株式交換の前に起きた従業員の自殺を告げなかったことは表明保証違反となるか―東京地方裁判所平成25年11月19日判決

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株式交換により会社を取得した数年後、取得前に従業員が自殺しており、遺族が過重労働を理由に損害賠償請求訴訟を起こした。買主は和解金等を負担することになったが、売主は株式交換の際にこの事実を告げていなかった。売主は「当社の知る限り」労働紛争や訴訟のおそれはないと表明保証していましたが、この場合、買主は売主に補償を求めることができるのでしょうか。東京地方裁判所平成25年11月19日判決は、自殺の事実関係を告げなかったことは表明保証違反に当たるとして、和解金等の補償を認めました。

本記事が扱う場面と、扱わない場面

本記事は、株式交換の際に売主側が差し入れた覚書の表明保証に基づき、買主が、取得前の従業員の自殺に起因する訴訟の和解金等の補償を求めた一つの判決を解説します。遺族の損害賠償請求そのものの当否、労災保険の給付、会社分割によって債務が承継されるかの一般論は対象としていません。買収後に訴訟や労働紛争が判明した場合の対応の全体像は、買収後に訴訟や労働紛争が発覚した場合の確認手順と売主への請求をご覧ください。

Contents
  1. 裁判例の基本情報と当事者の表記
  2. 事案の概要―株式交換の5年前に起きた従業員の自殺が告げられていなかった
    1. 売主会社は、旧A社の主要な事業を新A社に移したうえで売却した
    2. 従業員の遺族は、自殺の後、労災申請や証拠保全を進めていた
    3. 買収後に遺族が訴訟を起こし、2,000万円で和解した
  3. 事案の経緯
  4. 判断の出発点となった契約条項
  5. 買主会社が求めたもの―4,256万2,547円の補償
  6. 争点
  7. 裁判所の判断―「知る限り」の限定があっても表明保証違反とされた
    1. 表明保証の範囲は、開示を求めた事項に限られない
    2. 本件自殺の事実関係は「労働紛争ないし訴訟提起のおそれ」に当たる
    3. 経営に深く関与していた売主会社は「知らなかった」とはいえない
    4. 和解金と相手方の弁護士費用等は全額、自社の弁護士費用は300万円が認められた
  8. 本判決の結論
  9. 実務上の着眼点
  10. 本判決が扱っていない事項
  11. 取得前の労働紛争と表明保証についてのよくあるご質問
    1. デュー・ディリジェンスで労務の資料を求めていなければ、表明保証違反を主張できませんか。
    2. 労災申請が不支給になっていれば、紛争のおそれはないといえますか。
    3. 買主が売主と協議せずに和解金等を支払った場合でも、補償を受けられますか。
  12. 根拠条文
  13. 買収後の労働紛争をめぐるご相談

裁判例の基本情報と当事者の表記

裁判所・裁判日 東京地方裁判所民事第15部・平成25年11月19日
事件番号 平成24年(ワ)第10386号
事件名 補償金請求事件
審級 第1審
結論 一部認容(請求額4,256万2,547円のうち3,356万2,547円及び遅延損害金)

以下では、株式交換により会社を取得した原告を「買主会社」、実質的な売主であった被告を「売主会社」と表記します。自殺した従業員が勤務していた会社を「旧A社」、旧A社の会社分割により設立され株式交換の対象となった会社を「新A社」、新A社を吸収合併した買主会社の子会社を「B社」、買主会社からB社の株式を買い受けたファンドを「Cファンド」(その無限責任社員を「C社」)とします。引用中の当事者名も、この独自の表記に置き換えています。

本記事は上記判決の解説です。上訴の有無や確定を確認した旨の表示ではありません。

事案の概要―株式交換の5年前に起きた従業員の自殺が告げられていなかった

売主会社は、旧A社の主要な事業を新A社に移したうえで売却した

旧A社は、店舗を展開するパン製造小売会社でした。投資事業組合財産の運用及び管理等を事業目的とする売主会社は、平成13年8月頃に旧A社の株式の20.6パーセントを取得し、その後43.7パーセントまで買い増して、平成15年3月31日に連結子会社としました。売主会社の取締役が旧A社の代表取締役を兼任するなど、売主会社は旧A社の経営にも関与していました。

旧A社は、平成17年4月1日に新設分割を行い、運営していた102店舗のうち79店舗を新A社に承継させました。銀行等の借入債務等は旧A社に残され、旧A社はその後特別清算の手続を経て平成19年7月3日に消滅しました。売主会社は、平成17年4月19日に新A社の全株式を譲り受けて完全子会社としました。

買主会社は、外食事業を中心にフランチャイズ・チェーンシステムによる教育産業、外食産業等を事業目的とするグループの持株会社です。平成18年3月16日、新A社との間で株式交換契約を結び、同年6月1日に新A社を完全子会社としました。この株式交換は、実質的に、売主会社が買主会社に新A社を売却する取引でした。売主会社は、同日付けで、表明保証と補償を内容とする覚書(以下「本件覚書」)を買主会社に差し入れました。

従業員の遺族は、自殺の後、労災申請や証拠保全を進めていた

旧A社の従業員は、平成13年1月26日に自殺しました。旧A社における過重労働を原因とするうつ病の発症が疑われていました。遺族は、労災の申請とともに旧A社に対する損害賠償請求を検討し、平成14年12月3日には、旧A社に対する損害賠償請求権を本案とする証拠保全手続が旧A社の本社で行われました。

遺族は、平成15年11月26日に遺族補償給付を申請しましたが、旧A社は業務との関連性を否定し、労働基準監督署は平成17年2月28日に業務起因性がないとして不支給の決定をしました。遺族の審査請求は同年10月11日に棄却され、遺族は同年11月18日頃に再審査請求をしました。株式交換の契約が結ばれた平成18年3月の時点では、この再審査請求の手続が続いていました。その後、遺族は平成18年11月15日に不支給処分の取消訴訟を提起し、平成21年1月14日に請求を認める判決がされ、確定しています。

買収後に遺族が訴訟を起こし、2,000万円で和解した

B社(買主会社の完全子会社)は、平成19年8月1日に新A社を吸収合併しました。買主会社は、平成21年3月12日、B社の全株式をCファンドに譲渡する契約を結び、その際、B社と役員又は従業員との間に訴訟や紛争がないことなどを表明保証し、これに反する事実によってCファンドが被る一切の損害を補償することを合意しました。

その直後の平成21年3月27日、遺族は、B社を相手方として、本件自殺は旧A社における過重労働が原因であるとして、不法行為又は安全配慮義務違反を理由に1億47万4,000円の支払を求める訴訟を大阪地方裁判所に提起しました(以下「大阪訴訟」)。買主会社は売主会社に事実関係の確認と協力を求めましたが、売主会社は、新A社には損害賠償債務を負う余地がないとしてB社には法的責任がないと回答し、協力に消極的でした。

大阪訴訟は、2年以上、約14回の期日を経て、平成23年4月13日、裁判所の勧告により、B社が遺族に解決金2,000万円を支払う訴訟上の和解で終了しました。買主会社は、Cファンド側からの請求に応じて、同年5月31日に1,556万2,457円、6月30日に1,500万90円の合計3,056万2,547円(和解金2,000万円と弁護士費用等諸費用1,056万2,547円)を支払いました。そして、同年9月30日付けの書面で売主会社に補償を請求し、この書面は10月1日に売主会社に到達しました。

事案の経緯

年月日 出来事
平成13年1月26日 旧A社の従業員が自殺
平成13年6月12日 旧A社の当時の代表取締役が、遺族に労働基準監督署等の調査に全面的に協力する旨の文書を送付
平成13年8月頃 売主会社が旧A社の株式20.6パーセントを取得(その後43.7パーセントまで買い増し)
平成14年12月3日 旧A社に対する損害賠償請求権を本案とする証拠保全手続
平成15年3月31日 売主会社が旧A社を連結子会社化
平成15年11月26日 遺族が労働基準監督署に遺族補償給付を申請
平成17年2月28日 労働基準監督署が業務起因性なしとして不支給決定
平成17年4月1日 旧A社が新設分割により新A社を設立し、102店舗のうち79店舗を承継させる
平成17年4月19日 売主会社が新A社の全株式を取得し、完全子会社とする
平成17年10月11日・11月18日頃 審査請求が棄却され、遺族が再審査請求
平成18年3月16日 買主会社と新A社が株式交換契約を締結。売主会社が本件覚書を差し入れる
平成18年6月1日 株式交換の効力発生。新A社が買主会社の完全子会社となる
平成18年11月15日 遺族が不支給処分の取消訴訟を提起(平成21年1月14日に請求認容、確定)
平成19年7月3日 旧A社が特別清算を経て消滅
平成19年8月1日 B社が新A社を吸収合併
平成21年3月12日 買主会社がB社の全株式をCファンドに譲渡する契約を締結(紛争がないことの表明保証と補償の合意)
平成21年3月27日 遺族がB社を相手方として大阪訴訟を提起(請求額1億47万4,000円)
平成23年4月13日 大阪訴訟が解決金2,000万円の訴訟上の和解で終了
平成23年5月31日・6月30日 買主会社が合計3,056万2,547円を支払う
平成23年9月30日 買主会社が売主会社に補償を請求(10月1日到達)
平成25年11月19日 東京地方裁判所が一部認容の判決

判断の出発点となった契約条項

以下は、判決本文が記載する本件覚書の文言の引用です。判決本文で中略とされている部分は省略しています。当事者の呼称のみ上記の表記へ置き換えています。

覚書(平成18年3月16日付け) 1項、2項(表明保証と補償)

1項 (中略)当社(売主会社)は、貴社(買主会社)に対し、実質的には新A社株式の売主たる地位にあることに鑑み、下記事項について保証表明いたします(以下、略)。
2項 当社は、前項の保証表明事項に違反した場合、貴社に生じた一切の損害(合理的な弁護士費用を含む。)を直ちに補償いたします。

覚書 保証表明事項8(開示した情報)

当社又は新A社が貴社に対して本件株式交換契約締結のときまでに開示(口頭であると、書面であると、その他開示方法の一切を問わない)した資料、情報、事実は、重要な事項について誤りがなく、また重要事項について誤解を生ぜしめたり、欠けているところがない(但し、当該資料につき当社がデュー・ディリジェンスの際にその正確性につき留保した資料、及び貴社において正確ではないことを覚知している情報、御社が正確でないことを知っている情報についてはこの限りではない。)

覚書 保証表明事項15(労働紛争)、17(訴訟)

15.当社の知る限り、新A社において、重大な労働災害、同盟罷業、怠業その他の労働紛争は存在せず、その発生の虞もない。
17.当社の知る限り、新A社を当事者とする係属中の訴訟又は行政手続であって、新A社に重大な悪影響を及ぼすこととなるようなものは存在せず、且つ、かかる訴訟又は手続が提起されるおそれはない。

覚書には、このほか、デュー・ディリジェンスの際に提示した資料が重要な事実において真実かつ正確であること(7)、財務諸表に記載されたもの以外に保証債務、偶発債務、簿外債務等が存在しないこと(11)などの表明保証も含まれていました。15と17には「当社の知る限り」という限定が付されていました。

買主会社が求めたもの―4,256万2,547円の補償

買主会社は、本件覚書2項に基づき、次の合計4,256万2,547円及びこれに対する請求書の到達日の翌日である平成23年10月2日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めました。

  • 大阪訴訟の和解に関連してCファンド側に支払った和解金相当額:2,000万円
  • 同じく弁護士費用等諸費用:1,056万2,547円
  • 売主会社への補償請求のための弁護士費用:1,200万円

争点

争点は、①株式交換の際に本件自殺を告げなかったことが本件覚書の表明保証違反となるか、②補償金の額、の2点でした。

売主会社は、表明保証の対象は、買主会社がデュー・ディリジェンスで開示を求め、売主会社がこれに応じて開示した資料等に記載された事実関係に限られるところ、買主会社のデュー・ディリジェンスは会計監査だけで、労働紛争等について開示を求めていないと主張しました。また、遺族の労災申請は業務起因性がないとして不支給とされ、株式交換までに損害賠償請求もされていなかったから、自殺が重大な労働紛争等に当たることを知っていたわけではなく、潜在的な訴訟リスクとして把握していたこともないとも主張しました。さらに、会社分割計画書によれば旧A社の潜在的な損害賠償債務を新A社が当然に承継することはないとも主張しました。

裁判所の判断―「知る限り」の限定があっても表明保証違反とされた

表明保証の範囲は、開示を求めた事項に限られない

裁判所は、保証表明事項8の文言には、デュー・ディリジェンスの際に開示した資料に限定する文言はなく、他方で、買主会社のデュー・ディリジェンスはほぼ会計監査に限られていたものの、15と17では労働紛争や訴訟リスク等の法務リスクも表明保証の対象としていることを指摘しました。

そのうえで、表明保証には、表明保証をした事実については責任を負い、それ以外の事実については責任を負わないとすることで契約当事者の責任を明確にするリスク分配の機能があり、安易に拡大して解釈すると当事者の合理的意思に反することになる点を十分に考慮しても、表明保証の範囲が買主会社がデュー・ディリジェンスで開示を要求した範囲に限定されると解釈することは相当でないと判断しました。

本件自殺の事実関係は「労働紛争ないし訴訟提起のおそれ」に当たる

裁判所は、株式交換までの間に、旧A社は業務起因性を否定していたものの、遺族は業務起因性があることを前提に労災申請等を行い、旧A社を相手方とする損害賠償請求権を本案とする証拠保全手続まで行っていたことから、遺族が安全配慮義務違反等を理由に訴訟を提起するおそれがあったことは否定できないとしました。

また、行政機関で業務起因性を否定する判断がされていても訴訟提起のおそれがなくなったとはいえず、平成18年当時、過重な業務等によるストレス性の疾患による自殺事案で使用者が責任を負う裁判例が積み重なり、若年労働者の自殺事案では高額の損害賠償となる例もあったことは広く知られていたとして、本件自殺の事実関係は、少なくとも旧A社の財務に大きな影響を与える事実であり、労働紛争ないし訴訟提起のおそれに当たると判断しました。

経営に深く関与していた売主会社は「知らなかった」とはいえない

裁判所は、自殺当時の旧A社の代表取締役が売主会社の取締役を兼任し、その後も売主会社の取締役が旧A社の代表取締役を兼任するなど、売主会社と旧A社の関係は資本支配にとどまらず経営への関与にも及んでいたことから、売主会社が本件自殺の事実関係を知らなかったとはいえないとしました。

また、売主会社は、借入債務等を旧A社に残し、優良店舗である79店舗を新A社に承継させたうえで旧A社を消滅させており、新A社は旧A社の営業の中核部分を譲り受けていることから、別法人であるからといって旧A社に生じていた法的リスクを承継しないとまではいえないとしました。

以上から、裁判所は、売主会社が株式交換までに本件自殺の事実関係を知らせなかったことは「本件覚書の表明保証違反に該当するといえ」、補償を求める買主会社の主張には理由があると判断しました。

和解金と相手方の弁護士費用等は全額、自社の弁護士費用は300万円が認められた

売主会社は、買主会社の支払は支払義務の疑わしい要求に独自の判断で応じたもので、表明保証違反との相当因果関係がないと主張しました。裁判所は、大阪訴訟が約1億円の支払を求めるもので、約2年間の手続を経て裁判所の勧告により2,000万円の和解で終結したこと、売主会社が法的責任がないことを理由に協力に消極的であったことを考慮し、買主会社がCファンドとの株式譲渡契約との関係で自らの利益を確保するため、売主会社と協議せずに速やかに支払ったことを十分に考慮しても、2,000万円の支払は合理的であり、表明保証違反との相当因果関係も認められるとしました。

弁護士費用等諸費用1,056万2,547円についても、請求額約1億円に対し2,000万円で和解したこと、訴訟期間が2年にわたり期日も14回に及んだこと、事案の性質や難易等を総合して相当と認めました。他方、売主会社への補償請求のための弁護士費用は、本件覚書が合理的な弁護士費用の補償を定めていることを前提に、事案の性質、審理の経過、認容額に照らして300万円が相当とされました。

本判決の結論

裁判所は、売主会社に対し、3,356万2,547円及びこれに対する平成23年10月2日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払うよう命じ、その余の請求を棄却しました。認容額の内訳は、和解金2,000万円、弁護士費用等諸費用1,056万2,547円、弁護士費用300万円です。訴訟費用は4分し、その1を買主会社、その余を売主会社の負担とされ、金銭の支払を命じた部分には仮執行宣言が付されました。

実務上の着眼点

本判決は、労災申請が不支給とされていても、遺族が証拠保全手続まで行っていた事情などから、訴訟提起のおそれがあったと判断しました。行政機関の判断が出ていることだけで、紛争のおそれがないと考えることはできないことになります。

また、「当社の知る限り」という限定があっても、売主の役員が対象会社の役員を兼任するなど経営に深く関与していた事情から、売主が事実を知らなかったとはいえないとされました。売主の認識を限定する文言の効果は、売主と対象会社の関係によって左右されます。

さらに、本判決は、デュー・ディリジェンスが会計監査に限られていたことを理由に表明保証の範囲を限定する主張を退けました。買主としては、デュー・ディリジェンスの範囲が限られる場合でも、労働紛争や訴訟リスクを表明保証の対象として明記しておくことに意味があります。一方、売主としては、過去の労災や紛争の事実を開示しておくことが重要です。これらは本判決を踏まえた着眼点であり、本判決が特定の条項例の有効性を一般的に判断したものではありません。

本判決が扱っていない事項

  • 大阪訴訟でB社が実際に損害賠償責任を負うべきであったか、会社分割により旧A社の債務が新A社に承継されるかは、正面から判断されていません。裁判所は、法的リスクを承継しないとまではいえないとしたにとどまります。
  • 保証表明事項11(簿外債務等)への違反の有無は、判断の根拠とされていません。
  • 補償請求の期間制限や通知の時期は、争点とされていません。

取得前の労働紛争と表明保証についてのよくあるご質問

デュー・ディリジェンスで労務の資料を求めていなければ、表明保証違反を主張できませんか。

本判決は、覚書の文言に開示資料に限定する文言がなく、労働紛争や訴訟リスクも表明保証の対象とされていたことから、表明保証の範囲を開示を要求した範囲に限定する解釈を採りませんでした。表明保証の文言が判断の基礎になります。

労災申請が不支給になっていれば、紛争のおそれはないといえますか。

本件では、不支給の決定がされていても、遺族が損害賠償請求権を本案とする証拠保全手続まで行っていたことなどから、訴訟提起のおそれがなくなったとはいえないとされました。

買主が売主と協議せずに和解金等を支払った場合でも、補償を受けられますか。

本件では、売主会社が協力に消極的であったことなどを考慮し、買主会社が協議せずに支払ったことを十分に考慮しても、和解金2,000万円の支払は合理的で相当因果関係があるとされました。ただし、支払の合理性は事案ごとに判断されますので、事前に売主へ通知し協議を求めた記録を残しておくことが望まれます。

根拠条文

  • 本件覚書1項・2項(表明保証と補償)、保証表明事項8・15・17
  • 平成29年法律第45号による改正前の商法第514条(商事法定利率年6分)

買収後の労働紛争をめぐるご相談

買収後に取得前の労働災害や労働紛争に起因する請求を受けた場合は、表明保証の文言と「知る限り」の限定、売主と対象会社の関係、和解に至る経緯の記録を整理して検討します。M&A後に表明保証違反が発覚しお困りではありませんかでは、当事務所の対応をご案内しています。

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執筆者

弁護士法人M&A総合法律事務所 代表弁護士 土屋勝裕(東京弁護士会所属 登録番号26775)

長島・大野・常松法律事務所に在籍した後、慶應義塾大学ビジネス・スクール及びペンシルベニア大学ウォートン校に留学し、ファイナンス理論並びにM&A及び不動産を専攻しました。不動産投資信託(J-REIT)の上場案件に関与し、平成23年には最高裁判所において株式買取請求権に関する逆転判決を得ております。現在は弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士を務めております。

主として取り扱う分野 M&A、株式買取請求権、非上場株式の価格の決定、企業価値評価、事業承継及び企業法務

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本記事の記載は一般的な法律情報であり、個別の事案に関する法律上の助言ではありません。記載した経歴は事実の記述であり、個別の事件の結果を保証するものではありません。