買収後に不良在庫が大量に判明した場合の表明保証と価格調整の整理

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買収の後に判明した不良在庫に関するメインのページです。本ページは、M&Aで会社を譲り受けた後に棚卸の資料を確かめ評価減を整理する手順をご説明します。売掛金の回収が困難な場合は別のページをご参照ください。
売掛金が回収できない場面は買収後に売掛金が回収できないと判明した場合の確認手順と売主への請求を、利益の金額そのものが説明と違っていた場面は買収した会社の利益が説明より少なかった場合の検証と請求の進め方を、それぞれご覧ください。
株式の譲渡が終わり、経営を引き継いで最初の月末を迎えたころ、倉庫に足を運んだ瞬間に違和感を覚えた、というご相談をいただくことがあります。棚の奥に、埃をかぶった段ボールが何列も積まれている。箱を開けると、既に製造が終了した機種の部品であったり、使用期限の過ぎた商品であったりする。数量を数えてみると、帳簿の数と合わない箇所も出てきます。買収前の決算書には、棚卸資産として相応の金額が計上されていたはずです。
中小企業のM&Aにおいて、在庫は最も問題が生じやすい資産の一つです。売掛金であれば相手方と残高を照合でき、固定資産であれば台帳と現物を突き合わせることができます。これに対して在庫は、品目数が多く、単価も評価方法も社内の運用に委ねられており、外部から検証しにくい性質を持ちます。買収前のデュー・ディリジェンスで全品目の現物を確認することは現実的ではなく、資料の査閲と一部の抜取りにとどまるため、引継ぎ後に初めて実態が判明します。
ここで整理しておくべきは、在庫の問題には性質の異なる二つの類型があり、それぞれ主張の組み立てが変わるという点です。一つは、帳簿に載っている在庫が現実には存在しないという実在性の問題です。もう一つは、現物は帳簿どおり存在するものの、売れる見込みがなく計上額に見合う価値がないという評価の問題です。本稿では、この区別を軸として、不良在庫の特定から請求の進め方までを順に整理いたします。とりわけ、価格調整により既に代金へ反映された部分について重ねて補償を求めることができないという二重の填補の問題を、丁寧に扱います。
不良在庫であることをどのように特定するか
不良在庫という言葉は日常的に用いられますが、売主に主張する場面で感覚的な評価は通用しません。なぜその在庫が価値を有しないといえるのかを、第三者が検証できる形で示す必要があります。最初に行うべきは、問題の性質を実在性と評価とに切り分ける作業です。
実在性の問題と評価の問題を最初に切り分けます
実在性の問題とは、帳簿上100個と記載された品目が実際には60個しかないという状態です。争点は数量の差異という事実に絞られ、実地棚卸の結果と帳簿残高との差異を品目ごとに一覧化すれば、差異の存在は明確に示せます。他方、評価の問題とは、100個という数量は帳簿どおり存在するものの、その品目が5年前に製造中止となった製品の専用部品であり、今後販売される見込みがないという状態です。数量は合っていますので、争点は価値の有無に移り、なぜ価値がないといえるのかの説明を要します。両者は根拠となる契約条項も損害額の計算方法も異なりますので、最初にこの区別を明確にしてください。
滞留期間と回転期間の数値で客観的に選別します
評価の問題を扱う場合、まず用いるべき指標は滞留期間です。品目ごとに最終出庫日から現在までの経過期間を算出し、1年以上、2年以上、3年以上という区分で帳簿金額を集計します。あわせて、直近1年の払出数量に対する在庫数量の比率から在庫が何年分に相当するかを算出します。年間10個しか出ない品目に500個の在庫があれば50年分に相当し、事業運営上必要な在庫とはいえません。これに加えて、販売できない理由を外形的な事実で裏付けます。製造元による部品供給の終了通知、完成品の生産終了の社内決定、法令又は規格の改正、使用期限の到来、モデルチェンジによる旧仕様化といった事実です。いずれも買収前から存在していたことを示す必要がありますので、日付の分かる資料の形で保存してください。
棚卸に関する資料の確認
不良在庫の主張は資料の確認から始まります。買収前に開示を受けた資料と、買収後に社内で見つかる資料とを突き合わせると、売主がどこまで実態を把握していたかが見えてきます。集めた資料は後の交渉及び法的手続における証拠となりますので、原本の所在を確認し、電子データは改変されない形で保存してください。
実地棚卸の原票と受払の記録を確認します
最も重要な資料は、直近の決算期及びその前の期における実地棚卸の記録です。集計後の一覧表だけでなく、現場で記入された棚卸原票、カウント票、担当者の署名の有無まで確認します。原票が保存されていない、集計表しか存在しない、記入が全て同一人の筆跡であるといった事情は、実地棚卸が形式的にしか行われていなかった可能性を示します。棚卸の対象範囲も確認してください。本社倉庫のみを対象とし、外部倉庫、加工委託先に預けた材料、店頭在庫が対象外であった例も見受けられます。あわせて、在庫管理システムから品目コード、入出庫日、数量、単価の受払データを長期間分抽出します。手作業の管理にとどまる会社では、納品書、出荷指図書、売上伝票から主要品目の受払を再現します。
評価の社内基準と開示資料との整合を確認します
会社が在庫の評価減に関する社内基準を定めているかを確認します。一定年数以上滞留した在庫は評価減を行うという基準がありながら適用されていなかった場合、その不適用は利益の過大計上を疑わせます。過去の期の評価減及び廃棄の履歴、税務調査における指摘の有無も有用です。次に、買収前に開示を受けた資料と質疑応答の記録を確認します。滞留在庫の有無を質問し、売主が滞留在庫はない旨を回答していたのであれば、その回答は主張の中核となります。逆に滞留在庫の一覧が開示されていた場合には、買主が既に存在を知っていたことになりますので、組み立てを変える必要が生じます。開示の日時が記録される電子的な開示環境が用いられていた場合には、その記録の保存を早期に手配してください。
評価減及び廃棄の処理
不良在庫が判明した場合、経営としては早期に処分し、保管費用と管理の手間を削減したいところです。しかし、売主への請求を検討しているのであれば、処分の前に証拠を確保しなければなりません。現物を廃棄しますと、その在庫が本当に価値のないものであったのか、主張のとおりの数量が存在したのかを証明する手段を失います。
処分の前に現物の状態を記録します
廃棄又は売却に先立ち、品目ごとに現物の状態を写真で記録してください。全体の状況が分かる写真、品番の表示が読み取れる写真、期限表示や損傷の状態が分かる写真を、日付の記録が残る形で撮影します。可能であれば第三者の立会いのもとで数量を確認し、確認書を作成しておくことが望ましいといえます。棚卸の結果と写真とを品目コードで対応させ、一覧表にまとめておけば後の説明が容易になります。売主に対して処分の予定を事前に通知し、現物を確認する機会を与えておくことも検討に値します。通知したにもかかわらず売主が確認に来なかったという経緯自体が、交渉において意味を持つことがあります。
会計処理、税務上の取扱い及び処分価額を記録します
会計上、収益性が低下した棚卸資産については正味売却価額まで帳簿価額を切り下げます。他方、税務上、棚卸資産の評価損を損金に算入できる場合は限定されており、単に売れ行きが悪いという理由だけでは認められないのが通例です。現実に廃棄した場合には廃棄損として処理し得ますが、処理業者からの受領証やマニフェストの写しといった廃棄の事実を示す資料を保存してください。取扱いは個別の事情によって異なりますので、顧問税理士と協議の上で方針を決めます。また、不良在庫でも中古市場での売却や一括処分により換価できる場合があり、いくらで処分できたかは損害額に直結します。複数の業者から見積りを取得し、条件の良い方法を選んだ経緯を記録に残してください。
財務に関する表明保証との関係
不良在庫を理由とする請求の法的な根拠は、多くの場合、株式譲渡契約に定められた表明保証の違反に基づく補償請求です。表明保証とは、当事者が相手方に対し、一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、これを保証する定めをいいます。違反があれば、契約の補償条項に従って金銭の支払を求めます。
どの条項に違反するのかを特定します
まず契約書を精読し、どの表明保証に違反するのかを特定してください。財務に関する表明保証としては、計算書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って作成され、会社の財政状態及び経営成績を正確に表示している旨の条項が置かれるのが通例です。在庫に固有の条項として、棚卸資産は通常の事業の過程において販売可能なものであり、滞留品又は陳腐化品には適切な評価減が行われている旨の定めが置かれることもあります。実在性の問題であれば資産の実在に関する条項が、評価の問題であれば評価減の適切性に関する条項が中心となります。
売主の認識による限定と買主の認識の扱いを確認します
表明保証には、売主の知る限りにおいてという限定が付されていることがあります。この限定がある場合、客観的に不良在庫が存在したというだけでは足りず、売主が認識し又は認識し得たことを示す必要が生じます。評価減の社内基準が適用されていなかった事実、税理士から滞留在庫について指摘を受けていた記録、販売見込みのない在庫が議題となっていた会議の記録が、認識を推認させる事情となります。逆に、買主が調査の過程で存在を知っていた場合の扱いも確認を要します。開示された事項を補償の対象外とする定めが置かれていることが多く、その場合には、滞留在庫が一定額存在する旨の一般的な記載にとどまるのか、品目ごとの一覧が示されていたのかによって、開示されたといえる範囲が変わります。
補償の下限額、上限額及び請求期間を確認します
補償条項には、通常、金額及び期間の制限が付されています。一定額を超えない限り請求できないという下限額の定め、総額に上限を設ける定め、クロージングから一定の期間内に請求しなければならないという期間の定めです。下限額については、超過部分のみを請求できるのか全額を請求できるのかという二つの方式があり、文言によって結論が変わります。期間の定めは特に重要であり、財務に関する表明保証については1年から2年程度とされることが多いといえます。経過後は請求が困難となりますので、判明した時点で速やかに検討に着手してください。
運転資本の調整との関係
ここが本稿で最も重要な部分です。中小企業の株式譲渡契約でも、クロージング時点の運転資本の額に応じて譲渡代金を調整する仕組みが設けられることがあります。この仕組みがある場合、在庫の問題は補償の請求だけでなく価格調整の枠組みの中でも処理され得ますので、両者の関係を整理しないまま請求を行いますと、重複した請求であるとの反論を受けることになります。
価格調整の仕組みと棚卸への反映を確認します
運転資本の調整とは、売掛金、棚卸資産、買掛金といった項目の合計額について基準となる金額をあらかじめ定めておき、クロージング日の実際の額が基準額を上回れば代金を増額し、下回れば減額する仕組みです。棚卸資産はその構成要素ですので、クロージング日の在庫金額が調整の対象に含まれます。確認すべきは、運転資本の定義に棚卸資産が含まれているか、基準額がいくらか、クロージング日の金額をどのような手続で確定させるかという3点です。クロージング日の棚卸で不良在庫に適切な評価減を行えば、その分だけ運転資本が減少し代金が減額されますので、補償によらずとも経済的な回復を得られる可能性があります。もっとも、基準額の算定に用いた会計方針と同一の方針によるべき旨が定められていることが多く、基準額の算定で評価減が行われていなかった品目についてクロージング日の計算でのみ評価減を行うことは認められないとの反論を受けます。
二重の填補の問題を必ず整理します
最も注意を要するのが二重の填補の問題です。クロージング日の運転資本の計算において不良在庫について3,000万円の評価減を行い、その結果として譲渡代金が3,000万円減額されたとします。この場合、買主は既に代金の減額という形で回復を受けています。それにもかかわらず、同じ在庫について表明保証の違反を理由に3,000万円の補償を請求すれば、同一の損失について二重に填補を受けることになり、これは認められません。契約書にも、価格調整により調整された事項は補償の対象としない旨の定めが置かれているのが通例であり、そのような定めがない場合でも、損害の填補という補償の性質から重複する請求は認められないと解されます。請求を組み立てる際には、判明した不良在庫のうち、どの部分が価格調整に反映済みで、どの部分が未反映であるかを品目ごとに区分した一覧表の作成が不可欠です。
調整と補償のいずれによるべきかを判断します
価格調整の手続がまだ完了していない段階で不良在庫が判明した場合、まず価格調整の枠組みでの処理を検討します。価格調整は下限額や上限額の制約を受けないことが多く、手続も定められた期間内に計算書を提出するという簡明なものであるためです。他方、対象期間が経過している場合や、会計方針の一貫性の要請から評価減を計上できない場合には補償の請求により、一部のみが反映されたときはその差額を請求します。いずれによるにせよ、金額の重複が生じないよう計算の過程を明示した資料を作成してください。
損害額の算定
請求を行う以上、金額を積算しなければなりません。ここでも実在性の問題と評価の問題とで計算方法が異なりますので、区分して整理いたします。積算に当たっては、根拠資料を金額ごとに紐付け、後から検証できる形にしておくことが重要です。
実在性が欠ける場合と評価が問題となる場合を区別して計算します
数量の差異が問題となる場合、品目ごとに不足数量へ帳簿単価を乗じた金額を集計します。用いる単価は会社の会計方針に従って算定された単価であり、恣意的に高い単価を用いてはなりません。差異の判明時点とクロージング日との間に期間が空いている場合には、その間の受払を遡ってクロージング日時点の差異に引き直します。引継ぎ後の管理の不備による不足であるとの反論を受けないよう、引継ぎ後の入出庫の記録も整えてください。これに対し、数量は存在するが価値がないという場合には、帳簿価額から現実に回収できる金額を控除した差額が基礎となります。処分済みであれば実際の処分価額を、未処分であれば業者の見積額を用い、換価できない場合には廃棄の記録を要します。譲渡代金が純資産に一定額を加算する方法で算定されていた場合には、評価減の額がそのまま代金の過大な部分に対応しますが、収益の見通しに基づく算定であった場合には、評価減が代金にどう影響したかの説明を要します。
付随する費用と控除すべき項目を整理します
在庫の処分に要した費用も損害に含めて請求し得る場合があります。廃棄費用、運搬費用、保管のための倉庫の賃料、実態調査を依頼した専門家の費用といった項目です。ただし、補償の範囲から間接的な損害を除外する定めがある場合には範囲が制限されます。他方、控除すべき項目もあります。処分による回収額、保険により填補を受けた金額、評価損又は廃棄損の計上によって法人税等の負担が減少した金額です。税負担の減少について控除する旨の定めが置かれていることもありますので、条項を確認してください。そして繰り返しになりますが、価格調整により既に反映された金額は必ず控除します。
請求の進め方
金額の整理ができましたら、実際の請求に移ります。手続の順序を誤りますと、期間の制限によって請求の機会を失うことがあります。中小企業のM&Aでは、売主が引き続き役員として残り、事業上の関係が継続している場合もありますので、関係への影響も考慮しながら進めます。
期間内に通知を行い、証拠を保全します
最初に行うべきは、契約に定められた期間内に、定められた方法で通知を行うことです。多くの契約書では、補償を請求する場合には事由を知った後の一定期間内に、内容を記載した書面により通知しなければならない旨が定められています。この通知を怠りますと、実体的に理由のある請求であっても手続上の理由で認められない事態が生じます。調査が完了していない段階でも、判明している事実と概算額を記載した通知を先に行い、詳細は追って補充する旨を付記する方法が採られます。到達を証明できるよう、配達証明付きの内容証明郵便を用いることが一般的です。並行して、棚卸の記録、写真、受払データ、処分の記録、開示資料及び質疑応答の記録を整理します。システムのデータは上書きにより失われますので、早期に抽出して保存してください。
交渉から法的手続への進め方を検討します
証拠が整いましたら、売主との協議に入ります。品目ごとの一覧、算定の根拠、価格調整との重複を控除した後の金額を示した書面を提示し、事実関係の認識を擦り合わせることから始めます。売主が事実を争わない場合には、分割払や他の債権との相殺による解決も選択肢となります。協議が調わない場合には、管轄裁判所の定めか仲裁による旨の定めかを確認し、契約に定められた紛争解決の方法によります。表明保証の違反に基づく補償請求は契約上の請求ですが、契約に定めのない事項については、民法第415条第1項の債務不履行に基づく損害賠償の枠組みが参照されます。売主が積極的に虚偽の説明を行っていたと評価できる事情がある場合には、不法行為に基づく請求を検討する余地もありますが、立証の負担は重く、認められる範囲も事案によって異なります。
留保された代金及び担保の有無を確認します
回収の可能性を高めるには、支払を留保している代金や預託された金銭の有無を確認することが有効です。譲渡代金の一部を分割払としている場合には、補償請求権との相殺が可能かを契約書で確認します。第三者に金銭を預託する仕組みがある場合には、預託の期間と払戻しの条件を確認し、満了前に請求の意思を明示してください。売主が個人であり、受領した代金を既に費消しているときは、判決を得ても回収できない事態が生じ得ます。交渉の初期から、留保されている金銭の範囲内での解決を目指す方針も現実的な選択肢となります。
よくあるご質問
以下は、買収後に不良在庫又は陳腐化した在庫が判明した買主の方から多くいただくご質問です。
在庫の数量は帳簿どおりでしたが、明らかに売れない商品ばかりでした。この場合も請求できますか
数量が合っている以上、実在性の問題ではなく評価の問題として組み立てます。棚卸資産について適切な評価減が行われている旨の表明保証、又は計算書類が財政状態を正確に表示している旨の表明保証への違反を主張することが考えられます。もっとも、評価の問題は数量の不足に比べて争いが生じやすく、滞留期間の数値、製造終了の事実、現実の処分価額といった資料を揃えられるかによって結論が変わり得ます。まずは品目ごとの滞留期間の一覧を作成してください。
クロージング後の価格調整で在庫の評価減を計上しました。さらに補償を請求することはできますか
価格調整によって既に譲渡代金が減額された部分について、重ねて補償を請求することはできません。同一の損失について二重に填補を受けることになるためです。多くの契約書にも、調整された事項は補償の対象としない旨の定めが置かれています。請求が可能となるのは反映されなかった部分に限られ、一部しか反映できなかった場合の差額や、対象期間の経過後に判明した部分がこれに当たります。品目ごとに反映済みと未反映とを区分した一覧を作成してください。
不良在庫を早く処分したいのですが、廃棄してしまってよいでしょうか
請求を検討しているのであれば、廃棄の前に証拠を確保してください。品目ごとの数量の確認、状態が分かる写真の撮影、可能であれば第三者の立会いによる確認書の作成が望ましいといえます。あわせて、売主に処分の予定を事前に通知し、現物を確認する機会を与えることも検討に値します。廃棄後は処理業者からの受領証等を保存してください。これらを欠いたまま処分しますと、後日、在庫の状態や数量に争いが生じた際に主張を裏付ける手段を失います。
売主は不良在庫の存在を知らなかったと述べています。それでも責任を追及できますか
表明保証に売主の知る限りにおいてという限定が付されているかどうかで結論が変わります。限定がなければ、売主の認識を問わず客観的に事実と異なることを示せば足ります。限定がある場合には、売主の認識又は認識し得たことを示す必要があり、社内の評価減の基準が適用されていなかった事実、税理士からの指摘の記録、会議の記録が意味を持ちます。中小企業では経営者が現場を細部まで把握していることが多く、その実態が認識の推認につながることもあります。
買収から1年以上が経過してから判明しました。もう請求できないのでしょうか
まず契約書の請求期間の定めを確認してください。財務に関する表明保証については1年から2年程度とされることが多く、経過している場合には契約上の補償請求が困難となる可能性があります。もっとも、売主が事実を知りながら秘匿していた事案では期間の制限が適用されない旨の定めが置かれていることがあり、契約上の請求とは別に不法行為に基づく請求を検討する余地もあります。いずれも事案によって結論が異なりますので、契約書と判明の経緯をお持ちの上で早期にご相談ください。
在庫の問題を理由に、買収そのものを解消することはできますか
クロージングの完了後に契約を解除して株式の譲渡を巻き戻すことは、実務上、極めて限られた場合にしか認められません。多くの契約書では、クロージング後の解除を認めず、金銭による補償を唯一の救済とする旨が定められています。売主に詐欺と評価される行為があれば取消しを主張する余地もありますが、立証の負担は重く、認められる範囲も事案によって異なります。実際には、金銭による解決を目指しつつ、留保されている代金との相殺など回収の確実性を高める方策を組み合わせることになります。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。


