会社売却後に買主が会社の資金を流出させている場合に旧株主が確認すべきこと

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買主による会社資金の流出に関するメインのページです。本ページは、会社を売却した後に旧株主が確かめる事項と未払の代金及び保証への影響をご説明します。代金の回収の手順は中核のページをご参照ください。
未払の譲渡代金そのものの回収の手順は株式譲渡代金が支払われないときに売主が採り得る手段を、仮差押えの手続の詳細は買主の資産が動く前に行う保全の手続を、対象会社が倒産に至った場合は会社を売却した後にその会社が倒産した場合の旧経営者の責任を、それぞれご覧ください。
株式を譲渡して経営から退いた後に、買主が対象会社の預金を自らの関係会社に移している、実体の乏しい業務委託料や役員報酬の名目で多額の金銭を引き出している、機械や不動産を安値で他社に売り払っている、といった話が古参の従業員や取引先から耳に入ることがあります。まだ譲渡代金の一部を受け取っていない場合や、金融機関に対する経営者としての保証がそのまま残っている場合、この種の動きは他人事ではありません。会社の資金が細れば、残代金の支払原資が失われ、保証している借入金が焦げ付く危険が現実のものとなるからです。
もっとも、最初に受け止めていただく必要があるのは、株式を譲渡した以上、旧株主は会社の財産について原則として直接の請求権を持たないという点です。会社の預金は会社の財産であって、かつての株主の財産ではありません。会社の会計帳簿を見せるよう求める権利も、原則として現在の株主にしか認められていません。長年育てた会社なのだから説明を受けて当然だという感覚は自然なものですが、法的な入口はそこにはありません。この点を取り違えたまま帳簿の開示を求め続けますと、時間だけが過ぎ、かえって不利な立場に置かれることがあります。
それでは打つ手がないのかというと、そうではありません。旧株主には、売主としてのご自身の権利があります。未払の譲渡代金を請求する権利、留保された代金や表明保証に関する取決めに基づく権利、保証人としての立場から情報を求める権利です。本稿では、資金流出という事象を、会社の問題としてではなく売主自身の権利への影響として捉え直し、何を確認し、何を求め、どの資料を押さえるべきかを、順を追って整理します。
旧株主は会社の資金について何を請求できるのか
相談の入口で最も多い誤解が、会社の資金が減っているのだから旧株主として止められるはずだ、というものです。ここを正確に理解することが、その後の手当ての順序を誤らないための前提になります。会社と株主と売主という3つの立場を分けて考えてください。
会社の財産は会社のものであり、旧株主のものではありません
株式会社の財産は、法人である会社に帰属します。株主であった期間も、株主が持っていたのは会社の財産ではなく株式という財産です。株式を譲渡して対価を受け取った時点で、会社との資本の関係は切れています。したがって、買主が会社の預金を関係会社へ動かしている場合であっても、旧株主が「その金を戻せ」と会社や買主に直接求める法律上の立場は、原則としてありません。返還を求め得るのは、損害を受けた会社自身です。この構造を理解しないまま押し問答を重ねますと、対立だけが深まります。
会計帳簿の閲覧を請求する権利は現在の株主にしかありません
株主は、一定の持株数の要件を満たす場合に、会社の会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写を請求することができます。会社法第433条第1項がこれを定めており、総株主の議決権の100分の3以上の議決権又は発行済株式の100分の3以上の数の株式を有することが要件とされています。裏返せば、株式を1株も持たなくなった旧株主は、この請求権を有しません。総勘定元帳や預金出納帳の開示を求めても、会社に応じる義務はありません。買主が任意に開示することはあり得ますが、権利として押し通せるものではありません。
それでも売主自身の権利という入口があります
権利の入口は、株主としての立場ではなく、売主としての立場に求めることになります。具体的には、第一に、未払の譲渡代金の支払を求める権利です。第二に、株式譲渡契約に情報提供や報告に関する条項が置かれている場合の、契約に基づく開示を求める権利です。第三に、経営者としての保証がなお残っている場合の、保証人としての立場から金融機関に対して情報の提供を求める権利です。第四に、表明保証違反や誓約事項違反に基づく補償を求める権利です。いずれも、会社の資金を守るための権利ではなく、ご自身の債権を守るための権利です。目的をここに定め直すことが有効な手当てにつながります。
未払の譲渡代金への影響と採るべき手当て
譲渡代金の全額を実行日に受け取っていた場合と、分割払や繰延べの取決めがある場合とでは、会社の資金流出が持つ意味がまったく異なります。まずご自身の契約がどちらかを確認してください。全額を受領済みであれば、会社の資金がどう動こうと、代金債権の面では直接の影響はありません。
分割払や繰延べの代金がどのように危うくなるか
中小企業のM&Aでは、譲渡代金を実行日に一括で支払わず、一定期間にわたる分割払とする例、対象会社の業績に連動させて追加の対価を支払う取決めを置く例、代金の一部を第三者に預けて一定期間経過後に交付する取決めを置く例があります。分割払や業績連動の取決めがある場合、買主は多くの場合、対象会社が生む資金を原資として支払を予定しています。その原資が抜き取られれば、支払の停滞は時間の問題です。買主が資産を持たない持株会社であるときは、その傾向がいっそう強くなります。買主の資力が実質的に対象会社の資力と一体である事案では、会社の資金流出はそのまま代金債権の危険を意味します。
契約書のどこを読むか
手元の株式譲渡契約書を開き、次の各点を拾い出してください。第一に、支払期日と支払方法を定めた条項です。第二に、期限の利益の喪失に関する条項、すなわち一定の事由が生じたときに残代金の全額を直ちに支払わせることができるとする定めです。第三に、実行後の誓約事項として、対象会社の資産の処分、多額の借入れ、関係会社との取引、配当の実施などに制限を課す条項が置かれていないかです。第四に、遅延損害金の利率です。第五に、解除に関する条項と、解除した場合の株式の帰趨に関する定めです。第六に、担保として株式に質権を設定する取決めや、買主の代表者個人が連帯保証をする取決めの有無です。これらの有無によって、採り得る手段の幅が大きく変わります。
期限の利益の喪失と催告の進め方
支払期日を徒過した分がある場合には、まず内容証明郵便によって支払を催告し、期限の利益の喪失を主張し得るかを検討します。期限の利益の喪失条項に「支払を1回でも怠ったとき」「資産状態が悪化したとき」といった事由が挙げられていれば、残代金の全額を直ちに請求し得る余地があります。もっとも、資産状態の悪化を理由とする場合には、それを裏づける資料が必要になりますので、後述する情報の入手と並行して進めることになります。催告書には、債権の内訳、支払期日、遅延損害金の起算日、回答の期限を明記してください。買主の回答は、それ自体が後の交渉や訴訟における資料になります。
担保と保全の要否をどう判断するか
資金流出が現実に進んでいる事案では、判決を得るころには回収の対象が残っていないという事態が起こり得ます。そこで、追加の担保の差入れを求める交渉を行うか、財産の保全に踏み切るかの判断が必要になります。交渉としては、買主の代表者個人の連帯保証、対象会社株式への質権の設定、支払期日の前倒しと引換えの減額といった選択肢が考えられます。買主が交渉に応じない場合や、応じるそぶりを見せながら時間を稼いでいると見られる場合には、保全の検討に移ります。
残っている保証債務への影響
譲渡代金を全額受領済みであっても、金融機関に対する経営者としての保証が解除されないまま残っている事案は数多くあります。この場合、会社の資金流出は、代金の問題ではなく、ご自身が負う保証債務が現実化する危険の問題になります。こちらのほうが金額の面で深刻になることも少なくありません。
保証が残っている場合に何が起きるか
保証は、主たる債務者である会社が返済できなくなったときに、保証人が代わりに支払う約束です。株式を譲渡して経営から退いたという事実だけでは、保証は消えません。金融機関の同意を得て保証人を交替させ、又は保証を解除してもらう手続を経てはじめて、ご自身の負担がなくなります。買主が「保証は自分が引き継ぐ」と約束していたとしても、それは買主とご自身の間の約束にすぎず、金融機関に対しては効力を持ちません。会社の資金が流出して返済が滞れば、金融機関は保証人であるご自身に請求します。ご自宅に抵当権が設定されたままの事案では、住居を失う危険にまで及びます。
保証人として金融機関に確認できること
ここには、旧株主でありながら情報を得られる数少ない入口があります。委託を受けた保証人が請求したときは、債権者は、主たる債務の元本や利息などについて不履行の有無、残額、そのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならないとする規定が、民法に置かれています。会社の帳簿は見られなくとも、ご自身が保証している借入れについて、返済が滞っていないか、残高がいくらかを金融機関に確認することはできます。返済の遅れが生じていれば、資金繰りの悪化を示す客観的な兆候になります。あわせて、保証の解除又は保証人の交替の手続がどこまで進んでいるかを担当者に確認し、やり取りを書面又は電子メールで残してください。
買主との間の引受けや求償に関する約定を確認します
株式譲渡契約に、買主が一定の期限までに保証の解除を実現する旨の誓約や、解除に至らない場合に買主が売主を免責する旨の定めが置かれていることがあります。この定めがあれば、期限の徒過それ自体が契約違反となり、損害賠償や違約金の請求の根拠になり得ます。定めがない場合であっても、保証人が主たる債務者に代わって弁済したときは、支払った額を主たる債務者に対して求償し得るのが原則です。ただし、資金が流出した後の会社に対する求償が実際に回収につながるかは別問題です。だからこそ、保証債務が現実化する前に、解除の交渉と証拠の確保を進める意味があります。
会社又は他の株主による責任追及との関係
会社の資金を不当に流出させる行為は、それ自体が責任追及の対象となり得ます。ただし、誰がその責任を追及し得るのかという点で、旧株主は原則として当事者になりません。この点の整理は、限られた時間と費用をどこに投じるかを決めるうえで重要です。
責任を追及し得るのは会社又は現在の株主です
取締役は、会社に対して善良な管理者としての注意をもって職務を行う義務を負い、これに違反して会社に損害を与えたときは、会社に対して損害賠償責任を負います。この責任を追及する主体は、第一次的には会社自身です。会社が追及しない場合には、株主が会社に代わって責任追及の訴えを提起し得る制度があり、会社法第847条がこれを定めています。しかし、この制度を用い得るのも株主であり、株式を手放した旧株主は用いることができません。買主が全株式を保有し、自ら取締役となっている事案では、会社も株主も追及に動かないという状況が生じます。
一部の株式を残している場合には立場が変わります
譲渡が全株式ではなく、ご自身が一部の株式を保有し続けている事案では、話が大きく変わります。株主として、会計帳簿の閲覧又は謄写を請求し得る余地があり、株主総会において説明を求めることもできます。持株数が要件に満たない場合であっても、計算書類の閲覧を求めることは考えられます。会社の資金流出が疑われる局面では、保有する株式を安易に手放さないという判断が、情報を得る手段を残すという意味を持ちます。譲渡の設計の段階で、一定期間は少数の株式を残す建て付けを検討する余地もあります。
旧株主が直接に請求しにくい理由と例外的な場面
会社に生じた損害は会社の損害であり、株主や旧株主の損害と観念しないのが原則です。そのため、会社の資金が減ったことをもって旧株主が買主に賠償を求めることは、原則として認められません。例外的に検討の余地があるのは、資金の流出が、ご自身の代金債権の回収を妨げる目的で行われたと評価し得る場面です。債務者が債権者を害することを知って財産を減らす行為をしたときに、その行為の取消しを裁判所に求め得る制度があり、詐害行為取消権と呼ばれます。民法第424条がこれを定めています。ただし、買主個人と対象会社は別の法人格ですので、この制度を用い得るかは事案の構造によって大きく異なります。適用の可否は慎重な検討を要します。
証拠の保全と情報の入手
会計帳簿を見られないという制約の下では、外側から得られる情報を積み上げるほかありません。もっとも、集め得る資料は思いのほか多くあります。着手が遅れるほど散逸しますので、最優先で進めてください。
手元にある資料をまず固めます
最初に行うべきは、ご自身の手元にある資料の保全です。株式譲渡契約書の原本、基本合意書、デュー・ディリジェンスの過程で開示した資料の一覧、買主やM&A仲介業者との間の電子メール、面談の議事録や手控え、実行日前後の試算表や決算書の写しを、日付順にまとめてください。電子メールは、会社のアカウントが停止されると閲覧できなくなりますので、早期に手元の端末へ保存してください。買主から受けた説明、とりわけ資金繰りや保証の解除に関する説明は、いつ誰がどのように述べたかを記録に残します。従業員や取引先から得た情報も、いつ誰から聞いたかを併せて記録しておきます。
登記情報から読み取れること
対象会社の登記事項証明書は、誰でも取得することができます。旧株主であるかどうかを問いません。ここから読み取れる事項は少なくありません。取締役や監査役の大量の交替は経営体制の変化を示し、本店の移転、商号の変更、目的の変更も同様です。資本金の額の減少や新株の発行は、資本政策の動きを示します。また、不動産の登記事項証明書を取得すれば、抵当権の設定や所有権の移転を確認できます。会社が保有していた本社建物や工場が第三者に移転していれば、資産の流出を示す客観的な資料になります。費用も時間もかからず、最初に着手すべき調査です。
信用調査と公開情報の活用
信用調査会社の調査報告書を取得しますと、対象会社の直近の業績の推移、従業員数、取引金融機関、支払能力に関する評点、風評に関する記載を得られることがあります。あわせて、官報における公告の有無、対象会社や買主の関係会社のウェブサイトの記載の変化、求人情報の掲載状況といった公開情報も確認してください。単独では決め手にならなくとも、複数の情報が同じ方向を示すときには、資金繰りの悪化を推認する根拠になり得ます。
契約上の情報提供条項を活用します
株式譲渡契約に、実行後の一定期間について買主が売主に対して財務状況を報告する旨の条項、又は誓約事項の遵守状況を報告する旨の条項が置かれていることがあります。分割払や業績連動の対価の取決めがある事案では、支払額の算定のために計算書類の提出を求め得る定めが置かれているのが通常です。この条項があれば、契約上の権利として資料の提出を求めることができます。買主が応じない場合、その不履行自体が契約違反となり得ます。まずは契約書の条項を特定し、条項番号を引用したうえで、期限を切って書面により提出を求めてください。
急を要する場面での対応
ここまで述べた手当ては、いずれもある程度の時間を要します。しかし、資金流出が進む事案では、時間の経過そのものが回収可能性を失わせます。どの段階で通常の交渉から踏み込んだ手段に移るかの見極めが、結果を分けます。
何が急を要する場面かを見極めます
次の兆候が複数重なる場合には、急を要する場面と考えて差し支えありません。第一に、分割払の代金の支払が2回以上滞っている場合です。第二に、ご自身が保証している借入れについて、金融機関から返済の遅延に関する連絡が来た場合です。第三に、会社の主要な不動産や設備が第三者に移転していることが登記から確認された場合です。第四に、従業員の大量の退職や、主要な取引先との取引の停止が確認された場合です。第五に、買主が連絡に応じなくなり、又は所在が判然としなくなった場合です。第六に、会社の商号や本店が短期間に繰り返し変更されている場合です。いずれも財産が散逸する前兆として実務上重く見られています。
財産の保全を検討する際の判断の要点
金銭の支払を求める債権について、判決を待っていては回収が困難となるおそれがあるときは、あらかじめ相手方の財産を仮に差し押さえておく制度があります。民事保全法第20条第1項がこれを定めています。手続の詳細は別稿に譲りますが、判断の要点は3つです。第一に、保全すべき債権が明確であることです。契約書上の金額と支払期日が特定できる未払代金は、この点で有利です。第二に、保全の必要性、すなわち今のうちに押さえなければ回収が困難になるという事情を、登記や取引先の情報といった客観的な資料で示せることです。第三に、担保金を用意し得ることです。裁判所は申立人に一定額の担保を立てさせるのが通例であり、請求額の一定割合に相当する金額の準備が必要になります。押さえるべき財産の目星が付いていることも前提となります。
交渉による解決の余地も併せて探ります
買主にも、事業を続けたい、対外的な信用を保ちたいという動機があるのが通常です。したがって、法的手段の準備を進めつつ、同時に交渉の道を残す進め方が現実的です。想定される着地点としては、残代金の一括の支払と引換えに一定額を減額する合意、支払期日の再設定と担保の追加の差入れ、保証の解除の実現と引換えに請求を留保する合意、株式の買戻しといったものがあります。いずれの場合も、合意の内容は必ず書面にし、支払を怠ったときに直ちに強制執行し得るよう、公正証書の作成を検討してください。もっとも、事案の構造や資料の状況によって採り得る手段は異なりますので、早い段階で弁護士に事実関係を整理してお伝えいただくことをお勧めします。
よくあるご質問
会社売却後の資金流出について、売主の方から実際に寄せられることの多いご質問と、その考え方を整理します。
株式を全部譲渡した後でも、会社の帳簿を見せてもらうことはできますか
権利として請求することはできません。会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写を請求し得るのは、一定の持株数の要件を満たす株主に限られており、株式を保有しなくなった旧株主はこの請求権を有しません。買主が任意に応じる可能性は残りますが、応じる義務はありません。株式譲渡契約に実行後の報告に関する条項が置かれている場合には、契約上の権利として資料の提出を求める余地があります。まずは契約書の条項を確認してください。
買主が会社の資金を関係会社に移しています。返還を求めることはできますか
旧株主が返還を求めることは、原則としてできません。損害を受けたのは会社であり、返還を求め得るのは会社自身だからです。ただし、その資金の移動によって未払の譲渡代金の回収が妨げられているのであれば、ご自身の代金債権を守るための手段を採ることは可能です。期限の利益の喪失の主張、担保の追加の要求、財産の保全の申立てといった選択肢を、資料の状況に応じて検討することになります。
譲渡代金は全額受け取りましたが、経営者としての保証が残っています。何をすべきですか
優先すべきは保証の解除です。まず金融機関に対し、保証人としての立場から、ご自身が保証している借入れの残高と返済の状況を照会してください。あわせて、保証の解除又は保証人の交替の手続がどこまで進んでいるかを確認します。株式譲渡契約に買主が保証の解除を実現する旨の誓約が置かれている場合には、期限を示して履行を求め、応じないときは契約違反として損害賠償等を検討します。返済の遅れが確認された場合には、時間の余裕がない状態と考えてください。
買主に対して、資金の使途を説明するよう求めることはできますか
説明を求める法律上の権利は、原則としてありません。もっとも、未払の代金がある場合や保証が残っている場合には、ご自身の債権や負担に関わる事項として、書面により回答を求めることに意味があります。買主が回答を拒み、又は事実と異なる説明をした事実は、後の交渉や訴訟において、その姿勢を示す資料になり得ます。求める際は、口頭ではなく、日付の残る書面又は電子メールによってください。
資金の流出を知ってから、いつまでに動く必要がありますか
期間の制限そのものよりも、財産が散逸する速さが問題になります。契約に基づく請求権にも、表明保証違反に基づく補償の請求にも、契約上の期間制限が定められているのが通常ですので、まず契約書の期間制限に関する条項を確認してください。そのうえで、登記情報の取得と手元の資料の保全は、費用も時間もかかりませんので、直ちに着手することをお勧めします。着手が遅れるほど、採り得る手段は狭まります。
買主に資産がなく、対象会社の資金だけが頼りという状況です。回収の見込みはありますか
事案により大きく異なりますが、買主が資産を持たない会社であっても、諦める前に確認すべき点があります。株式譲渡契約に買主の代表者個人の連帯保証が付されていないか、株式への質権その他の担保が設定されていないか、対価の一部が第三者に預けられていないかです。また、対象会社に残る資産や、買主が保有する対象会社の株式そのものが、回収の対象となり得る場合があります。まずは契約書と登記の確認から始めてください。
今後、同じことを繰り返さないために、契約の段階で何を求めるべきですか
譲渡代金は可能な限り実行日に一括で受け取ることが、最も確実な防御になります。分割払や業績連動の取決めを置く場合には、買主の代表者個人の連帯保証、対象会社株式への質権の設定、対価の一部を第三者に預ける取決めといった担保の手当てを求めてください。あわせて、実行後の一定期間について財務状況の報告を求める条項、資産の処分や関係会社との取引を制限する条項、保証の解除の期限とその不履行の効果を定める条項を置くことが、後日の紛争を防ぐうえで有効です。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。


