買収後に反社会的勢力との関係が疑われる事情が判明した場合の対応

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反社会的勢力との関係が疑われる事情に関するメインのページです。本ページは、M&Aで会社を譲り受けた後に疑いが生じた場面で、事実の確認と排除の条項の適用をご説明します。個人情報の漏えいは別のページをご参照ください。

環境に関する法令その他の行政上の規制の違反が判明した場面は買収後に環境法令や業法の違反が判明した場合の対応と売主への責任追及を、訴訟又は労働紛争が判明した場面は買収後に訴訟や労働紛争が発覚した場合の確認手順と売主への請求を、それぞれ御覧ください。

買収の手続を終え、引継ぎを進めていた矢先に、対象会社の従業員や取引先から気になる話を聞かされることがあります。「あの取引先は先代の代からの付き合いで、断りたくても断れない相手だ」株式譲渡契約には反社会的勢力の排除に関する条項を入れており、デュー・ディリジェンスでも確認したはずだ、という思いが強いだけに、大きな動揺を覚える場面です。

ここで最も避けなければならないのは、噂を聞いた段階で特定の人物や取引先を反社会的勢力であると決めつけ、直ちに取引を打ち切ったり、売主に対して契約の解除を通告したりすることです。事実が確認されていない段階での断定は、名誉毀損その他の責任を招きかねず、かえって買主の立場を弱めます。他方で、放置することも許されません。事実が確認された場合には、金融機関との約定、取引先との契約、許認可の維持に直ちに影響するからです。

本稿では、疑いにとどまる段階と確定した事実とを厳密に区別したうえで、事実の確認、契約条項の点検、売主に対する請求、金融機関及び取引先への対応、証拠の管理という順序で、買主が採り得る手順を整理します。譲渡代金が1億円から10億円程度の同族経営の非上場会社を買収した場面を念頭に置いています。

事実の確認を最優先で行う

最初に行うべきことは、対処の方針を決めることではなく、何が事実として確認できているのかを冷静に切り分ける作業です。この段階で手順を誤ると、後の交渉でも訴訟でも不利な材料を自ら作ることになります。着手の順序としては、社内の情報の整理、公開されている情報の確認、外部の専門的な調査、公的機関への相談という順に進めるのが穏当です。

疑いと確定した事実とを区別する

まず、手元にある情報を一覧にし、それぞれについて「誰が」「いつ」「どこで」「何を根拠に」述べたものかを書き分けます。従業員からの伝聞、同業者からの噂、インターネット上の書込みは、いずれも疑いを生じさせる端緒にすぎず、それ自体は事実の証明にはなりません。他方、契約書、請求書、送金の記録、出入りの記録、面談の録取といった客観的な資料は、それが何を示すかを慎重に評価したうえで、確認された事実として扱うことができます。

断定を避けるべき理由

特定の人物や法人について、根拠が不十分なまま反社会的勢力であると述べることは、その名誉を毀損する行為となり得ます。社内の会議での発言、取引先への通知、従業員への説明、電子メールの文面のいずれもが、後に証拠として提出される可能性があります。取引を打ち切る旨を伝える際に理由として反社会的勢力該当性を挙げれば、その真実性を自ら立証しなければならない立場に立たされます。

したがって、事実が確認されるまでは、対外的な文書には「当社において取引関係の見直しを進めているため」といった、真実であり、かつ相手方の属性を断定しない表現を用います。社内でも、確認されていない事項を口外しないよう、情報に接する者を限定します。情報が広がるほど、外部に漏れた際の被害と、名誉毀損の責任を問われる場面とが増えます。

正規の手順による確認

確認の手立てとしては、次の手順を順に踏みます。第一に、公開されている情報の確認です。相手方の商業登記簿を取得し、役員の変遷、本店の移転、商号の変更、目的の追加を時系列で並べます。あわせて、不動産の登記記録、官報の公告、行政機関が公表している処分や指名停止の情報、報道された事実を調べます。中小企業の取引先については、これだけでも不自然な点が浮かぶことがあります。

第二に、信用調査会社への依頼です。相手方の沿革、関係する法人、代表者の経歴、風評について、専門の調査会社に調査を依頼します。依頼に当たっては、調査の目的と、報告書の利用の範囲をあらかじめ確認します。報告書に記載された風評は、それ自体が事実の証明となるものではありませんが、次に何を確かめるべきかを示す資料としては有用です。

第三に、公的な相談の窓口の利用です。都道府県の警察本部には暴力団対策を担当する部門が置かれており、事業者からの相談を受け付けています。また、各都道府県には暴力追放運動推進センターが設けられており、不当な要求への対応について助言を得ることができます。いずれについても、事前に弁護士と相談の内容を整理し、確認された事実と未確認の情報とを分けて説明する準備をしてから臨むことが望まれます。

反社会的勢力の排除に関する条項

次に、手元の契約書を読み直します。多くの株式譲渡契約には反社会的勢力の排除に関する条項が置かれていますが、その内容は契約ごとに大きく異なります。条項があるという事実だけでは何も決まりません。誰について、どの範囲の関係を、どの時点を基準として排除の対象としているのかを、原文に即して確認する必要があります。

条項の三つの部分を分けて読む

この種の条項は、通常、三つの部分から成り立っています。第一は、自らが反社会的勢力に該当しないことを表明する部分です。第二は、将来にわたって関係を持たないことを約束する部分です。第三は、これらに違反した場合に、催告をすることなく契約を解除できること、及び違反した当事者が損害賠償の責任を負うことを定める部分です。違約金の額をあらかじめ定めている契約もあります。

買主として確認すべきは、第一の部分の対象範囲です。売主本人のみを対象とするのか、対象会社、その役員、主要な株主、実質的に経営を支配する者、さらには対象会社の取引先までを対象とするのかによって、主張できる内容が変わります。売主個人のみを対象とする条項であれば、対象会社の取引先に問題があったとしても、この条項を根拠とすることは困難です。

定義の範囲を確かめる

次に、反社会的勢力の定義の条項を確認します。多くの契約では、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から一定の年数を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動を標ぼうする団体、特殊知能暴力集団といった類型を列挙し、さらにこれらの者と社会的に非難されるべき関係を有する者を含める形が採られています。

この「社会的に非難されるべき関係」の有無は、資金の提供、便宜の供与、共に利益を得る関係、密接な交際といった具体的な事実によって判断されます。したがって、買主が主張を組み立てる際も、抽象的な評価ではなく、いつ、いくらの支払があったか、どのような便宜が図られたかという事実を積み上げることになります。なお、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律及び各都道府県の暴力団排除条例は、事業者に対して利益の供与を禁じる規律を置いており、事業者の側にも義務が課されている点に留意が必要です。

デュー・ディリジェンスで確認できた事項

契約条項を確認したら、買収時に行ったデュー・ディリジェンス、すなわち買収前の調査で、何を尋ね、何が開示され、何が開示されなかったのかを再現します。この作業は、売主に対する請求の可否を左右するだけでなく、買主自身が調査を尽くしていたかどうかの評価にも関わります。

当時の記録を復元する

復元すべき資料は、質問票とその回答書、開示された資料の一覧、資料の保管場所への接続の記録、経営者との面談の記録、専門家が作成した報告書、及び買収の可否を検討した社内の稟議書です。とりわけ、反社会的勢力との関係の有無を尋ねた質問と、それに対する回答の文言は、そのまま引用できる形で保存します。「該当する事実はない」と明確に回答されていたのか、回答が留保されていたのかで、その後の主張は大きく変わります。

買収後に行う追加の調査

買収後の調査は、買収前よりも踏み込むことができます。対象会社の帳簿と社内の資料に自由に接することができるからです。優先して確認する対象は、次のとおりです。取引先台帳と外注先の一覧、直近3期分の支払先の明細、顧問料、コンサルティング料、業務委託料、広告宣伝費、寄付金、交際費といった名目で継続的に支払われている費用、不動産の賃貸借契約の相手方、貸付金及び借入金の相手方、並びに株主名簿と過去の株式の移動の記録です。

これらのうち、役務の内容が明確でないまま毎月一定額が支払われているもの、相場から離れた金額のもの、契約書のないもの、及び現金で支払われているものを抽出し、担当者に対して、いつから、どのような経緯で、誰の指示により始まった支払かを確認します。この段階でも、担当者に対して相手方の属性を断定的に述べることは避け、支払の経緯を尋ねる形で聴取します。

表明保証の条項との関係

事実の確認が進み、売主が契約で表明していた内容と異なる事実が存在すると判断できる段階に至った場合、売主に対する責任の追及を検討します。その中心となるのが、表明保証、すなわち一定の事実が真実であることを契約上表明し保証する条項と、これに違反した場合の補償の条項です。

補償の条項の限度を確認する

補償の条項には、通常、いくつかの制限が付されています。第一に、補償の総額の上限です。譲渡代金の一定割合とされていることが多く、上限を超える損害は回収できません。第二に、請求ができる期間です。買収の実行の日から1年間あるいは2年間とする例が多く、期間の経過後は請求できなくなります。第三に、一定の金額に達しない請求を対象から除く定めです。少額の損害を積み上げても請求できない仕組みになっている場合があります。

もっとも、反社会的勢力に関する表明保証については、これらの制限を適用せず、期間及び金額の制限を設けない扱いとする契約も少なくありません。税務及び労務に関する事項とともに、特別の扱いを受ける類型とされているためです。自らの契約がどちらの立て付けになっているかを、必ず条文で確かめてください。

買主が知っていた場合の扱い

争いになりやすいのが、買主が買収前にその事実を知っていた場合、あるいは知り得た場合の扱いです。契約によっては、買主が知っていた事実については補償を請求できないと定められています。逆に、買主の認識にかかわらず補償を請求できると明記している契約もあります。前者の定めがある場合、売主は、デュー・ディリジェンスの資料に手掛かりが含まれていたと主張してくることが予想されます。そのため、前述の記録の復元が意味を持ちます。

損害の範囲をどう組み立てるか

補償を請求するには、違反の事実に加えて、それによって生じた損害を示す必要があります。想定される損害としては、事実の調査に要した費用、関係を解消するために要した費用、取引先を失ったことによる利益の減少、金融機関の対応の変化によって生じた追加の負担、許認可に影響が生じた場合の損失が挙げられます。いずれも、領収書、契約書、取引の実績を示す資料によって裏付ける必要があり、見込みの数値だけでは足りません。

請求の手続としては、契約に定められた通知の方法と期限を守ることが不可欠です。多くの契約では、違反を知った日から一定の期間内に、違反の内容及び損害の見込額を記載した書面で通知することが求められています。この期限を徒過すると、内容の当否を論じる前に請求が認められなくなる余地があります。

契約を解除できるか

買主から最も多く寄せられるのが、契約を解除して代金を返してもらえないか、という御相談です。理屈のうえでは解除の主張は成り立ち得ますが、買収の実行が済んだ後の解除は、実務上、極めて難しい選択となります。まず、どのような根拠があり得るかを整理し、その次に、現実的な着地点を検討します。

解除の根拠となり得るもの

第一に、反社会的勢力の排除に関する条項に基づく解除です。多くの契約では、この条項に違反した場合には催告をすることなく直ちに解除できると定められています。第二に、表明保証の違反を理由とする解除です。ただし、買収の実行の後は解除ではなく補償によって処理する旨を定めている契約が多く、その場合には解除の主張は困難です。第三に、売主が事実を知りながら告げなかった場合の、詐欺を理由とする意思表示の取消し、又は錯誤を理由とする取消しの主張です。もっとも、これらは売主の認識の立証を伴うため、容易ではありません。

解除が現実的でない理由

解除が認められたとしても、株式を売主に戻し、代金の返還を受けるという原状回復を実現しなければなりません。買収後に役員を交代させ、資金を投入し、取引先との契約を巻き直し、従業員の労働条件を変更していれば、元の状態に戻すこと自体が困難です。さらに、売主に代金を返還する資力があるとは限りません。相続税や譲渡所得税の納付、借入金の返済、他への投資によって、代金が既に費消されている例も見られます。

現実的な着地点

実務でより多く用いられるのは、解除ではなく、金銭による調整です。具体的には、表明保証の違反に基づく補償の請求、譲渡代金の一部の返還を内容とする和解、既に発生した損害の賠償、及び売主が受け取る予定であった残代金や役員退職慰労金の支払の停止です。売主が対象会社に対して貸付金を有している場合には、その放棄を求めることも考えられます。

金融機関及び取引先への対応

この問題が買主にとって重いのは、売主との争いにとどまらず、対象会社の資金調達と取引関係に直結するからです。もっとも、事実が確認されていない段階で対外的に説明を始めることには危険が伴います。説明の相手方と時期を選び、内容を統制することが必要です。

金融機関との関係

金融機関との銀行取引約定書及び金銭消費貸借契約には、反社会的勢力の排除に関する条項が置かれているのが通常です。これに該当する事実が判明した場合、期限の利益を失い、直ちに全額の返済を求められる余地があります。買収資金を借入れによって調達している場合には、買主自身の借入契約についても同様の条項の有無を確認します。

説明の時期については、確認された事実と、その事実に対して既に採っている対応とを、同時に示せる段階を選ぶのが穏当です。他方、事実を把握しながら長く伏せていたと受け取られることも避けなければなりません。弁護士と相談のうえ、調査の中間の段階で、調査中である旨と調査の体制、及び是正の方針を、断定を避けた表現で伝える判断が採られることもあります。

取引先との関係

取引先との基本契約にも、同様の条項が置かれています。取引先が上場企業やその子会社である場合には、審査が厳格であり、疑いの段階でも取引の見直しを求められることがあります。そのため、主要な取引先について、契約書の条項、通知の義務の有無、及び解除の要件を一覧にし、優先順位を付けて対応の方針を決めます。

問題があると疑われる相手方との取引を縮小する場合には、契約に定められた解約の手続に従い、予告の期間を守り、既に発生した債務は履行します。理由として相手方の属性を挙げることは避け、取引方針の見直しという事実に即した理由を示します。不当な要求を受けた場合には、その場で応じず、対応する者を一人に限定せず、要求の内容を記録し、警察及び弁護士に相談したうえで対応します。

許認可と社内の体制

建設業、宅地建物取引業、警備業、貸金業その他の許認可を要する事業では、役員等が暴力団員に該当することが欠格の事由とされている例が多く、許認可の維持に直接影響します。対象会社が営む事業について、根拠となる法令上の欠格の事由を確認し、届出の義務の有無を所管の官庁に確かめます。あわせて、社内の規程に反社会的勢力の排除の条項を整備し、新規の取引の開始時に確認を行う手続を定め、取引の基本契約書の書式に排除の条項を組み込みます。

証拠の管理と記録

この類型の案件では、後に売主との交渉、金融機関への説明、場合によっては訴訟の場で、いつ何を知り、どのような対応を採ったのかを示す必要が生じます。記録が整っているかどうかが、結論を左右することも少なくありません。調査に着手した時点から、記録の管理を意識してください。

資料の保全

まず、対象会社の電子メール、会計の帳簿、稟議書、契約書、及び買収時の資料について、削除及び上書きを禁じる旨を社内に文書で指示します。指示の文書には、対象となる資料の範囲、保存の期間、及び担当者を記載します。電子的な記録については、担当者が個別に保存するのではなく、複製を作成して保管し、原本には手を加えないという運用を徹底します。

時系列表と面談の記録

次に、時系列表を作成します。日付、出来事、資料の番号、及び当時の認識を欄に分けて記載し、新たな事実が判明するたびに追記します。この表は、補償の請求の通知書を作成する際にも、金融機関への説明の際にも、そのまま土台となります。

面談の記録については、日時、場所、出席者、発言の要旨、作成者、及び作成の日を必ず記載します。要旨は、聞いた言葉をそのまま書き、聞き手の評価を混ぜないようにします。「反社会的勢力との関係があるようだ」と書くのではなく、「誰々が、何年頃から、誰々が事務所に出入りしていると述べた」と記載します。この書き分けが、後に記録の信用性を支えます。

情報に接する者の限定

最後に、情報を扱う範囲を限定します。調査に関与する者を必要最小限とし、名簿を作成し、守秘の義務を確認します。資料は施錠できる場所又は接続の権限を限定した領域に保管します。従業員への説明が必要になる場面でも、確認されていない事項には触れず、業務上必要な指示にとどめます。情報の管理は、名誉毀損の責任を避けるための備えでもあります。

よくあるご質問

ここでは、買収後に反社会的勢力との関係が疑われる事情が判明した場面で、買主から実際に寄せられることの多い御質問を取り上げます。個別の事情によって結論は変わり得ますので、実際の対応は資料を確認したうえで判断する必要があります。

噂を聞いた段階で、その取引先との取引を止めてもよいでしょうか

取引を継続するかどうかは、原則として各社の判断に委ねられますので、取引を縮小し、又は終了させること自体は選択できます。ただし、契約に予告の期間や解約の手続が定められていれば、それに従う必要があります。継続的な取引を突然打ち切れば、損害賠償を求められる余地があります。また、打切りの理由として相手方が反社会的勢力である旨を述べれば、その真実性を立証する責任を負い、名誉毀損の責任を問われることもあり得ます。理由は、取引方針の見直しという事実に即した表現にとどめてください。

どこに相談すればよいでしょうか

まず、買収の案件を担当した弁護士に、確認された事実と未確認の情報とを分けて相談してください。そのうえで、都道府県の警察本部の暴力団対策を担当する部門、及び各都道府県に設けられている暴力追放運動推進センターに相談することが考えられます。相談したことによって直ちに社名が公表される仕組みにはなっていませんが、相談の内容と範囲については、事前に弁護士と整理しておくことを勧めます。

デュー・ディリジェンスで見抜けなかった専門家に責任を問えますか

責任の有無は、委任した業務の範囲と、その範囲において通常求められる注意を尽くしたかどうかによって判断されます。反社会的勢力との関係の調査を業務の範囲に含めていなかった場合や、報告書に確認の限界が明記されていた場合には、責任を問うことは容易ではありません。まず、業務委託契約書、業務の範囲を定めた書面、報告書の前提及び留保に関する記載を確認してください。

売主が「自分は知らなかった」と述べています。それでも請求できますか

表明保証の条項は、事実が真実であることを保証するものですので、売主の認識を要件としない立て付けであれば、知らなかったという説明があっても違反を主張できます。ただし、契約によっては「売主の知る限り」という限定が付されていることがあり、その場合には売主が知っていたことを示す必要が生じます。自らの契約の条文にこの限定が付されているかどうかを、まず確認してください。なお、売主が知りながら告げなかったと認められる場合には、補償の上限や期間の制限が適用されないと定めている契約もあります。

従業員や取引先には、いつ説明すべきでしょうか

事実が確認されていない段階で広く説明することは勧められません。情報が拡散し、対象会社の信用が損なわれるうえ、確認されていない事項を伝えたことについて責任を問われる余地があるためです。他方、業務上の指示として必要な範囲、例えば特定の相手方からの要求には応じず担当部署に取り次ぐ、という指示は、属性に触れずに行うことができます。取引先への説明は、事実が確認され、対応の方針が定まった段階で、優先順位を付けて行うのが通例です。

買収の資金を借り入れています。金融機関に伝えるべきでしょうか

借入契約に、重大な事実が生じた場合の報告の義務や、反社会的勢力の排除に関する条項が置かれていることが通常です。まず自らの契約の条文を確認してください。報告の義務が定められている場合には、これを怠ること自体が契約の違反となり得ます。伝える際には、確認された事実、未確認の情報、既に採っている対応、及び今後の予定を分けて示し、断定を避けた表現を用います。時期と表現については、弁護士と事前に打ち合わせることを勧めます。

M&A仲介業者に責任を問うことはできますか

M&A仲介会社との契約の内容によります。多くの契約では、業務の範囲を当事者の引合せと手続の進行の補助に限定し、対象会社の調査の結果について責任を負わない旨が定められています。この場合、責任を追及することは容易ではありません。もっとも、担当者が問題を認識しながら買主に伝えなかったと認められる事情があれば、説明の義務の違反を主張する余地はあります。契約書、提供された資料、及び担当者とのやり取りの記録を保存し、弁護士に評価を求めてください。

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