買収後に主要な仕入先との契約が終了した場合の確認事項

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主要な仕入先との契約の終了に関するメインのページです。本ページは、M&Aで会社を譲り受けた後に取引が終わった場面で、理由と条項の確認をご説明します。主要な顧客の離脱は別のページをご参照ください。
主要な顧客が離れた場面は買収直後に主要顧客が離れた場合の原因の切り分けと売主への請求を、支配権の異動を理由に契約を解除された場面の一般的な整理は支配権の異動を理由に取引先から契約を解除された場合の検討を、それぞれご覧ください。
株式の譲渡が実行され、代金の支払も済み、これから新しい体制で事業を伸ばしていこうという矢先に、主要な仕入先から「今期限りで取引を終了させていただきます」という書面が届く。あるいは、売上の3割を占めていた得意先の担当者から「親会社が代わったと聞いたので、社内の取引先審査をやり直すことになりました」と告げられる。買収した会社の価値の相当部分がその取引関係に支えられていた場合、この一報は買収そのものの前提を揺るがします。
このような場面で、まず頭に浮かぶのは「売主に責任を問えるのか」という点だと思います。しかし、その答えを出すためには、その前に確認しなければならない事実がいくつもあります。契約はいつまでの契約だったのか、どのような場合に終了できる約束になっていたのか、株主が交代したことが終了の理由になり得る条項が置かれていなかったか、そして売主はこの事態を実行の前から知っていたのかという4点です。これらの事実関係が固まらないうちに売主へ責任を追及しても、議論は水掛け論に終わりやすく、かえって交渉上の立場を弱めます。
本稿では、M&Aの実行後に主要な仕入先又は重要な取引先との契約が終了してしまった買主の方に向けて、どの資料をどの順序で確認し、どこで責任の有無が分かれるのかを、実務の流れに沿って整理します。あわせて、供給の確保と損害額の見積りという、法的責任の検討と並行して進めなければならない実務についても述べます。
契約が終了した理由を確認する
最初にすべきことは、感情的な応酬を避け、終了の法的な理由を一つに特定することです。取引先から届いた通知の文言と、手元にある契約書の条項とを一行ずつ突き合わせます。同じ「取引の終了」でも、期間の満了によるものか、契約に定められた解除事由に基づく解除か、当事者双方の合意による解約かによって、その後に採り得る手段がまったく異なります。
通知書と契約書を突き合わせる
通知書に「契約第何条に基づく」という記載があれば、その条項を直ちに確認します。記載がない場合には、終了の効力が生ずる日として指定されている日付から逆算し、契約書の解約予告期間の定めと一致するかを見ます。一致していれば期間の定めのない契約についての解約の申入れである可能性が高く、一致していなければ解除事由に基づく主張である可能性が残ります。取引基本契約書のほかに、個別の注文書と注文請書、覚書、価格改定の合意書、品質保証に関する取決めが別綴りになっていることが多く、これらをすべて集めなければ全体像がつかめません。買収の対象会社の社内では、契約書の原本が営業部門と経理部門に分散していることも珍しくありませんので、部門を横断して回収します。
期間満了、解除、合意解約を見分ける
期間の定めがあり、自動更新の条項が置かれている契約では、更新拒絶の通知が定められた期限までに到達したかどうかが決定的です。「更新しない旨を期間満了の3か月前までに書面で通知しない限り自動的に更新される」という定めであれば、通知の到達が3か月を切っていた場合には更新の効力が生じており、契約はなお存続していると主張し得ます。到達日を証明できるように、封筒、受信記録、電子メールのヘッダーを保存してください。他方、契約に定められた解除事由に基づく解除であれば、その事由に該当する事実が実際にあったのかを検証します。支払遅延や品質不良を理由とする場合、対象会社の側にも落ち度があった可能性があり、その場合には売主への責任追及とは別に、対象会社の管理体制の問題として整理する必要があります。
期間の定めのない継続的な取引が打ち切られた場合
中小企業の取引では、正式な契約書がないまま10年、20年と注文と納品を繰り返してきた例が多くあります。このような期間の定めのない継続的な取引を一方的に打ち切られた場合、原則としては当事者はいつでも解約を申し入れることができると考えられます。もっとも、裁判実務では、長期にわたり取引が継続し、一方の当事者がその取引の継続を前提として設備投資や人員の確保を行っており、取引の継続に対する期待が保護に値すると評価される場合には、解約に相当の予告期間を置くこと、又はやむを得ない事由が必要であるとされ、これを欠く解約について損害賠償の責任が認められる余地があります。したがって、契約書がないからといって直ちに諦める必要はありません。過去の発注量の推移、専用設備の導入の経緯、その取引先のためだけに採用した人員の有無、他社への転用が困難な在庫の量を資料として整理してください。これらは、予告期間の相当性を判断する際の重要な事情になります。
支配権の異動に関する条項が置かれていたか
買収の後に取引が打ち切られた事案で、責任の所在を分ける最も重要な条項が、支配権の異動に関する条項です。これは、当事者の株主構成や経営権に変動が生じた場合に、相手方に通知すること、相手方の事前の承諾を得ること、又は相手方が契約を解除できることを定めるものです。契約書の末尾近くの一般条項の中に、解除の条項と並べて置かれていることが多く、見落とされやすい条項です。
三つの型のいずれかを特定する
この種の条項は、大きく三つの型に分かれます。第一に、支配権に異動が生じた場合に相手方へ通知すれば足りる通知型です。第二に、支配権の異動について相手方の事前の書面による承諾を要するとする事前承諾型です。第三に、支配権の異動が生じたことを解除事由として列挙する解除事由型です。実務上は、事前承諾型と解除事由型が組み合わされている例が多く見られます。まず自社が締結している契約書の文言がどの型に当たるのかを確定してください。「本契約上の地位又は権利義務の譲渡」を禁ずる譲渡禁止の条項しかない場合には、株式譲渡の方法による買収は契約当事者そのものが変わらないため、当然にはこの条項に触れません。この違いは、責任の有無を大きく左右します。
承諾を取得すべき義務が売主にあったか
事前承諾型の条項が置かれていた場合、取引先の承諾を得ないまま株式譲渡を実行したこと自体が、対象会社によるその契約の違反となり得ます。そして、この違反は買主が生じさせたものではありません。実行の時点で契約の当事者であったのは対象会社であり、その支配株主として実行を決定したのは売主だからです。そこで、実行の前に取引先の承諾を取得すべき義務が売主にあったかが、責任の所在を決める中心的な争点になります。
この点は、株式譲渡契約の中に、実行の前に履行すべき事項を定めた条項、いわゆる誓約の条項が置かれているかどうかで判断します。「本件取引の実行に必要な第三者の同意又は承諾を取得すること」という趣旨の定めがあり、その同意又は承諾を取得することが実行の前提条件とされていたにもかかわらず、売主がこれを取得しないまま実行に至った場合には、売主の債務不履行として損害賠償を請求し得ます。契約に基づく義務の履行がされないことにより生じた損害の賠償については、民法第415条第1項に規定があります。反対に、承諾の取得が買主の責任分担とされていた場合や、対象となる契約が個別に特定されておらず包括的な定めにとどまっていた場合には、売主の責任は限定的に解される余地があります。株式譲渡契約書の誓約の条項、前提条件の条項、及び実行の日に授受した書面の一覧を、必ず原文で確認してください。
取引先に対してどう向き合うか
売主との関係とは別に、取引先に対しては、承諾を得なかったことについての説明と是正の申入れを速やかに行うべきです。事前の承諾を欠いていたとしても、取引先が事後に承諾する意思を示せば、契約違反の状態は解消し得ます。この際、取引先が真に懸念しているのは、支払能力、品質管理の継続性、技術情報の流出、及び競合他社との関係であることが多いと考えられます。新しい株主の資本構成、経営陣の続投の有無、品質管理責任者の異動の有無、秘密保持体制の継続を書面で示すことが、実務上は有効な対応になります。
売主が事前に認識していたか
次に確認すべきは、売主が実行の前に取引の終了又はその可能性を認識していたかという事実です。売主が知りながら告げなかったのであれば、表明保証の違反にとどまらず、不実の告知又は故意の不告知として、より重い責任が問題となり得ます。反対に、売主も実行の後に初めて知ったのであれば、責任の範囲は表明保証や誓約の条項の解釈に絞られます。
認識を裏づける資料を集める
売主の認識を示す資料は、対象会社の内部に残っていることが少なくありません。買主は既に対象会社の株主ですから、対象会社が保有する資料には正当な手続によって接することができます。具体的には、取引先との往復の電子メール、営業日報、月次の営業会議の資料、取引先の担当者との面談記録、値上げの要請や品質に関する是正要求の書面、取引先から届いた警告的な文書、そして売上予測の内部資料を確認します。買収の交渉の期間中に、取引数量が段階的に減少していた事実が月次の売上明細から読み取れる場合、売主がその傾向を認識していなかったとは考えにくいという評価につながります。
認識の時期を絞り込む
重要なのは、認識の有無だけでなく、その時期です。表明保証は通常、契約の締結日と実行日の両方の時点で真実かつ正確であることを保証する形で定められます。したがって、売主が締結日の後、実行日の前に取引終了の申入れを受けていた場合には、実行日時点の表明保証に違反する可能性があります。加えて、実行までの間に重大な事象が生じたときは買主に通知するという趣旨の定めが置かれていることも多く、その通知義務の違反も併せて主張し得ます。取引先の側の稟議の日付、社内決裁の日付、担当者の異動の時期を、可能な範囲で取引先に確認することも検討に値します。
デュー・ディリジェンスで開示されていたか
売主の責任を検討するうえで避けて通れないのが、買収前のデュー・ディリジェンス、すなわち買収監査において、当該事実が開示されていたかという点です。開示されていた事項については、買主がそれを了解したうえで代金額を決めたと評価されるため、後から責任を問うことが難しくなります。
開示の範囲を客観的に確定する
まず、資料の開示に用いた電子的な保管庫の記録を出力し、いつ、どの資料が、どの版で登録されたかを一覧にします。次に、質問と回答のやり取りをまとめた書面を確認し、取引先との契約関係、契約の更新の見込み、取引条件の変更の有無について、どのような質問をし、どのような回答を得たかを抽出します。「主要な取引先との間で、契約の解除、更新の拒絶又は取引条件の重大な変更の申入れを受けた事実はありません」という趣旨の回答が書面で残っていれば、これは有力な資料になります。
開示されていた場合の考え方
株式譲渡契約には、開示された事項については表明保証の違反を構成しないという趣旨の定めが置かれることが一般的です。この定めがある場合、資料の中に更新拒絶を示唆する文書が含まれていれば、売主はそれを根拠に責任を否定してきます。もっとも、大量の資料の中に関連性の明らかでない書面が紛れていたにすぎない場合には、その開示が有効な開示といえるかについて争う余地があります。開示が有効といえるためには、その記載から当該リスクの内容と重大性を合理的に把握できる程度の具体性が必要であると考えられるためです。
表明保証の条項との関係
ここまでの事実確認を終えて初めて、株式譲渡契約の表明保証の条項に当てはめる作業に入ります。表明保証とは、契約の当事者が相手方に対し、一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、保証する定めをいい、これに違反した場合には補償の条項に基づいて金銭の支払を求めることができるという仕組みです。
どの表明保証に触れるかを特定する
本件で検討の対象となる表明保証は、一つに限りません。第一に、重要な契約に関する表明保証です。対象会社が締結している重要な契約について、有効に存続していること、債務不履行の事実がないこと、及び相手方から解除又は更新拒絶の通知を受けていないことを保証する条項が該当します。第二に、取引先に関する表明保証です。主要な取引先から取引の停止又は重大な条件変更の申入れを受けていないことを保証する条項が置かれている場合があります。第三に、後発事象に関する表明保証です。直近の決算日から実行日までの間に、財政状態又は経営成績に重大な悪影響を及ぼす事象が生じていないことを保証する条項です。第四に、法令遵守及び訴訟の不存在に関する表明保証が関係する場合もあります。契約書の該当条項をすべて抜き出し、それぞれについて違反の有無を個別に検討してください。
補償の請求には手続と制限がある
表明保証の違反が認められる場合でも、補償の請求には制約が課されていることが通常です。請求ができる期間、いわゆる存続期間が実行日から1年間や18か月間などと定められていること、1件あたり又は累計で一定の金額を超えなければ請求できないという下限額の定めが置かれていること、補償の上限額が譲渡代金の一定割合に制限されていることが多く見られます。とりわけ存続期間は、これを徒過すると請求そのものができなくなりますので、事実関係の調査と並行して、期間内に書面で通知を発することを最優先してください。通知の方法、宛先、記載すべき事項が契約に定められている場合には、その形式を厳格に守る必要があります。なお、債権一般の消滅時効については民法第166条第1項に定めがありますが、契約上の存続期間はこれより短く設定されるのが通常です。
補償以外の手段も併せて検討する
売主に対する請求の根拠は、表明保証の違反に基づく補償だけではありません。前述のとおり、実行の前に第三者の承諾を取得する義務の不履行を理由とする損害賠償、実行までの間の通知義務の違反、そして売主が事実を知りながら告げなかった場合の不法行為に基づく損害賠償も考えられます。売買代金の一部が後払とされている場合や、役員退職慰労金、コンサルティング契約に基づく報酬などが実行の後に支払われる予定になっている場合には、これらの支払と補償請求権との相殺を主張し得るかを確認してください。実務上は、支払を留保したうえで交渉に入る例が多く見られます。
代替の取引先の確保と損害額
法的責任の検討と並行して、事業を止めないための手当てを進めなければなりません。仕入先を失った場合には供給が途絶え、得意先を失った場合には売上が失われます。いずれも、対応が遅れるほど損害は拡大し、しかも損害の拡大を防ぐ努力を怠ったと評価されれば、賠償を受けられる範囲がその分だけ狭められる可能性があります。
供給の確保を最優先する
仕入先との契約が終了した場合、まず現在の在庫で何日分の生産又は販売を賄えるかを日単位で把握します。次に、同等品を供給し得る事業者を複数当たり、単価、最低発注数量、初回納入までの期間、品質規格への適合の可否を比較します。金型、治具、設計図面、原材料の規格書が終了した取引先の手元にある場合には、その返還又は使用の許諾について、終了の交渉と並行して申し入れる必要があります。加えて、既存の受注残について納期の変更の協議を始めること、代替品への切替えに顧客の承認が必要な場合には早期に申請することを、同時に進めてください。得意先を失った場合には、その得意先向けの専用の設備と人員をどう振り向けるかという判断が必要になり、稼働率の低下が固定費を通じて利益を圧迫する点にも注意が必要です。
損害額をどのように積み上げるか
売主に請求する損害額は、感覚ではなく積算によって示さなければなりません。仕入先を失った場合には、代替品の単価と従前の単価との差額に想定数量を乗じた増加原価、緊急調達に伴う割増運賃、代替品への切替えに要した試験費用と設計変更費用、納期遅延により顧客へ支払った違約金が主な項目になります。得意先を失った場合には、失われた粗利益の額、専用設備の除却損、余剰となった人員に係る費用が挙げられます。いずれについても、どの期間分を損害とみるかという問題があり、代替の取引先を確保するのに通常必要と考えられる期間や、契約が本来存続したはずの残存期間を基準に組み立てることが多いと考えられます。株式の価値の下落そのものを損害として主張することも考えられますが、算定の方法をめぐって争いになりやすく、実際に生じた費用と失われた利益を積み上げる方法と併せて検討することが穏当です。証拠としては、発注書、請求書、支払の記録、月次の損益の推移、代替先からの見積書を時系列で保存してください。
取引先との関係の修復も選択肢に入れる
最後に、失った取引を取り戻すことが最も損害の小さい解決である場合が少なくない点を申し添えます。取引先が懸念しているのは、多くの場合、経営体制の変更に伴う不確実性です。前経営者に一定期間の引継ぎや紹介を依頼すること、品質保証体制と支払条件を書面で確約すること、必要に応じて親会社が保証を差し入れることによって、関係が維持される例もあります。売主に対する責任追及と、前経営者の協力を得ることとは、実務上は両立しにくい面がありますので、どちらを優先するかを早い段階で方針として決めておくことが大切です。
よくあるご質問
以下では、買収の後に主要な仕入先又は重要な取引先との契約が終了した場面について、買主の方から実際に多く寄せられる疑問を取り上げます。個別の事案では契約書の文言と事実関係により結論が変わりますので、あくまで検討の出発点としてお読みください。
契約書に支配権の異動に関する条項がありましたが、取引先の承諾を得ずに実行してしまいました。買収そのものが無効になりますか
株式譲渡そのものが当然に無効になるとは通常考えられません。支配権の異動に関する条項は、対象会社と取引先との間の契約上の約束であり、その違反は取引先に対する債務不履行の問題として現れます。すなわち、取引先が契約を解除できる、又は損害賠償を請求できるという効果が生じ得るにとどまります。もっとも、株式譲渡契約において必要な第三者の承諾の取得が実行の前提条件とされていた場合には、その条件を満たさないまま実行したことについて、買主と売主のいずれに責めがあるかという別の問題が生じます。契約書の前提条件の条項と、実行の日に作成した書面を確認してください。
取引先から更新拒絶の通知が届いたのは実行の1か月後です。売主に責任を問えますか
通知が届いた時期だけでは判断できません。重要なのは、取引先が更新をしないという意思を形成し、これを対象会社に伝えていた時期です。実行の前に打診や示唆があったのであれば、実行日時点の表明保証の違反や通知義務の違反を主張し得ます。実行の後に取引先が初めて判断したのであれば、売主の責任は認められにくくなります。取引先の担当者とのやり取りの記録を時系列で整理し、必要に応じて取引先に事実関係の確認を求めることが出発点になります。
契約書が存在せず、注文書だけで20年以上取引を続けてきた仕入先から、来月で取引を終えると言われました
期間の定めのない継続的な取引と評価される可能性が高い場面です。原則としては解約の申入れは可能ですが、長期にわたる取引の実績があり、その継続を前提に設備や人員を確保していた事情があるときは、相当の予告期間を置かない解約について損害賠償の責任が認められる余地があります。何か月の予告が相当かは、取引の期間、依存度、代替先の確保に要する期間などによって異なります。まずは予告期間の延長を申し入れ、その間に代替先を確保するという実務的な対応を優先することが現実的です。
デュー・ディリジェンスの資料の中に、取引条件の見直しを求める取引先の書面が1枚だけ含まれていました。開示されたことになりますか
争いになりやすい論点です。株式譲渡契約に開示された事項を表明保証の違反から除外する定めがある場合、売主はその書面をもって開示済みであると主張することが予想されます。これに対しては、開示が有効といえるためには、その記載からリスクの内容と重大性を合理的に把握できる程度の具体性が必要であると反論する余地があります。開示別紙に項目として明記されていたのか、大量の参考資料の末尾に紛れていたにすぎないのかという違いが重要ですので、資料の登録の記録と質問回答の書面を突き合わせて主張を組み立ててください。
売主への請求は、いつまでに行う必要がありますか
株式譲渡契約に定められた表明保証の存続期間を必ず確認してください。実行日から1年間や18か月間といった期間が定められていることが多く、この期間を過ぎると補償の請求ができなくなる定めが一般的です。損害額の確定を待っていると期間を徒過するおそれがありますので、金額が固まっていない段階でも、違反の内容と根拠となる条項を特定した書面による通知を、契約に定められた方法と宛先に従って先に発することを検討してください。通知の到達を証明できる方法を用いることが望ましいといえます。
失った取引先の売上を前提に代金額を算定していました。代金の返還を求めることはできますか
既に支払った代金の返還そのものを求めることは、契約の解除が認められる場合を除いて容易ではありません。実務上は、表明保証の違反に基づく補償として、失われた利益や増加した費用に相当する金銭の支払を求める形を採ることが多いといえます。代金の一部が後払とされている場合や、実行の後に役員退職慰労金その他の支払が予定されている場合には、これらの支払を留保し、補償請求権との調整を交渉の中で図る方法も考えられます。いずれにしても、契約書の補償の条項に定められた上限額と下限額の制約を確認したうえで、請求の構成を決めることになります。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
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