資金援助の条件とされた全株式の無償譲渡と取締役解任決議の効力―東京地方裁判所令和4年4月25日判決

手形の決済資金に窮した同族会社の経営者株主が、支援を申し出た相手方の求めに応じて、資金援助の条件として自社の全株式を無償で譲渡し、その半年余り後に取締役を解任された。この場合、株式を手放した旧オーナー側は、だまされたとして株式譲渡契約を取り消し、解任決議の不存在を主張できるのでしょうか。
東京地方裁判所令和4年4月25日判決は、電気工事会社の株式の約46%を保有していた取締役が、全株式の無償譲渡は詐欺又は錯誤によるもので、公序良俗にも反し、譲渡承認も株主名簿の名義書換もないとして、臨時株主総会の解任決議と選任決議の不存在確認を求めた事件と、会社側が取締役の地位にないことの確認を求めた事件をあわせて審理し、旧オーナー側の主張をすべて退けました。選任決議の不存在確認を求める部分は確認の利益がないとして却下し、解任決議の不存在確認の請求は棄却し、会社側の請求を認容しています。
救済型のM&Aや事業承継の場面では、株式の対価を無償又は低額とし、その代わりに資金援助や債務の引受けを受けるという取引が行われることがあります。本記事では、判決が、資金援助の範囲や譲渡後の経営体制を具体的に協議していなかったことをどのように評価し、株式の取戻しを認めなかったのかを、判決本文に基づいて整理します。
裁判例の基本情報
| 裁判所 | 東京地方裁判所民事第8部 |
|---|---|
| 裁判日 | 令和4年4月25日 |
| 事件番号 | 令和元年(ワ)第32486号(第1事件)、令和2年(ワ)第21221号(第2事件)。判決本文の冒頭では「令和1年」と表記されています |
| 事件の内容 | 第1事件は臨時株主総会の決議の不存在確認、第2事件は取締役の地位の不存在確認。両事件は併合して審理されました |
| 裁判の形式 | 判決 |
| 審級 | 第一審 |
| 結論 | 旧オーナー側(第1事件の原告)の訴えのうち選任決議の不存在確認を求める部分を却下し、その余の請求(解任決議の不存在確認)を棄却。会社側(第2事件の原告)の請求を認容し、旧オーナー側が取締役の地位にないことを確認。訴訟費用は旧オーナー側の負担 |
| 上訴の状況 | 上訴の有無及び確定は確認できていません |
この表は、判決本文の冒頭及び末尾の記載に基づいて当事務所が作成したものです。
当事者の表記
判決に出てくる会社名・氏名は、本記事独自のイニシャルに置き換えています。判決が用いている符号も、そのままは使わずに次の表記へ置き換えています。
| 本記事の表記 | 立場 |
|---|---|
| 創業家の株主MRT氏(以下「MRT氏」) | 第1事件の原告・第2事件の被告。創業者の孫で、電気工事会社DNKの取締役(専務)として実質的に一人で経営を行っていました。DNKの株式4万200株のうち1万8,666株を保有していました |
| 電気工事会社DNK(以下「DNK」) | 第1事件の被告・第2事件の原告。電気工事、消防施設工事及び上下水道工事の請負等を目的とする株式会社で、株式の譲渡制限の定めがあります。全株式の譲渡の対象となった会社です |
| 不動産管理会社FKS(以下「FKS」) | 創業家が設立した会社で、喫茶店の経営、貸室業等を目的とし、当時はDNKや創業家の資産である不動産を主に管理していました。DNKと同時に全株式が無償で譲渡されました |
| 叔父TKH氏 | 創業者の二男。DNKの代表取締役(社長)で、DNKの株式1万500株を保有していました |
| 叔父MNR氏 | 創業者の三男。DNKの常務で、DNKの株式8,820株を保有していました |
| 叔母YSK氏 | 創業者の長女。DNKの取締役で、DNKの株式2,214株を保有していました |
| MRT氏の亡父 | 創業者の長男。平成30年9月15日に死亡しました。FKSの本店所在地にある建物の4階部分と、その敷地の借地権の名義人でした |
| 母KMC氏、弟RYO氏 | MRT氏の母と弟。FKSの株主でした |
| 従姉妹WKN氏 | 叔父TKH氏の長女。DNKの事務を手伝っており、支援者を探す窓口となりました。後に本件の選任決議でDNKの取締役兼代表取締役に選任された人物です |
| JNT氏 | 従姉妹WKN氏のいとこで、第一の譲受会社GTWの代表取締役であった人物 |
| 支援者KGM氏 | 第一の譲受会社GTWの会長で、資金援助の条件を提示した人物。最終の譲受会社VNSの唯一の取締役兼代表取締役の夫です |
| 第一の譲受会社GTW(以下「GTW」) | DNK及びFKSの全株式を無償で譲り受けた株式会社。令和元年8月8日に破産手続開始の決定を受けました |
| 最終の譲受会社VNS(以下「VNS」) | GTWから、DNK及びFKSの全株式を無償で譲り受けた株式会社。本件の臨時株主総会に全株式の株主として出席しました |
| 信用金庫MNM、信用金庫HGS | DNKが手形借入をしていた金融機関 |
| 信用金庫KTR、銀行WTB | DNKが証書借入をしていた金融機関。MRT氏が連帯保証人となっていました |
判決本文は、支援者KGM氏、JNT氏及び従姉妹WKN氏の3名を併せて一つの呼称で呼んでいます。本記事では、これを「KGM氏ら」と表記します。判決本文を引用する部分では、当事者の呼称を上記の表記に置き換え、置き換えた箇所を〔 〕で示しています。判決本文の数字は全角の算用数字で記載されているため、引用部分では判決本文の表記のままとしています。
事案の概要―資金援助の条件として、全株式を無償で譲渡した
経営者株主が手形の決済資金に窮し、一時音信不通となった
DNKは電気工事等を営む同族会社で、株式を譲渡によって取得するには株主総会の承認を要する旨の定款の定めがありました。定款には、取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をし、株主の全員が書面等により同意したときは、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなす旨の定め(いわゆるみなし決議の定め)と、取締役の任期を選任後8年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする定めもありました。
平成31年1月17日時点のDNKの株主は、叔父TKH氏(1万500株)、叔父MNR氏(8,820株)、叔母YSK氏(2,214株)、MRT氏(1万8,666株)の4名で、発行済株式の総数は4万200株でした。役員は、叔父TKH氏が代表取締役(社長)、叔母YSK氏とMRT氏が取締役で、3名とも平成30年8月31日に重任されていました。もっとも、判決の認定では、実際の経営はMRT氏が実質的に一人で行っていました。
MRT氏は、平成30年2月、DNKの資金として信用金庫HGSから3,000万円の手形借入を行いましたが、同年5月にその決済資金の調達に窮し、架空の発注書を示して信用金庫MNMから4,000万円の手形借入(支払日同年11月21日)を行い、そのうち3,000万円を信用金庫HGSへの手形債務の支払に充てたうえで、信用金庫HGSから同額の手形借入(支払日同年12月28日)を改めて行いました。
平成30年11月頃には、これらの手形債務の支払が困難になり、MRT氏は、信用金庫MNMの手形の支払日であった11月21日に音信不通となり、同月26日に帰宅しました。その間、DNKの事務を手伝っていた従姉妹WKN氏は、父である叔父TKH氏と共に金融機関と支払日の延長を交渉する一方、いとこのJNT氏に経営について相談し、支援者KGM氏を紹介されました。
平成30年12月、DNKは、信用金庫MNMについては支払日を平成31年4月1日とする手形借入を改めて行い、信用金庫HGSについては、3,000万円のうち1,500万円だけを12月28日に支払い、残りの1,500万円について支払日を平成31年3月29日とする手形借入を改めて行うこととなりました。判決は、この時点の両金庫に対する手形債務に係る手形を併せて「本件各手形」と呼んでいます。
資金援助の条件として示された全株式の無償譲渡
MRT氏は、平成31年1月までに、従姉妹WKN氏と共に、JNT氏と支援者KGM氏に対し、支払日が迫っていた本件各手形の決済資金の援助を依頼しました。これに対し、支援者KGM氏は、JNT氏と従姉妹WKN氏を介して、資金援助の条件として、DNKの全株式とFKSの全株式をGTWに無償で譲渡すること、FKSの建物の4階部分と敷地の借地権の名義をMRT氏の亡父からFKSに変更することなどを提案し、MRT氏はこれを了承しました。
MRT氏は、平成31年1月、支援者KGM氏とJNT氏から紹介を受けた司法書士と協議しながら手続を進めました。MRT氏は、両社の株主に対し、譲渡承認のみなし決議のための同意書の提出を依頼する文書を作成し、自分と弟RYO氏の名義の株式譲渡契約書と同意書を作成し、叔父TKH氏、叔父MNR氏及び叔母YSK氏からは各自が作成した書面の提出を受け、従姉妹WKN氏が代筆した母KMC氏名義の書面の提出も受けたうえで、これらをGTWに送付しました。
平成31年1月18日の株式譲渡契約と、翌日の再譲渡
平成31年1月18日付けで、DNKの株主4名は、それぞれ保有するDNKの全株式をGTWに無償で譲渡することなどを内容とする株式譲渡契約を締結しました。判決本文は、このうちMRT氏を譲渡人とするものを「原告譲渡1」、4名分を併せて「本件各譲渡1」と呼んでいます。同じ日付けで、FKSの株主6名も、FKSの全株式をGTWに無償で譲渡する契約を締結しました(判決本文の「本件各譲渡2」)。
あわせて、DNKの株主4名は、取締役かつ株主であったMRT氏の提案を受け、会社法319条1項に基づいてその提案に同意する旨の同日付けの書面により、本件各譲渡1の承認に同意しました。FKSの株主6名も同様の書面により、本件各譲渡2の承認に同意しています。なお、判決は、FKSの株式譲渡契約書と同意書のうち、認知症に罹患している母KMC氏名義のものは従姉妹WKN氏が、知的障害のある弟RYO氏名義のものはMRT氏が、それぞれ署名を代筆したと認定しています。
翌日の平成31年1月19日、GTWは、VNSとの間で、DNKの全株式(4万200株)とFKSの全株式(1万2,000株)をVNSに無償で譲渡することなどを内容とする株式譲渡契約を締結しました。
資金援助の実行と、その後の解任決議
MRT氏は、平成31年2月、700万円を超える費用を自ら負担して、建物の4階部分と借地権の名義を亡父からFKSに変更するなどしました。支援者KGM氏は、妻が代表者を務めるVNSや自ら経営に関与していたGTWの関係会社を通じて、平成31年4月30日までに、DNKに少なくとも合計2,870万円の資金援助を行いました。DNKは、信用金庫MNMの手形債務4,000万円(支払日平成31年4月1日)のうち資金繰りが付かなかった2,100万円について、この資金援助のうち2,100万円を支払に充て、不渡りを回避しました。
MRT氏は、譲渡後も、支援者KGM氏に対し、DNKの損益計算書、金融機関からの借入残高に関する書類、入出金に関する書類を送付していました。しかし、令和元年8月3日にDNKに出社しなくなり、その数日後には音信不通になりました。同月26日には、医師から、うつ病及び肝機能障害の疑いのため就業困難と思われる旨の診断を受けています。この間の令和元年8月8日、GTWは破産手続開始の決定を受けました。
令和元年9月3日付けで、DNKの全株式を有する株主であるVNSが出席し、MRT氏を取締役から解任する決議(本件解任決議)と、従姉妹WKN氏を取締役及び代表取締役に選任する決議(本件選任決議)が可決された旨の臨時株主総会議事録が作成され、同月18日付けで登記がされました。また、叔父TKH氏が取締役兼代表取締役を、叔母YSK氏が取締役を、いずれも令和元年9月3日に辞任した旨の登記もされています。
連帯保証債務の請求と、詐欺取消しの意思表示
MRT氏は、DNKの金融機関からの証書借入の多くについて、叔父TKH氏と共に連帯保証人となっていました。DNKが分割弁済を遅滞したため、令和2年3月、信用金庫KTRの貸付けと銀行WTBの貸付けについて期限の利益が失われ、MRT氏と叔父TKH氏は、残元金1,599万2,000円と634万8,000円(合計2,234万円)について連帯保証債務の履行を求められました。
MRT氏は、令和2年7月27日到達の書面で、GTWの破産管財人に対し、GTW又はその関係者による詐欺を理由として、DNKとFKSの株式に係る自らの株式譲渡契約を取り消す旨の意思表示をしました。MRT氏は解任決議等の不存在確認を求めて提訴し(第1事件)、DNKはMRT氏が取締役の地位にないことの確認を求めて提訴しました(第2事件)。
事案の経緯の時系列
| 日付 | 出来事(判決本文の前提事実及び認定事実による) |
|---|---|
| 平成30年2月 | MRT氏が、DNKの資金として信用金庫HGSから3,000万円の手形借入 |
| 平成30年5月 | MRT氏が架空の発注書を示して信用金庫MNMから4,000万円の手形借入。うち3,000万円を信用金庫HGSに支払い、同金庫から同額を再度手形借入 |
| 平成30年8月31日 | 叔父TKH氏、叔母YSK氏、MRT氏がDNKの取締役に重任 |
| 平成30年9月15日 | MRT氏の亡父が死亡 |
| 平成30年11月21日から26日 | 信用金庫MNMの手形の支払日にMRT氏が音信不通となり、同月26日に帰宅 |
| 平成30年11月頃 | 従姉妹WKN氏がJNT氏に相談し、支援者KGM氏を紹介される |
| 平成30年12月 | 信用金庫MNMの手形を支払日平成31年4月1日で借り直し。信用金庫HGSには1,500万円を支払い、残1,500万円を支払日平成31年3月29日で借り直し |
| 平成31年1月までに | MRT氏らが資金援助を依頼。支援者KGM氏が、両社の全株式の無償譲渡等を条件として提案し、MRT氏が了承 |
| 平成31年1月18日付け | DNKの株主4名及びFKSの株主6名が、各社の全株式をGTWに無償で譲渡する株式譲渡契約を締結。譲渡承認のみなし決議のための同意書も作成 |
| 平成31年1月19日付け | GTWが、DNK及びFKSの全株式をVNSに無償で譲渡する株式譲渡契約を締結 |
| 平成31年2月 | MRT氏が700万円を超える費用を負担して借地権等の名義をFKSに変更。DNKの損益計算書等を支援者KGM氏に送付 |
| 平成31年4月1日 | 信用金庫MNMの手形の支払日。資金援助のうち2,100万円を充てて不渡りを回避 |
| 平成31年4月30日まで | 支援者KGM氏が関係会社等を通じて少なくとも合計2,870万円の資金援助 |
| 令和元年5月、7月 | MRT氏が借入残高や入出金に関する書類を支援者KGM氏に送付 |
| 令和元年8月3日 | MRT氏がDNKに出社しなくなり、数日後に音信不通 |
| 令和元年8月8日 | GTWが破産手続開始の決定を受ける |
| 令和元年8月26日 | MRT氏が、うつ病等の疑いのため就業困難と思われる旨の診断を受ける |
| 令和元年9月3日 | DNKの臨時株主総会(本件総会)。VNSが出席し、解任決議と選任決議が可決された旨の議事録が作成される(登記は同月18日付け) |
| 令和2年3月24日、25日 | 銀行WTB及び信用金庫KTRの貸付けについて期限の利益喪失。MRT氏らが連帯保証債務の履行を求められる |
| 令和2年7月27日 | MRT氏の詐欺取消しの意思表示がGTWの破産管財人に到達 |
| 令和4年4月25日 | 東京地方裁判所が、第1事件の一部を却下し、その余を棄却し、第2事件の請求を認容する判決 |
第1事件と第2事件の提訴の日は、判決本文には記載されていません。
判断の前提となった定款の定めと契約上の保証
判決本文は、定款の定めと株式譲渡契約の内容を要約の形で記載しており、定款や契約書の条文そのものを掲げてはいません。以下は、判決本文の記載に基づく整理です。
DNKの定款6条―株式の譲渡制限
株式を譲渡によって取得するには株主総会の承認を受けなければならない。
DNKの定款20条1項―株主総会のみなし決議
取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主の全員が書面等により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
この定めは、会社法319条1項と同じ内容です。判決は、本件各譲渡1の承認について、会社法319条1項又はこれと同旨の定款の定めに基づくものとして判断しています。
DNKの定款27条1項―取締役の任期
取締役の任期は、選任後8年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
MRT氏は平成30年8月31日に重任されていたため、解任決議がなければ任期はなお続いていたことになります。この点は、後に見る確認の利益の判断で意味を持ちました。
株式譲渡契約2条(1)―手続完了の保証
判決は、DNKの株主4名が、本件各譲渡1に係る各契約において、GTWに対し、GTWに各株式を譲渡するについて必要な手続を全て完了している旨を保証したと認定しています(判決本文は、株式譲渡契約書の各第2条(1)を根拠として挙げています)。株式の対価は無償とされていました。
当事者の請求と主要な主張
両事件の請求
- 第1事件:MRT氏は、DNKに対し、令和元年9月3日付けの臨時株主総会における本件解任決議と本件選任決議が不存在であることの確認を求めました。
- 第2事件:DNKは、MRT氏に対し、本件解任決議により解任されたとして、MRT氏がDNKの取締役の地位にないことの確認を求めました。
判決が整理した6つの争点と双方の主張
| 争点 | MRT氏の主張 | DNKの主張 |
|---|---|---|
| 詐欺取消しの成否 | KGM氏らは、DNKを乗っ取る意図の下、手形決済資金合計7,000万円と金融機関からの証書借入の分割返済資金を援助する意思も、MRT氏らに経営を続けさせる意思もないのに、精神的に弱っていたMRT氏に資金援助を申し出て、その代わりに全株式を一時的に預かると申し向け、誤信させて契約させた。手形決済資金への援助は2,100万円にすぎない | 具体的な資金援助の希望額や経営継続の意向は示されていなかったから、欺罔行為はない。MRT氏は同意書を積極的に取り付ける一方、譲渡後は経営への参画を前提としない言動をとっていた。資金援助により不渡りも回避されている |
| 錯誤無効の成否 | 有効な資金援助を受けられること、譲渡後も親族で経営を継続できることが動機であり、それは明示又は黙示に表示されていたから、動機の錯誤により無効である | 動機はいずれも表示されていない |
| 公序良俗違反の成否 | 多額の負債の多くを連帯保証していたMRT氏の窮迫ないし軽率を利用し、相当額の価値のある全株式を無償で取得して著しく過当な利益を得る目的で締結されたもので、無効である | MRT氏から強く資金援助を求められる中で申入れを受けて応じたもので、赤字が続いて不渡りを出しそうな会社への資金援助のための譲渡であり、著しく過当な利益の獲得を目的としていない |
| 譲渡承認の欠缺 | 株主総会の譲渡承認決議がないから、会社との関係では無効である | 全株主の書面による同意があり、承認決議があったものとみなされる |
| VNSによる株主権の対抗 | 株主名簿の名義書換が適法に行われていないから、VNSは株主であることをDNKに対抗できない | 名義書換はMRT氏が行っていたはずで、怠っていたのであれば不当拒絶に当たる。そうでなくても、MRT氏が名義書換の未了を主張することは信義則に反する |
| 決議の存否 | 本件総会は開催されておらず、物理的に不存在である。そうでなくても、発行済株式の約46%を有するMRT氏への招集通知がないから、法的に不存在である | 本件総会は実際に開催された。譲渡は有効で、VNSは全株式について株主であることを対抗できるから、不存在事由はない |
お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。
結論を左右した争点
本件の争いの中心は、MRT氏がDNKの株式を有効に手放したかどうかでした。MRT氏が株主のままであれば、MRT氏に招集通知をせずに行われた臨時株主総会の決議の存否が問題となります。反対に、株式譲渡が有効で、VNSが全株式の株主としてDNKに権利を主張できるのであれば、VNSだけが出席した臨時株主総会でも決議は有効に成立し得ます。
判決は、まず、株式譲渡契約の効力を否定する主張(詐欺取消し、錯誤無効、公序良俗違反、譲渡承認の欠缺)を順に検討し、次に、名義書換が未了であってもVNSが株主であることをDNKに対抗できるかを検討しました。そのうえで、確認の利益の有無と、決議の存否を判断しています。結論を分けたのは、次の2点です。
- 資金援助の範囲や譲渡後の経営体制について具体的な協議がなかったという事実関係の下で、資金援助と経営継続をめぐる欺罔行為や動機の表示が認められるか。
- 株主全員が譲渡に同意し、手続完了を保証し、旧オーナー自身が手続を主導した場合に、名義書換の未了を理由に新株主の権利行使を否定できるか。
裁判所が認定した重要な事実と判断の枠組み
協議されたのは目前の手形の支払への対応だけだった
判決が最も重視したのは、契約締結の際の協議の内容です。判決は、MRT氏とKGM氏らは、支払日が迫っていた本件各手形の支払に関する対応については協議したものの、MRT氏から希望する具体的な資金援助の内容は示されなかったため、資金援助の範囲や額に関する具体的な協議はしておらず、同様に、譲渡後もMRT氏や親族で経営を続けたいという意向も示されなかったため、その後の役員構成や経営体制に関する具体的な協議もしなかったと認定しました。
判決は、あわせて、MRT氏が、契約締結の際に、架空の発注書を示して信用金庫MNMから4,000万円の手形借入を行ったことや、母KMC氏が認知症であること、弟RYO氏に知的障害があることを、JNT氏と支援者KGM氏に秘していたことも認定しています。
多額の債務があり、これを上回る資産の価値は立証されなかった
判決は、株式譲渡の当時、DNKには本件各手形に係る債務のほか、金融機関からの証書借入に係る債務等があり、少なくとも合計1億3,500万円程度の債務があって、そのほとんどを金融機関からの借入債務が占めていたと認定しました。そして、DNKとFKSがこれを上回る価値の資産を有していた事実を認めるに足りる的確な証拠はないとし、MRT氏が提出した証拠によって、契約締結時に両社が有していた資産の適切な評価額を認定することは困難であるとしています。
資金援助は実際に行われ、不渡りは回避された
判決は、支援者KGM氏が関係会社等を通じて平成31年4月30日までに少なくとも合計2,870万円の資金援助を行い、そのうち2,100万円によって信用金庫MNMの手形の不渡りが回避されたことを認定しました。MRT氏も、手形決済資金への援助として2,100万円が提供されたこと自体は争っていませんでした。
旧オーナー自身が譲渡の手続を主導していた
判決は、MRT氏が、司法書士と協議しながら手続を進め、他の株主に同意書の提出を依頼する文書を作成し、書面を集めてGTWに送付したこと、DNKの株主全員(代表取締役であった叔父TKH氏を含みます)が譲渡の承認に同意し、必要な手続を全て完了している旨をGTWに保証していたことを認定しました。この事実は、名義書換の未了をめぐる判断で決め手となっています。
各主張を採用し又は排斥した理由
詐欺取消し―資金援助の範囲も経営継続も約束されたとは認められない
判決は、MRT氏の主張する欺罔行為を、資金援助の内容と、譲渡後の経営継続の2点に分けて検討しました。
資金援助については、協議したのは支払日が迫っていた本件各手形の支払への対応であり、資金援助の範囲や額に関する具体的な協議はされなかったことから、仮にKGM氏らがDNKの負債の状況やその多くをMRT氏が連帯保証していることを契約前に把握していたとしても、手形決済資金7,000万円と証書借入の返済資金の援助という、MRT氏の主張する内容の申出を行ったとは認め難いとしました。さらに、事前に対応を協議した本件各手形の債務のうち、資金繰りが付かなかった2,100万円については実際に資金援助が行われ、不渡りが回避されていることからも、資金援助に関して欺罔行為があったとみることはできないとしています。
経営継続については、判決は次のとおり述べました。
「資金援助を行う代わりに〔DNK〕の全株式を一時的に預かると〔KGM氏ら〕が〔MRT氏〕に対し申し向けた事実を認めるに足りる証拠はない」
加えて、譲渡後の役員構成や経営体制について具体的な協議をしなかったことからも、経営を継続できるとMRT氏に誤信させるような言動をKGM氏らがしたとは認め難いとしました。
判決は、さらに、譲渡が無償であった点についても検討しています。DNKにはほとんどを金融機関からの借入が占める少なくとも1億3,500万円程度の債務があり、両社がこれを上回る価値の資産を有していた事実を認めるに足りる的確な証拠はないことから、次のように判断しました。
「本件各譲渡1及び2が対価の相当性を欠くとまでは断じ難い。」
そのうえで、判決は、株式を譲り受けたGTWが翌日に全株式をVNSに無償譲渡し、その約半年後に破産手続開始決定を受けたことや、DNK側が主張する資金援助の内容に変遷がみられることなどの事情を考慮しても、「〔MRT氏〕主張の欺罔行為があったということはできない」と結論付けました。
錯誤無効―動機が表示されたとは認められない
MRT氏は、有効な資金援助を受けられることと、親族で経営を継続できることが動機であり、それが明示又は黙示に表示されていたから、動機の錯誤により契約は無効であると主張しました。MRT氏は、多額の費用を自ら負担して借地権等の名義をFKSに集約させたことなどを、その根拠として指摘していました。
判決は、これらの事情を考慮しても、詐欺取消しについて説示したところに照らせば、契約締結の際に、KGM氏らに対して、動機として資金援助と経営継続が明示又は黙示に表示されたとは認め難いとして、主張を退けました。
判決本文は「錯誤無効」の語を用いています。株式譲渡契約は平成31年1月に締結されており、錯誤の効果を取消しとした令和2年4月1日施行の改正民法の前の規定(錯誤を無効とする規定)を前提とした判断と考えられます(この点は当事務所の説明です)。
公序良俗違反―著しく過当な利益の獲得を目的としたとは認め難い
MRT氏は、譲渡後に取締役を解任される一方で、DNKの連帯保証人として合計2,234万円の一括弁済義務を負う立場に置かれていることなどを指摘し、KGM氏らが窮迫ないし軽率を利用したと主張しました。
判決は、解任決議に至った経緯(MRT氏が架空の発注書で手形借入を行い、手形の支払日に音信不通となり、譲渡後にも出社しなくなって音信不通となり、就業困難と思われる旨の診断を受けたこと等)と、詐欺取消しについて説示したところに照らし、次のとおり判断しました。
「〔KGM氏ら〕において著しく過当な利益を獲得することを目的として本件各譲渡1に係る各契約が締結されたものであるとまでは認め難いから、これらの契約が公序良俗に反し無効であるということはできない。」
判決は、多額の債務があり、これを上回る資産の価値が立証されていない状況では、全株式が無償で譲渡されたことだけでは、譲受側が過当な利益を得たとは評価できないという考え方をとったものといえます(この評価は当事務所によるものです)。
譲渡承認の欠缺―株主全員の書面による同意で承認決議があったものとみなされる
MRT氏は、株主総会で譲渡承認決議がされていないから、譲渡はDNKとの関係では無効であると主張しました。判決は、取締役かつ株主であったMRT氏の承認の提案を受け、株主の全員が同意書により同意の意思表示をしたことによって、次のとおり判断しました。
「当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされるから、〔DNK〕との関係でも有効であると認められる。」
自ら提案者となって同意書を集めたMRT氏が、後になって承認決議がないと主張しても、みなし決議の制度によって承認の効力が認められたことになります。
株主名簿の名義書換の未了―旧オーナーが主張することは信義則に反する
判決は、GTWが株主名簿の名義書換請求を行った事実や、MRT氏が名義書換を行った事実又はこれを怠った事実を認めるに足りる証拠はないとしました。つまり、名義書換が行われたとは認定していません。
それでも判決は、DNKの全株主(代表取締役であった叔父TKH氏を含みます)が譲渡の承認に同意し、必要な手続を全て完了している旨をGTWに保証していたこと、当時DNKの経営を実質的に一人で行っていたMRT氏が、他の株主に書面の作成を求めるなどして譲渡の実現に積極的に関与したことを挙げ、名義書換が未了であったとしても、譲渡の当時、次のように評価できるとしました。
「〔DNK〕及びその株主かつ取締役であった〔MRT氏〕は〔GTW〕を株主と認めてその権利行使を容認していたというべきであり」
そして、それにもかかわらず、MRT氏が本件訴訟でGTWへの名義書換の未了を理由に、GTWからの譲受人であるVNSが株主であることをDNKに対抗できないと主張することは、「信義則に反し許されないというべきである」と判断しました。
確認の利益―株主でなくなった以上、選任決議の不存在確認は求められない
判決は、株式譲渡の効力を否定する主張がいずれも退けられたことから、次のとおり述べ、MRT氏は株主の地位を失ったと認めました。
「〔MRT氏によるDNK株式の譲渡〕により〔MRT氏〕は〔DNK〕の株主の地位を失ったものと認められるから」
そのため、従姉妹WKN氏を取締役及び代表取締役に選任した本件選任決議の不存在確認を求める部分は、確認の利益を欠くとされました。
他方、本件解任決議の不存在確認を求める部分は、MRT氏が平成30年8月31日に重任され、取締役の任期が選任後8年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされていたことに照らせば、これが認められればMRT氏の取締役の地位が回復されることになるから、確認の利益があると判断されました。
決議の存否―議事録どおり総会が開催され、全株式の株主が出席していた
MRT氏は、本件総会は開催されておらず物理的に不存在であり、そうでなくても約46%の株主である自分への招集通知がないから法的に不存在であると主張しました。
判決は、全株式を有するVNSが出席して各決議が可決された旨の臨時株主総会議事録が作成されていることを前提に、次のとおり判断しました。
「その記載内容が虚偽であることをうかがわせる事情は見当たらないから、その記載内容どおりの臨時株主総会(本件総会)が開催され、本件各決議が可決されたものと認められる。」
また、それまでの判断によれば、決議の当時、VNSはDNKの全株式を有する株主であり、これをDNKに対抗することができたから、MRT氏の主張する不存在事由はないとしました。こうして、本件解任決議によりMRT氏は取締役の地位を失い、その後に地位を回復したことを基礎付ける事情の主張立証もないとして、MRT氏はDNKの取締役の地位にないと認められました。
主文及び結論
判決の主文は、次のとおりです(ここでの「原告」はMRT氏、「被告」はDNKを指します。選任された人物の符号は〔 〕内の本記事の表記に置き換えています)。
- 「原告が被告の取締役の地位にないことを確認する。」
- 「原告の訴えのうち、被告の令和元年9月3日付けの臨時株主総会における〔従姉妹WKN氏〕を取締役及び代表取締役に選任する旨の決議が不存在であることの確認を求める部分を却下する。」
- 「原告のその余の請求を棄却する。」
- 「訴訟費用は原告の負担とする。」
第1事件のうち選任決議の不存在確認を求める部分は不適法として却下され、解任決議の不存在確認の請求は理由がないとして棄却されました。第2事件のDNKの請求は認容されています。旧オーナーであるMRT氏は、株式も取締役の地位も取り戻すことができませんでした。
| 請求 | 結論 | 理由の要点 |
|---|---|---|
| 選任決議の不存在確認(第1事件) | 却下 | 株式譲渡が有効で、MRT氏は株主の地位を失っており、確認の利益がない |
| 解任決議の不存在確認(第1事件) | 棄却 | 議事録どおり総会が開催され、全株式の株主であるVNSが出席して可決された。不存在事由はない |
| 取締役の地位の不存在確認(第2事件) | 認容 | 解任決議によりMRT氏は取締役の地位を失った |
判断の射程
以下は、判決の内容を踏まえた当事務所の評価です。判決が述べた事項と区別してお読みください。
参考となる点
- 資金援助の範囲と譲渡後の経営体制を合意しておかなければ、後から「約束と違う」とは主張しにくいこと。本判決は、資金援助の範囲や額、譲渡後の役員構成や経営体制について具体的な協議がなかったことを、詐欺取消しと錯誤無効の双方を退ける中心的な理由としました。株式を無償又は低額で譲り渡す代わりに支援を受ける取引では、援助の総額や対象となる債務、時期、譲渡後の役員の地位を、契約書に明記しておくことが極めて重要です。
- 無償譲渡でも、債務の状況によっては対価が不相当とはされないこと。判決は、少なくとも1億3,500万円程度の債務があり、これを上回る資産の存在が立証されていないことから、無償であっても対価の相当性を欠くとまでは断じ難いとしました。無償譲渡の不当性を主張する側は、譲渡時点の会社の資産の評価額を、適切な証拠で示す必要があります。
- 旧オーナー自身が譲渡手続を主導した場合、手続の不備の主張は封じられやすいこと。みなし決議による譲渡承認では、提案者であったMRT氏の主張は退けられ、名義書換の未了については、手続完了の保証と積極的な関与を理由に、信義則により主張が許されないとされました。株式譲渡の手続を自ら進めた売主が、後に手続の欠陥を理由に譲渡の効力を争うことは難しいといえます。
- 全株式が譲渡されると、旧オーナーは臨時株主総会で解任され得ること。全株式を取得した新株主は、旧オーナーに招集通知をすることなく臨時株主総会を開いて取締役を解任できる立場になります。株式の譲渡後も役員として経営に関与し続けることを想定している場合は、その旨を契約で定めておかなければ、地位は守られません。
- 個人保証が残るリスク。MRT氏は株式を手放し、取締役を解任された後も、DNKの借入の連帯保証人として合計2,234万円の請求を受けています。判決はこの事情を考慮しても公序良俗違反を認めませんでした。株式を譲渡する際には、経営者保証の解除や譲受側による保証の差し替えを、譲渡の条件として交渉しておく必要があります。
一般化できない点
- 本判決は、具体的な協議がなかったこと、資金援助が一部実行されて不渡りが回避されたこと、MRT氏が架空の発注書による借入や親族の状況を秘していたこと、手続をMRT氏自身が主導したことなど、本件に特有の事実関係に基づく判断です。資金援助の範囲や経営継続が書面で約束されていた事案や、譲受側が虚偽の説明をした証拠がある事案では、結論が異なり得ます。
- 名義書換の未了についての判断は、旧オーナーであるMRT氏が名義書換の未了を主張することが信義則に反するというものです。名義書換をしない株式譲受人が一般に会社に対抗できると判断したものではありません。株式の譲渡は、株主名簿の名義書換をしなければ会社に対抗できないのが原則です(会社法130条1項。この点は当事務所の説明です)。
- 判決は、FKSの株式の譲渡(本件各譲渡2)について、母KMC氏や弟RYO氏の名義の書面が代筆されたことを認定していますが、その効力については判断していません。本件で争われたのはDNKの株式の譲渡とDNKの株主総会決議です。
- MRT氏の詐欺取消しの意思表示は、GTWの破産管財人に対してされましたが、判決は欺罔行為がないとしたため、取消しの相手方や、GTWから再譲渡を受けたVNSとの関係については判断していません。
- 判決は、MRT氏が取締役の地位に基づいて選任決議の不存在確認を求める利益があるかについて、独立の判断を示していません。確認の利益は、株主の地位を失ったことを理由に否定されています。
- 錯誤については、令和2年4月1日施行の改正前の民法を前提とした判断と考えられ、現在の民法(錯誤による取消し)の下での要件の当てはめとは区別して読む必要があります。
- 上訴の有無及び確定は確認できていません。
株式譲渡契約の解除や、詐欺・錯誤による取消しを検討する場合の進め方は、次のページでご案内しています。
よくあるご質問
資金援助を受ける条件として株式を無償で譲渡しました。援助が約束より少なかった場合、株式を取り戻せますか。
援助の内容がどのように約束されていたかによります。本判決では、協議したのは目前の手形の支払への対応だけで、資金援助の範囲や額を具体的に協議していなかったことから、手形決済資金7,000万円等の援助が約束されたとは認められず、詐欺取消しも錯誤無効も否定されました。援助の総額や対象を契約書に明記していない場合、取戻しは容易ではありません。
株式を譲渡しても経営は続けられると思っていました。この思い違いを理由に譲渡を無効にできますか。
本判決では、譲渡後の役員構成や経営体制について具体的な協議がなく、経営を続けたいという意向も相手方に示されていなかったことから、動機が表示されたとは認められませんでした。経営の継続を前提に株式を譲渡する場合は、役員としての地位や任期、解任の制限等を契約で定めておくことが重要です。
価値のある会社の株式を無償で譲渡させるのは、公序良俗違反になりませんか。
会社の財務状態によります。本判決では、会社に少なくとも1億3,500万円程度の債務があり、これを上回る資産の存在が立証されなかったため、無償であっても対価の相当性を欠くとまでは断じ難いとされ、公序良俗違反も否定されました。不当に安いと主張する場合は、譲渡時点の資産の評価を証拠で示す必要があります。
株主総会を開かずに、株主全員の同意書だけで株式の譲渡を承認できますか。
会社法319条1項により、取締役又は株主の提案に株主全員が書面等で同意したときは、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなされます。本判決でも、全株主の同意書による譲渡承認が有効とされ、承認決議がないという主張は退けられました。
株主名簿の名義書換がされていなければ、新しい株主は株主総会で議決権を行使できないのではありませんか。
名義書換をしなければ会社に対抗できないのが原則です。ただし、本判決では、株主全員が譲渡に同意して手続完了を保証し、旧オーナー自身が手続を主導していたことから、会社と旧オーナーは譲受人を株主と認めて権利行使を容認していたとされ、旧オーナーが名義書換の未了を主張することは信義則に反し許されないと判断されました。
M&Aの後に買主から解任や退任を迫られた旧経営者の側の対応は、次のページでご案内しています。
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資金援助や債務の肩代わりと引き換えに株式を譲渡した後、約束が守られない、経営から外されたといった問題が生じた場合は、株式譲渡契約書の条項、援助の内容についてのやり取り、譲渡手続の書類、会社の財務資料を整理し、取消しや無効の主張が成り立つかを検討します。株式譲渡契約の取消しや解除の考え方は株式譲渡契約を解消する場合の要件と効果で解説しています。M&Aの後に役員の地位を失うおそれがある売主の方は、M&A後に買主から解任や退任を迫られている売主の御相談をご覧ください。M&Aトラブルに関するその他の裁判例は、M&Aトラブルの裁判例の解説記事一覧でご案内しています。
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資金繰りに窮した会社の経営者株主が、資金援助と引き換えに全株式を無償で譲渡し、後に取締役を解任された場面の判例を、株式譲渡契約の詐欺取消し・錯誤無効と解任決議の効力の観点から解説します。
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