会社を売却した後にその会社が倒産した場合の旧経営者の責任

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会社を売却した後の倒産と旧経営者の責任に関するメインのページです。本ページは、譲渡の後に会社が行き詰まった場面で、旧取締役、表明保証及び保証の三つの立場をご説明します。旧役員の責任の追及は別のページをご参照ください。

旧役員としての責任を追及された場面の詳細は会社売却後に旧経営者が役員としての責任を追及された場合の対応を、経営者保証が解除されない場面はM&Aの後に経営者保証が解除されない場合の弁護士対応を、それぞれご覧ください。

株式を譲渡し、譲渡代金の入金を確認して経営から退いた。ところが、それから1年、あるいは3年を経たころに、かつて自分が育てた会社が破産したという知らせが届く。古い取引先からの電話で知る方もあれば、裁判所からの通知書で初めて知る方もあります。中小企業のM&Aの後に、このようなご相談は少なくありません。

このとき多くの方が抱かれる不安は、元の経営者として、また元の株主として、自分が会社の借金を負うことになるのではないか、というものです。まして破産管財人と名乗る弁護士から書面が届き、資料の提出や説明を求められますと、既に責任を追及されているように感じられます。

結論から申し上げますと、会社が倒産したという事実それ自体から、旧経営者の責任が当然に生ずるわけではありません。責任が生ずるとすれば、倒産という結果ではなく、在任中のご自身の行為、あるいはご自身が署名した契約に根拠があるからです。本稿では、旧株主、旧取締役及び保証人という三つの立場を分けたうえで、責任が現実に問題となる場面と、何を確認し何を主張し得るのかを整理します。

Contents
  1. 株式を売却した後の三つの立場を分けて考える
    1. 旧株主としての立場では会社の債務を負いません
    2. 旧取締役としての立場は在任中の行為に限られます
    3. 保証人としての立場は株式の譲渡では消えません
    4. 最初に手元へ集めるべき資料があります
  2. 旧取締役としての責任が問われる場面
    1. 問題となり得る具体的な行為があります
    2. 退任の登記と実質的な関与の有無を確認します
    3. 倒産の原因が譲渡後の経営にある場合の主張の組み立て方があります
  3. 表明保証の違反による責任が問われる場面
    1. 倒産の事実と表明保証の違反は別の問題です
    2. 契約書の制限条項を確認してください
    3. 請求し得る立場にあるのは誰かを見極めます
  4. 経営者保証が残っている場合
    1. 買主の約束と金融機関の同意は別のものです
    2. 保証の範囲がどこまでかを確認します
    3. 弁済した後に求め得るものがあります
  5. 財産の流出及び詐害行為が問題となる場合
    1. 破産法上の否認の制度を正しく理解してください
    2. 役員退職慰労金と貸付金の精算は資料で説明します
    3. 剰余金の配当についても確認が必要です
  6. 破産管財人等から請求を受けた場合の対応
    1. 役員の責任の査定の申立てという手続があります
    2. 説明を求められた場合の考え方があります
    3. 対応の手順を整理します
    4. 争う場合に中心となる論点があります
  7. よくあるご質問
    1. 会社が破産したと聞きました。元の株主として会社の借金を負うのでしょうか
    2. 受け取った譲渡代金を返さなければならないのでしょうか
    3. 退任してから3年が経っています。今から責任を問われることはあるのでしょうか
    4. 買主が経営者保証を外すと約束していましたが、履行されないまま破産しました
    5. 破産管財人から資料の提出と説明を求められました。応じるべきでしょうか
    6. 売却の直前に受け取った役員退職慰労金は返さなければならないのでしょうか
    7. 倒産の原因は買主の放漫な経営にあります。それでも責任を負うのでしょうか

株式を売却した後の三つの立場を分けて考える

会社が破産したという場面で、ご自身の立場を一つのものとして考えますと、不安ばかりが大きくなります。実際には、旧株主としての立場、旧取締役としての立場、保証人としての立場は、根拠となる法律関係が別のものであり、責任の有無も別々に判断されます。これに株式譲渡契約の売主としての立場が加わります。まずこの切り分けが出発点になります。

旧株主としての立場では会社の債務を負いません

株式会社の株主は、引き受けた株式の払込金額を限度として責任を負うにとどまり、会社の債務について債権者に直接の責任を負うことはありません。これを株主の有限責任といいます。会社が債権者に弁済できない状態になっても、株主が不足額を負担する仕組みにはなっていません。まして、既に株式を譲渡した方は破産の時点で株主ですらありません。したがって、旧株主であることを理由に会社の買掛金や借入金の支払を求められることは、原則としてありません。ただし、後述する経営者保証を差し入れている場合は、株主としてではなく保証人としての責任が問題になりますので、両者を混同しないでください。

旧取締役としての立場は在任中の行為に限られます

取締役の責任は、在任していた期間にその任務を怠ったかどうかで判断されます。退任した後の経営について責任を負うことはありません。買主が就任した後の資金繰り、借入れ、事業の方針は、買主の判断領域です。したがって、譲渡後に買主が過大な借入れを行った、資金を他社へ流出させた、本業と無関係な事業に手を広げたといった事情が倒産の原因であるならば、その責任は旧経営者に及びません。

保証人としての立場は株式の譲渡では消えません

三つの立場のうち、実務上、最も現実の負担につながりやすいのが保証人としての立場です。金融機関に差し入れた経営者保証は、保証人と金融機関との間の契約です。株式を譲渡して退任したからといって、金融機関が当事者でない取引によって保証契約が消滅することはありません。誤解の多い点であり、詳しくは後述します。

最初に手元へ集めるべき資料があります

ご相談の初期に確認する資料は決まっています。株式譲渡契約書の全文と別紙、退任の登記が反映された登記事項証明書、保証に関する契約書及び差入書、在任最終期の決算書及び税務申告書、譲渡の前後に受け取った金銭の内訳が分かる資料、届いた書面の一式です。これらが揃いますと、どの立場が問題になっているのかが見えてきます。

旧取締役としての責任が問われる場面

取締役は、会社に対して善良な管理者としての注意をもって職務を行う義務を負い、これに違反して会社に損害を与えた場合には損害賠償責任を負います。これを任務懈怠責任といいます。また、職務を行うにつき悪意又は重大な過失があったときは、それによって損害を受けた第三者に対しても責任を負うものとされています。会社法第429条第1項がこれを定めています。破産した会社の取締役に対する請求は、通常この二つのいずれかを根拠とします。

問題となり得る具体的な行為があります

抽象的に経営に失敗したというだけでは責任は生じません。経営判断には裁量が認められており、結果として失敗したことのみをもって責任を問うことはできないと解されています。実際に責任が問題となるのは、次のような行為です。回収の見込みがないと分かっていながら関連会社や親族の会社へ資金を貸し付けていた場合。決算書に架空の売掛金や実在しない在庫を計上し、これを前提に融資を受けていた場合。会社の資金を私的な支出に充てていた場合。未払残業代、退職金債務、係争中の請求といった簿外の債務を認識しながら帳簿にも譲渡の資料にも表していなかった場合です。

退任の登記と実質的な関与の有無を確認します

意外に多いのが、退任したつもりでいたところ登記が変更されていなかったという例です。登記簿上は取締役のままとなっていますと、外形上は在任していたことになり、第三者に対する関係で不利に働くことがあります。登記事項証明書を取得し、退任の日付が正しく登記されているかを確認してください。また、退任後も顧問や相談役として出社し、稟議に判を押し、金融機関との交渉に同席していた場合には、実質的に取締役として職務を行っていたと評価される余地があります。引継ぎの期間中の関与の程度は、当時の稟議書、議事録、電子メールから再現しておいてください。

倒産の原因が譲渡後の経営にある場合の主張の組み立て方があります

責任を争う際に中心となるのは、任務懈怠の有無に加えて損害との因果関係です。倒産の原因が買主の経営にあるならば、仮に在任中に何らかの不備があったとしても、それが破産という結果に結び付いたとはいえない場合が多くあります。この主張を支えるのは、譲渡後の数字です。譲渡後の各期の決算書、借入金の推移が分かる勘定科目内訳明細書、新たに実行された融資の資料、役員報酬や関係会社への支出の増減を取り寄せ、譲渡時点の財務内容と比較します。譲渡時には債務超過ではなかった、正常な返済が続いていたという事実は、譲渡後の事情が原因であることを示す有力な材料になります。

表明保証の違反による責任が問われる場面

株式譲渡契約には、通常、表明保証の条項が置かれています。これは、契約の締結時及び実行時に、対象会社に関する一定の事実が真実かつ正確であることを売主が述べ、保証するものです。財務諸表が適正であること、簿外の債務がないこと、係争がないこと、税務申告に誤りがないこと、許認可を適法に有していること、労務関係に未払がないことなどが典型です。これに違反した場合には、売主が買主に生じた損害を補償する旨の条項が併せて置かれます。

倒産の事実と表明保証の違反は別の問題です

ここで強調しておきたいのは、会社が倒産したことは、表明保証に違反したことを意味しないという点です。表明保証は譲渡時点の事実の正確性についての保証であって、将来の業績や存続を約束するものではありません。買主が補償を求めるには、どの条項にどの事実が反するのかを特定し、その違反によっていくらの損害が生じたのかを示す必要があり、この負担は原則として請求する側にあります。倒産したのだから何か隠していたはずだ、という形の請求は根拠を欠きます。

契約書の制限条項を確認してください

補償の条項には、多くの場合、制限が付されています。まず期間の制限です。実行日から1年間又は2年間を過ぎた後は請求できないと定められていることが一般的であり、税務や社会保険に関する事項のみ期間を長く取る例もあります。次に金額の制限です。1件当たり一定額に満たない損害は請求できないとする定め、損害の合計が一定額を超えて初めて請求できるとする定め、補償の総額に上限を設ける定めがあります。さらに、買主が契約締結前の調査で既に知っていた事実は補償の対象外とする定めや、開示別紙に記載した事項を表明保証の対象から除く定めもあります。請求を受けたときは、契約書の該当条項を逐条で確認してください。

請求し得る立場にあるのは誰かを見極めます

株式譲渡契約の当事者は、売主である旧株主と買主であって、対象会社そのものは当事者ではないのが通常です。したがって、対象会社が破産しても、その破産管財人が表明保証の違反を理由に売主へ補償を請求する立場に当然に立つわけではありません。補償請求権を有するのは買主です。もっとも、買主自身が破産した場合や、買主の債権者がその請求権を差し押さえた場合には、それらの者が請求してくることがあります。届いた書面について、誰がどの契約上の地位に基づいて請求しているのかを、契約書の当事者欄と署名欄を見て確認してください。

経営者保証が残っている場合

中小企業のM&Aの後に旧経営者が現実の負担を負う場面で、最も多いのが経営者保証です。金融機関からの借入れについて代表取締役が連帯保証をしている場合、株式を譲渡して退任しても、保証契約は当然には終了しません。保証契約は金融機関と保証人との間の契約であり、株主が誰であるかとは別の問題だからです。会社が破産しますと、金融機関は保証人に残債務の履行を求めることになります。

買主の約束と金融機関の同意は別のものです

株式譲渡契約に、買主は実行後速やかに売主の連帯保証を解除させる、という誓約が置かれていることがあります。しかし、これは買主が売主に対して負う契約上の義務であって、金融機関を拘束するものではありません。金融機関が解除に同意し、必要に応じて新たな保証人を立てる手続を経て初めて、保証は外れます。実務上は、解除が完了したことを示す金融機関からの書面を受け取るまで、保証は残っていると考えるべきです。譲渡から時間が経っている場合には、保証の残高及び現状を金融機関に照会し、書面で回答を得てください。なお、経営者保証に関するガイドラインは、事業承継の場面で前の経営者の保証の解除を検討するよう金融機関に求めていますが、自主的な準則であり、法的な強制力を伴うものではありません。

保証の範囲がどこまでかを確認します

請求を受けた場合であっても、直ちに全額の支払義務があると決まるわけではありません。第一に確認するのは保証書の種類です。特定の借入れのみを保証する契約か、継続的な取引から生ずる債務を包括して保証する根保証契約かで範囲が変わります。根保証であれば、極度額の定めがあるか、元本が確定する事由として代表取締役の退任や株主の変更が定められているかを見ます。元本が確定していれば、確定後に実行された融資は保証の範囲から外れます。第二に、譲渡の際に金融機関と覚書や確認書を交わしていないかです。いずれも保証書の写しを金融機関から取り寄せて確認します。

弁済した後に求め得るものがあります

保証人として弁済した場合、主たる債務者である会社に求償することができますが、会社が破産していれば実際の回収はほとんど期待できません。そこで検討し得るのが買主に対する請求です。買主が保証の解除を実現する義務を負いながら履行しなかったのであれば、その不履行による損害の賠償を求める余地があります。また、保証債務の負担が過大であるときは、経営者保証に関するガイドラインに基づく整理の枠組みを利用し、一定の資産を手元に残しつつ整理を行うことを検討し得ます。いずれの道を選ぶかは、保証の残高やご自身の資産の状況によって異なりますので、請求を受けた段階で早めに検討してください。

財産の流出及び詐害行為が問題となる場合

破産管財人が旧経営者に関心を持つ典型的な場面は、譲渡の前後に会社の財産が旧経営者側へ移転していた場合です。役員退職慰労金の支給、貸付金の精算、会社所有の不動産や車両の譲受け、会社が契約者であった生命保険の名義変更といった事柄です。これらはそれ自体が違法というわけではなく、適正な対価と適法な手続を伴っていれば問題とされない場合が多くありますが、根拠や手続を欠いていますと否認の対象となる余地があります。

破産法上の否認の制度を正しく理解してください

破産手続では、破産者が手続開始の前に行った一定の行為の効力を否定し、流出した財産を破産財団に取り戻す制度が設けられています。これを否認権といい、大きく分けて三つの類型があります。第一は、債権者を害することを知って行った財産の減少行為です。相当な対価を得て行った処分も、隠匿等の意思があるなど厳格な要件を満たす場合には対象となり得ます。第二は、既に存在する債務についての弁済や担保の提供です。支払不能となった後又は支払の停止があった後にされたもので、相手方が支払不能等の事実を知っていた場合などが要件とされます。第三は、無償で行った行為及びこれと同視すべき有償行為であり、相手方の認識を問わずに対象となり得る点に特色があります。否認権は破産管財人のみが行使でき、裁判所に対する否認の請求又は否認の訴えという手続によって行われます。

役員退職慰労金と貸付金の精算は資料で説明します

役員退職慰労金については、株主総会の決議を経ているか、支給に関する内規や算定の基準があるか、在任年数及び最終報酬月額に照らして算定額が説明可能かを確認します。株主総会議事録、役員退職慰労金規程、算定の計算書、振込記録、当該事業年度の法人税申告書の写しが具体的な資料になります。貸付金を精算した場合には、貸付けの経緯、金銭消費貸借契約書、利息の有無、精算の原資と時期を整理します。会社の資産を譲り受けた場合には、対価が適正であったことを示す資料として、不動産であれば鑑定評価書等の算定資料、車両であれば査定書を保管しておいてください。譲渡の当時に会社が支払不能でなかったことを示す資料も重要です。

剰余金の配当についても確認が必要です

譲渡の前に会社から配当を受けている場合には、分配可能額の範囲内で行われたかどうかが問題となり得ます。これを超えて配当が行われた場合には、業務執行者及び金銭等の交付を受けた株主が、会社に対して支払義務を負うものとされています。決算書の純資産の部の内訳、配当を決議した株主総会議事録、計算の根拠資料を確認してください。分配可能額の範囲内で適法な手続を経た配当であれば、返還を要しません。

破産管財人等から請求を受けた場合の対応

破産管財人から書面が届いた段階で、既に責任が確定したかのように受け止めてしまう方がありますが、書面には性質の異なるものがあります。単に事情を尋ねる照会書、任意の返還や支払を求める請求書、否認の請求として裁判所に申し立てられたもの、役員の責任の査定の申立てです。まず、書面の表題と差出人、記載された期限を確認してください。手続によって対応の緊急度が異なります。

役員の責任の査定の申立てという手続があります

破産手続には、役員に対する損害賠償請求権の存否及び額を、通常の訴訟によらずに破産裁判所が決定によって定める制度があります。役員の責任の査定の申立てといい、破産管財人の申立て又は裁判所の職権によって開始されます。裁判所は、対象となる役員を審尋したうえで責任の有無と額を判断し、決定をします。この決定は、確定すると給付を命ずる判決と同一の効力を有します。不服がある場合には、送達を受けた日から1か月の不変期間内に異議の訴えを提起する必要があり、この期間を過ぎますと決定が確定してしまいます。期間の徒過は取り返しがつきませんので、決定を受け取ったときは直ちに日付を確認してください。なお、これに関連して役員の財産に対する保全処分が申し立てられることもあります。

説明を求められた場合の考え方があります

破産手続では、破産した会社の代表者等が破産管財人に説明する義務を負うものとされ、既に退任した取締役であった者についても、裁判所の判断により説明を求められることがあります。したがって、一切応じないという対応は適切ではありません。他方で、記憶が曖昧なまま推測を交えて回答しますと、後に事実と異なる説明をしたとして不利に扱われるおそれがあります。資料で確認できる事実と記憶に基づく事柄とを区別し、確認できない点は確認できないと述べてください。金額、日付、決裁の経緯について資料を見ずに回答することは避けてください。

対応の手順を整理します

第一に、書面の期限を確認し、日程を管理します。第二に、資料を保全します。在任中の株主総会議事録及び取締役会議事録、決算書、税務申告書、稟議書、通帳、電子メールの記録、株式譲渡契約書及び交渉過程の資料を集めます。会社側の資料は破産管財人の管理下にあって手元にない場合がありますので、控えの有無を早期に確認してください。第三に、就任と退任の日、譲渡の各段階の日、金銭の授受の日を並べた時系列表を作成します。第四に、消滅時効その他の期間の制限に該当しないかを検討します。第五に、単独で回答書を提出する前に弁護士に相談してください。初回の回答書の内容が、その後の手続の前提として扱われることが少なくないためです。

争う場合に中心となる論点があります

請求を争う場合の論点は、概ね次の四つです。第一に、そもそも任務懈怠又は表明保証の違反に当たる行為があったのか。第二に、仮に行為があったとして、それによって会社に損害が生じたのか、損害の額はいくらか。第三に、その行為と倒産という結果との間に因果関係があるのか。譲渡後の買主の経営が原因であることを客観的な資料で示すことが、この点の中心になります。第四に、契約上の補償請求の期間制限、消滅時効、査定の決定に対する異議の訴えの期間といった期間の制限です。どれを主軸に据えるかは事案によって異なります。

よくあるご質問

多く寄せられるお尋ねを整理します。結論は契約書の文言と事実関係によって異なります。

会社が破産したと聞きました。元の株主として会社の借金を負うのでしょうか

株式会社の株主は、原則として会社の債務について債権者に直接の責任を負いません。まして株式を譲渡した後は株主ですらありませんので、旧株主であることのみを理由に借入金や買掛金の支払義務を負うことはありません。取引先から支払を求められた場合には、どのような法律上の根拠に基づく請求であるのかを書面で確認してください。ただし、個人保証を差し入れている場合は、保証人としての責任が別途問題となります。

受け取った譲渡代金を返さなければならないのでしょうか

買主が事業に失敗して会社が倒産したというだけでは、譲渡代金を返還する義務は生じません。株式の譲渡は既に完了した売買であり、その後の業績は代金の返還理由になりません。返還が問題となり得るのは、契約が解除された場合、締結について詐欺や錯誤があったと認められる場合、表明保証の違反による補償として支払義務が認められる場合に限られ、いずれも主張する側が具体的な事実を示す必要があります。

退任してから3年が経っています。今から責任を問われることはあるのでしょうか

退任によって、その後の経営に関する責任が生ずることはありません。しかし、在任中の行為に基づく責任は、退任によって直ちに消滅するものではなく、消滅時効の期間が経過するまでは残り得ます。時効の起算点及び期間は請求の法律上の性質によって異なりますので、書面が届いた段階で日付を整理し、どの行為が問題とされているのかを特定したうえで相談してください。

買主が経営者保証を外すと約束していましたが、履行されないまま破産しました

買主の約束は買主に対する請求の根拠にはなりますが、金融機関との関係では保証が残ったままであり、請求を拒む理由になりません。まず金融機関に対し、保証の残高、保証書の種類、元本確定の有無を照会し、書面で回答を得てください。そのうえで、買主に対しては解除義務の不履行による損害賠償を求める余地があります。買主に資力がない場合には、保証債務そのものの整理を検討することになります。

破産管財人から資料の提出と説明を求められました。応じるべきでしょうか

無視することは適切ではありません。破産管財人は裁判所に選任された職務上の立場にあり、退任した役員であった者にも、裁判所の判断により説明を求め得る場合があります。他方で、事実関係を確認しないまま記憶だけで回答することは避けてください。まず期限を確認し、手元の資料と照らしたうえで、資料で裏付けられる範囲と記憶に基づく範囲とを区別して回答します。請求を伴う書面であれば、回答の前に弁護士に相談してください。なお、資料の提出に応じることは、責任を認めることを意味しません。

売却の直前に受け取った役員退職慰労金は返さなければならないのでしょうか

直ちに返還を要するとは限りません。株主総会の決議を経ており、支給の基準に照らして算定額が説明でき、当時の会社が支払不能の状態になかったのであれば、通常の支給として説明し得ます。他方で、決議を欠いていた場合や、既に支払不能に陥っていた時期に支給された場合には、否認の対象として争われる余地があります。株主総会議事録、支給の内規、算定の計算書、当時の決算書を揃えて、適法性を説明できるよう準備してください。

倒産の原因は買主の放漫な経営にあります。それでも責任を負うのでしょうか

倒産の原因が譲渡後の買主の経営にあるのであれば、旧経営者が当然に責任を負うことはありません。責任が認められるには、在任中の行為又は契約上の義務違反があり、それによって損害が生じたという関係が示される必要があります。譲渡の時点で会社が正常に事業を継続していたこと、譲渡後に借入れや支出が大きく変動したことを、譲渡後の各期の決算書や勘定科目内訳明細書で示すことが有効です。資料の収集は早いほど容易ですので、請求を受けた段階で着手してください。

具体的なご相談をお考えの皆様へ

本ページの主題に関し、当事務所の取扱内容、対応の進め方及び費用の考え方は、次のご案内のページに整理しています。あわせてご覧ください。