M&Aの後に旧経営者の株式が残っている場合の整理

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旧経営者に残った株式の整理に関するメインのページです。本ページは、M&Aの後に一部の株式が残った場面で、保有の確定と買取りの約束の使い方をご説明します。価格の調整をめぐる争いは別のページをご参照ください。

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株式の取得が完了した後、対象会社の株主名簿を取り寄せたところ、旧経営者の名義で発行済株式の7パーセントが残っていた。法人税申告書の別表を見ると、親族の名義でも数パーセントが記載されている。交渉の場では「株式は全部お渡しします」と言われていたが、契約書に記載された取得の対象は、その一部にとどまっていた。本記事は、そのような事態に直面した買主側の会社様への解説です。

この事態は珍しいものではありません。中小の同族会社では、設立の際に名義を借りた株主が名簿に残ったままの例、相続によって株式が親族に分散したまま名義書換えがされていない例、従業員持株会が少数を保有している例が多く見られます。株主構成の確認が十分でなかった場合に、こうした残り方が生じます。

結論から申し上げます。残存株式の整理は、保有割合が10分の9に達しているかどうかで手続が全く分かれますので、まず議決権の正確な数を確定させることが出発点となります。以下、順にご説明します。

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旧経営者との間で生ずる問題は、争いの対象が株式そのものか否かで全体像が異なります。

全部を取得したつもりが、一部が残っていたという場面

残存株式が生む支障は、抽象的なものではありません。第一に、組織再編が進まなくなります。完全子会社化、事業の移管、合併は株主総会の決議を要し、少数株主が反対すれば手続が滞り、あるいは反対株主の買取請求という別の手続が発生します。

第二に、株主総会の招集通知の送付、議事録の閲覧への対応、計算書類の提供といった事務が、旧経営者に対して継続的に必要となります。第三に、将来の売却や資本の再編において、株主構成に整理されていない部分があるという事実が減額の理由となります。整理は、判明した時点で進めるべき事項です。

まず、誰が何株を保有しているのかを確定します

手続を選ぶ前に、議決権の数を正確に把握しなければなりません。10分の9という基準にわずかに届かないという事態を手続の途中で発見するのは、最悪の展開です。

揃えるべき資料は四つです。第一に、株主名簿の原本であり、記載された株主の氏名、住所、株式数、取得の日を書き出します。第二に、法人税申告書に添付される同族会社等の判定に関する明細書であり、過去5期分を並べますと構成の変遷が読み取れます。名簿と食い違う原因の多くは、相続又は名義の貸借です。

第三に、登記事項証明書と定款です。株券発行会社であるか、譲渡制限の定めがあるか、発行可能株式総数、種類株式の有無を確認します。第四に、最終契約書における取得の対象の記載です。「本件株式」が保有する全部の株式とされているのか、株式数を特定して記載されているのかによって、次に述べる契約上の請求の可否が分かれます。

残った株主が行使することができる権利の範囲

会社法上の株主の権利は、保有する割合によって段階的に定められています。1株でも保有していれば行使できる権利として重要なのが、株主総会の決議の取消しの訴えです。株主等は、招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき等には、決議の日から3か月以内に、決議の取消しを訴えをもって請求することができます(会社法第831条第1項)。招集通知の発送の遺漏は典型的な原因ですから、発送と到達の記録は必ず残してください。

総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、目的である事項及び招集の理由を示して株主総会の招集を請求することができます(会社法第297条第1項)。総株主の議決権の100分の3以上又は発行済株式の100分の3以上を有する株主は、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写を請求することができます(会社法第433条第1項)。議題の提案は、取締役会設置会社では、100分の1以上又は300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主に限られます(会社法第303条第1項及び第2項)。3パーセントに満たない場合、相手方が採り得る手段はかなり限られます。

契約による買取りの約束が使えるかどうか

手続に入る前に、最終契約書に残存株式に関する定めが置かれていないかを確認します。置かれていることのある定めは、残余の株式を買主が一定の期間内に一定の価格で買い取ることを請求できる旨の定め、第三者への譲渡に先立ち買主へ売却を申し入れる旨の定め、株主構成に関する表明と実際とが異なった場合の補償の定めです。

買取りを請求できる旨の定めがある場合には、行使の期間と方法、価格の算定方法を確認し、期間内に、契約に定められた方法で行使の意思表示を行ってください。期間が経過していますと、この権利は使えません。

これらの定めがない場合には、まず任意の交渉から始めます。会社法上の手続は費用と時間を要し、価格の裁判手続に発展する可能性があるためです。旧経営者が譲渡そのものには納得しており、単に手続から漏れていたという事案であれば、相当な価格の提示で解決に至ります。交渉の前に、評価の資料を用意しておいてください。

特別支配株主の株式等売渡請求を用いる場合の要件

会社法第179条第1項は、特別支配株主、すなわち総株主の議決権の10分の9以上を有する者は、対象会社の株主の全員に対し、その有する対象会社の株式の全部を売り渡すことを請求することができる旨を定めています。株主総会の決議を要しない点に最大の利点があります。

特別支配株主は、売渡株式の対価として交付する金銭の額又はその算定方法、割当てに関する事項、取得日その他の事項を定めた上で(会社法第179条の2第1項)、対象会社に対し、株式等売渡請求をしようとする旨及び定めた事項を通知して承認を受けなければなりません(会社法第179条の3第1項)。承認は、取締役会設置会社では取締役会の決議によります(同条第3項)。対象会社は、取得日の20日前までに売渡株主に通知又は公告を行います。

10分の9の基準は総株主の議決権によって判定されますので、自己株式や議決権のない株式がある場合には慎重な計算を要します。また、売渡株主は価格の決定を申し立てることができますので、算定の根拠を示す資料を請求の前に整えておく必要があります。

株式の併合による方法と、その手続

10分の9に達していない場合には、株式の併合を検討します。少数株主の保有株式が1株に満たない端数となる割合で併合し、端数を金銭で処理する方法です。

株式会社は株式の併合をすることができ、その場合には、株主総会の決議によって、併合の割合、効力を生ずる日、種類株式発行会社にあっては併合する株式の種類、及び効力発生日における発行可能株式総数を定めなければなりません(会社法第180条第1項及び第2項)。この決議は特別決議であり、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行います(会社法第309条第2項第4号)。

取締役は、株主総会において株式の併合を必要とする理由を説明しなければならず、招集の手続、開示書類の備置き、通知の発送を法定の期間に従って進める必要があります。また、1株に満たない端数が生ずる場合には、反対株主は端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができ(会社法第182条の4第1項)、この請求は効力発生日の20日前の日から前日までに行います(同条第4項)。

価格をめぐって争いとなった場合の見通し

いずれの手続でも、最終的な争点は価格に収れんします。手続そのものを止めることは容易ではありませんが、価格については裁判所の判断を求める道が用意されているためです。

株式等売渡請求による場合、売渡株主は、取得日の20日前の日から取得日の前日までの間に、裁判所に対し、売渡株式の売買価格の決定の申立てをすることができます(会社法第179条の8第1項)。株式の併合による場合、買取請求に係る価格について効力発生日から30日以内に協議が調わないときは、その期間の満了の日後30日以内に、株主又は会社が裁判所に価格の決定の申立てをすることができます(会社法第182条の5第2項)。

会社の側が準備すべきものは、価格の相当性を裏付ける資料です。公認会計士又は税理士による株式価値の評価書、直近3期分の計算書類とその附属明細書、事業計画、及び評価の前提条件を説明する書面であり、純資産に基づく評価のみでは足りません。申立てから決定まで1年を超えることもありますので、任意の交渉の段階で合意に至ることの合理性は低くありません。

なぜ旧経営者は、株式を手放さないのか

第一に、譲渡の対価への不満です。提示された価格で譲渡に応じたものの、後に他社の事例を知って安すぎたと感じ、残った株式でその差を取り戻そうと考える例があります。この場合、評価の資料を示した対話が有効です。

第二に、名義株をめぐる認識の食い違いです。旧経営者は名義を貸していた親族の分も自分のものだと考えていたが、名義人の側が異なる認識を持っていたという事案があります。この場合、真の株主が誰かという争いが先行しますので、資料の収集から始めることになります。

第三に、譲渡の後の処遇や、個人保証、退職金の未払といった未解決事項です。株式は、これらを解決させる材料として保持されています。株式の問題だけを切り出しても進みませんので、未解決の事項を一覧にし、全体を一つの合意で解決する枠組みを提示する方が早く終わります。

弁護士に任せられる範囲と、依頼の時期

弁護士に依頼していただける事項は、株主構成の調査、最終契約書に基づく請求の可否の検討、交渉の代理、株式等売渡請求又は株式の併合に必要な書類の作成と手続の遂行、価格決定の手続、及び名義株をめぐる争いへの対応です。

依頼の時期は、残存株式の存在が判明した時点です。相続が発生すれば交渉の相手方が複数の相続人に分かれ、株式の価値が上昇すれば買取りに要する金額も増えますので、時間の経過は一方的に不利に働きます。

これから譲渡を受ける段階の方であれば、株主名簿と法人税申告書の別表とを突き合わせ、全部の株主から取得することを決済の前提条件として定めることが、最も確実な予防策です。

いま確認していただきたいこと

資料に当たって、株主名簿に記載された株主の氏名、住所、株式数、総株主の議決権の数と自社の議決権の数、その割合が10分の9以上か3分の2以上かそれ未満か、定款に譲渡制限の定めがあるか、株券発行会社か、旧経営者以外に少数株主が存在するかを確認してください。

次に、最終契約書について、取得の対象とされた株式の特定の方法、株主構成に関する表明の有無、残余株式の買取りの定めと行使の期間、及び補償請求の期間制限を確認します。期間の定めがある権利は、残り日数を直ちに算出してください。

してはならないのは、旧経営者に対する招集通知の発送を怠ること、株主名簿の記載を根拠なく書き換えること、そして評価の資料を用意しないまま買取りの価格を口頭で提示することです。最初に提示した金額は、その後の交渉でも裁判所の手続でも、事実上の下限として扱われます。

よくあるご質問

議決権の90パーセントに1パーセントだけ届きません

まず、他の少数株主から任意に買い受けることで10分の9に達しないかを検討します。所在の判明している株主が複数いれば、これが最も費用のかからない道です。難しい場合には、3分の2以上の保有を前提に株式の併合を検討します。自己株式と議決権のない株式の扱いを確認してください。

旧経営者から会計帳簿を見せるよう請求されました

まず保有割合が会社法第433条第1項の要件を満たしているかを確認します。満たしていれば、同条第2項に定める拒絶事由に当たるかを検討しますので、請求書の理由と対象資料の範囲を精査してください。理由の記載が抽象的であれば、その特定を求めます。

名義だけを貸していたという株主が、自分の株式だと主張しています

真の株主が誰かという争いですので、手続を進める前に確定させる必要があります。収集すべき資料は、設立又は増資の際の払込みの原資、配当の受領者、株主総会への出席者、法人税申告書の別表の記載の変遷です。この争いを残したまま進めますと、手続そのものが争われます。

株式等売渡請求を行った場合、旧経営者は手続を止めることができますか

価格に不服があれば裁判所に売買価格の決定の申立てをすることができますが(会社法第179条の8第1項)、これは価格を争う手続であって、取得そのものを止めるものではありません。ただし、法令に違反する場合等には差止めの請求が認められる余地がありますので、通知、公告、開示書類の備置きを、期間の定めに従って正確に履践してください。

旧経営者が亡くなり、相続人が複数現れました

交渉の相手方が増え、遺産分割が終わるまで株式が準共有の状態に置かれますので、難易度は上がります。株式について権利を行使する者を定めて会社に通知するよう相続人らに求めることが最初の対応です。株主が高齢である場合には、整理を先送りしないでください。

おわりに

残存株式の問題は、放置しても自然に消えることがなく、相続による分散、価値の上昇、対立の深刻化という形で必ず重くなります。他方で、手続そのものは会社法に明確に用意されており、保有割合さえ確定すれば進め方は定まります。まず議決権の数を正確に把握し、任意の交渉と法定の手続の双方を視野に入れた計画を立ててください。

当事務所では、株主構成の調査から交渉、法定の手続、価格決定の手続までを一貫して承っています。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

M&Aの後に残った少数株式の整理に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

出典

  • 会社法第179条第1項(特別支配株主の株式等売渡請求)、第179条の2第1項(株式等売渡請求の方法)、第179条の3第1項及び第3項(対象会社の承認)、第179条の8第1項(売買価格の決定の申立て)、第180条第1項及び第2項(株式の併合)、第182条の4第1項及び第4項(反対株主の株式買取請求)、第182条の5第2項(株式の価格の決定等)、第309条第2項第4号(株主総会の特別決議)、第433条第1項及び第2項(会計帳簿の閲覧等の請求)、第297条第1項(株主による株主総会の招集の請求)、第303条第1項及び第2項(株主提案権)、第831条第1項(株主総会等の決議の取消しの訴え)

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