M&A仲介契約の確認を弁護士に依頼するとき 署名の前に見ておくべき条項

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M&A仲介契約の確認のご依頼に関するメインのページです。本ページは、M&Aトラブルを防ぐため、署名の前に専任及び直接交渉の条項を見る要点をご説明します。仲介会社との紛争の追及は別のページをご参照ください。

M&A仲介業者の対応に納得できない場合のご相談はM&A仲介会社の対応に納得できずお困りではありませんかを、報酬を請求された場合のご相談はM&Aが成立していないのにM&A仲介会社から手数料を請求されお困りではありませんかをご覧ください。

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M&A仲介会社から仲介契約書の案が届き、次回の面談までに署名をしてほしいと言われている。専任、契約期間1年、自動更新、直接交渉の禁止、中途解約金、移動総資産を基礎とする報酬といった語が並んでいるが、どこを直してもらえるのか、そもそも直してもらえるものなのかが分からない。本記事は、そのような段階に置かれている会社様に向けた解説です。

仲介契約書は、仲介会社が用意した書式です。書式は、費用を先行して負担し、成約に至って初めて報酬を得るという事業の構造に合わせて作られています。そのため、依頼者を長く拘束し、他社への相談を封じ、報酬債権の発生する範囲を広く取る方向に傾きます。修正を申し入れる側がいなければ、そのまま署名されます。

結論から申し上げます。仲介契約の内容について会社様が実質的な修正を得られるのは署名の前の短い期間に限られ、署名の後は条項の文言に沿った処理しかできなくなります。以下、順にご説明します。

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仲介契約をめぐる問題は、署名の前か後かで採り得る手段が全く異なります。

仲介契約は、署名の前であれば修正を求めることができます

仲介契約は、法律行為でない事務の委託ですから、民法第643条の委任の規定が第656条により準用される準委任として扱われるのが通常です。受任者は特約がなければ報酬を請求することができませんので(民法第648条第1項)、仲介会社の報酬は、仲介契約書の報酬条項によってのみ発生します。条項の文言が、そのまま請求権の範囲になるということです。

署名の前であれば、契約の内容は自由に定めることができます。署名の後は、民法第651条第1項によりいつでも解除ができるとしても、同条第2項により相手方に不利な時期の解除については損害の賠償を要する場合があり、解約金の条項も働きます。修正の申入れは、条項番号と修正後の文言を特定した書面で行い、「実務上はそのような運用をしていません」との口頭の説明は、必ず書面で回答させてください。

専任とするかどうかで、他社への相談ができなくなります

専任条項は、契約期間中、他のM&A専門業者に同一の案件を依頼することを禁ずる条項です。これを受け入れますと、提示された相手方候補や条件が妥当であるかを他社に確かめる道が閉ざされ、一社の説明だけで数億円の取引の可否を判断することになります。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、専任条項を設ける場合の目安として、契約期間を最長でも6か月から1年以内とすること、他の支援機関にセカンド・オピニオンを求めることを許容すること、及び依頼者が任意の時点で中途解約できる旨を明記することを掲げています。

したがって、申し入れるべき修正は、期間を6か月とし更新は書面による合意があるときに限ること、秘密保持義務を負う者への意見の照会を妨げない旨を明記すること、中途解約を認める旨を明記することの三点です。自動更新の条項は、更新拒絶の通知期限を見落とすと期間が延びますので、削除を求めるのが確実です。

直接交渉を禁ずる条項が、どこまで及ぶのか

この条項で問題となるのは、対象が「第三者」「一切の者」といった限定のない文言で書かれている場合です。仲介会社が全く関与していない、従前からの取引先からの打診に応ずることまで禁じられ、違反したとして報酬相当額の違約金を請求される余地が生じます。

同ガイドラインは、制限される候補先を当該業者が関与し、接触し、紹介した候補先のみに限定すること、制限される交渉を依頼者と候補先とのM&Aに関する目的のものに限定すること、及び条項の有効期間を契約が終了するまでとすることを掲げています。

実務的には、署名の前に、既に接触のある相手方の名称を一覧にして交付し、これを禁止の対象から除外する旨を契約書又は覚書に記載させる方法が有効です。一覧がないまま契約に入りますと、その商談が仲介会社の紹介によるものであったかどうかをめぐって、証拠のない争いが生じます。

専任条項に違反した場合の効果

前記の2つの条項に反して他の仲介会社に依頼し、又は相手方候補と直接に交渉した場合に、どのような不利益が生ずるのかは、契約の定め方によって異なります。

第1に、違約金の定めが置かれている場合です。この場合、違約金は賠償額の予定と推定されますので(民法第420条第3項)、仲介会社は現実の損害の額を立証することなく、定められた金額を請求することができるのが原則です。また、賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げるものではありません(民法第420条第2項)。もっとも、その金額が著しく過大であり、公の秩序又は善良の風俗に反すると評価される場合には、その限度で無効とされる余地があります(民法第90条)。委託者が事業者である場合には消費者契約法の適用がありませんので、この点の主張は民法の一般の規定によることとなります。

第2に、違約金の定めはないものの、専任の定めに反した場合には報酬相当額を支払う旨の定めが置かれている場合です。この場合には、成約に至ったか否かにかかわらず、算定の基礎に応じた報酬相当額の支払を求められることとなります。

第3に、いずれの定めもない場合です。この場合には、債務不履行に基づく損害賠償の請求によることとなります(民法第415条第1項)。この場合の損害の内容は、仲介会社が本来得られたはずの報酬とみるか、それとも仲介会社が現実に支出した費用とみるかによって金額が大きく異なりますので、争いとなりやすい点です。専任の定めに反した行為と成約との間に因果関係があるといえるかも、あわせて問題となります。

第4に、契約の解除です。仲介会社の側から契約を解除された場合には、中途で解約したときに支払う金額の定めが適用される場合がありますので、その定めの内容とあわせて確認する必要があります。

なお、専任の定めや違約金の定めの内容が、仲介会社の取引上の地位が委託者に対して優越していることを利用して不当に委託者に不利益を与えるものと評価される場合には、優越的地位の濫用として私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律上の問題を生ずる余地があります(同法第2条第9項第5号、第19条)。前記の中小M&Aガイドライン(第3版。令和6年8月、中小企業庁)の遵守を宣言している仲介会社に対しては、同ガイドラインの内容を交渉の根拠とすることもできます。

報酬の算定の基礎を、何に置くかで金額が変わります

成功報酬は、一定の金額に料率を段階的に乗じて算定されます。決定的に重要なのは、料率ではなく、料率を乗ずる基礎です。負債5億円、譲渡代金1億円という会社であれば、譲渡代金を基礎とするか、負債を加えた移動総資産を基礎とするかによって、基礎となる金額は1億円と6億円の違いになります。

最低報酬額の定めも確認してください。料率による計算額がこれを下回る場合には最低報酬額によるとされているのが通常です。着手金、月額報酬、基本合意の時点で支払う中間金が、成功報酬から控除されるのか、控除されずに積み上がるのかも、条項で確かめます。

報酬債権の発生時点も特定させます。成果に対して報酬を支払う旨の合意については民法第648条の2が置かれ、また委任が履行の中途で終了したときは既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされています(民法第648条第3項)。「成約時」が最終契約の締結時か決済の完了時かによって、途中で頓挫したときの結論が変わります。

中途で解約したときに支払う金額の定め

委任は、各当事者がいつでも解除をすることができます(民法第651条第1項)。もっとも、相手方に不利な時期に解除をしたとき等は、やむを得ない事由があった場合を除き、相手方の損害を賠償しなければならないとされています(同条第2項)。解約金の条項は、この賠償の額をあらかじめ定めておくという性格を持ちます。

書式には、着手金を返還しない旨の定め、残存期間の月額報酬を一括して支払う旨の定め、最低報酬額の全額又は一定割合を支払う旨の定めが置かれます。最後の類型は、成約に至っていないにもかかわらず成約した場合に近い金額を求めるものですから、実際に生じた損害との隔たりが大きくなりがちです。

申し入れる修正は、解約金を、解約の時点までに現実に支出した外部費用と、既に履行した事務の割合に応じた報酬との合計に限り、上限額を金額で明記させることです。「相当額」といった評価を含む文言のままにしますと、解約の局面で必ず争いになります。

契約が終了した後の期間に関する定めの読み方

契約の終了後、一定の期間内に仲介会社が紹介した相手方との間で譲渡が成立した場合には報酬を支払う旨の条項が置かれます。契約を終了させて直接に交渉し、報酬を免れる事態を防ぐ趣旨であり、それ自体には合理性があります。問題は、期間の長さと対象の範囲です。

同ガイドラインは、この期間を最長でも2年から3年以内を目安とすること、及び対象を、ネームクリア(譲り受け側に対して企業概要書を送付し、譲り渡し側の名称を開示すること)が行われて紹介された譲り受け側に限定することを掲げています。期間が5年とされている書式や、対象が「本契約に関連して知り得た者」と書かれている書式は、この目安から外れています。

採っていただきたい措置は、契約の終了時に、ネームクリアが行われた相手方の一覧を書面で交付させる旨の条項を置かせることです。一覧があれば、終了後に別の経路で現れた相手方と成約した場合に、その相手方が一覧に載っていないという一事で争いが終わります。

仲介者が双方から報酬を受けることの意味

仲介は、譲り渡し側と譲り受け側の双方と契約を締結し、双方から手数料を受領する形態です。一方のみの立場に立って助言を行うファイナンシャル・アドバイザーとは構造が異なります。価格が上がれば譲り渡し側の利益となり、下がれば譲り受け側の利益となりますから、仲介者は、いずれの利益にも与しない立場に置かれます。

民法第108条は、当事者双方の代理人となった行為を原則として無権代理行為とみなす旨を定めています。仲介は代理ではありませんから直接には適用されませんが、利益の相反する場面で一人の者が双方から報酬を得るという構造は共通します。同ガイドラインが、仲介である旨、双方から手数料を受領する旨、及び利益相反のおそれと対応方針を、契約の締結前に明示的に説明することを求めているのは、このためです。

なお、会社様が締結する仲介契約は、消費者契約法にいう消費者契約には当たりません。同法第2条第3項が、消費者契約を消費者と事業者との間で締結される契約と定義しているためです。同法による無効や取消しの主張はできず、条項の文言と民法の規定によって検討することになります。

なぜ仲介会社は、専任と長い期間を求めるのか

相手方候補の探索、企業概要書の作成、候補先への打診、面談の設定には、成約に至るかどうかにかかわらず人件費と実費がかかり、着手から成約までに半年から1年を超えることも少なくありません。専任と一定の期間は、この先行投資を回収する見込みを確保する仕組みです。

加えて、複数の業者が同一の会社の情報を並行して候補先に持ち込みますと、市場に何度も出ている会社であるという印象を与え、条件が悪化します。情報管理の観点からは軽視できない指摘です。

しかし、これらの事情から正当化されるのは、必要な範囲の専任であって、無期限に近い期間や、限定のない直接交渉の禁止ではありません。交渉の場では、条項を削れと述べるのではなく、条項の目的を確認した上で、その目的に必要な限度に文言を絞るという形で申し入れてください。

弁護士に任せられる範囲と、依頼の時期

弁護士に依頼していただける事項は、各条項の意味と会社様にもたらす具体的な帰結の説明、修正案の作成、条項交渉の代理、及び署名の可否の判断です。報酬の算定基礎の置き換えによって金額がどれだけ変わるかを、直近の貸借対照表の数値を当てはめて計算し、書面で示すことは、交渉の材料として有効に働きます。

依頼の時期は、契約書案を受領した時点です。遅くとも署名の予定日の3営業日前までにお持ちください。修正の申入れに対する社内決裁には数日を要しますので、前日に相談をいただいても交渉の時間が残りません。面談の席で署名を求められた場合には、持ち帰って検討する旨を述べて差し支えありません。

すでに署名をしてしまった場合でも、覚書によって条項を変更することは可能ですので、署名済みであることを理由に相談を控える必要はありません。

いま確認していただきたいこと

お手元の契約書案について、専任か否か、契約期間は何か月か、自動更新の条項があるか、更新拒絶の通知期限は何日前か。直接交渉の禁止の対象が仲介会社の紹介した相手方に限定されているか。成功報酬の算定基礎が譲渡代金か移動総資産か、最低報酬額はいくらか。報酬債権の発生時点が最終契約の締結時か決済の完了時か。以上を確認してください。

あわせて、中途解約の場合の算定方法と上限額、契約終了後の期間の年数と対象の範囲、譲り受け側からも手数料を受領する旨とその料率の記載を確認します。一つでも文言が曖昧である場合には、署名を保留し、書面で照会を行ってください。

してはならないのは、面談の席で内容を確認しないまま署名すること、担当者の口頭の説明を根拠に条項の意味を善解すること、そして既に接触のある相手方の存在を伝えないまま契約に入ることです。最後の点は、報酬の二重払いという最も避けたい結果につながります。

よくあるご質問

契約書の修正を申し入れると、受任を断られてしまうのではないでしょうか

断られる例は、実際にはまれです。専任条項の期間、セカンド・オピニオンの許容、中途解約の明記、直接交渉の制限の限定といった申入れは、中小M&Aガイドライン(第3版)が掲げる内容に沿うものですから、遵守を宣言している業者であれば拒む理由がありません。これらを一切拒否する業者であれば、その姿勢自体が判断材料になります。

報酬の算定基礎を移動総資産から譲渡代金に変えてもらえますか

算定基礎の変更に応じない業者もありますが、その場合でも、料率の刻みを調整する、最低報酬額を引き下げる、着手金と中間金を成功報酬から控除する扱いにするといった形で、実質的な負担を下げる交渉は成り立ちます。貸借対照表の数値を当てはめ、いくらになるのかを金額で示した上で交渉してください。

専任としない場合、複数の仲介会社に依頼して差し支えありませんか

専任条項がなければ可能です。ただし、同一の候補先に複数の業者から打診が行われますと、成約したときに報酬の二重請求が生じます。各業者に対し、打診の前に候補先の名称を通知して重複を確認する手順を、契約書に定めておいてください。

「本件に関し知り得た一切の者」との直接交渉を禁ずると書かれています

この文言のままですと、仲介会社が全く関与していない相手方との商談も対象に読まれる余地があります。署名の前に、対象を「書面により紹介した者」に限定する旨の修正を求め、あわせて既に接触のある相手方の一覧を交付して対象から除外させてください。この二点で、後の紛争の大半を防げます。

着手金を支払った後に、契約を解約することはできますか

民法第651条第1項により解約そのものは可能です。問題は、着手金が返還されるか、解約金の支払を求められるかであり、いずれも契約書の条項によって決まります。署名の前に、解約時の精算の方法を金額で確認しておいてください。

おわりに

仲介契約書は、数枚の書面でありながら、その後の1年から2年の間、会社様が誰と話せるか、いつやめられるか、いくら支払うかを決めてしまいます。しかも、その内容を実質的に動かせるのは署名の前だけです。条項の目的を一つずつ確かめ、必要な範囲まで文言を絞り込む作業を、署名の前に済ませてください。

当事務所では、契約書案の点検、修正案の作成、仲介会社との交渉の代理を承っています。必ず解決できますから、一緒に頑張りましょう。

M&A仲介契約の署名前の点検に関するご相談
弁護士法人M&A総合法律事務所 電話番号 03-6435-8418
受付時間 8:00-21:00(土日祝含む)

出典

  • 民法第643条(委任)、第648条第1項及び第3項(受任者の報酬)、第648条の2(成果等に対する報酬)、第651条第1項及び第2項(委任の解除)、第108条(自己契約及び双方代理等)
  • 消費者契約法第2条第3項(消費者契約の定義)
  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)-第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-」(令和6年8月)

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