株式譲渡代金が支払われないときに売主が採り得る手段

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代金の未払に対し売主が採り得る手段に関するメインのページです。本ページは、譲渡の後に支払が滞った場面で、確認すべき事項と請求の進め方を全体から示します。引渡しの後の回収の手順は別のページをご参照ください。

時系列に沿った回収の手順については、株式を引き渡した後に株式譲渡代金が支払われない場合の回収の手順で扱っています。分割払が途中で止まった場合の残額の一括請求については、代金の分割払が途中で止まった場合に残額を一括して請求できるかで扱っています。あわせてご覧ください。

長年育ててこられた会社を譲り渡し、株式譲渡契約に調印して、株主名簿の名義も買主に書き換えた。ところが、約束の期日を過ぎても譲渡代金が入金されない。買主に連絡をすると、「資金の手当てに少し時間がかかっている」「銀行との調整が済み次第お支払いする」といった返答が繰り返され、明確な入金日を示してもらえない。こうしたご相談は、決して珍しいものではありません。

この局面で最も避けたいのは、催促だけを重ねて時間が経過することです。買主の資金繰りが悪化している場合、時間の経過とともに買主の財産は他の債権者への弁済や関係会社への資金移動によって散逸してまいります。株式は既に買主の手元にあり、事業も買主の指揮下で動いておりますので、売主に残っているのは代金債権という紙の上の権利のみという状態になりがちです。回収の成否は、権利があるかどうかよりも、買主の手元に差し押さえられる財産が残っているかどうかで決まる場面が少なくありません。

本稿では、株式譲渡代金の未払に直面された売主の方が、催促にとどまらず、支払期限の確定、契約の解除の可否、遅延損害金の請求、買主から持ち出されやすい相殺の主張への対応、そして仮差押えによる財産の保全までを順序立ててご検討いただけるよう、確認すべき事項と採り得る手段を整理してまいります。中小企業のM&A、すなわち譲渡代金が1億円から10億円程度の同族経営の非上場会社の事案を念頭に置いております。

まず確認していただきたい5つの事項

買主に連絡をされる前に、お手元の契約書一式を開いて、次の5つの事項をご確認ください。ここでの確認が、その後に採り得る手段の幅を決めます。記憶ではなく、必ず契約書の条項そのものに当たっていただくことが肝要です。株式譲渡契約は、締結の直前まで条項の修正が続くことが通例ですので、締結前の案の記憶と確定版の内容とが食い違っていることが実際にあります。

第一に、支払期日と支払の前提条件

支払期日が特定の日付で定められているのか、それとも「クロージング日に支払う」「所定の条件が全て充足された日から5営業日以内に支払う」といった形で定められているのかをご確認ください。確定した期限が定められている債務については、その期限が到来した時から履行遅滞となるのが原則です。他方、支払の前提条件、例えば許認可の承継、取引先からの承諾書の取得、代表者の連帯保証の解除、鍵となる従業員の在籍といった条件が定められている場合には、買主がその条件の未充足を理由に支払を留保することがあります。条件が既に充足されているのであれば、充足を示す資料を先に手元にそろえておくことが有効です。

第二に、分割払の条件と期限の利益喪失に関する定め

譲渡代金が分割払とされている事案、例えばクロージング時に7割、1年後に3割といった定め方や、譲渡後の業績に応じて追加の対価を支払うという定め方をしている事案では、未払となっている部分がどの支払に当たるのかを特定する必要があります。あわせて、期限の利益喪失条項、すなわち一度でも支払を怠った場合に残額の全部について直ちに支払期限が到来するという定めの有無をご確認ください。この条項があるかどうかで、請求できる金額が1回分にとどまるのか残額の全部に及ぶのかが変わってまいります。条項がある場合でも、催告を要するのか、当然に喪失するのかという書き分けがありますので、文言を丁寧に読む必要があります。

第三に、相殺、留保及び補償に関する条項

買主が表明保証違反による損害賠償請求権を主張して代金と相殺するという反論は、未払事案で最も多く見られるものです。契約に、相殺を禁ずる定めがあるか、あるいは相殺を許すとしても「確定判決又は当事者間の書面による合意により金額が確定した債権に限る」といった限定が付されているかをご確認ください。この限定があれば、買主が一方的に金額を主張して支払を拒むことは困難となります。あわせて、代金の一部を一定期間留保するという定めや、補償の請求ができる期間、補償の下限額及び上限額の定めの有無もご確認ください。

第四に、担保、保証及び資金の預託の有無

買主の代表者による連帯保証、買主の親会社による保証、譲渡対象会社の株式に対する質権の設定、第三者への資金の預託といった仕組みが設けられていないかをご確認ください。これらがあれば、買主本体の資力が乏しい場合でも回収の道が残ります。中小企業のM&Aでは、買主が資産を持たない持株会社であり、実際の資力は代表者個人又は事業会社にあるという構造がしばしば見られます。契約書の当事者の表示と、実際に資力を有する者とを区別して把握しておくことが重要です。

第五に、通知の方法と紛争解決の定め

契約に定められた通知の宛先、方法及び効力発生の時期をご確認ください。通知の方法が定められている場合に、これと異なる方法で通知をいたしますと、後に効力を争われる余地が生じます。あわせて、合意管轄の裁判所、準拠法、仲裁の合意の有無もご確認ください。仲裁の合意がある場合には、訴訟ではなく仲裁の手続によることとなり、進め方が大きく異なってまいります。

未払が債務不履行となる場合

株式譲渡代金の支払は、株式譲渡契約に基づく買主の主たる債務です。確定した期限が定められている場合には、その期限の到来によって買主は履行遅滞に陥り、売主は遅延損害金を請求し得る状態となります。期限の定めがない場合には、売主が履行の請求をした時から遅滞となるのが原則ですので、請求をした事実とその日付を証拠に残しておくことが実務上重要となります。この点は、後に述べる内容証明郵便による請求が意味を持つ理由の一つでもあります。

遅延損害金の利率については、契約に定めがあればその定めに従います。中小企業のM&Aの契約では、年14.6パーセントといった高い利率が定められていることもあれば、遅延損害金の条項自体が置かれていないこともあります。契約に定めがない場合には、法定利率によることとなります。法定利率は一定の期間ごとに見直される変動する仕組みとされておりますので、本稿では具体的な数値を申し上げることを差し控えます。実際の請求に当たっては、遅滞の責任を負った最初の時点においてどの利率が適用されるかを確認する必要があります。

買主が支払をしない状態が続く場合、売主は契約の解除を検討し得ます。相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときに契約を解除するという方法が原則的な形です。もっとも、株式譲渡契約を解除すべきかどうかは慎重な判断を要します。解除をいたしますと、契約は当初に遡って効力を失い、当事者は互いに原状に復させる義務を負うこととなりますので、売主は代金債権を失い、代わりに株式の返還を求める立場に立ちます。

ここで問題となるのが、返ってくる会社が譲渡の時点と同じ状態であるとは限らないという点です。買主の下で不動産が売却され、預金が引き出され、主要な従業員が退職し、取引先が離れているということが起こり得ます。金銭の回収を目的とされるのであれば、解除ではなく、代金債権をそのまま請求し、買主の財産を保全する方向で進める方が目的に適う場面が多くあります。解除は、買主に資力が全くなく、かつ会社の価値が維持されている場合に、例外的に検討する手段と位置付けるのが実務的です。

買主が主張しやすい抗弁

支払を求めた際に買主から返ってくる反論には、一定の型があります。あらかじめ想定しておけば、感情的な応酬を避け、必要な資料を先に整えることができます。ここでは代表的な二つの反論を取り上げます。

表明保証違反を理由とする反論

最も多いのは、譲渡対象会社に契約書で表明し保証した内容と異なる事実があったという反論です。具体的には、未払の時間外労働に対する賃金、簿外の債務、係争中の事件の不開示、税務上の否認のおそれ、在庫や売掛金の実在性の欠如、退職給付に関する引当の不足などが持ち出されます。この反論に対しては、まず、指摘されている事実が契約書のどの表明保証条項に当たるのかを特定していただくことが出発点です。次に、その事実がデュー・ディリジェンスの過程で開示済みであったかどうかを確認いたします。開示資料の一覧、質問回答の記録、資料が保管されていた電子的な共有の場の記録は、この場面で決定的な意味を持ちます。

あわせて、契約に定められた補償の請求期間が経過していないか、損害の額が補償の下限額に達しているか、上限額を超える主張がなされていないかを確認いたします。中小企業のM&Aでは、そもそも損害が現実に発生しておらず、将来発生するかもしれないという段階の主張にとどまっている例も少なくありません。損害の発生と金額を裏付ける資料の提示を求めることが、反論の実質を見極める手がかりとなります。

相殺の主張

買主が損害賠償請求権を有すると主張し、これをもって代金債務と相殺するという反論も頻繁になされます。相殺は、双方が互いに同種の債務を負い、いずれの債務も履行期が到来していることを要件とするものです。ここで要点となるのは、買主が主張する損害賠償請求権が確定しているかどうかです。発生の原因、金額及び履行期が争いなく定まっている債権でなければ、相殺の主張が直ちに認められるものではありません。金額に争いのある損害賠償請求権を自ら評価して相殺を主張するという行為は、実質的には支払の一方的な留保にほかならない場合があります。

したがって、買主から相殺の主張がなされた場合には、その債権の発生原因、算定の根拠及び裏付け資料を書面で明示するよう求め、回答の内容を記録に残すことが有効です。前述のとおり、契約に相殺を確定した債権に限る旨の定めが置かれていれば、この主張を封じることができます。また、買主が金額を明示できない、あるいは資料の提示を避けるという対応をとる場合、その経過自体が、支払を先延ばしにする意図を示す事情として意味を持ってまいります。

内容証明郵便による請求と期限の設定

口頭や電子メールでの催促を重ねても入金がない場合には、内容証明郵便による請求に移ることをご検討ください。内容証明郵便は、どのような内容の文書を、いつ、誰に宛てて差し出したかを郵便事業者が証明する制度です。配達証明を併せて付しますと、相手方に到達した日も証明されます。履行の請求をした日、催告の期間の起算日、遅延損害金の起算日を後日に立証するうえで、確実な方法です。

書面に記載すべき事項は、次のとおり整理できます。第一に、株式譲渡契約の特定、すなわち契約の締結日、当事者、対象会社及び対象株式です。第二に、未払となっている代金の金額と、その支払期日です。分割払の事案では、どの回の支払が未払であるか、期限の利益喪失条項によって残額の全部が支払期限を迎えているかを明記いたします。第三に、支払を求める期限です。実務では2週間程度を定める例が多く見られますが、事案の緊急性に応じて調整いたします。第四に、遅延損害金の請求です。第五に、期限内に支払がない場合に、法的手続を執る旨の予告です。

書面の作成に当たっては、感情的な表現や、事実と評価が混在した記載を避け、契約の条項と客観的な事実のみを簡潔に記すことが肝要です。この書面は、後に訴訟となった場合に必ず証拠として提出されるものであり、また買主の側でも弁護士に持ち込まれて検討されることを前提に作成する必要があります。誤った金額を記載したり、契約書にない義務を主張したりいたしますと、その点を突かれて交渉上の立場が弱くなる余地があります。弁護士名義で発することにより、買主に対して手続に移行する意思が本気であることを伝える効果も期待し得ます。

なお、買主の資産が既に流出しつつあると疑われる場合には、内容証明郵便を発すること自体が買主に財産を移す契機を与えるおそれもあります。次に述べる仮差押えを先に行うか、請求と同時並行で準備するかという判断は、この点を踏まえて行う必要があります。

仮差押えを検討する場面

仮差押えとは、判決を得る前の段階で、債務者の財産を暫定的に処分できない状態に固定しておく裁判所の手続です。訴訟を提起して判決を得るまでには相応の期間を要しますので、その間に買主が預金を引き出し、不動産を売却し、売掛金を回収してしまえば、勝訴判決を得ても回収できないという結果になりかねません。買主の資力に不安がある事案では、請求よりも先に、あるいは請求と同時に、この手続を検討する意義が大きくなります。

仮差押えの申立てに当たっては、二つの事項を疎明する必要があります。疎明とは、確実な証明までは要しないものの、裁判官に一応確からしいとの心証を得させる程度の説明を意味します。第一が被保全権利、すなわち保全されるべき権利の存在です。本件では株式譲渡代金債権がこれに当たり、株式譲渡契約書、株主名簿の写し、クロージングに関する書類、催告書とその配達の記録などによって示します。第二が保全の必要性、すなわち今のうちに財産を押さえておかなければ将来の強制執行が困難となる事情です。買主の決算書に現れた債務超過の状態、他の債権者による差押えの事実、事業所の縮小、支払を求める書面に対する不誠実な回答の経過などが、これを基礎付ける事情となります。

また、仮差押えを認めてもらうためには、原則として担保を立てることを要します。仮差押えは相手方の言い分を聴かずに発令されることが多く、後に権利が認められなかった場合には相手方に損害が生じ得るためです。担保の額は、請求債権の額に対する一定の割合として裁判所が定めますが、その割合は疎明の程度や対象財産の種類によって異なりますので、一律に申し上げることはできません。担保は法務局に金銭を供託する方法により立てるのが一般的であり、この資金を用意できるかどうかが、手続を進められるかどうかの現実的な分かれ目となります。

対象とする財産としては、買主の預金債権、買主が有する売掛金債権、買主名義の不動産などが考えられます。預金債権を対象とする場合には、金融機関名と店舗を特定する必要があります。譲渡代金の一部が支払われている事案であれば、その入金がどの口座からなされたかが手がかりとなります。買主の登記事項証明書に記載された本店の所在地、不動産の登記事項証明書、決算書に現れた取引金融機関の情報も、対象財産を探す資料となります。手続の性質上、買主に察知される前に進めることが望ましく、資料の収集を速やかに行う必要があります。

訴訟及び和解

任意の支払がなされない場合には、株式譲渡代金の支払を求める訴訟を提起することとなります。株式譲渡契約に合意管轄の定めがあれば、その裁判所に提起いたします。訴えの提起に当たっては、請求する金額に応じた収入印紙を納める必要がありますので、譲渡代金が高額な事案では、この費用も含めた見通しをあらかじめ立てておくことが必要です。

代金の支払を求める訴訟では、売主が主張し立証すべき事項は比較的単純です。株式譲渡契約が成立したこと、代金の額、支払期日が到来したことを示せば足り、これらは契約書によって示すことができます。争いの中心は、買主が主張する抗弁、すなわち表明保証違反による損害賠償請求権の存否と金額、そしてこれを自働債権とする相殺の当否に移ってまいります。したがって、訴訟の準備の実質は、デュー・ディリジェンスの過程で何が開示されていたかを示す資料の整理にあると申し上げてよろしいかと存じます。

審理の過程では、和解による解決が試みられることが通例です。買主に一定の資力がある場合には、金額を多少譲る代わりに支払時期を早める、分割払とする代わりに買主の代表者個人に連帯保証をしてもらう、遅延が生じた場合の期限の利益喪失条項を明確に定めるといった内容で調整いたします。和解の内容が裁判所の調書に記載されますと、これに基づいて強制執行を行うことができますので、任意の合意書にとどめるよりも回収の実効性が高まります。訴訟外で和解をする場合であっても、強制執行を受け入れる旨の文言を含む公正証書を作成しておくことにより、同様の効果を得ることができます。

判決を得た後も、買主が任意に支払わない場合には、強制執行の手続に進みます。あらかじめ仮差押えをしておいた財産があれば、これに対して執行を行うことができます。財産の所在が不明な場合には、債務者に財産の状況を裁判所で述べさせる手続や、金融機関等から情報を取得する手続を利用し得ます。もっとも、これらの手続にも時間を要しますので、やはり早い段階での保全がものを申します。

ご相談の際に必要となる資料

ご相談をいただく際に、次の資料をお持ちいただけますと、採り得る手段と見通しを具体的にご説明することができます。全てがそろっていなくても差し支えありませんが、契約書と入金の記録は必須と申し上げてよろしいかと存じます。

  • 株式譲渡契約書の原本又は写し、及び別紙、開示別紙、附属する合意書の一式
  • 基本合意書、秘密保持契約書など、株式譲渡契約に先立って締結された書面
  • 株主名簿、株式譲渡承認に関する取締役会議事録又は株主総会議事録、クロージングの際に授受した書類の一覧
  • 譲渡代金の入金を確認できる預金通帳の写し又は入出金の明細、及び一部入金がある場合はその金額と日付が分かる資料
  • 買主との間で取り交わした電子メール、書面、面談の記録など、支払に関するやり取りの経過が分かる資料
  • デュー・ディリジェンスの際に買主に開示した資料の一覧、質問と回答の記録、資料を保管していた電子的な場の記録
  • 買主の登記事項証明書、直近の決算書、事業の内容が分かる資料など、買主の資力に関する資料
  • 買主の代表者又は親会社による保証、株式への質権設定、資金の預託など、担保に関する書面
  • M&A仲介業者又はファイナンシャル・アドバイザーとの契約書、及びこれらの者から受けた助言の記録
  • 買主から既に受領している通知書、催告書、表明保証違反を指摘する書面

資料の収集に当たってご留意いただきたいのは、譲渡対象会社の内部に保管されている資料は、既に買主の支配下にあるという点です。会社に置いたままの資料は、後になって入手が困難となる場合がありますので、お手元に写しがない場合は早めの対応が必要です。また、電子メールの記録についても、譲渡対象会社の電子メールの仕組みを用いていた場合には、退任後に閲覧できなくなっていることがありますので、ご確認をお願いいたします。

よくあるご質問

株式譲渡代金の未払について、売主の方から実際に多く頂戴するご質問と、その考え方をまとめました。いずれも一般的な説明であり、具体的な結論は契約書の文言と買主の状況により異なりますので、個別のご事情を伺ったうえでご案内いたします。

買主から「もう少し待ってほしい」と言われております。強く出ると関係が壊れそうで迷っております

お気持ちはよく分かります。もっとも、契約に基づく期限が到来している以上、支払を求めることは正当な権利の行使です。関係の維持を優先されるとしても、支払期日、金額及び分割の条件を書面で明確にし、これを守れなかった場合の取扱いを定めておくことが、双方にとって有益です。曖昧なまま時間が経過することは、買主の資力が悪化している場合に、売主にとって最も不利益な結果を招く余地があります。

遅延損害金はどの程度請求できるのでしょうか

契約に遅延損害金の利率の定めがあれば、その利率によります。定めがない場合には、法定利率によることとなります。法定利率は一定の期間ごとに見直される変動する仕組みとされておりますので、具体的な数値は、遅滞の責任を負った最初の時点を基準に確認する必要があります。契約書の該当条項をお持ちいただければ、具体的な金額を算出してご説明いたします。

株式は既に買主に移っております。取り戻すことはできますか

契約を解除すれば、原状に復させる義務が生じますので、理論上は株式の返還を求める余地があります。もっとも、解除をいたしますと代金債権を失うこととなり、また返還される会社が譲渡の時点と同じ状態であるとは限りません。買主の下で資産が処分され、人材が流出している場合には、かえって不利益となる余地もあります。金銭の回収を目的とされるのであれば、代金債権を維持したまま買主の財産を保全する方向が適する場面が多いと考えられますが、事案により異なりますので、個別にご検討申し上げます。

仮差押えを行えば、必ず代金を回収できるのでしょうか

仮差押えは、買主の財産を暫定的に固定する手続であり、回収そのものを保証するものではありません。押さえた財産の価値が請求額に足りない場合や、他の債権者が先に手続を執っている場合には、回収できる金額が限られることもあります。また、被保全権利と保全の必要性の疎明を要し、担保を立てることも必要となります。それでも、何も措置を執らずに時間が経過するよりも、回収の可能性を高める手段であることは確かです。

買主が表明保証違反を主張して支払を拒んでおります

まず、指摘されている事実が契約書のどの表明保証条項に当たるのか、損害が現実に発生しているのか、金額の根拠は何かを書面で明らかにするよう求めてください。損害賠償請求権をもって相殺すると主張する場合、その債権が確定しているかどうかが要点となります。金額に争いのある債権を自ら評価して相殺を主張することが直ちに認められるものではありません。デュー・ディリジェンスの際の開示の記録が残っていれば、有力な反論の材料となります。

M&A仲介業者に相談すれば足りるのではないでしょうか

M&A仲介会社は、成約に向けた調整には力を発揮いたしますが、代金の未払は、売主と買主の利害が正面から対立する場面です。催告、解除、仮差押え、訴訟といった手続は、代理人としての弁護士でなければ執ることができないものを含みます。M&A仲介業者のご担当者を通じたやり取りの経過は貴重な記録となりますので、これを整理したうえで、法的手続の可否を別途ご検討いただくことをお勧めいたします。

相談はどの段階でするのが適切でしょうか

支払期日を過ぎ、買主から明確な入金日の回答が得られない状態が続いているのであれば、その時点が一つの目安となります。買主の資力に不安を感じさせる兆候、例えば他の取引先への支払の遅れ、役員の退任、事業所の縮小といった事情を耳にされた場合には、より急がれることをお勧めいたします。回収の成否は、買主の手元に財産が残っている段階で手を打てたかどうかに大きく左右されるためです。

具体的なご相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。