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虚偽の貸借対照表による出資勧誘と共同代表者の不法行為責任―東京地方裁判所令和元年11月15日判決

公開 2019年11月15日更新 2019年11月15日

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出資を検討している会社に対し、出資先の会社の代表者が、実際には存在しない現預金や払い込まれていない資本を記載した貸借対照表を示し、その説明を信じた会社が出資した。出資金が事業に使われず、出店計画も頓挫した場合、出資した会社は、その代表者個人に損害賠償を求めることができるのでしょうか。

東京地方裁判所令和元年11月15日判決は、米国でハンバーガー店を開業しようとしていた会社の第三者割当増資に60万米ドルを出資した日本の飲食店運営会社が、出資先の共同代表者の一人に損害賠償を求めた事案です。判決は、貸借対照表の流動資産と株主資本の記載が虚偽であり、共同代表者がその虚偽を認識していたとして、不法行為責任を認めました。他方で、出資金の使途を偽った点については、出資金が証券取引に流用されることを契約時点で認識していたと認める証拠がないとして、責任を否定しています。損害は出資額60万米ドルとされ、既に支払われた30万米ドルを差し引いた残額を口頭弁論終結時の為替相場で換算した3,474万2,609円の支払が命じられました。

本記事では、判決本文に沿って、どの記載が虚偽と判断され、なぜ違法とされたのか、共同代表者の認識がどのように認定されたのか、損害額がどのように計算されたのかを整理します。出資や株式の取得を検討する際に、相手方から示された財務資料をどのように確認すべきかを考える材料になる判決です。

Contents
  1. 裁判例の基本情報
  2. 当事者の表記
  3. 事案の概要―虚偽の貸借対照表を示されて出資し、出資金は証券取引に流用された
    1. 米国でのハンバーガー店の事業と、出資の勧誘
    2. 出資の前に示された資料
    3. 実際の資金の状況
    4. 投資契約の締結と出資、出資金の流出
    5. 出店計画の頓挫と、株式買取請求
  4. 事案の経緯の時系列
  5. 投資契約の定め
    1. 第4条2号ただし書―進捗情報の報告義務
    2. 第6条1項―共同代表者2名に対する株式買取請求権
  6. 原告の請求と当事者の主な主張
    1. KSR社の請求
    2. KSR社の主張
    3. HRT氏の主張
  7. 結論を左右した争点
  8. 裁判所が認定した事実と判断の枠組み
    1. 虚偽の判断―3つの記載・説明を個別に検討
    2. 損害の判断―出資額を損害とし、受領額を充当
  9. 各主張を採用し又は排斥した理由
    1. 流動資産の記載―102万米ドルの現預金は「およそ考えられず」虚偽
    2. 株主資本の記載―入金ベース124万米ドルと知りながら154万米ドルと示した
    3. 出資金の使途―虚偽で違法だが、HRT氏の認識が認められない
    4. 因果関係―経営判断で出資したとの主張は採用しない
    5. 損害額の計算―米ドル建てで充当し、口頭弁論終結時の相場で換算
  10. 主文及び結論
  11. 判断の射程―参考となる点と一般化できない点
    1. 参考となる点
    2. 一般化できない点
    3. 出資や株式の取得の際に確認しておきたいこと
  12. よくあるご質問
    1. 出資先の会社が示した貸借対照表が虚偽だった場合、その会社の役員個人に損害賠償を請求できますか。
    2. 貸借対照表を作成したのが会計士であれば、それを転送しただけの役員は責任を免れますか。
    3. 出資者がリスクを検討して買取条項を設けていた場合でも、因果関係は認められますか。
    4. 米ドルで出資した場合、損害額はどの時点の為替相場で計算されますか。
    5. 出資金が事業に使われずに流用された場合、出資の勧誘をした役員は必ず責任を負いますか。
  13. 関連する記事と相談のご案内

裁判例の基本情報

裁判所 東京地方裁判所民事第25部
裁判日 令和元年11月15日
事件番号 平成29年(ワ)第30399号
裁判の形式 判決
審級 第一審
結論 原告(出資者)の主位的請求(共同不法行為に基づく損害賠償)を一部認容。被告(出資先の共同代表者)に3,474万2,609円及びこれに対する平成29年2月7日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を命じ、その余の請求を棄却。訴訟費用は10分の9を被告、10分の1を原告の負担。第1項について仮執行宣言
上訴の状況 上訴の有無及び確定は確認できていません

この表は、判決本文の冒頭及び末尾の記載に基づいて当事務所が作成したものです。同じ事件の控訴審等の判決本文は確認できていません。

当事者の表記

判決に出てくる会社名・氏名は、本記事独自のイニシャルに置き換えています。判決が用いている符号や略称も、そのままは使わずに次の表記へ置き換えています。

本記事の表記 立場
出資者である飲食店運営会社KSR(以下「KSR社」) 原告。飲食店業等を目的とする株式会社で、米国会社UHCの第三者割当増資に応じて60万米ドルを出資しました
米国のハンバーガー店運営会社UHC(以下「UHC社」) 出資先。米国に本店を置き、ハンバーガー店の出店を計画していた株式会社です。訴訟の当事者ではありません
UHC社の共同代表者HRT氏(以下「HRT氏」) 被告。UHC社の代表取締役で、KSR社への資料の送付や出店準備を担当していました
UHC社の経営を主導した共同代表者MZK氏(以下「MZK氏」) HRT氏と共にUHC社の代表取締役であった人物で、同社の経営を主導していました。訴訟の当事者ではなく、判決の前に破産手続開始決定を受けています
KSR社の代表取締役TKD氏 MZK氏と旧知の間柄で、MZK氏から出資の勧誘を受けた人物です
KSR社の取締役副社長NGS氏 KSR社側の窓口として、HRT氏との間で資料の授受や質問のやり取りをした人物です
米国公認会計士兼弁護士WTN氏 MZK氏の依頼を受けて、UHC社の貸借対照表を作成した人物です
米国の銀行LNB、米国の金融機関SVT UHC社が預金口座を開設していた金融機関です。株主の払込金は銀行LNBの口座に入金されていました
国内の銀行HKB HRT氏名義の国内の預金口座がある銀行です。UHC社の資金が日本円に換金されて経由しました
インターネット証券会社KMN、インターネット証券会社TRV MZK氏の指示でHRT氏名義の証券口座が開設され、MZK氏が日本国内の株式の信用取引等を行った証券会社です
別店舗PKR 米国1号店とは別に、UHC社が平成28年7月に開店したハンバーガー店です

判決本文を引用する部分では、当事者の呼称を上記の表記に置き換え、置き換えた箇所を〔 〕で示しています。主文の引用では、「原告」はKSR社、「被告」はHRT氏を指します。判決本文の数字は全角の算用数字で記載されているため、引用部分では判決本文の表記のままとしています。「米国1号店」は判決本文が用いる略称です。

事案の概要―虚偽の貸借対照表を示されて出資し、出資金は証券取引に流用された

以下は、判決本文の前提事実及び認定事実に基づく事案の概要です。

米国でのハンバーガー店の事業と、出資の勧誘

UHC社は、平成27年4月に米国で設立された株式会社で、MZK氏とHRT氏が代表取締役でした。国内外で飲食店を経営してきたMZK氏が、HRT氏をハンバーガー店の共同経営に誘い、HRT氏は平成27年8月以降、UHC社の業務に専従するようになりました。HRT氏は、UHC社やMZK氏から給与や家賃補助の支給を受けたことはありませんでした。

平成27年10月、MZK氏は、旧知の間柄であったKSR社の代表取締役TKD氏に、UHC社の事業概要の説明資料等を提供して出資を勧誘しました。同年12月には、米国1号店の賃借予定物件の内覧会が開かれ、HRT氏はMZK氏の指示に従ってTKD氏の送迎等を担当しました。平成28年2月12日、HRT氏は、第三者割当増資によりKSR社がUHC社の株式を引き受けることを要請する書面をメールで送付しました。

出資の前に示された資料

KSR社の取締役副社長NGS氏は、平成28年2月15日、HRT氏に対し、UHC社の同日現在の資本金(手元資金)がいくらあるのかを問い合わせました。HRT氏は、MZK氏に対し、次のメッセージを送って対応の指示を求めました。

「どのように回答すればよいでしょうか。入金ベースであれば$1,240,000です。」

その後、HRT氏は、MZK氏の指示を受けて、NGS氏に対し、次の資料等を提供しました。

  • 平成28年2月16日:資本金が1米ドル、資本準備金が154万米ドル(全割当増資完了後には214万米ドル)である旨の記載がある会社案内
  • 平成28年2月19日:「投資計画及び現金残高」と題する資金繰り表と「設備投資計画」。手持資金154万0,001米ドルにKSR社の出資金60万米ドルを加えた214万0,001米ドルを、UHC社の新規事業に用いる旨が記載されていました
  • 平成28年2月22日:資金調達総額314万0,001米ドルのうち、資本金が1米ドル、資本準備金が154万米ドルであることなど、KSR社からの質問に回答する文書
  • 平成28年2月23日:資本準備金が314万0,001米ドルである旨の記載のある「資金調達計画」
  • 平成28年2月25日:同日時点のUHC社の貸借対照表(判決本文はこれを「本件貸借対照表」と呼んでいます)

本件貸借対照表には、流動資産の「現金及び現金同等物」が102万7,211米ドル、株主資本の「資本投資」が154万0,001米ドルと記載されていました。この貸借対照表は、MZK氏が米国公認会計士兼弁護士WTN氏に作成を依頼したもので、作成されたデータがHRT氏に送付され、HRT氏がNGS氏に送信したものです。また、HRT氏は、資金調達額314万0,001米ドルの内訳を尋ねるNGS氏の質問に対し、既払込額154万0,001米ドルにKSR社の出資額60万米ドルと平成28年8月の増資予定額100万米ドルを加えたものに相違ない旨を回答しました。

実際の資金の状況

ところが、UHC社が平成28年1月28日までに11名の株主から払込みを受けた額は合計124万2,966米ドルにすぎず、そのうちMZK氏とHRT氏による払込額は3,001米ドルでした。MZK氏は30万株余りを引き受けていましたが、その出資額は3,001米ドルで、1株当たりの出資額は1セント以下でした。判決は、UHC社の平成28年2月時点の実際の株主資本(資金調達額)は124万3,001米ドルにすぎなかったと認定しています。

さらに、UHC社の資金は、次のとおり日本国内の証券口座に移されていました。MZK氏は、平成27年10月頃、HRT氏に対し、建物使用許可が下りるまで資金を株の信用取引で運用して増やし、またUHC社の預金口座に資金を戻すつもりであるが、自分は証券会社の口座を開設できないとして、HRT氏名義での証券口座の開設を指示しました。HRT氏は、これに従ってインターネット証券会社KMNに口座を開設し、MZK氏がその口座で株式の信用取引を行いました。

  • 平成27年10月27日に銀行LNBの口座から50万米ドルが出金され、金融機関SVTの口座を経て、同年11月11日に日本円6,085万4,214円が証券会社KMNの口座に入金されました。
  • 平成28年1月14日に10万米ドル、同月29日に20万米ドルが出金され、HRT氏の銀行HKBの口座を経由して日本円に換金され、同年2月5日までに合計3,532万8,500円が証券会社KMNの口座に入金されました。

投資契約の締結と出資、出資金の流出

KSR社は、平成28年2月16日の経営協議会議で、米国1号店のランニングコストが毎月50万米ドルで、開店が1か月でも遅れれば資金ショートの可能性があること、資本金と資本準備金の額を通帳の写しなどで確認する必要があることなどを確認しました。同月26日の書面による取締役会で出資を可決しましたが、米国1号店が開店できなかった場合に出資額と同額で株式を買い戻してもらうことを条件とすべきであるなどの意見が付されました。

KSR社は、株式買取請求権の条項を入れた契約書の案を送付し、HRT氏は、開店の期限を平成28年8月31日とすることは難しいと回答しましたが、KSR社は応じず、最終的にその条項を含む契約書が作成されました。平成28年2月29日、KSR社、UHC社、MZK氏及びHRT氏の間で、UHC社が第三者割当増資により発行する株式のうち6万株を、1株10米ドル、総額60万米ドルで取得する投資契約(判決本文はこれを「本件投資契約」と呼んでいます)が締結されました。

KSR社は、平成28年3月7日、60万米ドルを銀行LNBのUHC社の口座に送金しました(送金依頼及び資金決済をした同月4日時点の為替相場1米ドル113円70銭で換算すると6,822万円)。HRT氏は、入金を確認したことをMZK氏に報告し、その指示に従って翌8日に60万米ドルを金融機関SVTの口座へ送金しました。その後、同月14日と24日に合計60万米ドル相当がHRT氏の銀行HKBの口座に送金され、同月14日に5,544万3,500円、25日に1,110万円が引き出されて、いずれも証券会社KMNの口座に送金されました。

出店計画の頓挫と、株式買取請求

HRT氏は、平成28年4月から9月まで毎月、米国1号店の開店準備の進捗状況をKSR社に書面で報告していました。UHC社は、平成28年7月に別店舗PKRを開店し、HRT氏はその運営に従事しました。しかし、米国1号店の賃借予定物件は、同年8月頃に他社によって契約され、米国1号店の開店計画は頓挫しました。HRT氏は、同年9月12日、その旨をKSR社に報告しました。

KSR社は、平成28年11月11日、投資契約の買取条項に基づき、HRT氏に株式の買取りを請求しました。MZK氏は、同年12月20日、債権者の申立てにより破産手続開始決定を受けています。HRT氏は、平成29年2月6日、買取代金の一部として30万米ドル(同日の為替相場1米ドル111.71円で換算すると3,351万3,000円)を支払い、残額30万米ドルの支払義務を認めてその履行を確約する債務承認及び支払確約書を交付しました。判決は、この30万米ドルはHRT氏がUHC社の資金から支払ったもので、これにより同社の資金が枯渇し、別店舗PKRも閉店したと認定しています。

事案の経緯の時系列

日付 出来事(判決本文の前提事実及び認定事実による)
平成27年4月 UHC社の設立手続の開始
平成27年8月 HRT氏が前職を退職し、UHC社の業務に専従
平成27年10月頃 MZK氏がHRT氏に証券口座の開設を指示。MZK氏がTKD氏に出資を勧誘
平成27年11月11日 UHC社の資金50万米ドル相当(6,085万4,214円)が証券会社KMNの口座に入金
平成28年2月5日まで UHC社の資金30万米ドル相当(合計3,532万8,500円)が証券会社KMNの口座に入金
平成28年2月12日 HRT氏が株式の引受けを要請する書面を送付
平成28年2月15日 NGS氏が手元資金の額を質問。HRT氏がMZK氏に「入金ベースであれば$1,240,000です。」と伝えて指示を求める
平成28年2月16日から25日まで 会社案内、資金繰り表、設備投資計画、回答文書、資金調達計画、本件貸借対照表がNGS氏に送付される。KSR社の経営協議会議(16日)
平成28年2月26日 KSR社の書面による取締役会で出資を可決(買戻しを条件とすべきとの意見付き)
平成28年2月29日 本件投資契約の締結(6万株、総額60万米ドル)
平成28年3月7日 KSR社が60万米ドルを送金(判決が不法行為の日とした日)
平成28年3月8日から25日まで 出資金がHRT氏の口座を経由して証券会社KMNの口座へ
平成28年7月 別店舗PKRの開店
平成28年8月頃 米国1号店の賃借予定物件が他社に契約され、開店計画が頓挫(買取条項の期限は8月31日)
平成28年9月12日 HRT氏がKSR社に米国1号店を開店できなくなったことを報告
平成28年11月11日 KSR社がHRT氏に株式の買取りを請求
平成28年12月20日 MZK氏が破産手続開始決定を受ける
平成29年2月6日 HRT氏が30万米ドルを支払い、残額30万米ドルの債務承認及び支払確約書を交付
平成29年2月 UHC社の資金が枯渇し、別店舗PKRも閉店
平成31年4月8日 KSR社が弁論準備手続期日において株券の交付について履行の提供
令和元年11月15日 東京地方裁判所が主位的請求を一部認容する判決

貸借対照表を含む資料が送付された平成28年2月の時点で、UHC社の資金のうち少なくとも80万米ドルが既に証券会社KMNの口座に移されていたことが、この事件の背景にあります。

投資契約の定め

判決本文は、本件投資契約に次の内容の定めがあると記載しています。契約書の条文をそのまま再現したものではなく、判決本文が「次の内容の定めがある」として記載した内容です(当事者の呼称は本記事の表記に置き換えています)。

第4条2号ただし書―進捗情報の報告義務

〔UHC社〕は、〔米国1号店〕を開店するまでの間、〔KSR社〕に対し、毎月、月次試算表と開店準備の進捗状況を報告する

第6条1項―共同代表者2名に対する株式買取請求権

〔UHC社〕が平成28年8月31日までに米国1号店を出店が計画された場所〔所在地の記載は省略〕に開店することができなかった場合、〔KSR社〕は〔MZK氏〕及び〔HRT氏〕に対し、〔KSR社〕が保有する〔UHC社〕の株式の全部を買い取るよう請求することができ、この場合の買取価格は、〔KSR社〕が同株式の取得に際して支払った金額と同額とする

判決本文はこの定めを「本件買取条項」と呼んでいます。株式の買取義務を負うのは、出資先の会社ではなく、共同代表者であるMZK氏とHRT氏の2名とされていました。出資額と同額での買取りを約束させる条項は、KSR社の取締役会で付された意見を受けて、KSR社側が契約書の案に入れたものです。

原告の請求と当事者の主な主張

KSR社の請求

区分 請求の根拠 請求の内容
主位的請求 MZK氏とHRT氏の共謀による出資金の詐取を理由とする共同不法行為に基づく損害賠償 3,784万8,674円及びこれに対する平成29年2月7日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金
予備的請求 本件買取条項に基づく買取請求と、債務承認及び支払確約書による合意 買取代金の残額3,351万3,000円及びこれに対する平成29年2月7日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金

主位的請求の金額は、次の計算によるものです。KSR社は、出資した60万米ドルを平成28年3月4日の為替相場1米ドル113円70銭で換算した6,822万円を損害とし、平成29年2月6日に受け取った30万米ドル(3,351万3,000円)を、同日までの遅延損害金314万1,674円と元金3,037万1,326円に充当したとして、残元金3,784万8,674円を請求しました。

予備的請求は、訴訟の途中で追加されたものです。HRT氏は、請求の基礎の同一性を欠くとして訴えの変更を許さない裁判を求めましたが、判決は、請求の基礎の同一性を欠くとはいえないとして、訴えの変更を許しました。予備的請求の遅延損害金の年6分は商事法定利率によるもので、主位的請求の年5分は民法所定の利率によるものです。いずれも令和2年4月1日に施行された改正民法の前の法定利率であり、現在の法定利率(年3分を基準とする変動制)とは異なります。

KSR社の主張

KSR社は、HRT氏が次の行為によって虚偽の情報を提供し、KSR社の投資判断を誤らせて6,822万円を詐取したと主張しました。

  • 出資金の使途:資金繰り表等を提供して、出資金が米国1号店の開店資金として用いられるかのように説明したが、実際には、出資金は着金直後に引き出され、HRT氏名義の証券口座で株式の信用取引の委託証拠金に流用された。
  • 流動資産の額:本件貸借対照表の流動資産102万7,211米ドルのうち少なくとも80万米ドルが証券口座に流用されていたのに、その事実を記載せず、流動資産がUHC社に現存するかのように記載した。
  • 出資の額:株主資本154万0,001米ドルのうち30万米ドルをMZK氏とHRT氏が出資したことになっていたが、両名の出資額は合計3,001米ドルで、出資額の合計は124万3,001米ドルしかなかった。

KSR社は、HRT氏がMZK氏と共謀していたと主張し、仮に共謀が認められなくても、HRT氏は流動資産の流用、MZK氏が30万米ドルを出資していないこと、手元資金が入金ベースで124万米ドルであることを認識しており、記載が虚偽であることを知っていたから故意があると主張しました。

HRT氏の主張

  • 出資を勧誘したのはTKD氏と知己のあったMZK氏であり、HRT氏は勧誘行為をしていない。KSR社が出資することは既に決まっているとの認識の下で、NGS氏の要求に従って資料を送付したにすぎない。
  • 本件貸借対照表は、MZK氏の依頼を受けた米国公認会計士兼弁護士WTN氏が作成したもので、HRT氏は送られてきたファイルを転送したにすぎず、作成には全く関与していない。
  • UHC社は物件確保の交渉を続け、別店舗PKRを実際に運営していたから、出資金が事業資金として用いられると認識していた。証券口座はMZK氏の指示で開設したが、パスワードを変更して取引していたのはMZK氏であり、出資金が信用取引に流用されていたことは知らなかった。
  • KSR社は、事業のリスクを十分に認識し、本件買取条項を設けるなどリスクを回避する対策を講じたうえで、自らの経営判断により出資したのであって、錯誤に陥って出資したものではないから、因果関係はない。

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

結論を左右した争点

判決は、予備的請求について、HRT氏は請求原因事実を争わず同時履行の抗弁を出すのみであり、KSR社は株券の交付について履行の提供をしているから、理由があることが明らかであるとしました。そのうえで、主位的請求の当否のみが争点となるとして、次の2点を判断しています。

  1. 不法行為の成否(争点1):出資金の使途、流動資産の額、株主資本の額の3点について、説明や記載が虚偽であったか、それが違法か、HRT氏が責任を負うか。
  2. 損害(争点2):KSR社の損害の額と、HRT氏が主張した因果関係の否定(KSR社は経営判断で出資したとの主張)が認められるか。

結論を分けたのは、3つの虚偽それぞれについてのHRT氏の認識でした。貸借対照表の数字が事実と異なることはHRT氏が知っていたと認められた一方、出資金がMZK氏の証券取引に使われることを契約時点でHRT氏が認識していたことは証拠上認められませんでした。

裁判所が認定した事実と判断の枠組み

虚偽の判断―3つの記載・説明を個別に検討

判決は、KSR社が主張した3つの点について、まず記載や説明が客観的に虚偽であったかを判断し、虚偽であるときは、出資を検討する者にとってその事項が重要な判断要素であるかどうかによって違法性を判断しています。そのうえで、HRT氏の認識を項目ごとに検討し、責任の有無を判断しました。

項目 虚偽か・違法か HRT氏の責任
流動資産の額(102万7,211米ドル) 虚偽であり、違法 責任あり。口座残高を日常的に確認しており、虚偽を認識していたと認定
株主資本の額(154万0,001米ドル) 虚偽であり、違法 責任あり。入金ベースで124万米ドルであると認識しながら送付・回答したと認定
出資金の使途(事業に用いる) 虚偽であり、違法 責任なし。契約時点で出資金が証券投資に使われると認識していた証拠も、共謀の証拠もない

損害の判断―出資額を損害とし、受領額を充当

判決は、KSR社が虚偽の資料と回答を受けて誤信し出資したとして、60万米ドルを損害と認め、出資の日を不法行為の日として遅延損害金を計算しました。そのうえで、平成29年2月6日に受け取った30万米ドルをまず遅延損害金に、残りを元金に充当し、残元金を米ドル建てで算出してから、口頭弁論終結時の為替相場で日本円に換算しています。

各主張を採用し又は排斥した理由

流動資産の記載―102万米ドルの現預金は「およそ考えられず」虚偽

判決は、UHC社の資産のうち少なくとも80万米ドルが平成28年1月29日までに日本国内での証券投資のために引き出されて証券会社KMNの口座に入金されていたこと、証拠によればその金員が本件貸借対照表の作成基準日である同年2月25日までに口座から引き出されてUHC社に戻された形跡はないことを指摘しました。また、それまでの株式払込金は124万3,001米ドルで、HRT氏本人の供述によれば売上はなく、株式の払込金だけが流動資産になり得たとしました。

そのうえで判決は、金融機関SVTの口座の残高が証拠上明らかでないことを考慮しても、作成基準日の時点でUHC社に102万米ドル余りの現金又は現金同等物が存在したとはおよそ考えられないとして、流動資産の記載は虚偽であったと認めました。違法性については、次のとおり述べています。

「投資先の会社における流動資産の金額は、事業が成り立つかどうかの判断において重要な要素であるから、出資を検討する者に対し、貸借対照表における流動資産の額を偽ることは、不法行為法上違法となるというべきである。」

HRT氏の責任については、HRT氏がMZK氏の指示により預金口座から証券口座への資金移動を行っていたことに加え、HRT氏本人の供述によれば、HRT氏は預金口座の残高を日常的に確認しており、その額はおおむね1万米ドルから2万米ドル程度であったことから、作成基準日において貸借対照表に記載された流動資産が存在しなかったことを認識していたと推認しました。HRT氏は貸借対照表の作成に関与しておらず転送しただけであると主張していましたが、判決は、作成者が誰であるかには触れず、HRT氏が記載の虚偽を認識していたことを理由に責任を認めています。

株主資本の記載―入金ベース124万米ドルと知りながら154万米ドルと示した

判決は、HRT氏が、株主資本の額を154万0,001米ドルとする本件貸借対照表を送付し、NGS氏の質問に対して既払込額が154万0,001米ドルであることを肯定する回答をしたこと、実際の額は124万3,001米ドルであったことを認定しました。そして、KSR社が出資に至った経緯に照らし、KSR社は貸借対照表の記載とHRT氏の説明を受けて株主資本の額を154万0,001米ドルと誤信し、これを前提に出資を決定したと認めました。

違法性については、次のとおり判断しています。

「株式会社に対して新たな出資を検討する者にとって出資先となる株式会社の株主資本額が重要な判断材料であることに照らせば、同行為は、不法行為法上違法となる。」

HRT氏の認識については、NGS氏の質問を受けた際に、MZK氏に「入金ベースであれば$1,240,000です。」と伝えて指示を求めていたことなどから、HRT氏は株主資本が入金ベースで124万米ドルであると認識しながら、154万0,001米ドルを前提とする資料を送付し回答したと認定し、責任を認めました。

出資金の使途―虚偽で違法だが、HRT氏の認識が認められない

判決は、HRT氏が、手持資金154万0,001米ドルにKSR社の出資金60万米ドルを加えた資金を事業に用いることを前提とする資金繰り表を示し、質問にも同じ前提で回答していたことを認定しました。しかし実際には、出資金は出資の直後にHRT氏の銀行口座を経由して証券会社KMNの口座に入金され、MZK氏の証券投資の資金として用いられ、それ以前の手持資金の相当部分も証券取引の資金として国外に流出していました。判決は、出資金を事業のために用いるとする資料の記載とHRT氏の説明は虚偽のものであったといわざるを得ないとし、次のとおり述べました。

「株式会社に対して新たな出資を検討する者にとって出資金の使途が重要な判断材料であることは明らかであるから、かかる事項について虚偽の説明を行うことは、不法行為法上違法となる。」

もっとも、HRT氏の責任については、判断が分かれました。判決は、HRT氏がMZK氏の指示で自己名義の証券口座を開設し、指示に基づいて資金を移していたことから、払い込まれた出資金がMZK氏の証券取引に用いられていることを認識していたことは明らかであるとしました。他方で、次の事情を挙げています。

  • KSR社が出資した60万米ドルについて、HRT氏は、MZK氏の指示を受けて金融機関SVTの口座に移したにすぎないこと
  • HRT氏は、MZK氏から、証券口座に送金した資金は一時的な運用の後にUHC社の預金口座に戻すとの説明を受けており、証券取引の内容も把握していなかったこと

判決は、これらの事情から、契約締結の時点で、HRT氏がKSR社の出資金をMZK氏が証券投資に利用するつもりであることを認識していたと認めるに足りる証拠はなく、MZK氏と共謀のうえ、事業資金に用いる意思がないのにあるかのように装って出資金名目で金銭を詐取したと認めるに足りる証拠もないとしました。そして、次のとおり結論付けています。

「〔HRT氏〕は、出資金の使途を偽った点については、〔KSR社〕に対し不法行為責任を負わない。」

KSR社が主張した、MZK氏との共謀による詐取という構成は認められなかったことになります。判決が責任を認めたのは、HRT氏自身が虚偽と認識していた貸借対照表の2つの記載を示した点です。

因果関係―経営判断で出資したとの主張は採用しない

HRT氏は、KSR社がリスクを認識し、買取条項を設けるなどの対策を講じたうえで経営判断として出資したのであり、錯誤に陥って出資したものではないと主張しました。判決は、KSR社の経営協議会議と取締役会の議論の状況に照らし、次のとおり述べてこの主張を退けました。

「〔KSR社〕が、本件貸借対照表の流動資産記載及び株主資本記載の内容を信頼して本件投資契約の締結を決断したことが認められるから、〔HRT氏〕の主張は採用することができない。」

KSR社の経営協議会議では、資本金と資本準備金の額を通帳の写しなどで確認する必要があることが確認されていました。判決は、こうした社内の議論の状況を、KSR社が貸借対照表の記載を信頼して出資を決めたと認定する根拠としています。リスクを検討して買取条項を設けたことは、因果関係を否定する事情とはされませんでした。

損害額の計算―米ドル建てで充当し、口頭弁論終結時の相場で換算

判決は、KSR社が本件不法行為によって60万米ドルの損害を受けたとし、出資の日である平成28年3月7日から年5分の割合による遅延損害金の請求権を有していたと認めました。そのうえで、平成29年2月6日に受領した30万米ドルを、同日までの遅延損害金2万7,698.63米ドルに充当し、残る27万2,301.37米ドルを元金に充当したと認めました。

項目 金額(判決本文による)
損害(出資額) 60万米ドル
受領額 30万米ドル(平成29年2月6日)
遅延損害金への充当 2万7,698.63米ドル(1セント以下四捨五入)
元金への充当 27万2,301.37米ドル
口頭弁論終結時の残元金 32万7,698.63米ドル
換算の相場 口頭弁論終結時の1米ドル当たり106.02円(特定の銀行の電信売相場と電信買相場の中間値)
認容額 3,474万2,609円(1円以下四捨五入)及び平成29年2月7日から年5分の遅延損害金

当事務所の検算では、遅延損害金2万7,698.63米ドルは、60万米ドルに年5分を乗じ、平成28年3月7日から平成29年2月6日までを両端の日を含めて337日として日割りした額と一致し、32万7,698.63米ドルに106.02円を乗じると3,474万2,608円余りとなり、四捨五入して認容額と一致します。

KSR社は、出資時の為替相場(1米ドル113円70銭)で損害を日本円に換算して請求していましたが、判決は、米ドル建てで損害と充当を計算し、口頭弁論終結時の相場で換算しました。主位的請求の請求額3,784万8,674円と認容額3,474万2,609円との差は、主にこの換算の方法の違いによるもので、請求のうち認容額を超える部分が棄却されています。判決本文は、口頭弁論終結時の相場で換算した理由を特に述べていません。

主文及び結論

判決の主文は、次のとおりです(ここでの「原告」はKSR社、「被告」はHRT氏を指します)。

  1. 「被告は、原告に対し、3474万2609円及びこれに対する平成29年2月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」
  2. 「原告のその余の請求を棄却する。」
  3. 「訴訟費用は、これを10分し、その9を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。」
  4. 「この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。」

判決は、主位的請求が主文の限度で理由があるとして一部を認容し、予備的請求については判断するまでもないとしました。HRT氏の不法行為責任は、本件貸借対照表の流動資産と株主資本の記載が虚偽であることを認識しながら示した点について認められ、出資金の使途を偽った点については否定されました。

判断の射程―参考となる点と一般化できない点

以下は、判決の内容を踏まえた当事務所の評価です。裁判所が示した判断そのものとは区別してお読みください。

参考となる点

第1に、出資を勧誘される側に示された貸借対照表の流動資産の額と株主資本の額について、虚偽を示すことが不法行為法上違法となると明示した点です。判決は、流動資産の額は事業が成り立つかどうかの判断において重要な要素であり、株主資本の額や出資金の使途は出資を検討する者にとって重要な判断材料であるとしています。出資や株式の取得の場面で示される財務資料の重要性を確認した判断といえます。

第2に、資料を作成していない者でも、虚偽と知りながら資料を送付し、質問に回答すれば責任を負い得ることです。HRT氏は、貸借対照表の作成者は会計士であり自分は転送しただけであると主張しましたが、判決は、HRT氏が口座の残高を日常的に確認していたこと、経営を主導した共同代表者に「入金ベースであれば」と伝えて対応の指示を求めていたことなどから虚偽の認識を認定し、責任を認めました。出資先の経営を主導していない代表者であっても、窓口として資料を提供する立場にある者は、その内容に責任を問われる可能性があります。

第3に、責任の範囲は項目ごとの認識によって区別されたことです。出資金の使途については、記載が虚偽で違法であることは認められましたが、HRT氏が契約時点で流用を認識していた証拠がないとして責任が否定されました。不法行為の構成で出資先の役員個人の責任を追及する場合には、どの説明について、その者が虚偽をどこまで認識していたかを具体的に立証する必要があることを示しています。

第4に、出資者がリスクを検討し、買取条項などの対策を講じていたことは、因果関係を否定する理由にならなかったことです。判決は、出資者の社内の会議や取締役会の議論の状況から、記載を信頼して出資を決めたと認定しました。出資の判断の過程を社内の記録に残しておくことが、後に因果関係を立証する際に役立ち得ることを示す例です。

第5に、外貨建ての出資について、損害を外貨で計算し、口頭弁論終結時の相場で換算した点です。本件では、出資時より円高になっていたため、出資者が請求した額を下回る額が認容されました。外貨建ての取引で損害賠償を請求する場合には、換算の時点によって請求額が変わり得ることに注意が必要です。

一般化できない点

本判決は、出資先の口座残高や払込額、資金の移動が証拠で具体的に裏付けられ、被告本人がそれを把握していたことが認定された事案についての判断です。財務資料の誤りが会計処理の見解の相違による場合や、資料を提供した者が内容を確認できる立場になかった場合に、同じように責任が認められるとは限りません。

本判決は、共同不法行為(共謀による詐取)を理由とする請求について、共謀を認めず、HRT氏自身の認識に基づく不法行為として責任を認めたものです。経営を主導したMZK氏の責任については、同人が訴訟の当事者ではないため、判断されていません。

予備的請求(買取条項に基づく買取代金の残額)について、判決は、理由があることが明らかであるとしつつ、主位的請求が認容されたため判断するまでもないとしました。買取条項の有効性や解釈について、本判決から一般的な結論を導くことはできません。また、本件は、出資先の会社ではなく共同代表者個人が買取義務を負う条項であった点にも特色があります。

本件の遅延損害金は改正前の民法及び商法の法定利率(年5分、年6分)によるもので、令和2年4月1日以降に生じた債権には現在の法定利率が適用されます。上訴の有無及び確定は確認できていないため、その点にも留意が必要です。

出資や株式の取得の際に確認しておきたいこと

本件では、出資者の経営協議会議で、資本金と資本準備金の額を通帳の写しなどで確認する必要があることが確認され、出資者側はその後、通帳の写しの提出を求めたと主張していました。出資や株式の取得の前に、貸借対照表の現預金の額を預金残高証明書や通帳で裏付けること、払込額を払込みの記録で確認すること、出資金の使途を契約で特定し、報告や監査の仕組みを設けることが考えられます。買取条項のような出口の定めを置く場合には、買取義務者の資力も確認しておくことが重要です。これらは本判決を踏まえた当事務所の着眼点であり、本判決が特定の条項例の有効性を判断したものではありません。

よくあるご質問

出資先の会社が示した貸借対照表が虚偽だった場合、その会社の役員個人に損害賠償を請求できますか。

本判決では、貸借対照表の流動資産と株主資本の記載が虚偽であることを認識しながら、それを出資者に送付し、質問に回答した共同代表者個人について、不法行為責任が認められました。役員個人の責任を問うには、その役員が虚偽の内容を認識していたことなどを具体的に立証する必要があります。

貸借対照表を作成したのが会計士であれば、それを転送しただけの役員は責任を免れますか。

本判決では、会計士が作成した貸借対照表を転送しただけであるという主張は採用されませんでした。判決は、その役員が口座残高を日常的に確認しており、記載された流動資産が存在しないことを認識していたと推認して、責任を認めています。

出資者がリスクを検討して買取条項を設けていた場合でも、因果関係は認められますか。

本判決では、出資者が経営判断で出資したもので因果関係がないとの主張は退けられました。判決は、出資者の経営協議会議と取締役会の議論の状況から、出資者が貸借対照表の記載を信頼して出資を決めたと認定しています。

米ドルで出資した場合、損害額はどの時点の為替相場で計算されますか。

本判決では、損害と弁済の充当を米ドル建てで計算し、口頭弁論終結時の為替相場で日本円に換算しました。出資者は出資時の相場で換算して請求していましたが、円高のため認容額は請求額を下回りました。判決本文は、口頭弁論終結時の相場によった理由を特に述べていません。

出資金が事業に使われずに流用された場合、出資の勧誘をした役員は必ず責任を負いますか。

必ずしもそうとはいえません。本判決では、出資金の使途についての説明は虚偽で違法とされましたが、資料を提供した共同代表者が、契約の時点で出資金が証券投資に使われることを認識していたと認める証拠がないとして、その点の責任は否定されました。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、2024年(令和6年)10月には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ました。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めています。

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著書

非上場会社における少数株主対策の手法と実務
『非上場会社における少数株主対策の手法と実務』(日本法令)
中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策
『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
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