買収後に訴訟や労働紛争が発覚した場合の確認手順と売主への請求

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訴訟及び労働紛争の判明に関するメインのページです。本ページは、M&Aで会社を譲り受けた後に係争が判明した場面で、資料の保全と引当金の確認をご説明します。未払の残業代の判明は別のページをご参照ください。
未払の割増賃金が判明した場面は買収後に未払残業代が発覚した場合の再計算と売主への請求を、許認可の問題が判明した場面は買収後に許認可の問題が発覚した場合の確認手順と売主への請求を、それぞれご覧ください。
株式譲渡の実行を終え、代表者の変更登記も済ませ、新しい体制で経理や人事の引継ぎを進めている最中に、裁判所からの特別送達の封筒が対象会社に届くことがあります。あるいは、経理を担当してきた古参の社員が、資料の引継ぎの合間に「そういえば、あの件はまだ弁護士の先生に預けたままです」と口にすることもあります。退職した従業員の代理人弁護士から未払残業代の請求書が届く、という形で発覚することもあります。
この場面で買主が最初に感じるのは、聞いていない、という感覚です。買収の前に受け取った資料の中に、その紛争の記載はなかったはずだ、という感覚です。そこから先に進むためには、その感覚を事実に置き換える作業が要ります。どのような係争が、いつから、いくらの請求額で存在していたのか。それは買収の実行の時点で既に存在していたのか。売主はそれを知っていたのか。決算書のどこかに手当てがされていたのか。そして、そのことを買主に伝えるべき約束が契約の中にあったのか。この五つを一つずつ確かめないと、売主に対して何をどこまで請求できるのかが定まりません。
本稿では、中小企業を買収した買主の方を念頭に、買収後に対象会社の係争が発覚した場面で、係争の全体像の把握から資料の保全、表明保証との関係、引当ての状況の確認、損害額の見積り、売主への請求、そして対象会社としての訴訟への対応までを、実務の順序に沿って整理します。なお、訴えが起こされる前の段階の紛争についても、扱いは同じです。
どのような係争が存在するかを確認する
最初に行うのは、発覚した1件だけを見るのではなく、対象会社が現に抱えている係争の全体を洗い出す作業です。1件が隠れていた会社では、他にも同種のものが残っていることが少なくありません。部分的に対処を重ねると、後から出てきた分について売主への通知の期限を徒過する事態を招きますので、最初の1週間から2週間で網羅的に洗い出します。
訴訟に至っていない紛争も対象に含める
洗い出しの範囲を「裁判所に係属している事件」に限ってはなりません。訴えが提起されていない段階の紛争も、企業価値に影響を与え、かつ表明保証の対象となり得ます。具体的には、相手方の代理人弁護士から届いた内容証明郵便、支払を求める催告書、労働基準監督署による臨検監督及び是正勧告書の交付、労働局のあっせんの申立て、労働組合からの団体交渉の申入書、行政庁からの報告徴収や照会、取引先が申し立てた民事調停や支払督促、仮差押えや仮処分の申立て、そして工事や納品をめぐって書面のやり取りが止まっている案件などです。表明保証の条項は、多くの場合「訴訟、仲裁、調停その他の紛争又は行政庁による手続」といった広い書き方をしており、訴えの提起がない段階の紛争もその文言に含まれ得ます。
どこを見れば係争が見つかるか
係争は帳簿の表面には出てきませんので、次のような資料に当たります。第一に、顧問弁護士及び過去に依頼した弁護士からの請求書と、その支払の記録です。支払手数料や顧問料の補助元帳を過去3年から5年分さかのぼり、法律事務所への支払が膨らんだ月を特定します。第二に、社印及び代表者印の押印簿と、郵便物の受領簿です。第三に、供託の記録、預金口座の差押えや振込の停止の履歴です。第四に、退職者の名簿と、退職時に取り交わした書面の有無です。第五に、社会保険及び労働保険の調査の記録です。
係争の一覧表を作る
洗い出した結果は、一覧表にまとめます。項目としては、事件又は紛争の名称、相手方、発生した時期、現在の段階、係属している裁判所又は行政庁、請求されている金額、当方の主張の要旨、担当している弁護士、直近の期日又は回答期限、決算書における処理、そして買収の実行日の時点で既に存在していたかどうかの区別を並べます。最後の項目が、売主への請求の可否を分ける決定的な欄になりますので、根拠となる資料の名称も併せて記載します。
訴訟に関する資料を保全する
係争の全体像が見えたら、次に行うのは資料の保全です。中小企業では、退職者の私物と一緒に書類が持ち出される、共用のパソコンが初期化される、といったことが日常的に起こります。資料は、対象会社の訴訟のためだけでなく、売主との交渉のためにも必要になります。
まず廃棄と上書きを止める
実務上、最初に出す指示は「捨てない、消さない」です。文書の保存年限に基づく定期的な廃棄、電子メールの自動削除の設定、会計システムの過年度データの圧縮、共有サーバーの世代管理による上書き、退職者のアカウントの削除を、係争に関係し得る範囲で一時的に停止します。加えて、監視カメラの映像や入退室の記録のように一定期間で自動的に消えるものは、期限が来る前に別媒体へ複製します。指示は口頭ではなく書面又は電子メールで出し、その控えを残します。この控えは、後に対象会社が訴訟に適切に対応したことを示す資料にもなります。
訴訟案件について集める資料
既に訴訟になっている案件については、訴状、答弁書、これまでに提出された準備書面、書証の写し、証拠説明書、期日調書、和解の勧告があればその内容、そして担当弁護士との委任契約書及び報告書を集めます。裁判所に係属している事件の記録は、当事者であれば閲覧及び謄写ができますので、社内に写しが残っていない場合は、担当弁護士を通じて取り寄せます。
労働紛争について集める資料
労働紛争では、資料の性質が異なります。就業規則及び賃金規程とその届出の記録、雇用契約書、タイムカード又は勤怠システムの打刻記録、パソコンのログオンとログオフの記録、賃金台帳、給与明細、時間外労働に関する労使協定とその届出の記録、固定残業代を採用している場合はその金額と対応する時間数を定めた書面、管理監督者として扱ってきた者の職務内容を示す資料、そして退職時の合意書を集めます。未払残業代の紛争では、労働時間の立証資料がそのまま金額を左右しますので、打刻記録が存在するかどうか、存在するとして何年分残っているかを、早い段階で確認します。
開示の義務と表明保証の条項を確認する
資料を押さえたら、契約書に戻ります。売主に責任を問えるかは、最終的に契約の文言で決まります。ここでいう表明保証とは、売主が買主に対し、契約に書かれた一定の事実が真実であることを保証し、それが真実でなかった場合には補償を行うという約束のことです。
訴訟に関する表明保証の文言を読む
株式譲渡契約の表明保証の条項には、多くの場合、訴訟に関する項目が置かれています。読むべき点は四つあります。第一に、対象の範囲です。「訴訟が係属していないこと」とだけ書かれているのか、「訴訟、仲裁、調停、労働争議、行政庁による調査その他の紛争が存在せず、また、そのおそれもないこと」と書かれているのかで、訴えの提起前の紛争が含まれるかどうかが変わります。第二に、基準となる時点であり、契約の締結日のみか、実行日にも同じ表明が繰り返されているかを確認します。第三に、いわゆる知る限りの限定です。「売主の知る限り」という文言が付いていると、売主が知らなかったことを主張する余地が生まれ、買主の側で売主の認識を立証する負担が生じます。第四に、開示別紙による除外です。契約の別紙に記載された事項は表明保証の対象から外れますので、その別紙に当該係争が書かれていないかを確認します。
補償の条項と期限を確認する
表明保証に違反があったとして、実際に金銭を回収できるかは、補償の条項の作り方によります。確認するのは、補償を請求できる期間の制限、1件当たりの下限額、補償の総額の上限、請求の手続として定められた通知の方法と期限、そして代金の一部を第三者に預けるエスクローの有無です。期間の制限は、実行日から1年、又は1年6か月とされていることが多く、この期間を過ぎると、内容として理由のある請求であっても行使できなくなります。したがって、係争を発見したら、まず期限の日を確定します。
売主が知っていた場合と知らなかった場合
ここが、主張の組み立てが大きく分かれるところです。売主が係争の存在を知りながら開示しなかった場合には、表明保証の違反に加えて、契約交渉における説明義務の違反、さらに事案によっては詐欺を理由とする取消しや不法行為に基づく損害賠償を組み立てる余地があります。故意による違反については、補償の上限額や期間の制限を適用しないという条項が置かれていることも多く、その場合、回収できる範囲が大きく変わります。売主宛ての報告書、売主が出席した会議の記録、売主が弁護士と交わした電子メール、売主が押印した委任状といった、売主の認識を示す資料を探すことが、そのまま金額に直結します。
これに対し、売主も知らなかった場合には、話は表明保証の違反の有無に絞られます。この場合、「売主の知る限り」という限定が付いていなければ、売主の認識にかかわらず、事実が真実でなかったこと自体をもって補償を求め得ます。逆にその限定が付いていると、買主の側で、売主が知っていたか、少なくとも通常の注意を払えば知り得たことを示す必要が生じます。中小企業の同族経営では、売主が現場の紛争を把握していないという事態はあまり多くありませんが、工場や支店で起きた労務の問題では、実際に知らなかったという場合もあります。いずれにせよ、売主の認識を推認させる資料を集めたうえで、主張の柱を選びます。
引当金が計上されていたかを確かめる
係争が隠れていたかどうかを判断するうえで、決算書の扱いは重要な手がかりになります。損失の発生する可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合には、訴訟損失引当金などの名目で負債に計上するのが会計上の考え方です。金額を見積もることが難しい場合でも、偶発債務として注記を付すという扱いがあります。
計上されていた場合に何が言えるか
引当金が計上され、又は注記が付されていたにもかかわらず、買主がその存在を認識していなかったのであれば、どの段階で情報が止まったのかを検証します。決算書自体が提供されていたのであれば、買主の読み落としであったと評価され、買主が知っていた事項について補償を請求できないという条項が働くこともあります。一方、提供された決算書が試算表のみであった、勘定科目の内訳書が渡されていなかった、という場合には、開示が不十分であったという主張につながります。デュー・ディリジェンスの過程で実際に受領した資料の一覧と、その授受の記録を確認してください。
計上されていなかった場合に何が言えるか
より多いのは、係争が存在するのに何も計上されていなかった場合です。中小企業では会計監査を受けていないことが通常であり、税務上の損金として認められにくいこともあって、訴訟に関する引当金が計上されない例は珍しくありません。この場合、計算書類が一般に公正妥当と認められる会計の基準に従って作成されているという趣旨の表明保証の違反を、訴訟に関する表明保証の違反と併せて主張できる余地が生まれます。この二本立ては実務上有用です。
簿外の債務としての未払残業代
労働紛争に固有の論点として、未払残業代の問題があります。1人の退職者から請求が来た場合、その1人分の金額だけを見て済ませることはできません。同じ賃金規程と同じ勤怠管理の下で働いている在職者及び他の退職者にも、同様の請求権が潜在していることが通常だからです。したがって、対象会社の全従業員について、同じ計算方法で試算し、時効により請求され得る期間分の総額を把握します。この総額こそが、隠れていた紛争が企業価値に与えた影響の実質です。買収価格が営業利益に一定の倍率を乗じて算定されていた場合、恒常的に発生していた時間外労働の割増賃金が計上されていなかったのであれば、前提となる利益の水準そのものが過大であったという主張も成り立ち得ます。
見通しと損害額を見積もる
売主に請求するにも、対象会社として訴訟を追行するにも、金額の見積りが要ります。見積りは、勝敗の見通し、想定される支払額、そして解決までに要する費用と時間の三つに分けて行います。
勝敗の見通しをどう立てるか
担当している弁護士に対しては、「勝てますか」ではなく、具体的な問いを立てます。相手方の主張のうち、争いのない事実と争っている事実はどれか。争っている事実について、当方が持っている証拠は何か。相手方が持っていると考えられる証拠は何か。和解による解決の場合、どの程度の水準が想定されるか。次回の期日で何が決まるか。これらに対する回答を書面で受け取り、その内容を、売主への通知書に添付する資料として保管します。
想定される支払額の内訳
支払額は、請求されている元本だけではありません。遅延損害金が付きますし、判決に至れば訴訟費用の負担も生じます。労働事件では、割増賃金の未払について、裁判所が同額までの付加金の支払を命じることができるという定めが労働基準法にあり、この点を考慮しないと見積りが大きく狂います。加えて、こちらの弁護士費用や、社内の担当者が費やす時間も費用です。労働紛争では、1件の和解が社内に知れ渡って同種の請求が続くという波及も現実に起こりますので、和解の内容に守秘の条項を入れるかどうかを含めて検討します。
企業価値への影響として表現する
売主に対する請求のためには、見積りを「企業価値がいくら下がったか」という形に翻訳します。単純な考え方は、買収の実行日の時点で、その係争の存在を知っていれば買主が支払わなかったはずの金額を損害とみるものです。実務では、想定される支払額に、発生する可能性の程度を乗じた金額を基礎とし、これに対応が要する費用を加える形が用いられます。もっとも、どの範囲までが損害と認められるかは契約の文言と事案により異なりますので、金額の根拠を複数の考え方で用意しておきます。
売主に対して請求する
見積りができたら、売主への請求に移ります。ここで最も重要なのは順序です。金額が固まってから通知しようと考えていると、期限を徒過します。金額が未確定であっても、まず期限内に通知を出し、その後に金額を補充するという運びが安全です。
通知書に何を書くか
通知書には、対象となる契約の条項、違反していると考える表明保証の内容、発覚した係争の具体的な内容、発覚の経緯と時期、現時点で判明している請求額と想定される損害額、そして金額は今後の進行に応じて変動し得る旨を記載します。契約に通知の方法や宛先が定められている場合には、その方法に従い、配達証明付きの内容証明郵便を用いて、送付した事実と日付を残します。売主が複数いる場合には、全員に対して送ります。この段階では、係争の内容について対象会社の見解を確定的に書き切らないよう注意します。その記載が、相手方との訴訟で不利に働く可能性があるためです。
回収の手段を確保する
補償を求める権利があっても、売主に支払う資力がなければ回収できません。代金の一部が第三者に預けられているエスクローの仕組みがあれば、その解放の時期を確認し、解放の停止を求めます。分割払の残代金や、役員退職慰労金の未払分が残っている場合には、相殺の可能性を検討します。売主が受け取った代金を既に費消している場合もありますので、時間の経過は不利に働きます。
調停や仲裁の条項に従う
株式譲渡契約には、紛争が生じた場合の解決の方法として、専属的合意管轄裁判所を定める条項や、協議の前置を求める条項が置かれていることがあります。これらを飛ばして訴えを提起すると、手続の入口で争われます。また、M&A仲介業者又はM&A仲介会社が関与していた取引では、その業者が売主から受け取っていた情報の範囲が問題になることもありますので、業者に提出された資料の一覧も確認します。
対象会社として訴訟に適切に対応する
売主への請求と並行して、対象会社そのものが当事者となっている訴訟や紛争に対応しなければなりません。この対応が不十分であったために不利な結果となった場合、その点が売主からの反論の材料になります。すなわち、「損害が拡大したのは買収後の対応が悪かったからであり、表明保証の違反と損害との間に因果関係がない」「損害の拡大について買主の側に落ち度がある」といった主張です。対象会社としての対応は、それ自体が適切であるだけでなく、適切であったことを後から示せる形で行う必要があります。
期日と期限を落とさない
最も基本的で、かつ実際に起こりやすい失敗が、期日への欠席と、答弁書や準備書面の提出期限の徒過です。買収の直後は、代表者の変更、担当者の交代、郵便物の受領体制の変更が重なり、裁判所からの書面が届いていても誰も開封しないという事態が生じます。訴訟を担当する弁護士との連絡窓口を1人に定め、期日と提出期限の管理表を作り、代表者が毎週確認します。欠席によって相手方の主張が認められる結果になれば、その責任を売主に転嫁することは難しくなります。労働基準監督署や労働局からの回答期限、団体交渉の申入れに対する応答も同様であり、団体交渉の申入れを無視すると、それ自体が別の問題を生じさせます。
安易な和解と不用意な自認を避ける
早く片付けたいという理由で、内容を検討しないまま和解に応じることは避けます。特に、売主への請求を予定している案件では、和解の金額と内容がそのまま損害額の基礎になりますので、相場から離れた高額の和解をすると、その差額について「不必要な支出である」と反論されます。逆に、和解の中で対象会社が事実関係を広く認める文言を入れると、他の従業員や取引先との関係でも不利に働きます。行政庁の調査や相手方との交渉の場で、事実関係を確認しないまま謝罪や自認をすることも避け、認める部分と争う部分を切り分けて回答します。
売主に関与の機会を与える
補償の条項には、第三者から請求を受けた場合の取扱いを定めた項目が置かれていることがあります。買主が売主に通知し、売主に防御への関与の機会を与え、売主の同意なく和解をしてはならない、といった内容です。この定めがあるのに手続を踏まないと、補償を請求できないという主張を招きます。定めがない場合でも、和解を検討する段階で売主に内容を通知し、意見を求め、その記録を残しておくことは有益です。この記録が、後の交渉において、対象会社の対応が独断ではなかったことを示す資料になります。
記録を残しながら進める
対応の過程は、その都度記録します。弁護士から受けた助言の内容と日付、社内で行った検討と決定の理由、和解を選んだ場合はその判断の根拠、支出した費用の明細を、簡潔でよいので書面に残します。この記録は、売主との交渉の資料になるだけでなく、買主自身が対象会社の役員として負う責任の観点からも意味を持ちます。
よくあるご質問
買収後に対象会社の係争が発覚した場面について、実際に多く寄せられる質問を整理します。
訴訟が提起されていない紛争でも、売主に責任を問えますか
問い得ます。表明保証の条項が「訴訟、仲裁、調停その他の紛争」や「紛争のおそれ」を含む文言であれば、内容証明郵便の受領、労働基準監督署の調査、団体交渉の申入れといった段階の事象も対象に含まれ得ます。訴えが提起されていないという理由だけで請求を諦める必要はありません。
売主が本当に知らなかった場合でも請求できますか
契約の文言によります。表明保証に「売主の知る限り」という限定がなければ、売主の認識にかかわらず、表明された内容が事実と異なっていたこと自体をもって補償を求め得ます。限定が付いている場合には、売主が知っていたこと、又は通常の注意を払えば知り得たことを買主の側で示す必要が生じ、立証の負担が重くなります。なお、デュー・ディリジェンスで見つけられなかったという一事で請求が否定されるとは限らず、質問をしたのに回答がなかった、又は事実と異なる回答があったという記録は、買主にとって有利に働きます。
未払残業代は、請求してきた1人分だけを考えればよいですか
1人分にとどめることは適切ではありません。同じ賃金規程と同じ勤怠の管理の下にある在職者及び他の退職者にも同種の請求権が潜在していることが通常であり、1件の解決が他へ波及することもあります。全従業員について同じ方法で試算し、請求され得る期間分の総額を把握したうえで、賃金規程の見直しを含めて対応を検討してください。この総額が、企業価値への影響を判断する基礎になります。
売主への通知は、損害額が確定してからでよいですか
確定を待つべきではありません。補償を請求できる期間は、実行日から1年や1年6か月といった形で制限されていることが多く、この期限を過ぎると請求そのものが行使できなくなる場合があります。金額が未確定であっても、係争の内容と、金額が今後変動し得る旨を記載した通知を、期限内に配達証明付きの内容証明郵便で送ることを優先してください。金額は後から補充することができます。
対象会社の訴訟で敗訴した場合、その全額を売主に請求できますか
当然に全額が認められるとは限りません。売主からは、買収後の訴訟対応が適切でなかったために損害が拡大したという反論が出され得ます。期日の欠席、書面の提出期限の徒過、相場から離れた和解、事実を確認しないままの自認は、いずれもその材料になります。期日と期限を管理し、和解の前に売主へ通知して意見を求め、判断の理由を記録に残すことが、この反論を封じるうえで有効です。
買収の前から対象会社を担当していた弁護士に、そのまま任せてよいですか
案件の性質によります。対象会社の訴訟を追行する立場と、売主に対する請求を検討する立場とは、利害が対立し得る関係にあります。売主と個人的な関係の深い弁護士が引き続き担当している場合には、売主の認識に関する事実の解明が進みにくいこともあります。対象会社の訴訟はそのまま担当してもらいつつ、売主への請求は別の弁護士に依頼するという分け方も選択肢の一つです。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
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