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サンドバッギング条項とは?種類や買主側のメリット、事例もわかりやすく解説 

公開 2023年9月21日更新 2026年11月1日

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本記事は、会社の買収に当たり、売主の表明保証違反を知っていた場合でも補償を請求できるよう、契約書にどのような定めを置くべきかを検討している買主の方に向けたものです。

プロ・サンドバッギング条項は、買主が表明保証違反を知っていたかどうかにかかわらず、売主に補償を請求できる旨を定める条項です。反対の趣旨のアンチ・サンドバッギング条項もあり、いずれを定めるかにより、デュー・ディリジェンスで問題を把握した後の請求の可否が左右されます。以下、順にご説明します。

会社の買収を検討している買主の方の中には、売主が表明保証違反を知りながら開示しなかった場合の請求について、契約書にどのような手当てをしておくべきか分からず悩んでおられる方が少なくありません。

サンドバッギング条項の有無や内容によって、売主が、買主が表明保証違反を知っていたことを理由に請求を拒む、いわゆるサンドバッギングの抗弁が認められるかどうかが左右されます。この点を契約書で明確にしておかないと、いざ請求する場面で不利な立場に置かれる危険があります。

本記事では、サンドバッギング条項の意味と種類を確認したうえで、買主側から見たメリットや事例についても説明します。

M&Aの契約では、一定事項の内容が正しいことを相手方に表明し保証する表明保証条項を設けるのが一般的です。 そして表明保証条項を設ける際に、「サンドバッギング条項」という規定を設けることがあります。  

この記事では、サンドバッギング条項について解説します。 種類や、条項を設けることのメリット、事例等についても詳しく解説するので是非参考にしてください。 

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サンドバッギング条項とは 

サンドバッギング条項とは、M&Aの表明保証において、買主が売主の表明保証違反を知っていたかどうかにかかわらず、買主が売主に対して補償請求をできる旨の条項です。 

プロ・サンドバッギング条項とも呼ばれます。 

表明保証とは、当事者の一方が相手方に対して一定事項の内容が真実であることを表明し、表明した内容を保証することであり、M&Aにおいては、万一契約後に相手方の表明保証違反があった場合に補償請求や損害賠償請求をできると規定されるのが一般的です。 

例えば、売主が買収企業に税金の滞納は無いと表明保証したにもかかわらず、契約後に税金の未納が発覚した場合、買主は売主に対して補償請求や損害賠償請求をすることができるというものです。 

サンドバッギング条項は、買主が前記のような表明保証違反について認識していた場合であっても、売主に補償請求できることを定めた規定です。また、買主が認識していたかどうかだけでなく、不注意で表明保証違反を知らなかった場合も補償請求が可能となります。 

買主は、買収企業のデューデリジェンス(DD)を行うため、そこで表明保証違反が発覚することがあります。 

例えば、従業員の社会保険料や残業代の未払い、労働問題等の人事問題があることを否定していても、デューデリジェンス(DD)を行った結果、そのような問題が発覚するようなケースです。 

買主が前記のような人事問題の表明保証違反を認識した上でM&Aを実行するのであれば、万一その問題が顕在化したとしても、売主に対して表明保証違反の責任を追及することはできないというのが従来の考え方でした。 

 しかし近年は、買主が費用と労力をかけてデューデリジェンス(DD)を行ったことや、買主が売主の表明保証違反に気付いていたとしても、その問題の詳細や顕在化した際のリスクや影響等まで把握することは難しいと考えられるようになりました。 

そのため、買主が表明保証違反を認識していたというだけで、売主に対して一切責任追及できないのは不合理であるという考え方から、サンドバッギング条項を設けることが多くなったのです。  

サンドバッギング条項の種類 

サンドバッギング条項には、以下2つの種類があります。 

  • プロ・サンドバッギング条項 
  • アンチ・サンドバッギング条項 

ここからは、それぞれの種類の条項について解説します。 

プロ・サンドバッギング条項 

プロ・サンドバッギング条項とは、先述したサンドバッギング条項と同義であり、M&Aの表明保証において、買主が売主の表明保証違反を知っていた場合や自らの不注意で知らなかった場合であっても、売主への補償請求を認める条項です。 

アンチ・サンドバッギング条項 

アンチ・サンドバッギング条項とは、プロ・サンドバッギング条項と逆で、買主が売主の表明保証違反について知っていた場合や、自らの不注意で知らなかった場合は、補償請求を認めない旨を定めた条項です。  

お手元の資料と経緯をお聞きし、進め方の順序をお示しします。

買主側のサンドバッギング条項によるメリット 

サンドバッギング条項があることの買主側のメリットは、買主のリスクが軽減されることと、買主のデューデリジェンス(DD)の負担を軽減できることと考えられます。 

サンドバッギング条項がないと、買主が売主の表明保証違反を認識したまま契約し、その問題が顕在化した場合に補償されないリスクがあります。 

またサンドバッギング条項がないと、「買主はデューデリジェンス(DD)で認識していたのだから責任追及できない」、「デューデリジェンス(DD)を実施していたのに買主の不注意で見落とした」等と売主から主張される可能性が高くなるでしょう。 

そのため、サンドバッギング条項を設けておくことで、買主のリスク軽減やデューデリジェンス(DD)の負担軽減を期待できると考えられます。 

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サンドバッギング条項の事例 

ここからは、サンドバッギング条項に関連する裁判例を2つ紹介します。 

東京地判平成18年1月17日判例 

買主がA社の全株式について、複数の売主と譲渡契約を締結した事例です。 

A社は、営業利益が悪く赤字決算を回避するために、元々元本の利息に充当していた債務者からの和解契約に基づく返済金を利息の弁済に充当しましたが、元本についての貸倒引当金の計上をしていませんでした。株式譲渡が実行された後に、A社のこの事実が発覚しました。 

 本事例のM&Aの契約書にはアンチ・サンドバッギング条項が定められていないにもかかわらず、裁判所は、買主が表明保証違反について悪意・重過失があった場合は、売主が免責される余地があると判断しました。 

最終的には、買主は悪意ではなく、善意重過失も認められないことから売主の表明保証違反による責任が認められました。 

この裁判で、日本ではアンチ・サンドバッギングがデフォルトのルール(表明保証違反について買主が悪意または重過失により知らなかった場合は売主は補償責任を免れる)であることが示唆されたのではとされましたが、実際のところ判例法理は明確に固まっていないとも考えられています。  

東京地判令和3年6月18日判例 

B社の株式を保有する売主から買主が全株式を譲り受ける契約を締結した事例です。 

B社が製作・販売するシステム製品をパソコンにインストールするために、C社のクライアント運用パッケージをパソコンにインストールする必要がありましたが、B社はC社のパッケージのライセンスを購入せずにシステムを顧客に販売していました。 

買主はそのことが表明保証条項に違反するとして売主に補償金を請求しました。  

譲渡契約で、買主がデューデリジェンス(DD)を行ったことは、売主保証の有効性、売主の表明保証違反による保証等に何らの影響を与えないという内容のプロ・サンドバッギング条項が定められていました。 

この規定により、買主は自己が表明保証違反について悪意または重過失であったかどうかにかかわらず売主は補償責任を免れないと主張しました。 

それに対して売主は、あくまでデューデリジェンス(DD)が売主保証の有効性や売主の表明保証違反について影響を与えないというだけで、買主が表明保証違反について悪意または重過失であった場合は売主が保証責任を負うものではないと主張しました。 

裁判所はプロ・サンドバッギング条項の規定により、売主は買主に生じた損害についての補償を免れないと解釈しました。 

ただ裁判所は、当該規定を採用しながらも買い手の重過失の有無についても検討しており、売主が著作権侵害について自社の従業員に口止めをした等のことから、買主の重過失も認められませんでした。  

表明保証違反による補償の請求と、損害額の算定は、次のページでご案内しています。

まとめ 

サンドバッギング条項は、相手方の表明保証違反を知っていたかどうかにかかわらず、相手方に対して補償請求をできる条項です。 

契約書に定めておくことで、M&Aでは買主のリスクを低減し、デューデリジェンス(DD)の負担を低減でき、当事者間のトラブルの抑止力になるとも考えられます。 

 どのような条項を設けるのが良いかは事案によって異なりますので、M&Aに精通した弁護士に相談することをお勧めします。 

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この記事の位置付け

サンドバッギング条項に関するメインのページです。本ページは、M&Aトラブルに備え、買主が違反を知っていた場合の扱いを契約であらかじめ定める方法をご説明します。裁判所の判断はアルコ事件のページをご参照ください。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、2024年(令和6年)10月には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ました。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めています。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。

著書

非上場会社における少数株主対策の手法と実務
『非上場会社における少数株主対策の手法と実務』(日本法令)
中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策
『中堅・中小企業のためのM&Aトラブル事例と実務対策』(清文社)
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