媒介契約の終了後に成約した場合に報酬は発生するのか

M&A仲介会社との契約を、期間の満了により終了いたしました。その後、以前に紹介を受けていた会社の代表者から直接に連絡があり、話合いを重ねた結果、株式を譲渡することとなりました。ところが、仲介会社から「契約の終了後2年以内に紹介した相手方と成約した場合には報酬が発生する」との定めを示され、成功報酬を請求されております。支払わなければならないのでしょうか。このようなご相談をいただくことがあります。

結論から申し上げます。契約の終了後の一定期間内に成約した場合に報酬が発生する旨の条項は、一般にテール条項と呼ばれ、仲介契約に置かれていることが少なくありません。この条項が置かれている場合には、報酬の支払を求められる余地があります。もっとも、期間、対象となる相手方の範囲、紹介の事実の有無、成約の内容という4つの点について、要件を満たしているかを検証する余地があります。本記事では、その検討の視点を整理いたします。

第1節 テール条項の趣旨と定め方

 趣旨

仲介会社は、候補者の探索、打診、面談の設定といった業務を行い、その対価として成功報酬を受けることを予定しております。契約の終了の直前に相手方が見付かった場合に、依頼者が契約を終了させ、その後に直接に交渉して成約することとなれば、仲介会社は対価を得られないこととなります。

テール条項は、この事態を避けるために置かれるものです。したがって、条項そのものに合理性がないとはいえません。

 定め方

表1 テール条項において定められる事項

事項 定め方の例
期間 契約の終了の日から1年、2年、3年等
対象となる相手方 仲介会社が紹介した者
関係者の範囲 紹介した者の親会社、子会社、役員等を含む旨
取引の形態 株式譲渡、事業譲渡、合併、資本提携等
報酬の額 本来の成功報酬と同額、又は一定の割合

 まず条項の文言を確認いたします

請求を受けた場合には、まず条項の文言を確認いたします。期間、対象、取引の形態のいずれかについて要件を満たしていない場合には、報酬は発生いたしません。

第2節 第一の検証 期間

 起算点

期間の起算点が、契約の終了の日とされているのか、解約の通知の日とされているのかを確認いたします。契約が期間の満了により終了した場合と、解約により終了した場合とで、起算点が異なる定めが置かれていることがあります。

 終期の判断

期間内に「成約した」ことが要件とされている場合、いずれの時点をもって成約とするかが問題となります。基本合意書の締結、最終契約の締結、決済の完了のいずれを指すかを、条項の文言から判断いたします。

期間の満了の直後に最終契約を締結した場合には、この点が争点となります。

 期間の相当性

期間が著しく長い場合には、その効力を争う余地があります。公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とされております(民法第90条)。

もっとも、期間が2年から3年程度である場合には、直ちに効力が否定されるとは限りません。仲介会社が現実に行った業務の内容と併せて検討することとなります。

第3節 第二の検証 紹介の事実

 「紹介した」といえるか

テール条項は、仲介会社が紹介した相手方との取引を対象といたします。したがって、当該相手方が仲介会社の紹介によるものであるかが、最も重要な争点となります。

表2 紹介の事実に関する検討

状況 検討の視点
仲介会社が実名を示して打診した 紹介があったといえるのが通例です
候補者の一覧に名称のみ記載された 接触に至っていない場合の扱いが問題となります
依頼者が以前から知っていた相手方 紹介によるものといえるかが問題となります
依頼者が自ら探索した相手方 紹介によるものではないと主張し得ます
他の助言者が紹介した相手方 同上

 既知の相手方である場合

依頼者が契約の締結前から取引関係を有していた相手方や、業界において既に面識のあった相手方については、仲介会社の紹介によるものといえるかが問題となります。

この点を主張するためには、契約の締結前から関係があったことを示す資料が必要となります。取引の記録、名刺の交換の記録、過去のやり取りが該当いたします。

 契約における除外の定め

仲介契約の締結に際して、依頼者が既に接触している相手方を一覧として提出し、これらを対象から除外する旨を定めることがあります。この定めがある場合には、一覧の記載が決定的な意味を持ちます。

したがって、仲介契約を締結する際には、既知の相手方を漏れなく記載しておくことが望まれます。

 記録の確認

仲介会社から受領した候補者の一覧、打診の状況に関する報告書、面談の設定に関する連絡を確認いたします。当該相手方が一覧に含まれていたか、現実に打診がされていたかを確認いたします。

第4節 第三の検証 相手方の範囲

 関係者を含む定め

条項において、紹介した者の親会社、子会社、役員、株主等を含む旨が定められていることがあります。この場合、紹介を受けた会社そのものではなく、その関係会社との間で成約したときにも、報酬が発生することとなります。

 範囲の解釈

「関係者」「関連会社」といった表現にとどまる場合には、その範囲が問題となります。資本関係の有無、役員の兼任の状況から判断することとなります。

範囲が明確に定められていない場合には、条項を作成した仲介会社に不利に解釈すべきであるとの主張が考えられます。

 新たに設立された会社

紹介を受けた者が、取得のために新たに会社を設立し、当該会社が株式を取得した場合には、実質的に紹介を受けた者との取引であると評価される余地があります。

第5節 第四の検証 成約の内容

 取引の形態

条項において対象とされる取引の形態を確認いたします。株式譲渡のみが定められている場合において、事業譲渡又は資本提携にとどまるときは、要件を満たさないと主張する余地があります。

 条件の相違

仲介会社が関与していた当時の条件と、現実に成立した取引の条件とが大きく異なる場合には、仲介会社の関与との関連が乏しいとの主張が考えられます。

もっとも、条項が条件の同一性を要件としていない場合には、この主張が認められるとは限りません。

 報酬の額

報酬の額が、本来の成功報酬と同額とされている場合と、一定の割合とされている場合とがあります。仲介会社が現実に行った業務の分量に照らして著しく高額である場合には、金額の相当性を争う余地があります。

 仲介会社の側の事情

契約が、仲介会社の義務の違反を理由として終了した場合には、テール条項の適用について、その事情が考慮される余地があります。

仲介会社が業務を行っていなかった、報告を怠っていた、依頼者の利益に反する対応をしていたといった事情がある場合には、これを主張することが考えられます。

第6節 対応の進め方

 直ちに支払わないこと

請求を受けた場合であっても、直ちに支払うことは適切ではありません。まず、条項の文言と要件の充足を検証いたします。

 説明及び資料の求め

仲介会社に対し、当該相手方を紹介した事実を示す資料の提出を求めます。打診の記録、面談の設定に関する連絡、報告書が該当いたします。

紹介の事実を示す資料が提出されない場合には、要件を満たさないと主張することが考えられます。

 書面による回答

検証の結果を書面により回答いたします。回答には、争う点と、その理由を記載いたします。

 新たな取引の相手方との関係

新たに成立した取引の相手方が、仲介会社から同様の請求を受けている場合があります。相手方との間で、この点に関する負担の分担について協議しておくことが考えられます。

 契約を締結する際の備え

仲介契約を締結する際には、テール条項の期間、対象となる相手方の範囲、既知の相手方の除外について確認し、必要に応じて修正を求めることが望まれます。締結後に効力を争うことは、容易ではありません。

第7節 弁護士に相談する意味

テール条項に基づく請求について弁護士が行う業務は、次のとおりです。第一に、条項の文言から要件を特定することです。第二に、期間、紹介の事実、相手方の範囲、成約の内容の各点について、要件を満たしているかを検証することです。第三に、仲介会社に対して紹介の事実を示す資料の提出を求めることです。第四に、書面により回答し、協議を進めることです。第五に、契約を締結する段階においては、条項の内容を検討し、修正を求めることです。

この類型においては、紹介の事実の有無が結論を左右することが多いものです。契約の締結前から関係のあった相手方については、その事実を示す資料を保管しておくことが望まれます。

具体的な検討及び主張の組み立ては、契約の内容、紹介の経過、成立した取引の内容等により異なり、当事務所が個別案件を通じて蓄積してきた実務上のノウハウにも属するため、本記事では詳細を開示しておりません。

よくあるご質問

質問1 契約が終わっているのに報酬を支払う必要がありますか。

テール条項が置かれている場合には、その要件を満たすときに報酬が発生することがあります。まず条項の文言を確認し、期間、紹介の事実、相手方の範囲、取引の形態について要件を満たしているかを検証いたします。

質問2 以前から知っていた相手方です。それでも紹介したことになりますか。

契約の締結前から関係があった場合には、仲介会社の紹介によるものではないと主張する余地があります。取引の記録、過去のやり取りといった資料により、関係があったことを示すことが重要となります。

質問3 紹介された会社ではなく、その子会社と取引しました。

条項において関係者を含む旨が定められている場合には、要件を満たすと判断されることがあります。範囲が明確に定められていない場合には、その解釈が争点となります。

質問4 テール条項の期間が長すぎるのではありませんか。

期間が著しく長い場合には効力を争う余地がありますが、2年から3年程度であれば直ちに否定されるとは限りません。仲介会社が現実に行った業務の内容と併せて検討いたします。

質問5 契約を締結するときに気を付けることはありますか。

テール条項の期間、対象となる相手方の範囲を確認し、既に接触している相手方を一覧として提出して対象から除外する旨を定めることが考えられます。締結後に効力を争うことは容易ではありませんので、締結の段階での確認が重要です。

弁護士法人M&A総合法律事務所へのご相談

弁護士法人M&A総合法律事務所(代表弁護士 土屋勝裕。東京都港区虎ノ門)では、仲介契約の終了後の報酬の請求に関するご相談をお受けしております。

  • 電話番号 03-6435-8418
  • 受付時間 8時00分から21時00分まで
  • 土曜日、日曜日及び祝日も受付いたします
  • ご相談は事前予約制です

ご相談の際に、仲介契約書、候補者の一覧、仲介会社からの報告書、終了に関する通知、成立した取引の契約書をご用意いただけますと、検討が早く進みます。

弁護士費用は、弁護士費用一覧のページをご覧ください。結果は事案ごとに異なります。本記事の記載は一般的な説明であり、特定の結果を保証するものではありません。

本記事の根拠条文

民法 第90条(公序良俗)、第166条第1項(債権の消滅時効)、第415条第1項(債務不履行による損害賠償)、第643条(委任)、第644条(受任者の注意義務)、第645条(受任者による報告)、第648条の2(成果等に対する報酬)、第651条(委任の解除)、第656条(準委任)

商法 第512条(報酬請求権)

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