買収後に環境法令や業法の違反が判明した場合の対応と売主への責任追及
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環境法令及び業法の違反の判明に関するメインのページです。本ページは、M&Aで会社を譲り受けた後に規制の違反が判明した場面で、是正の計画をご説明します。許認可の問題は別のページをご参照ください。
許認可の問題が判明した場面は買収後に許認可の問題が発覚した場合の確認手順と売主への請求を、個人情報の漏えいが判明した場面は買収後に個人情報の漏えいが判明した場合の対応と売主への責任追及を、それぞれ御覧ください。
買収の代金を払い込み、会社の経営を引き継いで数か月が経った頃に、工場の裏手に古い廃液の入ったドラム缶が並んでいることに気づく、排水の記録簿が数年分そろっていない、届出をしたはずの設備の書類がどこにも見当たらない、といった形で、行政上の規制に適合していない状態が表に出てくることがあります。従業員に尋ねると「前の社長の頃からこうです」と言われ、売主に連絡すると「役所から何も言われたことはない」と返ってくる、という食い違いもよく起こります。
この場面で買主が直面する不安は、大きく三つに分かれます。第一に、行政庁からどのような扱いを受けるのか、第二に、工場や店舗を止められて売上が途切れるのではないか、第三に、その負担を売主に求められるのか、という点です。前の二つは日単位あるいは週単位で進行しますが、最後の一つは表明保証の期間制限との関係で、数か月という期限を抱えます。目の前の対応に追われるうちに請求の期限が過ぎる、ということが実際に起こります。
本稿では、中小企業を買収した買主の方を念頭に、環境に関する法令、業法その他の行政上の規制について違反が判明した場面で、何をどの順序で進めるかを述べます。この種の事案で最も重い判断の誤りは、違反の状態を知りながら手を付けずに操業を続けることです。知らずに引き継いだ違反と、知った上で続けた違反とでは、行政庁の見方も、経営者個人の責任の重さも、まったく異なってきます。
どの法令のどの規制に違反しているのかを特定する
最初にすべきことは、行政庁への連絡でも売主への抗議でもありません。何がどの規制に触れているのかを、事実の側と規制の側の双方から具体的に確定する作業です。現場から上がってくる話は「排水が基準を超えているらしい」「産業廃棄物の書類が足りない」といった漠然とした形をとりますが、この理解のままでは、対応の重さも費用の規模も見積もれず、誤った前提で行政庁に説明すれば、かえって信用を損ないます。
事実の側を固定する
まず、現に何が起きているかを、後から検証できる形で記録します。対象となる設備、物質、場所、量、開始の時期、現在も継続しているかどうかを、写真、測定の記録、伝票、日報といった資料に基づいて書き出します。人の記憶ではなく、日付の入った資料に当たることが肝要です。買収の前から継続していたのか、引継ぎの後の運用の変更によって生じたのかは、後の売主への請求において決定的な意味を持ちます。
規制の側を特定する
次に、その事実がどの法令のどの規制に触れるのかを整理します。行政上の規制は、大きく分けて、届出や許可を要する行為を無届け又は無許可で行っているという類型、許可は受けているが許可の条件や基準を守っていないという類型、記録の作成や保存、報告といった手続を怠っているという類型に分かれます。同じ「違反」という言葉でも、この三つでは是正の方法も処分の重さも異なりますので、自社の状態がどれに当たるかを見極めます。
典型的な場面ごとの調べ方
中小企業の買収で問題になりやすい場面は、ある程度決まっています。土壌の汚染については、敷地の履歴、過去に扱っていた物質、有害物質を使用する施設の廃止の届出の有無を確認します。廃棄物の処理については、産業廃棄物の管理票の控えが法定の期間分そろっているか、委託先の許可証の写しが有効なものか、保管の場所の掲示や囲いが基準を満たしているかを見ます。水質の規制については、特定施設の届出の内容と現に設置されている設備とが一致しているか、排水の測定の記録が定められた頻度で残っているかを照合します。大気の規制については、ばい煙を発生させる施設の届出、測定の記録、除去の装置の稼働の状況を確認します。いずれも、届出の控えと現物との突合せが出発点となります。
行政上の処分を受ける危険をどう見るか
違反の内容が見えてきたら、次に、行政庁からどのような扱いを受け得るのかを見積もります。ここで大切なのは、行政庁の対応が段階を追って重くなっていくという構造を理解することです。多くの規制において、行政庁はいきなり最も重い処分に出るわけではなく、まず改善を促し、それに応じない場合や違反の程度が重い場合に、より強い措置に進みます。この段階のどこに自社がいるのかを把握すると、取るべき行動が見えてきます。
処分の段階を理解する
一般に、最も軽いものは行政指導であり、口頭又は書面で改善を求められます。これに従わない場合や違反の状態が継続する場合には、改善命令、措置命令といった、法的な義務を課す処分に進みます。さらに、命令にも従わない場合や、違反が重大である場合には、施設の使用の停止、営業の停止、許可の取消しといった、事業そのものを止める処分が視野に入ります。業法の分野では、許可の取消しを受けると、一定の期間、再び許可を受けられなくなる仕組みが置かれていることが多く、事業の継続が危うくなります。
公表と取引先への影響
処分の実際の痛手は、処分そのものよりも、その後に生じる取引上の影響であることが少なくありません。行政庁が処分の内容を公表する仕組みを設けている分野では、社名が公表され、取引先の調達の基準に触れて取引を打ち切られる、入札への参加が制限される、金融機関の与信の判断に影響する、といった形で波及します。処分の危険を見積もる際は、この二次的な影響まで含めて考えます。
自ら申告する場合と調査で発覚する場合との差
ここは実務上、最も重要な分かれ目です。事業者が自ら行政庁に申し出て、是正の計画を示し、その計画に従って改善を進めた場合と、行政庁の立入検査や第三者の通報によって発覚した場合とでは、受け止め方が大きく異なり得ます。前者では、事業者に是正の意思があると評価され、指導の段階で収まったり、命令が出るとしても是正の期間に配慮が及んだりする余地があります。後者では、隠していたのではないかという疑いが加わり、処分の程度が重くなる方向に働きます。分野によっては、自主的な報告を処分の軽減の事由として定めている例もあります。もっとも、申告をすれば必ず軽く済むというものではなく、違反の内容、期間、周辺への影響によって結論は異なりますので、申告の時期と方法は慎重に設計する必要があります。
認識した後の放置は新たな責任を生む
買主の方に最も強く申し上げたいのは、この点です。前の経営者の下で始まった違反であっても、買主がそれを知った時点から後は、買主自身が違反の状態を維持している者となります。知らずに引き継いだ期間と、知った上で続けた期間とは、法的にまったく異なる意味を持ちます。知った後の継続については、会社の責任にとどまらず、代表者個人が、必要な措置を講じなかったこと自体について責任を問われる余地が生じます。取締役は会社に対して善良な管理者としての注意をもって職務を行う義務を負い、法令を遵守する体制を整えることもその内容に含まれると解されていますので、違反を認識しながら放置して会社に損害が生じた場合には、株主から責任を追及される場面も考えられます。また、放置した期間が長いほど、被害の拡大分は買主の側の事情であると売主から反論されやすくなります。発覚から対応の開始までの日数は、後から必ず問われます。
是正の計画を立てる
違反の内容と処分の危険が見えたら、是正の計画を作ります。ここで多くの買主が陥るのは、恒久的な解決の方法が決まらないために何も動き出せないという状態です。土壌の汚染の除去のように年単位の時間と多額の費用を要する事案では、完全な解決を待っていては、その間ずっと違反の状態を続けることになります。応急の措置と恒久の措置とを分けて考えることが、この行き詰まりを解く鍵となります。
応急の措置を先に打つ
まず、被害の拡大を止める措置を、費用の見積りを待たずに実施します。汚染された水や物質が敷地の外に出ているのであれば、その経路を遮断します。基準を超える排水が出ているのであれば、当該の工程を一時的に止めるか、処理の方法を変えます。不適正に保管された廃棄物があれば、適法な委託先への搬出の手配を始めます。届出を怠っていただけであれば、直ちに書類を整えます。応急の措置は、後に行政庁に説明する際、また売主に請求する際の双方において、事業者として当然の対応を尽くしたことを示す資料となります。
恒久の措置は工程表に落とす
恒久の措置については、いつまでに何を行うかを工程表の形にします。調査の完了、方法の決定、業者の選定、工事の着手、完了、行政庁への報告といった節目に日付を入れ、それぞれの担当者を決めます。工程表があれば、行政庁との協議において「いつ直るのか」という最も重い問いに答えられます。逆に、工程表を示せないまま「検討中です」と繰り返すと、是正の意思を疑われます。日付は、業者の見積りに基づいて現実的に置きます。
行政庁との協議の進め方
行政庁に対しては、違反の事実、原因、既に実施した応急の措置、今後の工程、責任者を、書面にまとめて示します。口頭のやり取りだけで進めると、後になって言った言わないの問題が生じます。協議の際は、担当者の氏名、日時、指摘の内容、回答を記録に残します。分からない点を曖昧に答えるより、調査の上で改めて報告すると述べる方が、結果として信頼を得られます。
デュー・ディリジェンスで確認できた事項
是正の手当てと並行して、買収の前の調査で何をどこまで確認していたかを振り返ります。売主に何を言えるかは、買主が知っていたこと及び知ることができたことの範囲に左右されるためです。調査で指摘され、価格に織り込んだ事項について、後から重ねて請求することは通常できません。逆に、提出を求めたのに出てこなかった資料については、買主の側に落ち度があるとは言いにくくなります。
提出を求めた資料と実際に出てきた資料
資料の請求の一覧表と、実際に開示された資料の一覧とを並べ、差分を洗い出します。行政上の規制に関して典型的に請求する資料は、許可証及び登録証の写し、各種の届出の控え、行政庁からの通知書、指導票、立入検査の結果の書面、測定の記録、産業廃棄物の管理票の控え、委託の契約書、敷地の履歴に関する資料です。これらのうち「該当なし」と回答されたまま出てこなかったものがあれば、その事実は後の請求において重要な意味を持ちます。
売主の回答と現実との突合せ
質疑応答の記録を取り出し、行政上の規制について何を尋ね、売主が何と答えたかを確認します。「行政庁から指導を受けたことはない」「必要な届出はすべて行っている」といった回答があり、それが事実と異なっていた場合には、後述する表明保証の違反に直結します。回答の日付、回答者、回答の文言をそのまま抜き出して保管します。中小企業の売買では、質疑応答が電子メールで残っていることが多く、この記録が最も有力な資料となります。なお、費用の制約から環境に関する専門の調査を省略していた場合には、報告書にその旨の限定が明記されているはずですので、あわせて確認します。
表明保証の条項との関係
株式譲渡契約には、通常、売主が会社の状態について事実を述べて保証する条項が置かれます。行政上の規制の違反は、この条項に触れる典型的な場面です。もっとも、契約書の文言は案件ごとに異なり、どの条項に当たるかによって請求できる範囲も手続の要件も変わりますので、契約書を最初から読み直し、関係する条項を抜き出すところから始めます。
どの表明に当たるかを読み分ける
行政上の規制の違反は、複数の条項に同時に触れることがあります。法令の遵守に関する条項、許認可に関する条項、環境に関する条項、訴訟や行政手続に関する条項、そして開示した資料が正確であることを述べる条項です。たとえば「重要な点において法令を遵守している」という文言であれば、重要性の判断が争点となり、「すべての必要な許認可を取得し維持している」という文言であれば、取得の有無という客観的な事実が問題となります。
売主の認識を要件とする文言に注意する
条項に「売主の知る限り」という限定が付されている場合、売主が知らなかったのであれば違反とはならない、という構造になります。この場合、売主が知っていたことを買主の側で示す必要があり、行政庁からの指導票、社内の会議の記録、担当者への指示のメール、過去の是正の見積書といった資料が手掛かりとなります。中小企業では、社長が現場の実情を把握していることが通常ですので、状況の全体から認識を推認できる場合もあります。
買主が知っていた場合の扱い
買主が契約の締結の時点で違反の事実を知っていた場合に、なお請求できるかは、契約書の定めによります。知っていた事項については補償を求められないと明記する条項もあれば、逆に、買主の認識にかかわらず売主が責任を負うと定める条項もあります。定めがない場合には解釈の問題となり、デュー・ディリジェンスの報告書に指摘があったかどうかを踏まえた、事案ごとの判断となります。
補償の手続と期間の制限
補償を求めるには、契約書が定める手続に従う必要があります。多くの契約書には、違反を知った日から一定の期間内に、書面で、違反の内容と損害の見込みの額を通知すべきことが定められています。この期間は30日や60日といった短い設定であることが珍しくありません。行政庁への対応に追われて通知を怠ると、請求の根拠を失いかねません。補償の請求ができる期間そのものにも、実行の日から1年から2年といった制限が置かれるのが通例です。金額の下限や上限の定めも確認し、総額が未確定でも、まずは期間内に通知を出して金額は追って補充する旨を明記します。
是正の費用と操業の停止による損害
売主に請求する準備として、損害を項目ごとに積み上げます。大づかみな概算で済ませると交渉でも訴訟でも押し返されますが、費目ごとに資料を添えて示すことができれば、金額そのものの説得力が増します。損害は、是正に直接要する費用と、操業が制限されたことによる損害とに分けて整理します。
是正の費用の内訳
是正の費用には、調査の費用、設計の費用、工事の費用、廃棄物の処理及び運搬の費用、代替の設備の費用、行政庁への手続に要する費用、これらに付随する専門家の費用が含まれます。土壌の汚染の事案では、概況の調査、詳細な調査、対策の工事という段階ごとに契約が分かれますので、それぞれの見積書と請求書を保管します。廃棄物の事案では、不適正に保管されていた物を適法に処理する費用が中心となります。既に発生した費用と今後見込まれる費用とを分け、後者については見積書を根拠とします。
操業の停止による損害
使用の停止や営業の停止を受けた場合、あるいは自主的に操業を止めた場合の損害は、単に売上が減った額ではありません。得られなかった利益、すなわち売上から変動費を差し引いた額が基本となり、これに、停止の期間中も支払わざるを得なかった固定費、外部への発注に切り替えた場合の追加の費用、納期の遅れによる取引先への支払いが加わります。立証のためには、停止の前後の月次の試算表、生産の日報、受注の残高の一覧、取引先との連絡の記録を時系列でそろえます。得られたはずの売上を示すには、過去の同じ時期の実績や、既に受注していた分の数量が手掛かりとなります。
売主への請求
資料がそろったら、売主に対して請求を行います。中小企業のM&Aでは、売主が引継ぎの期間中は顧問として会社に残っていたり、株式の一部を保有し続けていたりすることがあり、関係を壊すことをためらう買主も少なくありません。しかし、期間の制限が迫っている以上、通知を先送りする選択肢はありません。関係を保ちながら請求する方法は、通知の内容と伝え方によって作ることができます。
請求の根拠を並べる
主たる根拠は、株式譲渡契約の表明保証の違反に基づく補償の請求です。契約に補償の条項がない場合や、条項の要件を満たさない場合には、債務の不履行に基づく損害の賠償を求める余地があります。さらに、売主が違反の事実を知りながら、質疑応答において事実と異なる回答をしていた場合には、不法行為に基づく賠償や、契約の取消しを主張する余地も生じます。通知の段階では複数の根拠に触れておくことが通例です。
通知書に書くこと
通知書には、違反の事実、それがどの表明保証の条項に触れるか、判明した日、既に発生した損害の額、今後見込まれる損害の額とその根拠、そして今後の見込みに応じて請求の額を追加する旨を記載します。契約書に定められた宛先と方法を守り、配達の記録が残る方法で送ります。感情的な非難の言葉を書き込むと、その後の協議が難しくなりますので、事実と根拠を淡々と並べるにとどめます。
回収を確保する
請求が認められても、売主に支払う資力がなければ意味がありません。代金の一部が未払いで残っている場合や、分割の支払いの途中である場合には、契約の定めに従って、補償の債権と未払いの代金とを相殺できるかを確認します。代金の一部を第三者に預けておく仕組みがある場合には、その預託の期間が満了する前に請求を行う必要があります。いずれの手当てもない場合には、売主の資産の状況を把握し、必要に応じて、財産を処分されないようにするための保全の手続を検討します。
協議による解決の形
実務上は、訴訟に至らず、協議によって解決する例が多くあります。解決の形は金銭の支払いに限られず、未払いの代金の減額、分割の支払いの残りの免除、売主が保有し続けている株式の買取りの価格の調整、売主による工事費用の直接の負担といった形も取られます。合意する場合は、合意の書面において、対象となる事項の範囲と、その他の請求権を放棄するのかどうかを明確に定めます。範囲を曖昧にしたまま和解すると、後に別の違反が判明したときに争いが再燃します。
よくあるご質問
ここでは、買収の後に行政上の規制の違反が判明した場面で、買主の方から多く寄せられる問いを取り上げます。いずれも事案の内容によって結論が変わり得る事柄ですので、一般的な考え方を示すものとしてお読みください。個別の判断に当たっては、契約書の文言と資料の状況を踏まえた検討が必要となります。
前の経営者の時代から続いていた違反ですが、買主が責任を負うのですか
株式を取得する方法で買収した場合、会社そのものは同一のまま存続しますので、会社が負う行政上の義務もそのまま引き継がれます。株主が変わったことを理由に義務を免れることはできません。ただし、行政庁が違反の期間の長さや原因を評価する際に、いつから現在の経営陣になったのかは考慮され得ます。重要なのは、引き継いだ事実そのものよりも、知った後にどう動いたかです。
行政庁に自分から申し出るべきでしょうか
多くの場面では、自ら申し出て是正の計画を示す方が、結果として穏当な扱いにつながる余地があります。行政庁の立入検査や近隣からの通報によって発覚した場合には、隠していたのではないかという評価が加わり、処分が重くなる方向に働きます。もっとも、申告の時期と、その時点でどこまでの是正の計画を示せるかによって受け止め方は変わりますので、応急の措置と工程表を用意してから申し出る方が望ましく、申告の前に法律の専門家に相談されることをお勧めします。
是正の費用が高額なので、しばらく様子を見てもよいでしょうか
お勧めできません。違反を認識した後に放置することは、それ自体が新たな責任を生みます。会社に対する処分が重くなるだけでなく、経営者個人が、必要な措置を講じなかったことについて責任を問われる余地が生じます。また、放置した期間に被害が拡大した分については、買主の側の事情であるとして、売主への請求が認められにくくなります。費用の目途が立たない場合でも、まず被害の拡大を止める措置を実施し、恒久の措置の工程を検討していることを記録に残してください。
デュー・ディリジェンスで指摘されていた事項でも、売主に請求できますか
報告書で指摘され、その内容を踏まえて価格を決めた事項については、原則として重ねて請求することは難しくなります。もっとも、指摘の内容が「資料が不足しているため確認できない」という趣旨にとどまり、違反の存在そのものは把握できていなかった場合には、なお請求の余地があります。報告書の記載と契約書の文言の双方を確認する必要があります。
売主は「役所から何も言われたことがない」と述べています
行政庁から指摘を受けたことがないという事実は、違反がなかったことを意味しません。届出の怠りや記録の不備は、立入検査を受けなければ表に出ないことが多いためです。表明保証の条項が「必要な許認可をすべて取得し維持している」といった客観的な事実を述べる文言であれば、売主の認識の有無にかかわらず違反となり得ます。他方、「売主の知る限り」という限定が付されている場合には、売主が知っていたことを示す資料を集める必要があります。
いつまでに売主へ通知すればよいですか
契約書に定められた期間内です。違反を知った日から30日や60日といった短い期間が定められていることが珍しくありません。損害の額が確定していないことを理由に通知を遅らせると、期間を徒過する危険があります。まずは、判明した事実と現時点で見込まれる損害の概略を記載した通知を期間内に発し、金額は追って補充する旨を明記してください。
操業を止められた場合、その損害まで売主に求められますか
求め得ます。表明保証の違反によって生じた損害には、是正に要した費用だけでなく、それに伴って操業ができなかったことによる損害も含まれ得ます。ただし、契約書に、間接的な損害や逸失した利益を補償の対象から除外する条項が置かれている場合には争いとなります。金額を示すには、停止の期間の試算表、受注の残高、取引先との連絡の記録といった資料が必要ですので、停止が始まった時点からそろえておいてください。
具体的な御相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次の御案内のページに整理しています。あわせて御覧ください。

