会社売却後に元従業員を採用し引抜きの禁止に違反すると指摘された場合

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引抜きの禁止の違反を指摘された場合に関するメインのページです。本ページは、会社を売却した後に元の従業員を採用した場面で、勧誘と応募の違いをご説明します。元の顧客への連絡を指摘された場合は別のページをご参照ください。

顧客への連絡を理由に契約違反を指摘された場面は会社売却後に元の顧客へ連絡したところ契約違反と指摘された場合を、競業避止義務そのものの一般的な内容はM&A後の競業避止義務違反とは?会社・元社長・元従業員が負う法的義務を解説を、それぞれご覧ください。

会社を売却してから1年ほどが経ち、新しく始めた事業が少しずつ動き始めたころに、かつての部下から連絡が入る。「あの会社を辞めることにしました。もしよろしければ、また社長のところで働かせていただけませんか」。長年一緒に働いてきた相手であり、断る理由も見当たらないため採用の手続を進めたところ、数週間後に買主の代理人弁護士から書面が届き、「株式譲渡契約に定める従業員の引抜きの禁止に違反する行為であるから、直ちに雇用を解消し、違約金を支払われたい」と記されている。中小企業のM&Aでは、このような通知が売主のもとに届く例が実際にあります。

この書面を受け取られた元経営者の方が当惑されるのは、ご自身から声をかけた覚えがないからです。むしろ、辞めたいという相談を受けて引き止めた記憶すらあるという方も少なくありません。ところが買主の側から見ますと、売却後に前の経営者のもとへ従業員が移ったという事実だけで、裏で働きかけがあったのではないかという強い疑念が生じます。中小企業では、退職した従業員が現場の中核を担っていた例が多く、1人の退職が事業の運営に直ちに響きます。この認識の隔たりが、そのまま紛争になります。

もっとも、従業員には職業選択の自由があり、退職すること及び他の会社へ移ることそれ自体は、本来自由な行為です。売主が責任を問われ得るのは、その自由を売主の側から積極的に働きかけて動かした場合に限られるという整理が出発点になります。本稿では、引抜きの禁止に関する条項、従業員の自主的な応募、及び競業避止義務という三つの事柄を区別したうえで、元従業員を採用したという具体的な場面に絞って、何を確認し、どの資料を集め、どのような順序で対応していくかを整理します。

Contents
  1. 引抜きの禁止に関する条項をまず確認する
    1. どの書面のどの条項が根拠かを特定する
    2. 禁止されている行為の書きぶりを読む
    3. 期間、対象者の範囲及び違約金の定めを確認する
    4. 競業避止義務の条項との切り分け
  2. 勧誘と自主的な応募との違い
    1. 勧誘とは何かを行為に分解する
    2. 自主的な応募といえる場合の典型
    3. 境界に位置する場面をどう考えるか
  3. 買主が示すべき勧誘の証拠
    1. 買主に説明を求めるべき事項
    2. 実際に問題となりやすい資料
    3. 売主の側で保全しておくべき記録
  4. 従業員の退職の自由との関係
    1. 退職及び転職それ自体は自由である
    2. 従業員が差し入れた誓約書との違い
    3. 売主の責任が問われる範囲の限界
  5. 差止め及び損害賠償の請求を受けた場合
    1. 雇用の解消を求める請求と仮処分
    2. 損害賠償及び違約金の請求
    3. 通知を受けた直後にとるべき手順
  6. 交渉による解決
    1. 争点を狭めてから交渉に入る
    2. 実務上の着地の型
    3. 合意書に盛り込むべき事項
  7. よくあるご質問
    1. 元従業員の方から連絡があった場合でも違反になりますか
    2. 公開の求人広告に応募してきた場合はどうなりますか
    3. 買主から直ちに解雇するよう求められています
    4. 複数名を続けて採用してしまいました
    5. 引抜きの禁止に関する条項に期間の定めがない場合はどうなりますか
    6. 買主に対してどこまで事実を説明すべきでしょうか
    7. この問題について弁護士に相談する時期はいつが適切ですか

引抜きの禁止に関する条項をまず確認する

最初にすべきことは、買主への反論の文案を考えることではなく、買主がどの契約のどの条項を根拠としているかを特定することです。買主の書面には「引抜きの禁止に違反する」とだけ記され、条項の番号も、違反に当たるとされる具体的な行為も書かれていないことが少なくありません。根拠が特定されないまま議論を始めますと、売主の側が身に覚えのない事実まで釈明させられることになり、交渉の主導権を失います。

どの書面のどの条項が根拠かを特定する

中小企業のM&Aでは、売主を拘束する条項が1通の契約書にまとまっているとは限りません。株式譲渡契約書の本体に置かれている例のほか、売主が別途差し入れた誓約書、役員退任時の合意書、顧問契約書又は業務委託契約書の中に置かれている例もあります。まず手元の書面を全て並べ、従業員に関する条項がどこにいくつあるかを一覧にしてください。複数の書面に重ねて定めがある場合には、期間や対象者の範囲が食い違っていることも多く、その食い違い自体が売主の側の反論の材料になります。

禁止されている行為の書きぶりを読む

条項の文言は、大きく二つの型に分かれます。一つは「勧誘してはならない」「働きかけてはならない」という型で、売主の能動的な行為を禁止するものです。もう一つは「雇用してはならない」「雇い入れてはならない」という型で、結果としての雇用そのものを禁止するものです。前者であれば、売主が声をかけていない以上、原則として違反にはなりません。後者であれば、勧誘の有無にかかわらず雇用の事実が問題とされ得ますので、争い方が変わります。どちらの型かによって主張の組立てが全く異なりますので、文言を一字ずつ読んでください。

期間、対象者の範囲及び違約金の定めを確認する

あわせて、拘束の期間がいつまでか、対象となる従業員が誰かを確認します。期間については、譲渡の実行日から2年間、3年間といった定めが置かれていることが通例です。対象者については、「譲渡実行日に在籍していた従業員」と定める例のほか、「本件対象会社の役員及び従業員」とのみ記して退職者を含むのか判然としない例もあります。買主が指摘している元従業員が、既に買主のもとを退職している場合、対象に含まれるのかが正面から争点になります。違約金の定めがある場合には、金額の算定方法、及び実損害との関係についての定めの有無も確認してください。

競業避止義務の条項との切り分け

引抜きの禁止と競業避止義務とは、別の義務です。競業避止義務は、売主が売却した事業と競合する事業を自ら行うことを制限するものであり、従業員の採用とは本来別の問題です。ところが買主の通知書では、この二つが混ぜて書かれていることがよくあります。売主が始めた新しい事業が競業に当たらないのであれば、従業員を採用したことをもって競業避止義務の違反とすることは筋が通りません。逆に、新しい事業が競業に当たる可能性がある場合には、争点が二つになりますので、それぞれ別に検討する必要があります。

勧誘と自主的な応募との違い

引抜きの禁止に関する条項の中心にあるのは、「勧誘」という行為です。ここを曖昧にしたまま「引き抜いていない」とだけ述べても、水掛け論になります。勧誘とは何を指すのか、行為の単位に分解して整理しておくことが、事実関係の説明を組み立てるうえでの土台になります。

勧誘とは何かを行為に分解する

勧誘とは、一般に、相手方に対して退職及び転職を促す働きかけを指します。具体的には、売主の側から連絡を取り、現在の勤務先を辞めるよう勧めること、新しい会社の待遇を示して比較を促すこと、退職の時期を示唆すること、他の従業員にも声をかけるよう依頼することなどが挙げられます。単に近況を尋ねただけの連絡や、儀礼的なあいさつは、通常これに当たりません。買主から指摘を受けた場合には、ご自身の行為をこの単位に分けて、どれに当たり、どれに当たらないかを整理してください。

自主的な応募といえる場合の典型

他方、従業員の側から連絡があり、売主が受け身で応じたにすぎない場合には、勧誘があったとはいえません。典型的には、従業員が既に退職を決意し、又は既に退職したうえで連絡してきた場合です。この場合、売主の行為は採用の判断にとどまります。もっとも、外形上は自主的な応募に見えても、その前に売主が繰り返し連絡していた事実があれば、実質的には働きかけがあったと評価される余地があります。応募に至るまでの経過を時系列で整理し、どちらから連絡したかを一つ一つ確認してください。

境界に位置する場面をどう考えるか

実際に判断が難しいのは、その中間にある場面です。例えば、売主が新しい会社を設立した旨を知人に広く伝えたところ、それが元従業員に伝わり応募に至った場合、公開の求人広告を出したところ元従業員が応募してきた場合、あるいは食事の席で近況を問われて新事業の話をしたところ、後日応募があった場合などです。これらは、働きかけの積極性の程度、繰り返しの有無、待遇の提示の有無といった要素により評価が分かれ、事案により異なります。

買主が示すべき勧誘の証拠

買主が引抜きの禁止に違反したと主張する以上、勧誘という行為があった事実は、原則として買主の側が示すべき事柄です。売主が「勧誘していないこと」を証明することは、性質上きわめて困難です。この点を早い段階で明確にしておきますと、議論の対象が「売主が何をしていないか」から「買主が何を示せるか」へ移り、交渉の構図が変わります。

買主に説明を求めるべき事項

買主に対しては、書面で次の事項の特定を求めてください。第一に、根拠とする条項の番号及び文言です。第二に、違反に当たるとされる具体的な行為の日時、場所、方法及び相手方です。第三に、その行為があったとする根拠資料の内容です。第四に、請求の内容と算定の根拠です。これらが示されない段階では、事実関係についての詳細な釈明を控え、まず特定を求める旨のみを回答する対応も考えられます。売主の側が先に多くを語りますと、そこから新たな争点が生まれることがあります。

実際に問題となりやすい資料

買主が示してくる資料として実際に多いのは、退職した従業員から買主が聴取した内容を記録した書面、従業員の間でやり取りされていた通信アプリの画面の写し、退職の申出が短期間に集中したことを示す退職届の日付の一覧、及び売主が新会社について発信していた交流サイトの投稿の写しなどです。いずれも、それ自体では売主からの働きかけを直接示すとは限りません。聴取記録については、誰がいつどのような質問をして得たものか、原本があるかを確認してください。

売主の側で保全しておくべき記録

売主の側でも、通知を受けた時点で記録を保全してください。具体的には、元従業員から最初に連絡が来た通信の記録、応募の経路が分かる資料、求人媒体に掲載した場合の掲載日及び掲載内容、面接の日時の記録、採用の稟議又は決裁の記録、雇用契約書の締結日、社会保険の資格取得の届出日、及び当該元従業員の退職日を示す資料です。これらは、応募が従業員の側から始まったこと、及び採用が退職後であったことを示す材料になります。通信の記録は削除されやすいため、早期に画面の写しを保存することが大切です。

従業員の退職の自由との関係

この問題を考えるうえで、最も基本となる前提は、従業員には職業選択の自由があるということです。日本国憲法第22条第1項は職業選択の自由を定めており、この考え方は、労働者がどの会社で働くかを自ら決められるという形で、私人の間の契約の解釈にも影響します。売主と買主との間の契約は、従業員本人を当事者とするものではありません。

退職及び転職それ自体は自由である

期間の定めのない雇用契約については、民法第627条第1項により、労働者はいつでも解約の申入れをすることができ、申入れの日から2週間の経過により契約が終了します。すなわち、従業員が買主のもとを辞めること自体は、本来自由な行為です。買主が「元従業員が辞めたこと自体が損害である」と述べる場合がありますが、退職という行為の自由は、売主と買主との間の契約によって奪えるものではありません。売主が問われ得るのは、あくまで売主自身の働きかけという行為です。

従業員が差し入れた誓約書との違い

買主が、従業員本人から競業避止又は転職制限に関する誓約書を取得している場合があります。しかし、それは買主と従業員との間の問題であり、売主に対する請求の根拠にはなりません。また、従業員が差し入れた誓約書についても、その内容が広範にすぎる場合には、制限の期間、地域、対象となる業務の範囲、及び代償措置の有無といった事情に照らして、効力が認められない余地があります。買主が誓約書を根拠として売主に請求してきた場合には、そもそも名宛人が異なる旨を指摘してください。

売主の責任が問われる範囲の限界

以上を踏まえますと、売主の責任が問われる範囲は、売主が自ら積極的に働きかけて従業員の意思決定に影響を与えた場合に絞られていくことになります。従業員が自ら決意して退職し、自ら応募してきた場合に、これを採用したことのみをもって責任を負わせることは、従業員の職業選択の自由を売主を介して制約する結果になりかねません。この整理を、交渉の初期の段階で買主に対して明確に示しておくことに意味があります。もっとも、条項の文言が雇用そのものを禁じている場合には、契約の解釈として別の評価がされる余地がありますので、事案により異なります。

差止め及び損害賠償の請求を受けた場合

買主からの請求は、通常、雇用の解消などを求める差止めの請求と、金銭の支払を求める請求との二つに分かれます。それぞれ性質が異なり、対応の緊急性も異なりますので、届いた書面がどちらを求めるものかを見極めることが先決です。両方が併せて記載されている場合には、緊急性の高い方から順に手当てすることになります。

雇用の解消を求める請求と仮処分

買主が、採用した元従業員を直ちに解雇するよう求めてくることがあります。しかし、既に成立した雇用契約を売主の都合で一方的に終了させることは、労働契約の法制のもとでは容易ではありません。買主の求めに応じて解雇しますと、今度は元従業員との間で新たな紛争を招きます。したがって、この求めには慎重に対応する必要があります。買主が裁判所に対して仮の地位を定める仮処分を申し立てる可能性もありますが、その場合には保全の必要性を含めて厳格な審理がされますので、申立てがあれば速やかに主張と資料を提出することになります。

損害賠償及び違約金の請求

金銭の請求は、債務不履行による損害賠償として、又は契約に定められた違約金として構成されます。損害賠償として構成される場合、買主は、違反行為があったこと、損害が生じたこと、及びその間の因果関係を示す必要があります。従業員が1人退職したことにより具体的にいくらの損害が生じたかを示すことは、実際には容易ではありません。他方、違約金の定めがある場合には、損害の額の立証を要しない旨が定められていることが多く、その場合には、そもそも違反行為があったのかという入口の争点に絞って争うことになります。

通知を受けた直後にとるべき手順

通知を受けた直後は、次の順序で進めてください。第一に、回答の期限を確認し、期限内に到達する形で受領した旨と検討中である旨のみを返します。第二に、社内で当該元従業員の採用に関する記録を保全します。第三に、当該元従業員に対して、買主から通知が来た事実を伝え、自ら退職を決めた経緯について本人の認識を確認します。第四に、買主に対して根拠の特定を求めます。感情的な反論を先に送ることは避けてください。書面はそのまま証拠として提出されます。

交渉による解決

この類型の紛争は、訴訟まで進むよりも、交渉により一定の条件を定めて終える方が、双方にとって合理的である場合が多いといえます。売主にとっても、争いが長引けば新しい事業の運営に支障が生じます。もっとも、争点を整理しないまま譲歩を重ねますと、際限のない要求を招きます。

争点を狭めてから交渉に入る

交渉に入る前に、争点を三つに絞ってください。第一に、条項の対象に当該元従業員が含まれるか。第二に、売主の側からの働きかけがあったか。第三に、買主に具体的な損害が生じているか。この三点のうち、買主が明確に示せているものがどれかを確かめますと、交渉の相場観がつかめます。いずれも示されていない場合には、売主として応じる必要のない請求である旨を、根拠を示して回答することが考えられます。

実務上の着地の型

実際の解決は、次のような形をとることが多く見られます。一つは、当該元従業員の雇用は維持したうえで、売主が今後一定の期間、対象会社の在籍者に対して自ら連絡を取らない旨を確認する形です。もう一つは、一定の金銭を支払い、当該従業員に関する一切の請求を終局的に解決する形です。さらに、当該元従業員が担当していた業務について引継ぎに協力する、又は一定期間の技術的な助言を行うといった、金銭以外の方法を組み合わせる例もあります。

合意書に盛り込むべき事項

合意に至る場合には、後日の蒸し返しを防ぐため、次の事項を書面に明記してください。第一に、対象となる事実の範囲を、当該元従業員の採用に関する件と特定すること。第二に、当事者の間に、当該事実に関して他に何らの債権債務がないことを確認する条項を置くこと。第三に、売主が違反を認めるものではない旨を確認する条項を置くこと。第四に、当該元従業員に対して買主が不利益な取扱いをしない旨を確認すること。第五に、合意の内容を第三者に開示しない旨を定めることです。これらを欠きますと、同じ論点で再び請求を受ける余地が残ります。

よくあるご質問

売却後に元従業員を採用した場面について、ご相談の際に繰り返しお尋ねいただく事項を、以下にまとめました。

元従業員の方から連絡があった場合でも違反になりますか

条項が「勧誘の禁止」という書きぶりであれば、売主の側から働きかけていない以上、原則として違反には当たりません。ただし、その連絡に至るまでに売主から繰り返し接触していた事実がある場合には、実質的な働きかけがあったと評価される余地があります。他方、条項が「雇用の禁止」という書きぶりである場合には、勧誘の有無にかかわらず争点となり得ます。まず条項の文言を確認してください。

公開の求人広告に応募してきた場合はどうなりますか

誰でも見られる媒体に一般的な求人を掲載し、これに元従業員が応募してきた場合、特定の者に向けた働きかけとはいえませんので、勧誘に当たらないと考える余地が大きいといえます。掲載の日付、掲載した媒体、掲載内容、及び応募の経路を記録として残しておいてください。ただし、掲載と同じ時期に売主が個別に連絡していた事実があれば、評価が変わることがあります。

買主から直ちに解雇するよう求められています

既に雇用している方を、買主から求められたという理由のみで解雇することは、労働契約の法制のもとでは容易ではなく、実行しますと元従業員との間で新たな紛争を招きます。買主に対しては、雇用の解消は法律上直ちにはなし得ない旨を説明したうえで、金銭その他の条件による解決を探ることが現実的です。解雇の可否については、雇用契約の内容及び就業の実態に応じて判断が分かれますので、個別に検討する必要があります。

複数名を続けて採用してしまいました

人数が増えるほど、偶然の重なりであるという説明は通りにくくなり、買主の側の疑いも強まります。この場合には、それぞれの元従業員について、退職の時期、退職の理由、応募の経緯、及び採用の時期を個別に整理し、共通の働きかけがなかったことを示す資料を用意することが重要です。1人目の採用を他の在籍者に周知していた場合には、その周知の方法及び範囲が争点になり得ます。

引抜きの禁止に関する条項に期間の定めがない場合はどうなりますか

期間の定めのない制約は、売主の活動を無期限に縛るものとなりますので、その効力が制限的に解釈される余地があります。実際の解釈は、制約の対象となる従業員の範囲、売主が受け取った譲渡代金の額、及び当該制約が売却された事業の価値を守るために必要な範囲にとどまるかといった事情により異なります。まず契約書の全体を精査したうえで、この点を反論の柱の一つとして位置付けることが考えられます。

買主に対してどこまで事実を説明すべきでしょうか

買主が根拠となる条項も具体的な行為も特定していない段階で、売主の側から詳細な経緯を説明することはお勧めしません。説明の中の一部が切り取られ、新たな争点を生むことがあるためです。まずは根拠の特定を求め、特定がされた後に、その行為に対応する事実のみを、資料を添えて回答するという順序が適切です。回答は口頭ではなく書面で行い、控えを保管してください。

この問題について弁護士に相談する時期はいつが適切ですか

買主から最初の書面が届いた時点が最も適切です。回答の内容及び表現がその後の交渉の枠組みを決めますし、記録の保全は時間が経つほど難しくなります。株式譲渡契約書、売主が差し入れた誓約書、買主からの通知書、当該元従業員とのやり取りの記録、及び採用に関する社内の記録を揃えたうえで、ご相談いただくと検討が早く進みます。

具体的なご相談をお考えの皆様へ

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