買収した会社の売上が説明と違ったときの責任の範囲

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買収した会社の売上の相違に関するメインのページです。本ページは、M&Aで会社を譲り受けた後に売上が説明と食い違った場面で、実績と予測の区分をご説明します。利益の相違は別のページをご参照ください。
利益の金額が説明と違っていた場面は買収した会社の利益が説明より少なかった場合の検証と請求の進め方を、粉飾決算が発覚した場合の一般的な整理はM&Aにおける粉飾決算の類型と発覚した場合の対応を、それぞれご覧ください。
株式を取得して経営を引き継ぎ、最初の決算を締めてみたところ、売上高が買収前に説明されていた金額に遠く及ばなかった、というご相談を受けることがあります。月次の試算表を並べてみると、前期の同じ月と比べて2割も3割も少ない。前の経営者に尋ねると、市況が変わった、たまたま大口の受注が流れた、といった説明が返ってくる。しかし譲渡代金は、説明された売上高を前提に算定したものです。話が違うのではないか、という思いを抱かれるのは当然です。
もっとも、法的な責任が生ずるかどうかは、「話が違う」という感覚とは別の物差しで判断されます。決め手になるのは、違っていたのが過去の実績なのか、それとも将来の見通しなのか、という区別です。過去の売上高が実際には存在しなかったのであれば、これは事実に反する表示であり、契約上の責任の対象になり得ます。他方、来期はこれくらいいくはずだという見込みが外れただけであれば、原則として責任の問題にはなりません。この区別を曖昧にしたまま請求をすると、売主から「予測は予測にすぎない」と反論され、交渉が動かなくなります。
本稿では、中小企業を買収した買主の立場から、売上の乖離が生じたときに何をどの順序で調べ、どの条項を根拠にどこまで請求し得るのかを整理します。譲渡代金が1億円から10億円程度の同族経営の非上場会社を念頭に置いています。
売上が違っていた原因を切り分ける
最初にすべきことは、責任追及の可否を論ずることではなく、数字の差がどこで生じたのかを特定することです。原因が特定できていない段階で売主に抗議をすると、こちらの理解の粗さを見抜かれ、以後の交渉で主導権を失います。まず、比較の対象を明確にします。買収前に受領した決算書の売上高なのか、月次試算表の売上高なのか、企業概要書に記載された数値なのか、それとも売主が提出した事業計画の予測値なのか。これらは金額も性質も異なりますので、混同したまま議論を進めてはなりません。
月次の推移表を作って乖離の起点を探す
実務上、最も有効なのは、買収の3期前から現在までの月次売上高を一覧にした推移表を作ることです。得意先別、商品別、事業所別の3つの切り口で作成すると、乖離がいつ、どこで始まったのかが浮かび上がります。買収の実行日より前から下落が始まっているのであれば、売主が説明しなかった事情が存在した可能性が高くなります。実行日の後から下落しているのであれば、経営の引継ぎに伴う要因を先に検討すべきです。この推移表は、後に損害額を主張する際の基礎資料にもなりますので、会計システムから出力した元データとともに保存してください。
原因の類型を整理する
売上の乖離の原因は、おおむね次の類型に分かれます。どの類型に当たるかによって、責任の有無も、請求の相手方も変わります。
- 期間の定義の違い。決算期の変更、月次の締め日の相違、13か月決算などにより、比較している期間がそもそも一致していない場合があります。
- 会計処理の方法の違い。売上を総額で計上していたか純額で計上していたか、返品や値引きを売上から控除していたか販売費で処理していたか、といった相違です。
- 過去の計上そのものの誤り又は不正。実在しない売上の計上、翌期に属すべき売上の前倒し計上、関係会社との間の実質のない取引による水増しなどです。
- 買収後に生じた事情。主要な担当者の退職、取引先の離反、価格改定、許認可や取引基本契約の承継に伴う一時的な停止などです。
- 市況その他の外部要因。原材料価格の変動、取引先の設備投資計画の後ろ倒し、法令の改正による需要の減少などです。
このうち、契約上の責任が生じ得るのは主として3番目の類型です。1番目と2番目は説明の仕方の問題として交渉の材料になり得ますが、4番目と5番目は原則として買主が引き受けたリスクに属します。切り分けの作業を先に済ませることで、請求の的が絞られます。
過去の実績か、将来の予測か
ここが本稿の核心です。株式譲渡契約における表明保証とは、一定の時点において一定の事実が真実かつ正確であることを、当事者が相手方に対して表明し、その内容を保証するものです。対象は「事実」です。将来どうなるかは、その時点では事実として存在していませんので、表明保証の対象になりません。
将来の予測の未達は原則として表明保証の違反になりません
売主が提出した事業計画に記載された翌期の売上高が達成されなかったとしても、それ自体は原則として表明保証の違反になりません。予測は前提条件を置いた見込みであり、前提が変われば結果も変わります。実際の株式譲渡契約でも、事業計画や将来の見通しについては表明保証の対象から明示的に除外する旨の規定が置かれることが一般的です。契約書を開き、表明保証の条項の末尾又は別紙に、将来予測情報を対象外とする文言があるかどうかを確認してください。その文言がある場合、予測の未達だけを理由とする請求は認められにくくなります。
売主が提示した事業計画に法的な拘束力があるかという点も、しばしば争点になります。結論として、事業計画は原則として努力目標であり、それ自体が達成義務を生じさせるものではありません。売主に達成の責任を負わせるためには、達成できなかった場合に対価を減額する条項、すなわち業績連動型の対価の定めを置くか、一定の水準に達しなかった場合に代金の一部を返還する旨の合意を別途置く必要があります。そうした条項がないのに、計画の数値だけを根拠に代金の返還を求めるのは難しいところです。逆に言えば、将来の数値に不安があるのであれば、契約の締結時に対価の一部を業績に連動させる設計にしておくことが、買主の側の備えになります。
過去の計算書類に関する表明に反する事実があれば責任が生じ得ます
他方、過去の実績は事実です。株式譲渡契約には、対象会社の計算書類が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って作成され、各基準日における財政状態及び経営成績を真実かつ適正に表示している旨の表明保証が置かれるのが通常です。この表明に反する事実があれば、責任が生じ得ます。具体的には、次のような事情です。
- 架空の売上。実在しない取引先又は実際には行われていない取引について売上を計上していた場合です。
- 期ずれの計上。翌期に属すべき出荷を期末日前に計上した、あるいは検収前の案件を売上に立てていた場合です。
- 循環取引。複数の当事者の間で商品を回し、実質的な経済的な意味のない取引で売上を膨らませていた場合です。
- 押し込み販売。期末に取引先へ大量に出荷し、翌期に返品する前提で売上を計上していた場合です。
- 関係会社又は代表者の個人事業との間の取引による水増し。買収後にその取引が消滅すれば、売上は当然に落ちます。
これらは、いずれも「過去の数値が誤っていた」という事実の問題です。したがって、翌期の売上が落ちたという結果そのものではなく、過去の計算書類に誤りがあったという点を主張の中心に据えることになります。なお、事業計画そのものは予測であっても、その計画が前提とする過去の実績値が虚偽であった場合には、基礎となる事実についての表明違反として構成し得ます。予測の当否ではなく、予測の土台が崩れていることを問題にするわけです。
さらに、予測であっても、売主が達成できないことを知りながら、合理的な根拠なく作成した計画を提示して買主を誤信させた場合には、表明保証とは別に、不法行為に基づく損害賠償(民法第709条)や、詐欺を理由とする意思表示の取消し(民法第96条第1項)が問題となる余地があります。ただし、売主の認識を立証することは容易ではなく、社内の資料や電子メールなどの客観的な証拠が必要になります。
表明保証の条項と説明資料との関係
請求の根拠は、感覚ではなく契約の文言です。株式譲渡契約を開き、関係する条項を書き写して、事実関係と一つずつ突き合わせる作業を行ってください。中小企業の案件では、契約書が10ページ程度の簡素なものであることも多く、その場合はかえって文言の解釈が結論を左右します。
計算書類に関する表明の文言を精読する
まず確認すべきは、対象の範囲と、限定の有無です。表明の対象が「直近3期の計算書類」なのか「直近1期のみ」なのか。基準日はいつか。月次試算表が対象に含まれているか。そして、「重要な点において正確である」という限定が付されているかどうかです。この限定が付されている場合、金額の小さな誤りは違反にならず、重要性の判断が争点になります。何をもって重要とするかは、譲渡代金の規模、対象会社の利益水準、誤りの性質などから総合的に判断されますので、事案により異なります。
開示資料の正確性に関する表明の有無
次に、売主が買主に提供した資料の正確性及び完全性に関する表明があるかを確認します。この表明があれば、デュー・ディリジェンスの過程で提出された資料、質問への回答書、企業概要書の記載なども対象になり得ます。ここで重要になるのが、「開示資料」の定義です。契約書に開示資料の一覧が別紙として添付されている場合、その一覧に載っていない資料は対象外と解釈される余地があります。M&A仲介業者が作成した企業概要書について、売主がその内容を確認し承認していたのか、それともM&A仲介会社が独自に作成したものにすぎないのかも、責任の所在を分ける要素になります。
完全合意条項の影響を確認する
契約書の末尾に、本契約が当事者間の合意のすべてであり、これに先立つ口頭又は書面による合意及び表示は効力を有しない旨の条項が置かれていることがあります。この完全合意条項があると、契約書に取り込まれていない口頭の説明や、締結前に交付された資料の記載を根拠とする主張は、通りにくくなります。締結前の面談で売主が述べた内容を根拠にしようとする場合には、この条項の存在をあらかじめ確認し、契約書上のどの表明に結び付けられるかを検討する必要があります。
デュー・ディリジェンスで何を確認していたか
売主に請求をすると、ほぼ確実に「デュー・ディリジェンスで調べる機会を与えたはずだ」という反論が返ってきます。したがって、こちらが何をどこまで調べ、売主が何をどう答えたのかを、こちらの側から先に整理しておく必要があります。
質問と回答の記録を復元する
デュー・ディリジェンスの過程では、買主側から質問を出し、売主側が回答するやりとりが一覧表の形で残されているのが通常です。この記録は、後に最も強い証拠になります。売上の実在性、主要な取引先との継続性、関係会社との取引の有無、期末付近の売上の計上基準について、こちらが具体的に質問し、売主が「問題ない」と回答していたのであれば、その回答自体が虚偽の説明であったという主張につながります。専門家に委託していた場合は、報告書の本体だけでなく、その基礎資料と受領資料の一覧も取り寄せてください。電子的な保管場所の閲覧記録が残っていれば、どの資料が提供されていなかったかも明らかになります。
売上の実在性を事後的に検証する
買収後であれば、対象会社の資料に自由にあたることができます。売上の実在性を確認する手順としては、次のものが有効です。総勘定元帳の売上高から、金額の大きい取引と期末付近の取引を抽出し、注文書、出荷指図書、納品書、検収書、請求書、入金記録の順に現物を突き合わせます。書類の一部が欠けている取引、入金が売掛金の消込みではなく他の取引先からの入金で埋められている取引、期末に計上され翌期の早い時期に赤伝で消されている取引は、要注意です。得意先元帳を見て、期末だけ残高が膨らみ、翌期の初めに解消している先があれば、その先への出荷実績を年間で確認してください。
買主が知っていた場合の取扱い
買主が違反の事実を知りながら契約を締結した場合に、なお補償を請求できるかという論点があります。契約書に、買主の認識の有無にかかわらず補償を請求できる旨の定めがあれば、それに従います。逆に、買主が知っていた事項については補償の対象外とする定めがあれば、こちらがどこまで知っていたかが正面から争われます。定めがない場合の取扱いは確立しておらず、事案により結論が異なり得ます。いずれにせよ、デュー・ディリジェンスで指摘していた事項と、指摘し得なかった事項を、こちらで明確に区別しておくことが求められます。
企業価値の評価への影響
売上が違っていたという事実が確認できたとしても、それが譲渡代金にどう影響したのかを説明できなければ、金額の交渉になりません。中小企業のM&Aでは、利払前・税引前・減価償却前利益に一定の倍率を乗じ、そこから純有利子負債を控除して株式の価値を求める方法が用いられることが多くあります。この場合、架空の売上によって利益が過大に表示されていたのであれば、過大であった利益の額に倍率を乗じた金額が、代金の過大部分の目安になります。
一時的な要因か、継続的な要因か
ここで決定的に重要なのが、その要因が一時的なものか、継続的なものかという区別です。特定の期にだけ生じた期ずれの計上であれば、影響は当該期の利益にとどまり、倍率を乗じた評価には及ばないという整理があり得ます。他方、複数期にわたって架空の売上が計上され、それが評価の基礎とした平均的な利益水準を押し上げていたのであれば、倍率を乗じた金額全体が過大であったことになります。どちらの主張をするかで請求額は大きく変わりますので、月次と期別の両面から、粉飾がなかった場合の正常収益力を再計算してください。
売上以外への波及を確認する
架空の売上は、通常、架空の売掛金を伴います。買収の実行時に純資産や運転資本の額に基づく価格の調整を行っていた場合、その調整の計算にも誤りが含まれていた可能性があります。契約書に価格調整の条項があるときは、調整の確定手続が既に終了しているか、異議を述べる期間が残っているかを確認してください。調整手続の中で処理できるのであれば、表明保証違反の主張より手続が簡明であることがあります。また、粉飾を前提とした法人税や消費税の申告について、更正の請求ができる余地があるかも、税理士とともに検討する価値があります。
違反と損害との因果関係
表明保証の違反が認められても、その違反によって買主にどれだけの損害が生じたかを示さなければ、補償は受けられません。中小企業の案件で最も争いになるのが、この損害額の構成です。
損害の構成の仕方
考え方としては、支払った譲渡代金と、真実の事実を前提として算定した場合の株式の価値との差額を損害とする構成が中心になります。この構成をとる場合、真実を知っていれば代金がいくらになっていたかを、当時の算定方法に従って再計算して示す必要があります。他方、単純に不足した売上高の金額や、達成できなかった利益の額をそのまま損害とする構成は、通りにくいところです。売上高は損害ではありませんし、将来の逸失利益は因果関係の立証が難しいためです。加えて、粉飾の調査に要した費用、税務上の是正に要した費用、取引先への対応に要した費用など、実際に支出した金額は、契約上の補償の対象となる損失又は費用に含まれることが多くあります。
補償条項による制限を先に読む
請求額を決める前に、補償条項の制限を必ず確認してください。実務上、次の制限が置かれています。
| 制限の種類 | 確認する内容 |
|---|---|
| 補償額の上限 | 譲渡代金の一定割合とされていることが多く、この額を超える請求は契約上は認められません。 |
| 免責額 | 損害の合計が一定額に達しなければ請求できない旨の定めです。達した場合に全額を請求できるのか、超過部分だけかも確認します。 |
| 少額の除外 | 1件当たり一定額に満たない損害を対象外とする定めです。 |
| 請求期間 | 実行日から1年から2年程度とされることが多く、税務に関する事項のみ長期とされる例もあります。 |
| 控除項目 | 受領した保険金、税務上の便益、既に価格調整で考慮された金額を控除する旨の定めです。 |
なお、売主に故意又は重大な過失がある場合には上限の適用を除外する旨の定めが置かれていることがあります。粉飾が意図的なものであったと主張し得る事案では、この例外規定の有無が結論を大きく左右しますので、条項の文言を丁寧に読んでください。制限の適用があっても、契約とは別に、債務不履行に基づく損害賠償(民法第415条第1項)や不法行為に基づく損害賠償を主張し得る場合がありますが、補償条項が唯一の救済手段である旨の定めがあるときは、その主張が制限される余地があります。
請求及び交渉の進め方
事実関係と法的な構成が固まったら、手続に移ります。順序を誤ると、権利そのものを失うことがありますので、期限の管理を最優先にしてください。
通知の期限を最初に確認する
補償請求については、一定の期間内に、違反の内容と損害の見込額を記載した書面で通知することを条件とする定めが置かれているのが通常です。この期間を徒過すると、内容が正しくても請求ができなくなります。金額の算定に時間がかかる場合でも、期限内にまず通知を発し、金額は追って確定する旨を記載しておくことが実務的な対応です。通知は、到達の事実と内容を残すため、配達証明付きの内容証明郵便によることが望まれます。契約に定められた通知先の住所と方法に従っているかも、あわせて確認してください。
証拠を先に確保する
買収後の会社は既にこちらの支配下にありますが、資料は時間とともに失われます。会計システムのデータは、更新前の状態を含めて保存し、電子メールと共有サーバの記録も保全してください。前の経営者の下で経理を担当していた従業員が退職する前に、当時の処理の経緯について詳しく聴取し、書面に残しておくことが有効です。取引先に対しては、事情を説明せずに残高の確認を求めると混乱を招きますので、通常の債権管理の一環として行う形を検討してください。
交渉の順序と相手方の資力
交渉では、いきなり金額を示すのではなく、確定した事実、それが違反する条項、そこから導かれる金額という順序で提示すると、相手方も反論の的を絞らざるを得なくなり、議論が具体化します。同時に、売主の資力を把握してください。譲渡代金が既に相続税対策や借入金の返済に費消されていることがあります。譲渡代金の一部を第三者に預託する仕組みが設けられていた場合はその残高を、代金が分割払いである場合は未払分との相殺の可否を確認します。売主が複数の株主であった場合、責任が連帯なのか各自の持分割合に応じたものなのかも、契約の文言によります。
話合いで解決しない場合の手続は、契約の紛争解決条項によります。仲裁の合意がある場合は訴訟を提起できませんので、条項を先に確認してください。訴訟による場合、売主の財産が処分されるおそれがあるときは、仮差押えの申立てを検討します。なお、粉飾の態様が悪質であるとしても、刑事の手続に及ぶかどうかは慎重な判断を要し、交渉の材料として用いることは適切ではありません。
よくあるご質問
売上の乖離についてご相談をいただく際に、繰り返し尋ねられる事項をまとめました。いずれも契約書の文言と事実関係によって結論が変わり得ますので、ご自身の案件の契約書を手元に置いてお読みください。
事業計画の売上に届かなかっただけで、売主に賠償を求めることはできますか
原則として難しいところです。事業計画は将来の予測であり、表明保証の対象となる事実ではありません。多くの株式譲渡契約では、将来の見通しを表明保証の対象から明示的に除外しています。求め得るとすれば、その計画の前提となった過去の実績値が虚偽であった場合、又は業績に連動して対価を調整する条項が置かれていた場合です。まず契約書の該当条項を確認してください。
売主が面談の席で「この水準は必ず維持できる」と述べていました。これは根拠になりますか
口頭の説明のみを根拠とすることには限界があります。契約書に完全合意条項が置かれている場合は、締結前の説明の効力が否定される余地があります。もっとも、その発言が過去の事実に関するものであり、かつ売主が虚偽であることを認識していたと示し得るのであれば、不法行為又は詐欺の問題として構成する余地はあります。当時の議事録、電子メール、提出資料など、発言を裏付ける客観的な記録が残っているかが分かれ目になります。
デュー・ディリジェンスで気づけたはずだと言われました
調査の機会があったことと、違反の責任が免れることとは、別の事柄です。売主が資料を提供せず、又は誤った回答をしていたのであれば、通常の調査で発見できたとは言えません。こちらが具体的にどの資料を求め、どのような回答を得ていたかを、質問と回答の記録によって示してください。他方、提供された資料に明らかに表れていた事項については、こちらの主張が弱くなります。
補償額の上限を超える損害が生じた場合はどうなりますか
契約に上限が定められている以上、補償条項による請求はその範囲にとどまるのが原則です。ただし、売主に故意又は重大な過失がある場合を上限の例外とする定めが置かれていることがあり、意図的な粉飾であればこの例外に当たると主張し得ます。また、補償条項が唯一の救済手段である旨の定めがなければ、不法行為に基づく請求を別途行う余地もあります。いずれも契約の文言によりますので、条項の全体を通して読む必要があります。
表明保証保険に加入していました。保険で回収できますか
加入している場合は、まず保険証券の付保範囲と免責事由を確認してください。将来の予測に関する事項は付保の対象外とされているのが通常です。また、契約の締結時に買主が既に認識していた事項も免責とされることが多くあります。保険には通知の期限が定められていますので、売主への通知と並行して、保険会社への通知も期限内に行ってください。保険金を受領した場合、その額が売主への補償請求から控除される定めがあるかも確認が必要です。
いつまでに請求すればよいのでしょうか
まず契約上の請求期間が優先します。実行日から1年から2年程度とされる例が多く、この期間を過ぎると契約上の請求は困難になります。契約に定めがない場合や、不法行為として構成する場合には、民法の消滅時効の規定によることになりますが、起算点の判断は事案により異なります。決算を締めて数字の異常に気づいた時点で、期限までの残り時間を確認することをお勧めします。
売主が代金を費消しており、資力がなさそうです
回収の可能性は事案により異なりますが、取り得る手段はあります。譲渡代金が分割払いであれば未払分との相殺を、対価の一部が預託されていればその残高からの充当を検討します。売主が対象会社に対して有する債権(貸付金、役員退職慰労金の未払分など)があれば、これも相殺の対象になり得ます。財産の処分のおそれがある場合には、仮差押えの申立てを検討することになります。回収の見込みと費用とを比較し、どこまで手続を進めるかを早い段階で判断してください。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
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