、末尾には署名の予定日が記されています。担当者からは、内容は標準的なものですので、ご確認のうえ来週までにご返信くださいと添えられています。

ここで多くの経営者が立ち止まります。この契約書の案は、誰の立場で作られたものなのか。自分に不利な条項が紛れていないか。弁護士に見てもらったほうがよいのではないか。しかしそれを言い出すと、ここまで熱心に動いてくれたM&A仲介会社の担当者との関係が気まずくなるのではないか。こうした迷いは、決して珍しいものではありません。

本稿は、M&A仲介会社の仕事を否定するものではありません。M&A仲介会社は、売主と買主の双方の間に立ち、話をまとめて成約に導くという明確な役割を担っています。中小企業のM&Aの多くは、この働きがなければ相手方に出会うことすらできません。本稿で述べたいのは、その役割と、当事者の一方のために契約の条件を精査するという役割とが、構造として別のものであるということです。両者は競合するものではなく、組み合わせて用いることができます。

Contents
  1. M&A仲介会社と弁護士とでは立場が異なります
    1. M&A仲介会社は双方の間に立って話をまとめます
    2. 弁護士は一方の当事者のためだけに働きます
    3. 優劣の問題ではなく役割の分担です
  2. 提示された契約書の案は誰のために作られたものか
    1. ひな型は標準的な条項を集めたものです
    2. 買主側が用意した案が土台になる場合があります
    3. 案の出所と修正の経緯を確かめます
  3. 弁護士の確認を併せて用いた方がよい場面
    1. 譲渡代金の一部が後から支払われる場合
    2. 譲渡後も一定の期間、経営に関与する場合
    3. 簿外の債務や係争に心当たりがある場合
    4. 不動産、許認可又は賃貸借が事業の中心にある場合
    5. 株式が親族に分散している場合
    6. 個人保証や担保の解除が残っている場合
  4. 最終契約書のどこを弁護士が見るのか
    1. 表明保証の範囲と期間
    2. 補償の上限、下限及び請求できる期間
    3. 前提条件と解除の定め
    4. 競業避止義務の範囲
    5. 役員退職慰労金と手取りの見通し
    6. 紛争解決の方法と管轄
  5. 費用と時期の考え方
    1. 相談の時期が早いほど選択肢が残ります
    2. 関与の程度を段階的に決めます
    3. 費用の見立ての取り方
    4. 費用を判断するときの比較の視点
  6. M&A仲介会社との関係を損なわない進め方
    1. 早い段階で伝えておきます
    2. 窓口と伝え方を整理します
    3. 修正の要望に優先順位を付けます
    4. 期限の扱いを相談します
  7. よくあるご質問
    1. M&A仲介会社にも弁護士がいると聞きました。それでも別に依頼する必要がありますか
    2. 契約書の案は標準的なものだと説明されました。それでも見てもらう意味はありますか
    3. 譲渡代金が2億円ほどの案件です。弁護士に頼むほどの規模でしょうか
    4. 相手方は弁護士を立てています。こちらも立てるべきでしょうか
    5. もう最終契約書に署名してしまいました。今からできることはありますか
    6. 買う側なのですが、売る側と同じように確認が必要ですか
    7. 顧問の弁護士はいますが、M&Aの経験はないようです

M&A仲介会社と弁護士とでは立場が異なります

最初に、両者の立場の違いを整理します。この違いは、担当者の熱意や能力の問題ではなく、誰と契約を結んでいるかという構造から生じます。ここを理解しておくと、どの場面で誰に何を尋ねればよいのかが見えてきます。

M&A仲介会社は双方の間に立って話をまとめます

M&A仲介会社は、売主と買主の双方と契約を結び、双方から報酬を受け取ることが一般的です。その職務の中心は、両者が合意できる着地点を探し、そこへ導くことにあります。相手方の探索、日程の調整、条件の擦り合わせ、資料のやり取りの整理といった実務は、双方の間に立つ立場だからこそ担えるものです。譲渡代金1億円から10億円程度の中小企業のM&Aでは、双方が費用を分担するこの仕組みが実務に定着してきました。

もっとも、双方と契約を結んでいる以上、いずれか一方のためだけに契約の条件を有利にするという立場には立ちません。これは落ち度ではなく、その職務の性質から導かれる当然の帰結です。両者の間に立つ者が一方に肩入れをすれば、他方から見た信頼が失われ、話をまとめるという職務そのものが成り立たなくなります。

弁護士は一方の当事者のためだけに働きます

これに対し、弁護士は依頼を受けた当事者の一方のためだけに働きます。売主から依頼を受けたのであれば、譲渡代金をできる限り確実に受け取り、譲渡後に負う責任をできる限り限定することを目指します。買主から依頼を受けたのであれば、引き受ける会社に隠れた負担がないかを調べ、あった場合に代金の返還を求められる仕組みを契約に組み込むことを目指します。同一の案件で売主と買主の双方から依頼を受けることは、利益が相反しますので認められません。

優劣の問題ではなく役割の分担です

以上の違いは、どちらが優れているかという話ではありません。相手方を見つけ、双方の希望を擦り合わせ、心情の面も含めて話をまとめていく仕事は、M&A仲介会社の担当者が最も得意とするところです。一方、契約書の一つひとつの文言が将来どのように働くかを、依頼者の側に立って読み解く仕事は、弁護士の職務の中心にあります。両方を用いることは、いずれかを否定することを意味しません。

提示された契約書の案は誰のために作られたものか

次に、手元に届いた契約書の案がどのように作られたものかを考えます。この点を確かめないまま、標準的なものですという説明だけで受け入れてしまうと、後になって想定と違う結果になることがあります。

ひな型は標準的な条項を集めたものです

M&A仲介会社が用意する契約書の案は、多くの場合、過去の案件で用いられた書式を土台としています。この書式は、一般的な取引で問題が起きにくいように整えられたものであり、それ自体に不当な意図があるわけではありません。ただし、ひな型は特定の会社の事情を織り込んで作られたものではありません。御社の事業が特定の許認可に依存していること、売上の大半が数社の取引先に集中していること、工場の敷地が社長個人の所有であることといった個別の事情は、ひな型には書かれていません。

契約書は、うまくいっている間は読まれません。読まれるのは、譲渡後に想定外のことが起きたときです。そのときに、自らの側に有利に働く定めが入っているか、不利に働く定めが入っていないかが問われます。ひな型のままで足りるかどうかは、事案により異なります。

買主側が用意した案が土台になる場合があります

実務では、買主が自社の書式を持っており、その書式が土台になることも少なくありません。買主が同業の会社を繰り返し買い受けている場合や、投資を業とする会社である場合には、その傾向が強くなります。買主が用意した書式は、当然ながら買主にとって管理しやすい形に整えられています。表明保証の対象が広く取られていたり、補償の上限が置かれていなかったり、代金の一部の支払が長期にわたって留保されていたりすることがあります。

これも、買主が不当なことをしているという話ではありません。買主は買主の立場で自らを守っているだけです。だからこそ、売主の側にも、自らの立場で契約書を読む者が必要になります。

案の出所と修正の経緯を確かめます

まず担当者に尋ねるとよいのは、この案は誰が作成したものか、これまでに相手方との間でどの条項が修正されたか、修正されていない条項のうち通常は交渉の対象になるものはどれか、という三つの点です。答えを聞くだけでも、契約書の性格が見えてきます。担当者は、双方の間に立つ立場から、これまでの経緯を整理して説明することができます。この確認は、M&A仲介会社を疑うためのものではなく、自らが署名する書面の由来を知るためのものです。

弁護士の確認を併せて用いた方がよい場面

すべての案件で同じ深さの確認が必要なわけではありません。譲渡代金が比較的小さく、事業の内容が単純で、譲渡後の関わりも短い案件であれば、確認の範囲は限られます。以下では、確認を厚くしたほうがよい典型的な場面を挙げます。一つでも当てはまる場合には、署名の前に一度目を通してもらうことを検討する価値があります。

譲渡代金の一部が後から支払われる場合

譲渡代金の全額が引渡しの日に支払われるのであれば、代金の回収についての心配は小さくなります。しかし中小企業のM&Aでは、代金の一部を数年にわたって分割して支払う、譲渡後の業績が一定の水準に達した場合に追加の代金を支払う、といった仕組みが用いられることがあります。この場合、支払の条件がどのように定められているか、条件の達成を誰がどのように判定するか、判定に必要な資料を売主が見ることができるかが、実際の回収を大きく左右します。買主の判断だけで達成の有無が決まる書きぶりになっていないかは、確かめておきたい点です。

譲渡後も一定の期間、経営に関与する場合

引継ぎのために、譲渡後も1年から3年程度、顧問や取締役として残ることを求められる例は多くあります。この場合、その期間の報酬の額、勤務の日数、途中で辞めることができるかどうか、辞めた場合に代金の後払いの部分がどうなるかを、契約書で確かめる必要があります。口頭では相談のうえ決めましょうと言われていても、契約書に何も書かれていなければ、後日の話し合いは買主の意向に左右されやすくなります。

簿外の債務や係争に心当たりがある場合

未払いの残業代、退職した従業員との間の未解決の問題、取引先との紛争の兆し、税務上の判断が分かれ得る処理といった事情が思い当たる場合には、確認を厚くすることをお勧めします。これらは、譲渡後に表面化すると、表明保証に違反したとして代金の返還や損害の賠償を求められる原因になります。あらかじめ契約書に書いて開示しておけば、その事項については責任を負わないという整理をする余地もあります。隠すのではなく、書いて責任の対象から外すという発想です。

不動産、許認可又は賃貸借が事業の中心にある場合

工場や店舗の敷地が社長個人や資産管理会社の所有である場合、事業に必要な許認可の承継に行政の手続を要する場合、主要な店舗の賃貸借契約に譲渡を制限する定めがある場合には、契約の前提が崩れる余地があります。賃貸人の承諾が得られなければ引渡しができない、許認可の承継が間に合わなければ事業が止まるといった事態を想定して、前提条件や解除の定めを整えておく必要があります。

株式が親族に分散している場合

先代の相続を経て、株式が兄弟姉妹や甥姪に分散していることは珍しくありません。買主は通常、全部の株式の取得を求めます。一部の株主から同意が得られない場合にどうするか、名義株と呼ばれる実質と名義が一致しない株式がある場合にどう処理するかは、譲渡の可否そのものに関わります。この点は、契約書の文言だけでなく、株主名簿や過去の株式の異動の記録を併せて見る必要があります。

個人保証や担保の解除が残っている場合

金融機関に対する借入れについて、社長が個人保証をしている場合や、自宅に担保が設定されている場合には、その解除が譲渡と同時に行われるかどうかが重要になります。買主が解除に向けて努力するという定めだけでは、解除されないまま保証が残る余地があります。解除を引渡しの前提条件とするか、解除されない場合の取扱いをどう定めるかは、経営者個人の生活に直結する事柄です。

最終契約書のどこを弁護士が見るのか

では、弁護士は契約書のどこを見るのでしょうか。条文の数は多くても、売主にとって金銭の負担に直結する箇所は限られます。以下では、その中心となる箇所を順に説明します。買主の側で見る場合も、着眼する条項はおおむね共通し、求める方向が逆になります。

見る箇所 確かめる点
表明保証 約束する事実の範囲、知っている限りという限定の有無
補償 責任の上限、少額を除外する下限、請求できる期間
前提条件 誰の義務か、満たされない場合の取扱い
競業避止義務 事業の範囲、地域、期間、義務を負う者
役員退職慰労金 支払の時期、原資、株主総会の決議の要否
紛争解決 裁判所の指定、仲裁によるかどうか

表明保証の範囲と期間

表明保証とは、契約の締結時や引渡しの時点で、会社について一定の事実が正しいことを相手方に約束する定めです。簿外の債務がないこと、訴訟を抱えていないこと、労務に関する法令を守っていることなどが並びます。ここで見るのは、約束する事実の範囲がどこまで広がっているか、知っている限りにおいてという限定が付いているか、その限定の対象が誰の認識かという点です。売主が知りようのない事実まで無限定に約束していると、後日の負担が重くなります。

補償の上限、下限及び請求できる期間

表明保証に違反があった場合に、売主がいくらまで、いつまで責任を負うかを定めるのが補償の条項です。ここでは、責任の総額に上限が置かれているか、その上限は譲渡代金のどの程度の割合か、少額の請求を除外する下限が置かれているか、請求できる期間は引渡しから何年かを見ます。上限がない、期間が定められていないという書きぶりであれば、修正を求める余地があります。税務や労務に関する事項についてのみ期間を長めに取るといった調整が用いられることもあります。

前提条件と解除の定め

引渡しを行うために満たされていなければならない条件を、前提条件といいます。取引先の承諾、賃貸人の承諾、許認可の承継、個人保証の解除、株主総会の決議などがここに入ります。条件が売主側の義務としてのみ書かれていると、達成できなかったときの責任が売主に集中します。誰の義務として書かれているか、達成できなかった場合に契約がどうなるか、その場合に既に支出した費用を誰が負担するかを確かめます。

競業避止義務の範囲

譲渡の後、売主が同じ事業を行わないことを約束する定めです。買主が事業の価値を守るために求めるものであり、置かれること自体は自然です。見るのは、対象となる事業の範囲、地域の範囲、期間、そして誰が義務を負うかです。範囲が広すぎると、譲渡後に別の仕事に就くことすら難しくなる余地があります。配偶者や子まで義務の対象に含まれていないかも確認します。

役員退職慰労金と手取りの見通し

譲渡代金の一部を役員退職慰労金として受け取る組み立てが用いられることがあります。支払の時期、原資、税務上の取扱い、株主総会の決議の要否を確かめます。契約書に書かれた金額と、最終的に手元に残る金額とは異なります。M&A仲介会社に支払う手数料、税の負担、借入れの返済を差し引いた後の見通しを、署名の前に一度整理しておくことをお勧めします。

紛争解決の方法と管轄

争いが生じた場合に、どの裁判所で審理するか、あるいは仲裁によるかを定める条項です。買主の本店の所在地を管轄する裁判所が指定されていると、遠方まで出向く負担が生じます。金額の大きさに比べれば小さな論点に見えますが、実際に争いになったときの負担に直結します。

費用と時期の考え方

弁護士に依頼することをためらう理由として、費用の見当がつかないことと、いつ相談すればよいのか分からないことが挙げられます。この二つは関係しています。相談の時期が遅れるほど、できることが減り、それでいて費用は変わらないという事態になりやすいためです。

相談の時期が早いほど選択肢が残ります

最も効率がよいのは、基本合意書の締結の前後、遅くとも最終契約書の案が出た直後です。この段階であれば、条件はまだ動きます。反対に、署名の日程が確定し、相手方の社内の手続も終わった段階で持ち込まれると、指摘はできても直せないという事態になりがちです。もっとも、直せないと分かったうえで署名するのと、何も知らずに署名するのとでは、その後の備え方が変わります。

関与の程度を段階的に決めます

弁護士の関与の仕方は、一つではありません。最終契約書の案を読んで危険な箇所を指摘するだけの関与、修正の案文まで作成する関与、相手方との交渉の場に同席する関与、買収する側で会社の状況を調査する関与と、幅があります。案件の規模と、自らの不安がどこにあるかに応じて、どこまでを頼むかを決めることができます。まず契約書を読んでもらい、そのうえで必要な範囲を決めるという進め方が現実的です。

費用の見立ての取り方

相談の際には、契約書の分量、譲渡代金の規模、署名までの日数、既に決まっている条件を伝えたうえで、想定される費用の幅と算定の方法を確かめてください。要した時間に応じて算定する方法と、あらかじめ定額とする方法とがあります。着手の前に見積りを書面で受け取っておけば、後日の行き違いを避けられます。

費用を判断するときの比較の視点

費用を考える際には、指摘によって避けられる負担の大きさと比べることになります。補償の上限が置かれていない契約書に上限を入れることができれば、その差は譲渡代金の規模に応じて大きくなり得ます。個人保証の解除が前提条件に入るかどうかも同様です。ただし、交渉の結果は相手方の姿勢によって変わりますので、費用を上回る利益が常に得られると申し上げることはできません。事案により異なります。

M&A仲介会社との関係を損なわない進め方

弁護士を入れると、M&A仲介会社との関係が悪くなるのではないか。この心配は、実際によく寄せられます。結論から申し上げると、事前に相談のうえで進めれば、問題になることは多くありません。関係がぎくしゃくするのは、弁護士を入れること自体ではなく、その伝え方と時期であることがほとんどです。

早い段階で伝えておきます

最も避けたいのは、署名の直前に、何の予告もなく大量の修正の要望を出すことです。M&A仲介会社の担当者は、相手方との日程や社内の手続を調整しています。そこに突然の変更が入れば、調整のやり直しが生じます。契約の話が具体化した段階で、最終契約書は弁護士にも見てもらうつもりですと一言伝えておけば、担当者は日程にその時間を織り込むことができます。

実務では、当事者が弁護士に確認を求めること自体は珍しいことではありません。むしろ、当事者が内容を理解し納得したうえで署名したという事実は、後日の紛争を防ぐという意味で、M&A仲介会社にとっても、そして相手方にとっても利点があります。

窓口と伝え方を整理します

弁護士が相手方と直接やり取りを始めると、それまでの調整の流れが乱れることがあります。原則として、意見は経営者を通じてM&A仲介会社の担当者に伝え、担当者から相手方に伝えてもらうという流れを保つと、摩擦が起きにくくなります。交渉の場に弁護士が同席する場合も、誰がどの論点を話すのかを事前に担当者と確認しておきます。

修正の要望に優先順位を付けます

契約書を精査すると、直したい箇所は数十に上ることがあります。それをそのまま出すと、相手方は身構えます。必ず直す必要がある事項、直せれば望ましい事項、指摘にとどめる事項の3段階に分けて示すと、話が進みやすくなります。個人保証の解除や補償の上限のように、金銭の負担に直結する事項を先に置くことが基本です。M&A仲介業者の担当者にとっても、優先順位が示されているほうが相手方に伝えやすくなります。

期限の扱いを相談します

来週までにご返信くださいと示された期限は、多くの場合、相手方との調整の目安であって、動かせないものとは限りません。確認に必要な日数を具体的に伝えて相談すれば、日程を調整できることは少なくありません。期限に追われて内容を確かめないまま署名することのほうが、後の負担は大きくなります。日程を動かせない事情がある場合には、その事情を伺ったうえで、確認する範囲を絞るという進め方もできます。

よくあるご質問

ここでは、M&A仲介会社に依頼して会社の売却又は買収を進めている経営者の方から、実際に寄せられることの多いご質問を取り上げます。個別の事情によって答えは変わりますので、一般的な考え方としてお読みください。

M&A仲介会社にも弁護士がいると聞きました。それでも別に依頼する必要がありますか

M&A仲介会社が弁護士に契約書の作成を依頼している場合、その弁護士は、双方の間に立つM&A仲介会社の立場から書面を整えています。売主の側だけに立って条件の見直しを求める立場ではありません。書面の体裁が整っていることと、御社にとって有利な条件が入っていることとは、別の事柄です。自らの側で読む者を置くかどうかは、この違いを踏まえて判断されるとよいと考えます。

契約書の案は標準的なものだと説明されました。それでも見てもらう意味はありますか

標準的という言葉は、多くの案件で用いられている書式であるという意味であって、御社の事情に合っているという意味ではありません。許認可、不動産、株式の分散、個人保証といった事情は、会社ごとに異なります。標準的な書式であるからこそ、御社に固有の事情が抜け落ちていないかを見る意味があります。担当者に、御社の事情に合わせて修正した箇所はどこかを尋ねてみるのも一つの方法です。

譲渡代金が2億円ほどの案件です。弁護士に頼むほどの規模でしょうか

規模の大小よりも、譲渡の後にどれだけの責任が残るかで判断されるとよいと考えます。代金が2億円であっても、補償の上限が置かれていなければ、理屈のうえでは代金を超える請求を受ける余地が残ります。反対に、代金の全額が引渡しの時に支払われ、補償の上限と請求できる期間が明確に限定されているのであれば、確認の範囲は限られます。まず補償の条項だけを見てもらい、そのうえで範囲を広げるかどうかを決めるという方法もあります。

相手方は弁護士を立てています。こちらも立てるべきでしょうか

相手方に弁護士がいて自らの側にいない場合、契約書の文言は相手方の理解に沿って作られていきます。対抗するためというより、書かれている内容の意味を同じ水準で理解するために、こちらにも読む者を置くという考え方です。必ずしも交渉の場に同席してもらう必要はなく、書面の確認だけを頼むこともできます。相手方に弁護士がいることを、担当者に確認しておくとよいと考えます。

もう最終契約書に署名してしまいました。今からできることはありますか

署名の後であっても、内容を確かめておく意味はあります。表明保証として何を約束したかを把握しておけば、譲渡の後に何を報告し、何を記録に残しておくべきかが分かります。補償の請求ができる期間が過ぎるまで資料を保管しておく、買主から指摘を受けた際に直ちに反論の根拠を示せるようにしておくといった備えができます。もっとも、署名の前と比べて採り得る手段が限られることは事実です。

買う側なのですが、売る側と同じように確認が必要ですか

買う側は、引き受ける会社に隠れた負担がないかを調べ、あった場合に代金の返還や損害の賠償を求められる仕組みを契約に組み込むという点で、見るべき箇所の重点が異なります。売主の表明保証の範囲を十分に取れているか、引渡しの前提条件に必要な事項が入っているか、主要な従業員や取引先が残る見込みかといった点が中心になります。確認の必要性は、売る側に劣るものではありません。

顧問の弁護士はいますが、M&Aの経験はないようです

会社の事情をよく知っているという点で、顧問の弁護士の関与には大きな利点があります。従業員の状況、取引先との経緯、過去の紛争といった背景は、外部の者が短期間で把握できるものではありません。そのうえで、表明保証や補償の条項のように、M&Aに固有の実務が積み重なっている部分については、その分野を扱う弁護士に併せて意見を求めるという方法もあります。どちらか一方に絞る必要はありません。

具体的な御相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。